IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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ということで、第三章最終話です。


#72 理解どころか好ましく思う

 ———もう、朝か

 

 そう認識したのは、瞼に太陽の光が刺したからだと思う。

 少しずつ瞼を開けた俺に太陽の光が襲ったので、視線を右に逸らした。

 

「………眠たい。というか腹減った」

 

 そう呟いた俺はさっきまでのことを思い出す。

 

(そう言えば、俺って確か………)

 

 我ながら、一般人にしてはかなりハードな一日………いや、ちょっと待て。

 あることに気付いた俺は、急いで近くにあるであろうスマホを探すと、そこには見慣れない黒い箱が置かれていた。その箱には「Those of Yuya Kathuragi」と書かれている紙が貼られてある。というか、何でこんなものがあるんだろう?

 

(ギルベルトさんが置いて行ったのか?)

 

 ちなみにギルベルトさんとは、俺のお兄さんみたいな存在だ。普段は祖母である桂木陽子の執事みたいなものをしているが、たまにこうして俺にプレゼントをしてくれる。……まぁ、親父に誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントを秘密裏に渡すよう頼まれたんだろうけど。

 そういえば、昨日はあまり頭が働かなかったけど、何であの人はここにいたんだろう。というかババアもいたよな?

 

(知らない人たちもいたし、ババアは強いらしいから渡したけど、今更ながら少し後悔し始めている)

 

 いや、昨日いた! 昨日すれ違った……というか申し訳なくて放置しちゃったんだよな、結果的に。

 

(………後でお礼……いや、謝らないと……)

 

 無視したし、何よりも巻き込んでしまったんだ。許されるはずはないだろうけど、それでも謝りたい。

 

(そうと決まれば善は急げ。いや、基本的には急がば回れ派だが、今回は別だ)

 

 そう思って俺は眼鏡を探すが、何故か見つからない………あ。

 

(そういえば、俺って確か福音に刺されて、そのまま海中に落ちたんだよな!!?)

 

 どうしてそんなことを忘れていたのだろう。いや、今あの眼鏡が無くられては困る。あの眼鏡が操作のカギだったりするんだ、ボールたちの!

 それに何より、あれには思い入れがあるから是非とも回収を―――

 

「———何をしているんだ、お前は」

「いや、今すぐ眼鏡の回収を………織斑先生?」

 

 何故か織斑先生がこの部屋に来ていた。いや、冷静に考えよう。

 俺は先程起きたばかりで、太陽の光が差し込んだ。そこまではいい。どうしてラウラがいない? しかも部屋は妙に綺麗で、ラウラの分と思われる布団は畳まれていた。

 

「桂木、一応言っておくが遅刻だぞ」

「…………マジですか」

 

 今まで入院や用事以外では無遅刻・無欠席だった俺が、あろうことかこんな形で遅刻するとは思わなかった。

 

「ああ、補足すると今回は「いつもならば」の話だ。昨日のこともあり、お前が自分で起きるまでボーデヴィッヒには「起こすな」と言っておいた。遅刻にはしていない」

「ど、どうも……」

 

 正直に言うと気持ち悪いです。

 でも助かったのは事実だ。となれば急いで本音のところに行かないと。っていうか黒鋼ようの装備もあるんだからそれを片付けないと。

 

「それに、個人的にお前と話がしたかったんでな」

「ありがとうございます。ですが、あなたはタイプではないのでお断りさせていただきます」

「いや、そういうことではない」

 

 どうやら違ったようだ。早とちりしてしまったみたいだな。

 まぁ、世間から未だ持ち上げられているブリュンヒルデが男と結婚すると、間違いなく一週間は話題になるだろう。そしてその相手は苦労する。

 

「お前が昨日から保持している機体のことだ。ああ、それとこれを渡すようにと言われていた」

 

 そう言って織斑先生は俺の眼鏡を渡してくれた。

 

「え? これって―――」

「ギルベルト、だったか? 不思議なものを装備していた男が回収したらしい。後で礼を言っておけ」

 

 俺は飛び込むようにスマホを取り、すぐさまお礼のメールを打った。

 

「……早いな」

「プログラムを組む以外ならば、それなりに早く打てる自信があります」

 

 というかそこは普通、「話している最中にメールをするな」ではないのか? やった俺が言うのもなんだが。

 

「さて、桂木。これからお前はバスに移動してもらう。荷物を持て」

「わかりました……と、その前に」

 

 ラウラの畳まれている布団の上に掛け布団を置く。そして素早く4枚の敷布団を畳んでその上に先に畳んだ掛け布団を置いて、枕を置いた。

 そして荷物を外に出して、俺がすると思ったのか置きっぱなしの箒と塵取りを使って周囲を軽く掃除。そしてこれまた残されている袋にゴミを入れる。上部を縛ってフロントの方に道具と袋を持って行こうとすると、

 

「袋は外にある大きな袋の中だ。そして掃除道具は出てすぐのロッカーに入れておけ」

「わかりました」

 

 言われた通りにして片付ける。

 そして荷物を持ってバスの方へと向かっていると、突然声を上げられた。

 

「あー! 桂木悠夜! それに織斑先生!?」

「何で二人でいるんですか!?」

 

 どうやら機体を運んできたらしいが、お前らは黙って仕事をしてなさい!

 

「まさか、さっきまで先生に桂木があんなことやこんなことをしていたとか……不潔!」

「いや、待て。私たちはそんなことをしているなど―――」

「とうとう先生にまで手を出したな、変態!」

 

 どうやら今回も俺が悪いことになっているらしい。織斑先生が言おうとしたところで俺が制した。

 

「放っておきましょうよ。あんな低能如き、相手をしているだけ無駄ですから」

「何ですって!?」

「この、男風情が―――」

「ISを使わないと男に歯向かえない雑魚が。それとも、今ここでそれを実演してやろうか?」

 

 そう言って俺は荷物を置いて奴らの方へと歩こうとするが、織斑先生がそれを止める。

 

「待て。お前が昨日どれだけのことをしてきたかは聞いている。その力を使う気か?」

「ええ。どうせならば根本的に痛めつけて生きることすら苦にすれば問題ないでしょう?」

「………絶対にするな。お前たちも早く行け!!」

「「「は、はい!」」」

 

 織斑先生に一喝されたからか、女子生徒たちはすぐさまそこから離れる。俺も再度荷物を持ち、バスの方へと向かった。

 

「大きな荷物を下に。荷物は最小限にしておいてくれ」

「でも、そんなことをしたら女子に取られますよ? ただでさえここにいる奴らって俺を目の敵にしているんですから」

「———ならば、その荷物は私が預かろう。君は必要最低限の連絡手段を持っておけばいい」

 

 そう言えば、晴美さんはどうやってきたんだろう? 少なくとも一組のバスには乗っていないはずだ。

 

「私は自分の車で来たからな。安全は保障できるだろう」

「……ありがとうございます」

「気にしないでくれ。とりあえず、バスで使うであろう物と、そうでない物にわけておいてくれ」

「わかりました」

 

 確かに、晴美さんならば信用できる。というか学園内で信用できる教師は今のところ彼女ぐらいのものだ。

 そう思っていると何やら二人がこそこそと会話をしていた。

 

「それで、許可は取れたのですか?」

「ああ。会わせるだけならば特別にね。もっとも、罠に嵌めた場合はどうなっているかわかっていると思うが」

「ええ。その辺りはご心配なく。少なくとも束に会わせるつもりはありません」

「いや、場合によってはここら一帯どころか地球が半分になるから」

「………はい?」

 

 そしてニ、三伝達し終えたようで、俺は晴美さん……もとい、轡木先生に荷物を預けて織斑先生の後に付いて行く。

 どうやら会うのは森の中らしく、段々と中へと入っていく。

 

「この辺りでいいか」

「……誰もいませんね」

 

 てっきり誰かが待っていると思ったがそうではないらしい。

 辺りを見回していると、織斑先生が話を始めた。

 

「さて、お前にいくつか聞きたいことがある」

「……何です? いえ、ルシフェリオンのことですか?」

「そうだ」

 

 まぁ、普通は気になるよな。第三形態(サード・フォーム)になった福音をあそこまで圧倒的に、そして完全に破壊したのだから仕方がないだろう。

 

「名前は知っているんですね」

「ある人からお前の過去を聞いたんだ。もっとも、性能に関してはお前に聞いた方が良いという結論になったがな」

「間違いではありませんよ。ルシフェリオンはかなり特殊な存在ですから」

 

 瞬間、俺は後ろから黒い気配を感じ取った。

 すぐに《ダークカリバー》を展開した俺は、いつものように唱える。

 

「開眼せよ」

 

 すると視界が開かれ、後ろに女が二人、そして男が一人の計三人の人間がいることがわかった。

 

「……これは一体どういうことだ? 今にも俺を殺そうとする女性がいるんだが?」

 

 そして同時に何故か止めている女性が一緒なのが不可解である。普通ならば一緒になって俺を批判してくるだろうに。

 

「後ろから来ておいてなんだが、悪いがその剣とルシフェリオンはしまってくれ。今も部分展開をしているんだろう?」

 

 男が楽しそうに言うが、俺はすぐにそうしなかった。

 

「桂木、今すぐどちらもしまえ」

「……………害はないんだろうな?」

「それに関しては俺が保証するぜ」

 

 男性の言葉を信じるわけではないが、俺を睨む女性はISを所持していないどころか帯銃すらしていない。

 《ダークカリバー》を消し、「閉眼せよ」と唱える。今は口にしているがいつかは瞬時にオンオフを切り替えられるようになりたいものだ。

 

「悪いなぁ、堕天の(あん)ちゃん。わざわざ来てもらったのに約一名が暴走状態でよ」

「………アンタは?」

「おいおい、そいつは酷いじゃねえか。これでも三年前の準決勝の相手だったんだが、忘れちまったか?」

 

 ………おい、ちょっと待て。

 俺の準決勝の相手って、あの赤い機体の……つまりは、

 

「紅の傭兵……もとい、鮮血の狩人(ブラッド・イェーガー)「アル」!?」

「思い出してくれたか? 黒い凶星「ユア」」

 

 ユアとは俺のハンドルネームだ。悠夜をローマ字に変換すると「YUUYA」になるが、俺は敢えて最初の二文字と最後の一文字を取っている。

 そして俺の目の前にいる男は、準決勝の相手で四天王の一人「鮮血の狩人」。本当は「紅の傭兵」ってことだが、本人は強く拒否をした。ついでに機体名はG-アルケー・ラウンド。

 

「本名は「アルド・サーシャス」。一応、福音(ゴスペル)の開発に関わっていてなぁ。いや、しかしこいつぁ驚いた。まさか二人目の男性IS操縦者がSRsの世界覇者なんてよぉ。そりゃあ未だ無敗……と、ゴスペルにやられて一敗か」

「黒鋼を受け取るまではほとんど負けてた……いや、負けてました」

 

 慌てて敬語に戻すが、特に何も言ってこない。

 

「にしてもルシフェリオンが実在するとはなぁ。俺としては新○暦でD○側に付かなければ無理だと思ってたんだが」

「一体、どこの誰が開発したんでしょうね。流石に昨日は助かりましたけど」

「そういや、お前ゴスペルと交戦する前に別の奴と戦ってたんだろ? いやぁ、やるねぇ。流石は世界最強」

「まぁ、気が付けば勝手に動いていたって感じで―――」

 

 ———ドサッ

 

 久しぶりに会った類人との会話が弾んでいると、何かが落下する音がした。後ろから何かを制止する織斑先生の声が聞こえるがそれよりも早く俺の頬に拳が届く。

 

「ちょっ、ナタ―――」

 

 ナタ、さん?

 ともかくその人が殴ったようで、さらに追撃をかけてくるので流石に防御してやり過ごす。

 

「落ち着け、ナタル! こいつは―――」

「許さない……あの子を操った人も……あの子を殺したあなたも!!」

 

 サーシャスさんがナタルと呼ばれた女性を止める。彼女を離せば今すぐにでも俺を殺そうとするだろう。

 俺はハイパーセンサー(仮)を作動させ、収納しているリストを探す。

 

(後で使おうと思って取っておいたんだよな)

 

 政治的に使おうと思って取って置いたんだ。そもそも、ルシフェリオンは幻覚を使えるんだから使わなければ損だろう。

 

「『コアNo.251 シルバリオ・ゴスペル』」

 

 ……何で使用されている機体名まで登録されているのかは知らないが、好都合だ。

 俺はコアを出し、それを手に持つ。

 

「桂木、それは―――」

「昨日回収しておいた福音のコア。破壊しておいたものは幻術で作ったコピーだ。………まぁ、無理矢理もぎ取ったからショックで戦闘データはないだろうけど、ないよりマシかと思いまして」

 

 そう言って俺はそのコアを、銀色に輝くそれを見て完全に停止してしまったナタルさんに渡した。

 

「………あ、ありがとう」

「どういたしまして。まぁ、あそこまで破壊したら流石に復活はしないとは思ったけど、一度剥ぎ取っているのに復活したから念のために」

 

 突然だった。

 完全に座っていたナタルさんが俺に向かって飛び込んできたので、俺はそれを咄嗟に回避する。

 

「ちょっ、いきなり何をするんですか!?」

 

 全く予想外だったので、俺は思わず回避する。

 

「お、おーい、ナタル?」

 

 もう一人の金髪の女性(短髪)が声をかける。たぶん日頃は綺麗なんだと思うんだけど、顔を上げたナタルさんの顔は汚れていた。

 

「……どうしよう。私……なんて酷いことを……」

 

 今回に関しては彼女は被害者なんだろう。それにIS…というよりも自分の機体に愛情を注げる奴は嫌いじゃない。俺はそっと彼女に近づき、敵意がないことを示すために砂で汚れている彼女の顔を胸部に抱き寄せ、頭を撫でた。

 

「あまり気にしなくていいさ。いいものを見せてもらったから」

 

 女ってあまり自分の機体に思い入れなさそうに感じるが、そうでもないみたいだし。いやぁ、本当に良いものを見せてもらった。

 しばらくして俺は彼女を離す。後ろでもう一人の女性が暴れそうになっていたが、サーシャスさんが羽交い絞めにしていた。

 

「私はナターシャ・ファイルス。改めて、あなたの名前を教えてくれないかしら?」

「…桂木悠夜。不本意だが、これでもIS操縦者だ」

 

 お互い、同じタイミングで手を差し出す。どうやら考えていることは同じだったみたいだ。握手をした俺はまた同じタイミングで手を離した。

 

「ユア、たまには対戦に顔を出せよ! 馬鹿がそろいもそろってお前をインチキ扱いをしているぜ!」

 

 そういえば、最近いろいろと案はあったけど実現できなかったり、素材集めとか忙しかったから顔だしてないな。かれこれ三年か。

 

「じゃあ、たまには出させてもらおうか。ニューマシンのイン○ルスで、テメェらまとめて潰してやる!」

「上等だ。……ああ、それと」

 

 サーシャスさんが思い出したかのように会話を切り出した。

 

「今回の件間違いなく上…チェスター・バンクスが動くぞ」

 

 その瞬間、織斑先生の眉が動く。

 

「気を付けろ。アレは結構プライド高くてな。場合によっては近しい奴を狙う」

「……そうですか。でも、その方が俺は好みです」

 

 その方が遠慮しなくていいからな。

 

「まぁ、今のアンタにゃあいらないことだろうがな」

「そうですね。場合によってはここにいるあなたたちも倒させてもらいますよ」

 

 堂々と言ってやると、サーシャスさんは笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 俺たちは別れ、バスの方へと歩いていく。

 

「しかし驚いたな。まさかあのようなことをしていたとは」

「まぁ、アメリカと言えど所詮今の時代はIS。コアさえちらつかせればそれなりに揺れてくれると思ったんですがね」

 

 とはいえ返してしまったのは仕方がない。やはりルシフェリオンをちらつかせて黙らせるしかないだろう。

 

「だがそれ以上に驚いたのはあっさりと返したこととその後だ。まさかあのようなことをするとは思わなかったぞ」

 

 ……ああ、あれか。

 確かに傍から見たら完全にアウトだが、俺には彼女を放っておくことができなかった。

 何故ならあの時の彼女は昔、喧嘩した時に幸那が俺を罵倒した後に後悔した時の状況が似ていたのである。あの時は突発的にああしたが、まさか年上にも有効だとは思わなかった。

 

「何故、あそこでコアを返した? 回収した時の言い訳はお前ならば色々と思いつくだろう」

「確かにな。電子世界とは完全に絶たないとさらに戦闘を行わないといけないと判断した、とかな。それにIS自体、篠ノ之束が監視しているのと一緒だろうから、すぐに捨てておいた方がいいと思うけど」

「…………桂木、まさかと思うが―――」

「言いふらす気はないが、俺は篠ノ之束が妹を高評価でデビューさせたいと思った計画だろうと思っているさ。もっとも、その作戦すら俺に砕かれてしまったが。そうじゃなかったら俺の腹は貫かれないし、普通の暴走ならば最初に撃墜している時点で終了している」

 

 誰もいないのでそう説明すると、織斑先生から出ている雰囲気が変わった。

 

「そしてあなたは、出撃予定だった俺とオルコットにちょっかいを出さないようにしたが、俺は評価アップのために出ることを志願した。仮にもこっちは暴走ISを2機も落とし、襲撃者を楯無と協力して落としている。楯無もかなりの実力者だが、AIC搭載機の操縦者はラウラよりも使いこなしていたからな。流石に相性が悪いから負けていただろ。なんとか撃退はしたが、次来たらその時は容赦なくルシフェリオンを使わないと正直ヤバい」

 

 あの時は何故か相手が手加減をしていたからな。手加減したタイミングといい、考えていることはわからないがそれくらいの意気込みで攻めるべきだろう。

 

「ほう。是非とも戦ってみたいな」

「じゃあ、アンタがやられる様を是非とも見てやる」

 

 冗談を言っていると、ようやく旅館前の駐車場に出た。

 そこには既にクラスメイトを含め花月荘に来ていた生徒すべてが並んでおり、今か今かと織斑先生の登場を待ちわびている。

 そして織斑先生は「先に帰ってくれと言っておいたがな」と呟き、前に出た。話も終わると生徒は各々のバスに乗っていく。

 俺は最後に乗ろうと、ラウラが何故か俺の荷物を持っていた。

 

「おはようございます、兄様。昨日はごくろうさまでした」

「ああ。物凄くな」

 

 なんだかんだでまた勢力を一つ潰したし。

 

「で、さっきからずっと見ないようにしていたが、何故ラウラが俺の荷物を持っているのだろうか? それを尋ねるとラウラは「他の荷物は先に持って帰るようにした。朱音に洗濯するよう頼んでおく(笑)」と書かれた手紙が貼られていた。

 

(……ハメられたな)

 

 帰るときは絶対に朱音ちゃんの所に寄れという事だろう。

 少し泣きそうになるが、気を取り直して俺たちは自分の席に座る。

 

「あ、悠夜。一緒に座ろ―――」

 

 だがそれよりも早くラウラが俺と一緒に座る。チラッと本音を確認するが、たまたま目が合ってお互いほとんど同じタイミングで目を逸らした。

 一連のことを気にせず、シートベルトを付けて俺は今日、ギルベルトさんが置いて行った黒くて硬いアタッシュケースを手に取って開ける。中はパソコンのようになっていて、ラウラは空気を読んでくれたのか、すぐに寝る。近くで騒ぎになっているが気にしない。

 「U」の字を丸め、上に小さな「I」の字がある起動ボタンを押し、イヤホンを指して耳に片方だけ付ける。機動音がしたと思ったら、画面上に何やらロゴが出て、その上にさらに画面が出る。

 

『Innovative

 Grow

 Powered

 Suit

 

 IGPS   』

 

(……イグプス?)

 

 それがやがて消えたと思ったら「Loading」という表示が現れ、画面が切り替わった。

 

「……俺の名前?」

 

 キーボードにあるマウスをクリックし、画面を開く。すると中には「Luciferion」と書かれているファイルを開く。見た時に思ったが、やっぱりそこには俺が望んだものがあった。

 すべてはともかく、とても気になり重要なものが書かれていた。

 

『———『断罪の神使い』と『SRs大会用』の二種の要素が合わさった、IGPS内でも極めて特殊な機体である』

 

 どうして、俺が書いて没にした小説のタイトルを知ってんの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………死んでたか」

 

 つまらなさそうにそう言った女性―――篠ノ之束は伸びをして、一枚の写真を見る。

 どうやらそれは家族写真のようだが、そこに束や箒の姿はなかった。ただ、代わりに―――

 

「桂間修吾、やっぱりあの機体はあなたのだったんだ。でも―――」

 

 やがてそれを握り潰した束は憎しみ込めて言った。

 

「あなたがあの男の味方で、私の邪魔になる奴の味方だから………あなたの家族には死んでもらうよ」

 

 そう言った束はそれを捨て、再び作業にのめり込むのだった。




ようやくこれで終了! 今章も長かった。
次回は以前からリクエストが合った通り、キャラ・機体紹介です。一週間だけ限定的に上げ、後は活動報告に乗せるつもりです。理由は嬉しいことに私を「お気に入りユーザー」として登録してくださる方もいますが、必ずしもそうじゃないのでそのための措置と言った感じです。まぁ、後で目次に紹介の活動報告URLを乗せるんですけどね(笑)

で、それに関してのアンケートを行います。詳しくは下のURLに。
http://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=98705&uid=15171


ではみなさん。また四章でお会いしましょう!

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