IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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#50 どうせならば孤立を選ぶ

 朝食を終えて部屋を出た俺たちはそのまま校舎の方に向かっていく。大抵の生徒は朝食を食堂で摂るので、ここに残っているのは既に食事を終えた者か、遅刻者かの二択だ。いや、朝を教室で摂る奴もいたな。

 

 ともかく俺たちは三人で各々の教室へと向かっていると、大抵デュノアの話題が耳に入ってくる。それほど驚いたのだろう。

 まぁ、無理もない。彼女らは本気でデュノアを男だと思っていたのだから。

 

(女尊男卑の巣窟でも男に興味を持つんだな)

 

 いや、むしろ思春期だからより興味を持つのか、大抵は女子校の出身だから未知なる生物の男子に興味を持つのか。

 

 

 簪と1組の教室前で別れ、俺と本音が教室に入ると視線が集まる。だがそれも一時期だけで、すぐに近くにいた奴との会話を再開した。

 

(やっぱり、デュノアのことだろうな)

 

 聞いたところによると、俺たちの昨日の戦闘は寮や食堂にいる奴らは知らないようだ。教員たちも交代で見張っているところに虚先輩からの通報で知ったらしい。どうでもいいかもしれないけど、本音と虚先輩って姉の方に「先輩」が付くから別に姓で呼んでもいいと思う。

 席に着席し、前髪で目を隠すように予備の厚底眼鏡を外して突っ伏す。次第にウトウトし始め、外部の音声を遮断しにかかる。本音はこの状態に入った俺が起こされるのを知っているので、たぶんさっきから俺の耳たぶを触って頼んでいるのだろう。ちょっと気持ちいいのでそのまま続けてください。

 やがて脳内に何かがひらめく音が聞こえたかと思ったら周りが騒がしくなったので顔を上げて眼鏡をかける。織斑先生はいないが既に山田先生はおり、周りは着席した。

 

「みなさんおはようございます。あのニュースや遅くまで起きていた人ならばもう知っていますと思いますが……その……」

 

 まぁ、「男子が実は女子でした」なんてことをそう簡単に言えるわけがないだろう。

 ちなみに俺の席からだと―――というか大抵の席から山田先生のいる位置を見ようとすれば必然的に織斑も見えてしまうが、何故か織斑は首を傾げていた。

 

「………でゅの―――じゃなくて、ジアンさん。入ってきてください」

 

 惜しいな、山田先生。「でゅの」ではなくて「デュオ」だったならば俺の脳内で「死神様のお通りだ!」という名言が流れたのに。声はもちろん短命のクローンという理由で見捨てられ、世界を呪った男の声である。

 どうでもいいことを考えていると、入口から一人の女生徒が入ってきた。

 制服は男子用から女子用に変わっており、ズボンはスカートへと変更されている。が、普段のデュノアからして膝が隠れるか少し上部分になると思われる先端は、夏だからかあと数センチ上でパンツが見えそうな位置だった。思わず俺は床を見たが、盗撮・盗聴のプロでとある商会の店主はいない。いたらいたらで大問題だが、アレならば悠々と侵入しそうで怖い。

 

「シャルロット・ジアンです。もう私のことは聞いていると思いますが、改めてよろしくお願いします」

 

 一礼するデュノア改めジアンはみんなを見回す。その様子は小動物を思わせるが、誰も特に何も言わなかった。だが一人、名前を知らない誰かが挙手せずに尋ねた、

 

「そういえば月曜日に、男子用に大浴場が開放されたって聞いたけど……入ったの?」

「何!?」

 

 思わず俺は反応してしまった。別にジアンの体云々はどうでもいいんだが、大浴場というものには今回ばかり引かれた。

 というのも俺は月曜も金曜も実質鎮圧したんだが、疲れた取れた気がしない。特に昨日なんざロリババアのせいでもっと疲れたからな。

 

「まさか、あなたでゅ……ジアンさんの裸を―――」

 

 前の席の奴がそんなことを言っているが完全に無視する。

 

「山田先生、俺は一言も「大浴場が開放された」なんて聞いてませんよ?」

「そ、それは……その……実は……」

 

 しどろもどろして中々答えない山田先生。なるほど、なるほど。そういうことか。

 

「誰がアレを入れるのよ……大浴場が汚れるじゃない。やまちゃんナイス!」

「そういえば、更識先輩と同居しているのよね?」

「もしかして先輩が入った後の湯を飲んでいるとか!?」

 

 ナチュラル変態ズが変な想像を口にし、それはどうやら山田先生の耳に届いていたようで顔を赤くしていく。

 

「桂木君! いくらなんでもそんなマニアックなことは―――」

「そうやって話題を変えようとしてもダメですよ、山田先生」

「い、いえ……そういうつもりは決して……」

 

 言葉を濁す山田先生。俺は盛大にため息を吐いた。

 

「ちなみに俺は目を覚ましたら保健室にいたんですが?」

「あ!」

「………なるほどね」

 

 そこまで考えていなかったわけか。それとも、今のは演技で本当は「どうでもよかったから探さなかった」と考えるべきか。

 

「まぁいいですけどね。おかげでこの学園がどれだけの価値かを把握できた―――」

 

 ———バンッ!!

 

 急にドアが開け放たれる。織斑先生がそれをするのはあり得ないだろう。よっぽど切れているならばともかく。

 その原因と思われる奴は瞬時にIS「甲龍」を展開した。

 

「………ねぇ一夏。さっき話を聞いたんだけど、女と大浴場で混浴したってどういうこと?」

「ま、待て鈴。理由を聞くならISを展開する必要はないんじゃないか?」

 

 どうやらほかのクラスでもジアンが織斑と一緒に大浴場に入ったことを話しているらしい。いやいやお前ら、他に会話をする内容はあるだろうが。

 

「ああ、もういいや―――死―――」

 

 ———ドォンッ!!

 

 フルパワーになる前に《サーヴァント》で撃ち抜き、同時に周囲に破片が飛び散らないようにバリアを張った。

 

「凰。冷静になれ―――とはいくらなんでもこの状態では言わないよ、俺は。………まぁでも、流石にここじゃなんだ。ちゃんと場所を選んで、織斑諸共教壇に立つホルスタインをひき肉に変えるなら協力してやる」

 

 何か言いたそうな顔をする凰に対してそう提案すると、即決した凰は声を大にして言った。

 

「乗った!」

「ちょっと待ってください凰さん! 何でホルスタインって言葉を否定してくれないんですか! って、何でそこで「何を言っているの?」って顔をするんですか!?」

 

 そりゃあ、凰にしてみれば山田先生なんてミンチにしたいゴミ女そのものだからだろう。まさかこんなところで本音の挑発が活かされているなんていくら俺でもわからなかったが。

 

「でもまぁ、考えてみろよ。いくらデカくても男がいない奴なんてザラだろうぜ。目の前のホルスタインがいい例だと思う」

「いい加減にしてください桂木君! いくらなんでもそれ以上は怒りますよ!」

「怒るなら目の前に彼氏を連れてきてくださいよ。連れてこれるものなら、ね?」

 

 言うまでもなくダークサイドに落ちていく山田先生。「どうせ私なんて」って言葉は気のせいではないだろう。まぁ、下手に合コンとかしたところでお持ち帰りされても間違いなく体目的だろうから警戒は必要か。まったく。こっちとしてはISを展開した凰をなだめているってのに、教師ならば大人しく生徒の模範という名の犠牲になってろ。

 そんなことを思っていると、俺の隣から何故か絶賛の声が上がる。

 

「———見事な口撃ですね、流石はご主人様」

 

 色々と突っ込みたいんだが、とりあえずだ。

 

「……えっと、ボーデヴィッヒだよな?」

 

 いつの間に教室にいたのだろうか、何故か俺の隣に立つボーデヴィッヒは俺どころかここにいるすべての人間に言わないであろう言葉を吐く。

 

「おはようございます、ご主人様。本来ならば誰よりもそばにいるべきですが、調べ物をしていたら時が経つのを忘れてしまい、申し訳ございません」

「ああ、うん。別にいいんだ……いいんだけど……」

 

 この子、誰?

 少なくとも、俺が知るラウラ・ボーデヴィッヒじゃないことは確かだ。

 

(十蔵さん、あなたは何を話したのですか?)

 

 ただ説明したならば、こんな状態になるのはありえないはずだ……たぶん。

 

「でも、ご主人様を止めて」

「そうですか? この国では真に敬愛する者に対してそう呼ぶと聞きましたが」

「ああ、うん………」

 

 ギャルゲーとかでも結構そんな場面あるけどさ、ぶっちゃけ金のためだと思う。

 だが正直、この場面でそう言われるとむず痒いというか………罪悪感に襲われるというか………犯罪感満載というか………。

 

「えっと……どういうこと?」

「まさか、とうとうやっちゃったの!?」

「あれだけ千冬様を敬愛していたボーデヴィッヒさんを調教し終えるなんて………どれだけ激しいのよ!?」

 

 ………実は昨日で色々と話があってドイツ人的認識だとボーデヴィッヒは俺の所有物になった。

 だがそれを説明するには難しい。少なくともどこかおかしいこいつらの場合はどれだけ正しく説明しようと「桂木悠夜が寝取った」と思われかねない。というか既に思われてる。

 

「でも……悪いが「ご主人様」は止めてほしい。言われ慣れていないからさ……」

「………わかりました」

 

 うわぁ。止めてもらっても罪悪感が湧くとかなんだよ。ちょっと万能すぎやしないか? 今までの付き合いからは予想できないほどの萌えの宝庫を見せつけられて俺は困惑していた。

 だが少しした後、何かに閃いたらしいボーデヴィッヒは―――

 

「では、「兄様(にいさま)」はどうでしょう? 少しフレンドリー感は否めませんが、「様」を付けることによって補えると思いますし、何より一つ上ですから敬称としては間違っていないはずです」

「…………えーと」

 

 あっさり俺が一つ上であることをバラされて困惑してしまう。そして自信満々だったボーデヴィッヒ自身も周りの奴らによって自分の発言がどれだけ大変なことをしてしまったのか理解したようだ。

 

「一つ上ってどういうこと? 桂木ってもしかして今年17歳なの?」

「え? じゃあ留年しているってこと……?」

「顔が隠れているからわからなかったわ」

 

 最後の奴、たぶん顔は関係ない。顔からわかることは10代後半ってぐらいだろう。当初は言うのが面倒だし知っているものだと思っていたが、よく考えればこいつらはどういうことか織斑先生と織斑が姉弟ということを知らなかったらしいからな、ニュースを見ていないのだろう。

 そんなことを考えていると、前にいる男がとんでもない発言をした。

 

「え? じゃあ悠夜って…馬鹿なのか?」

 

 ……………ほう。

 誰が予想しただろうか。おそらくIS学園どころか地球代表の馬鹿としても選出されてもおかしくはない馬鹿にまさか「馬鹿」呼ばわりされりとは。

 だがそれが火付けとなったのか、一部を除いてクラス中が笑い始めた。

 

「何それ? じゃあアイツ、留年して一年にいるの? ダッサ」

「ファッションすらもダサい癖して頭も悪いなんて、救いようがなさすぎるわね」

「よくそんなんで生きようと思えるわね。私だったら恥ずかしくてすぐに世界のための犠牲になるわよ」

 

 何とも言えないとはまさにこのことなのだろう。特に本音の周辺にいる奴らは鈍すぎる。織斑に対してどうこう言っているのを聞いたことがあるが、かの有名な英雄「ヘラクレス」を具現化させるほどの殺気を放っている本音に気付かない自分たちの鈍さも治す必要もあるだろうに。

 そしてボーデヴィッヒは自分の発言がどんな状況を生み出すかを理解してくれたようだ。

 今にも泣きそうになっているボーデヴィッヒを見て我慢の限界だった俺は思わず笑ってしまった。

 

「……フフフ……ハハハハハッ!」

 

 ああ、ヤバい。やっぱりこの学園に来る連中はズレているが、それ以上に俺がズレているんだと改めて理解させられてしまった。

 

「ご主人様、この者たちを処分します。返り血を浴びる恐れがありますので教室から退避してください」

「そんなことをするなよ。せっかく俺の物になったってのに、そんなに可愛くて綺麗な手を汚すなんて以ての外だ。それに―――」

 

 俺はラウラを引き寄せ、抱え込むようにした。

 

「わざわざこんな雑魚如きに、君が出る必要なんてないさ。そんなことをするよりも、君にはしてもらうことがある」

 

 自分でもむず痒く感じる言葉を平然と吐けるのは、二次元に手を出したが故だろう。

 ちなみにボーデヴィッヒには―――いや、ラウラには俺が持つ知識を植え付けなければならない。それはここにいる奴らを駆逐するよりも重要である。

 何故かおっとりするラウラに対して自分の言葉とラウラの様子に引いていると、俺に雑魚呼ばわりされたからかクラスメイトの一人が俺に対して言った。

 

「贔屓で専用機をもらった男風情が、見下してんじゃないわよ!」

「そうよ! ただ機体に助けてもらっているだけの屑が!」

 

 最初に言った奴に同調してか、本音の周りでそんなことを言い始めるので内心ヒヤヒヤしている。

 

「ああ、その辺りの文句ならば学園の部隊員共に言ってくれ。そもそもあいつらがサボりさえしなければ俺に黒鋼が渡ることがなかったが。でもまぁ、その言葉は褒め言葉として受け取っておくとしよう。何故なら、そう見えるということは黒鋼は理想値を超えて見えるってことだしな」

「じゃあ私に黒鋼を貸しなさい」

 

 一人が俺に向かってそんなことを言うが、誰が貸してやるものか。

 

「悪いがお断りだね。黒鋼はISの範囲を超えて様々な知識を吸収した人間にしか扱えない機体、そして俺の誇りでもある。それをお前のようなガ○ダムの「ガ」の字を知っているだけで深くは知らない奴に貸したら最後、ボロボロになって挙句全敗する落ちだろう。さて―――」

 

 俺は改めて織斑を見る。おそらくこんな状況でこの男を見るのは最初で最後かもしれない。

 

「お前は俺に向かって馬鹿と言ったな?」

「あ、ああ……そうだけど……」

「認めよう。確かに俺は馬鹿だ。何せ俺は今まで自分が自分勝手な意見で巻き込まれているのにも関わらず、その暴君を自分のやり方で始末しなかったんだから」

 

 ここまで言っている今の俺はヤケクソの状態だ。だがこうなっているのはおそらくリゼットの影響だろう。積もり積もった何かが解放されている気分である。

 

「だがな、少なくともお前にだけは言われたくないな。受験日に迷っている最中にISを触れた馬鹿野郎には」

「え? 何でだよ? そりゃあ、確かにISには触れたけどさ、早々触れる機会なんてないんだぜ? だったら触れておくべきだろ?」

「「遅れる」という進学に悪影響を及ぼすことまですることかよ、それ」

 

 すると罰が悪そうに織斑は口を閉ざす。

 

「で、でも、悠夜は留年―――」

「それが、ISの知識が欠如しているための留年だって気づかないわけ? 少なくとも、ISの知識なんて必要最低限知っていれば問題ないだろ? ましてや、今まで男が動かせるなんて知らなかったし、なによりも男にしてみれば無用な長物。お前らがアニメや漫画の知識に乏しいのと一緒だよ。興味がないから知らない。それにISが出てきて男がどれほどの待遇を受けたか知らないわけがないだろう? 現に俺が知っている奴でも「IS? ああ、あのゴミか」って答える奴は結構いたし」

 

 まぁ、いずれは俺もIS学園には来ていただろうな。何せ轡木ラボの最終目標は「男女共に歩める新機体の開発」だからな。もちろんIS技術を盛り込んだロボットを作るからIS知識は必要だろうが、一般高校に通い、一般大学に通うであろう俺にとってそんなものとは縁がなかった。

 

「で、ほかに質問ある? ……ああ、先に言っておくけど俺がお前のことを本気で相手にしないのは、高が突っ込むしか能がない馬鹿相手に本気で戦ったら黒鋼が可哀想だから。でも前回の反省を踏まえて今度からは本気を出すことにするよ。もちろん、相手が泣いて降参しようがしまいが俺は構わず攻撃するけど」

 

 慈悲はない。してほしくないなら最初から見下さなければいいだけの話だ。それにそろそろ力の差をはっきりさせておかないと、俺はともかく黒鋼が可哀想だから。元々は俺が大会用に製作したものだから、当然だが思い入れは強い。

 

「それに、大体ファッションがどうこういうけど、お前ら女の評価なんざとっくの昔に地下に突っ込んでんだ。相手の外見しか興味がないかどうかのテストも兼ねていたが、見事に最低ランクだということはよくわかった。もっと言えばハニトラ対策。こんな格好をしていたらする気なんざなくなるだろ」

 

 この格好は2、3年前からしているけどね。

 適当に言い訳をしていると全員が呆然とする。唯一違った態度を取っているのは本音、そしてラウラだけだ。本音は笑っており、ラウラは尊敬の眼差しを向けていた。……向けるところではないんだがな。

 

「まさか、俺が何も考えていない奴だと思ってた? だとしたら―――お前ら本当に間抜けだな。流石は優遇されて温くなっているだけのことはあるな。ラウラが前に言っていた通り、所詮は「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションかなにかと勘違いしている」だけの奴らだ。ああ、ラウラを責めるっていうなら止めておけ。なんだったら凰を見習ってISを展開後この教室を吹き飛ばしてやろう。お前ら諸共な」

 

 そう言って俺は鞄を持って教室を去る。どうせこれじゃあ勉強にならないだろうし、俺はこいつらと違ってどこでも勉強できるからな。

 するとラウラも鞄を持って付いて来た。戻そうと思ったが、袋叩きにしようとするあいつ等を逆に殺しかねないので何も言わないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悠夜とラウラが去った後、その場に残された一年一組の生徒たちと鈴音、真耶たちは沈黙していた。鈴音もいつの間にかISを解除している。

 そんな中、本音はその沈黙を破るように言った。

 

「やっぱりゆうやんって優しいんだよね~。なんだかんだでクラス対抗戦の時にわざと怒らせてまで全員を逃がしているし~、結局一人で倒しちゃってるしね~。それも、おりむーやりんりん、おるおるたち専用機持ちが三人がかりで倒したのを、たった一人で」

「だが、あの男は根性が曲がっているだろう!」

 

 箒はそう言うと、周りにいた何人かが同調する。

 

「でもそれも、私たち女のせいだと思うけど~? それにさ~、そんなに文句を言うんだったらゆうやんに直接言ったらどうなの~? それとも今度も決闘でもしてゆうやんをひれ伏させる~? ねぇ、おるおる~?」

「お、「おるおる」ってもしかしてわたくしですか?」

「うん」

 

 満面な笑みを作って頷く本音。

 するとおるおることセシリアは抗議する。

 

「あだ名をつけるにしても、もっとマシなものはないですの!?」

「ん~、今度考えとく~」

 

 そう言った本音は鞄を持って席を立つ。

 すると今度は何故か真耶は本音を止めた。

 

「あの、一応まだHR中なんですが……」

「え~、何で~」

「な、何でって……」

 

 まさか聞かれると思わなかった真耶はあわてて口ごもり、その隙を突いて本音は容赦なく言った。

 

「だって~、出て行く必要がないゆうやんだってHRを壊したことを反省して出て行ったのに~、そんなゆうやんをフォローできる人がしないと~、ゆうやんはグレちゃうし~。グレちゃったらゆうやん、本気でおりむーやおるおるの専用機を潰しかねないよ? そもそもゆうやんがあんな風になったりクラス対抗戦でリンリンに付いたのって、織斑先生やみんながゆうやんを放置して勝手に話を進めるどころか、誰もフォローしなかったのが原因だしね~」

 

 そう言い残した本音は鈴音を引っ張って外に出て行き、まだ来ない千冬にバレないように鈴音を逃がした後、本音は悠夜を探し始めた。




ということで、今回で第二章終了です。
次回からは第三章。ようやく福音戦です。

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