「……もう一度言うわね。二人とも、生徒会に入って」
「お断りだ。悪いが生徒会や委員会は前々から興味がない。何が楽しくて教師共の犬に成り下がらねばならないんだ?」
「………その分、あなたには相応の権利が与えられるわ。それに、立ち回り次第では教師共も黙らせることができるわよ」
そう言われた俺は少し考え、すぐに首を振る。
「それじゃあ、つまらない」
「つまらない?」
「ああ。俺はここ数か月で気付いたが、どうやら戦っている方が性に合っているようだ。正しくは、ルシフェリオンを手に入れてから、か」
そう答えるとラウラを除いて全員が引く様子を見せる。
「力を手に入れたから。そう考えてくれても構わない。確かに今はラボの庇護下に置かれてはいるが、それもいつまで持つかはわからないからな」
今は朱音ちゃんのことは秘匿されているから大丈夫だとは思うが、高校生になったらおそらくは手を出し始めるだろう。下手すれば黒鋼の発展はこれ以上望めないし、場合によっては俺も狙われるだろう。
「でも、IS学園は何かしらの部活に入部することを校則で定められているわ。いくらあなたが学園の上層部である委員会の施設を半壊させ、生身で数人の代表と同格の存在を倒し、重役の半数を重傷に追い込むほどの戦闘力を保有しているとしても、こればかりは守ってもらうわ。悠夜君と織斑君は男性IS操縦者として未熟、ラウラちゃんは転校生、簪ちゃんは専用機を組み立てるために特例として今まで強制入部はさせなかったけど、一学期を終えてそれぞれクリアしたものとして、帰省中にどこかに入部させるように上層部から連絡があったのできれば、生徒会にとも」
「………」
なるほどね。あの人直々の申請か。
確かに今では環境になれ、俺もルシフェリオンという新たな力を手に入れたことで自由が利かなくなったか。確かに上層部としては俺をIS学園に縛っておきたい。それで最適なのは生徒会ということか。それに、現会長が楯無で、関係を持ってくれたらなおのこと、日本とロシアにとってプラスにもなる。どっちにしろ、日本とロシアには消えてもらう必要があるかもな。十蔵さんの心意はわからないが、各国としてはそんなものだろう。
「でも、私としては織斑君を生徒会に入れるべきと考えているわ」
「……へぇ」
途端にラウラと簪が楯無に殺気を向ける。俺は別になんとも思っていないさ………うん。
「お姉ちゃん?」
「貴様、やはり……」
「ま、待って! 別に悠夜君より織斑君の方が大事ってわけじゃ……いや、同じ生徒なんだし平等に扱うべきなんじゃ……」
「……別にいいよ、それで」
だが、簪はどういうことか納得したようだ。何だろう。すごくムカつく!
「か、簪ちゃん……?」
「簪様、その言葉をあなたが手に持っている首輪をしまってから仰ってください」
「じゃあ、虚さんが代わりになってくれる?」
何だろう。これを聞いたら間違いなく大変な目になる。
避難してきたのか、本音はこっちに来た。
「……その代わり、とは?」
「悠夜さんのどれ……愛のおもちゃ?」
「お、落ち着け簪! 今それは重要じゃない!」
「そ、そうよ簪ちゃん! 私は何も織斑君に惚れたとか、そういうわけじゃ―――」
「どっちにしても、一緒」
お、落ち着け、俺。落ち着いてこの状況を打破するんだ。
まず織斑の生徒会入りは楯無と虚さんの尊厳を守るために回避しないと。そうだ。絶対に回避しなければならない。
(まず織斑は生徒会に入れるべきではない。ということは生徒会に入らず、生徒会の仕事をする方法を考えるべきだ。なんかないか? 織斑の能力を活かして、尚且つ織斑を従わせる方法を……)
これまでに聞いたことをさかのぼり、織斑の特徴を探り始める……というか織斑って女にモテている以外は使いものにならないどころか無駄に戦局を乱したりするしかイメージがないな。
「なぁ、本音。織斑って何か特技がないか? 例えば、社会的な貢献ができることとか……」
「ん~。そう言えば、おりむーは料理とか、マッサージが上手いって聞いたことがあるよ~」
「それだ!! 織斑を奉仕部とか、ボランティア部に入れればいい!」
「ナイスアイディア! 簪ちゃんもそれでいいかしら?」
「………チッ」
プルプルと震えながら、楯無は俺の方を向く。
———たすけて
———無理
俺たちは瞬時にやり取りをする。無理に決まっているだろう。俺として…というか男としてはむしろ得だし。
「でも本当に良いアイディアね。これなら当初の目的も果たせるわ」
「当初の目的って……本当にアレをさせる気ですか?」
「そうでもしないと、あの無駄紙の処理はできないでしょ」
? 一体何の話だろうか?
そんなことを考えていると、楯無は俺にわかりやすく言った。
「実はね、各部活動から織斑君を欲する声が上がっていたのよ。悠夜君にも来ていたけど、ちょっと内容が内容なのよね」
ああ、そういうこと。
何が言いたいのか納得した俺は言っておいた。
「ならば運動部のコーチは引き受けてやろう」
「何を企んでいるの?」
「なぁーに。ちょっと改造するだけだ。心優しいラグビー部が豹変するレベルのを」
「一応言っておくわ。ここは世界でも秀でている身体能力を持つ人たちがいる学校ですからそんなものは必要ありません!」
そんなことを言われてもなぁ。
「悠夜さん、相手は女の子だから言う内容は変えた方がいいと思う」
「……言われてみればそれもそうだな」
「………もう、嫌……」
あ、楯無が何かを放棄した。
ともかく今は部活の話に戻すとしよう。
「ともかく織斑は生徒会の特例として、一人での部活動もしくは同好会を許可すればいいだろう。問題は俺たちだな。簪は生徒会に所属するのか?」
「誘われたけど、悠夜さんが入らないなら入らない」
「ええーっ!?」
楯無がそんな声を出すが、虚さんがある案を出した。
「では、アイデア部というものはどうでしょう」
「あ、アイデア部?」
「はい。先程の悠夜君の発言もそうですが、悠夜君はそういう発想が得意のようなので最適ではないでしょうか? 織斑君と処遇を同じくし、生徒会の内部の補佐も仕事を含めれば簪様が間接的に生徒会の補佐にも入れます。織斑君のことも含めて顧問と言う問題がありますが、ボランティア部は監視と安全性のために織斑先生に、そしてアイデア部は取次安いという意味で轡木先生に頼めば、アイデアを元に轡木ラボからの資材提供をしてもらって本格的な企業との交流を含めて新たな機体の開発を取り組むことができます」
「ね?」と俺たちよりもどちらかと言えば本音に向かって言う虚さん。すると本音が嬉しそうな顔をした。
「た、確かに虚ちゃんのいう事も一理あるわ。悠夜君、どうかしら? それならこっちとしても願ったり叶ったりだし……」
「俺も賛成だ。幸い、技術に強い奴も確保できているし、晴美さん……轡木先生の説得の材料にも使えるはずだし。ありがとう、虚さん」
「いえいえ」
聞けば虚さんはこれまで誰かと付き合ったことがないらしい。こんな人がモテないというのはやはりおかしい……うん。世が世ならば普通に求婚は回避できないな。
「決まりね。人数もちょうどいいし、条件が揃い次第、生徒会長としてアイデア部の創部を認可するわ」
こうして俺たちは部活問題を一応は解決することになったが―――
「じゃあ、一週間後までに今度の学園祭の出し物を教えてね」
「俺、明日から帰るんだけど!?」
色々と問題が残っているのは間違いない。
あれからしばらくして、俺たちアイデア部は晴美さんに顧問をお願いしに行くと、朱音ちゃんが高校生になったら入部することを確約することを条件に引き受けてくれた。
(問題は部屋なんだがな、本当にどうしよう……)
あまり遠いのも問題だし、できれば近場で良い所がないだろうか。
とはいえ今は学園を離れ、俺とラウラは家に帰っていた。
「悪いな、ラウラ。家の掃除なんて手伝ってもらって」
「私は兄様の妹なのですから問題ありません!」
周りから俺を殺してラウラを愛でよう的な会話が聞こえてくるが、どうやらラウラには聞こえていないようだ。………というか何だ? 中には女も混じっている気がするぞ。
「あのブ男、何であんな美少女と座ってんだよ」
「見ろ、あの子があのブ男に懐いているぞ」
「イケメンならまだ許せるが……」
すると数人の男がこっちに近づいてくる。最初は通り過ぎるだけかと思ったが、俺たちのところで止まった。
「おい、今すぐその子をこちらに渡せ」
一人の男がそう言ってくるが、俺は今ラウラを撫でるのに忙しいので後にしてもらいたい。
「悪いな。この子は俺の妹だ」
「だったら尚更だ。貴様の男なら我々に女を提供するのが道理だろう」
「テメェみたいなブ男じゃダメだ。我々が管理する」
全く。二重の意味で面倒な奴だ。こっちはラウラの制止で忙しいんだからさっさと退散してくれ。大体、管理も何もこいつらでは扱いきれないだろう。
「……兄様の素顔を見たことがない輩が、随分な物言いだな」
「はい、ラウラは座っといて」
「……わかりました」
大人しくするラウラを撫でていると、後ろから「おい」と再び声をかけられる。
「渡す覚悟はできたか?」
「悪いがそれは断る。こいつは俺の物だからな」
そう答えると、一人がナイフを取り出したので素早くそいつの顎を打ち抜いて気絶させた。
「………え?」
「先に抜いたのはそっちだから、文句ねえよなぁ?」
文句ある奴らは全員途中で(強制的に)下車した。この一連の行動を見ていた人たちは、ある人は震え、ある人は無視してくれたので気にしないでおく。
「まぁ、死にはしないだろうからな。泳げないって言うならそいつらの自業自得だ」
「地形を選ばずに襲った奴らの負けです。兄様には非はありません」
ラウラからの厳しい言葉を聞いて、ますます周りは恐怖に陥ったのだろう。俺たちが降りる時、全員が道を譲ってくれた。
しばらくして、俺たちは一応は俺が所有する家に戻ってきた。改めて言葉にすると何とも変な感じがする。
すると近くでタイヤをこする音が聞こえたかと思うと、中からギルベルトさんが現れた。
「お、お前は……」
「久しぶりですね、ギルベルトさん」
「はい。悠夜様」
中々慣れないな、「様」呼ばわりは。
すると助手席から一人の少女が現れる。それは俺の義妹の幸那だった。
「………久しぶり、です」
「ああ、久しぶり」
「では我々はこれで。後は兄妹水入らず過ごしてください」
「ただしこいつは回収するがな」
すると突風が俺たちが襲ったかと思うと、目の前にはラウラを俵持ちしている少女が現れた。
「おいクソババア、ラウラをどうするつもりだ」
「なに、ちょっと話をするだけじゃ。誓って何もするつもりはないぞ」
「………」
いや、あのババアのことだから十中八九何かするはずだ。
イマイチ信じられない俺はラウラにあるボタンを渡しておく。
「悪い、ラウラ。たぶんこれから酷い目に遭うと思うが……もし助けてほしい時はこれを押せ」
「……わかりました」
ラウラが受け取ったのを確認した俺は、彼女の頬にキスをする。すると顔を真っ赤にしてラウラは俺にもっとキスをせがんでくるが、
「ギルさん、もしもの時はあのババアを遠慮なくぶん殴ってください」
「おい孫よ。いくらなんでもその扱いはないじゃろうて」
「もとよりそのつもりです」
「お主はもっと酷いわ!!」
突っ込んでいるのを完全に無視。俺が入口の方に避難すると、車は浮き上がって方向を変え、どこかへと走って行った。
「……………」
さて、どうしたものか……。
なんだかんだで俺は幸那と久しぶりに会う。なんだかんだで操られていたとはいえ、こいつの母親を生かしているとはいえ、女権団を壊滅状態に追い込んだのは紛れもなく俺だ。
「……あの、幸那……ちゃん?」
「幸那でいい。いつも通りで」
「……おう」
思ったよりもいつも通りで驚いていると、幸那は家の中に入りたそうにしていたので先に行って鍵を開ける。
「……入っていい?」
「いいぞ。お前の家でもあるからな」
「え……?」
驚いた顔をする幸那。何故そこで顔を赤らめるのかわからない。
「そもそもお前だってこの家に住んでいただろ。そういうことだ」
「………う、うん」
なんでそうショックを受けた顔をするんだろうか?
疑問を深く考えずに俺は幸那と一緒に家の中に入る。前に来た時とほとんど変わっていない。
「とりあえず、掃除するか」
「…うん」
しかしあれだな。つい最近まで強気且つお嬢様みたいな振る舞いをしていたから妙にしっくりこないな。
■■■
悠夜と幸那が部屋の掃除を始めた頃、ラウラは陽子とギルベルトと共に喫茶店に入っていた。
「で、話とは何だ?」
「これのことだ」
そう言ってギルベルトは養子縁組の書類をラウラの前に出す。陽子はその店で特別にしているらしい10㎏のステーキにチャレンジしているが、ラウラはどうせ無理だろうと、ギルベルトはまたしているのかとしか思っておらず、同類で話をしているのである。
「何か言いたそうな顔をしているが、これは十蔵様から言われたことだ。一学期中はこの手続きをする暇はなかったが、二学期の時点で何らかの後ろ盾がないと流石にまずいらしい。特に最近では悠夜様関連でこちらも妨害を受けている」
「そ、そうなのか?」
心配そうに聞くラウラを、ギルベルトは「気にするな」と言った。
「ああ。しかも陽子様にとって大したことがないレベルの相手だから、逆に爆発しそうでな」
「爆発したらどうなる?」
「IS学園が戦場になって、織斑千冬が止めに入った場合、間違いなく2週間は入院……下手すれば植物状態は避けらない。校舎も損傷してしばらくは学校閉鎖だろう」
傍から見れば完全に大袈裟な発言だが、ラウラは簪から聞いた悠夜のことを思い出して、改めて既に半分は食べているのに普通にご飯をお代わりしているどう見ても少女にしか見えない老婆を見る。
「まぁ、君が言いたいこともわからなくはない。どう見てもあれが80になるような存在に見えないだろう?」
「……それもそうだが、貴様もだ。男の
ラウラの言葉に一度目を閉じるギルベルト。しばらくすると目を開けてゆっくりと語り始めた。
「ああ。本来ならば我々もそうなるはずだった。それを助けてくれたのが、あの方と十蔵様だ」
「………では、助けてもらった恩を返すために―――」
「いや、強制的に連れてこられた」
ラウラの目は点になり、ゆっくりとデザートの特大パフェを食べている老婆を見る。
「た、確かにしそうだな……」
「住めば都と言う言葉通り、慣れればいい暮らしと思うがな。当初は戦闘訓練しかしてこなかったからかなり苦労した」
「は……ハハハ……」
遠い目をする自分と同じ存在を見てラウラは乾いた笑いを漏らす。
すると「お待たせ」という声が近くで聞こえ、声の主こと陽子はギルベルトの隣に座った。
「いやぁ、食った食った。しかしあの程度でこのワシを退けようなどとは、随分と舐められておる」
「一応、補足しますがあれを食べきれるのはあなたぐらいですよ」
ため息を吐きつつギルベルトは言うが、陽子は気にせずにラウラに話しかけた。
「さて、おおむねギルから聞いていると思うのじゃが、その前に質問させてもらうぞ」
「…何だ……いや、何でしょうか……?」
敬語で尋ねるラウラ。それに陽子ははっきりと聞いた。
「ぶっちゃけた話、悠夜のことは本気で好きなのか?」
「……はい。世界のすべてがあの方の敵になっても、私はあの方に付いて行きます」
堂々と言ったラウラ。すると陽子は「フッ」と笑い、笑い始める。
「……何か、変なことを言いましたか?」
「いや、すまない。まさかそんな答えを返して来るとは……しかも真顔で言われるとは思わなかったのじゃ」
未だに笑う陽子に対し顔を厳しくするラウラに対して陽子は撫でた。
「まぁ、そう怒るな。私はそういうお主を評価しているからの」
「……なら、いいのですが……」
その後、ラウラはその書類にサインして、悠夜が知らないところで立ち位置が妹から叔母さんへとなった。
悠夜たちの世界でスパロボに参加した場合、
悠夜は間違いなくゲッターとかマジンガー系の機体はもちろん、全ガンダムを勝手に乗ろうとする、パラメイルでテンション上がる、ボスだろうがなんだろうが、ルシフェリオンで特攻、ラスボスってなんだっけ? 的な現象を起こす。
そんなことを容易にできそう(笑)