IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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#23 その現状を、ぶち壊すため

 悠夜が奥へ進んだため、そこに残された形となった十蔵に本音は話かけた。

 

「…まだ、心を開かないんですか?」

「お恥ずかしながら」

 

 再びため息を漏らす十蔵。本音は再び張られたレーザーの先を見ていく。

 その先に何がいるかを知っている本音は、十蔵がその主に頼んだ理由も理解できたが、それ以上に悠夜の身が心配をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 段々と暗くなっていく廊下に徐々に恐怖を感じ始めている俺は、少しばかり疑問になっていた。

 

(どうしてこんなところに……?)

 

 確かに轡木さんはIS学園理事長だし、情報収集するならばこれ以上の良物件なんてない。

 だが、普通ならこんなところに研究所を建てることなんてできないはずだ。

 

(―――!?)

 

 まただ。また、さっきの違和感を感じ始めた。

 耳にツンと来る違和感を感じながら進んでいると、非常灯しか光っていないぐらい暗い廊下の付きあたりのドアを発見した。

 四回ノックすると、ガチャリと音がしたかと思えば再びさっきのディスプレイが現れ、【ハイレ】と出たのでドアを開ける。

 中には申し訳程度のベッドと机。そして周囲に展開されるディスプレイが漂っていて、その中心に誰かがいた。

 

「……あなたのお目当てはそっちにあるわ」

 

 ディスプレイが現れ、映し出された矢印が示した方向を見ると、ベッドの近くに鋼鉄のドアがあった。

 するとそこから大きな何かが移動してきた。

 

「って、これ―――」

「………」

 

 真ん中にいた人が何かを取り、こっちに向けて何かを噴射させた。

 するとその物体は抗うかのような動きを見せ、こっちに近づいてきた。思わず下がり、なにかに近づく。

 ぶつかったと思ったらそれはごみの山であり、こっちに同じく物体が現れた。

 

(………ああ、なるほどね)

 

 俺は立ち上がり、ディスプレイを退けてその人間が持つ門を取り上げ、代わりに近くにあった何かを手に取ってそれで潰す。

 

「ちょっと! 中身が出た―――」

「ねぇ」

 

 思考が一瞬でクリアになり、そいつがかぶっている布団を取り上げる。

 

「何するの!?」

「これから掃除だ。ほら、さっさとそのパソコンを片づけて外に出せ。ああ、赤外線レーザーは消しておけよ」

「命令するな!!」

 

 反射的に俺はその人間の頭を掴み、力を入れた。

 

「まさかと思うけど、人権があると思ってる?」

「………あ、あの」

 

 はっきりと立場をわからせておく。これは主導権を握る上で重要である。

 

「ほら、さっさとしろ。で、風呂はどこだ」

「…そ…そっち」

 

 指された方に向かって持っていた物体を投げ、ぶつけて安全を確認する。よし、何もない……と思って進んだら、ごみがいたので踏みつぶした。

 感触が気持ち悪かったが、考えるのを止めてドアを開ける。案の定、そこはゴミの巣窟となっていた。

 

(……しかし、何だったんだ?)

 

 まともな水が出てくれたことを喜びながら、少し…いや、かなり奇妙な女のことを考えていた。

 

(妙に責任を感じている轡木さんが変な人を……ましてや女尊男卑思考の奴を俺と引き合わせるか?)

 

 「だとすれば何かがある」。そう思っていると、後ろからその女の子が俺に向けて何かを振り下ろしていた。

 咄嗟にそれを避けると、さっき俺が害虫を殺した奴で俺に攻撃しようとしたらしく、鏡にぶつかった木製の新聞紙スタンド。

 その女の瞳は血走っているようで、殺気が俺に向かって飛んでくる。

 

「………出ていけ」

「……今、なんて―――」

 

 

「———ここから、出ていけぇええええッ!!」

 

 

 飛んできたスタンドを回避した。するとその女は接近し、俺の首を両手で握り、絞殺そうとした。

 

(一体、どうなってんだよ……)

 

 訳が分からなくなってきた。一体俺が何をしたというのだろうか?

 ともかくこの状況をどうにかしないといけない。

 

(両腕を…なんとかしないと……)

 

 手首をつかみ、力を入れていくと絞めてくる手を緩ませる。そのことに驚いたその女はすぐにそこから離れる。

 

(………それにしても、臭かったな)

 

 どれだけ風呂に入っていないのだろうか? 今は部屋よりも風呂の方を優先させた方がいいだろう。

 

(しかし………)

 

 まさしく巣窟だ。さっきから害虫がわんさかいるし、布団は埃りだらけだし、なによりも女の子は清潔目の方がいいだろ。

 ため息を吐いた俺は、まずは風呂に取り掛かる。……まぁ、以外にも使えそうなそろっているわけだ。

 

(問題は、俺の服装だな)

 

 幸い、明日は土曜日で三時間だけだし、もう皆勤賞とか狙えないだろうから、毎日行く意味なんてないしな。

 ドアを開け、窓も開け、俺が向かうはずだった鋼鉄のドアも開け、カーテンを取って申しわけ程度に置いている籠に入れる。

 

「………あの」

「そういえばあの洗濯機って使える?」

 

 すると女は首を何度も縦に振ったが、一応洗浄しておくか。

 そうなるとカーテンは後からの方がいいな。とりあえず。

 

(寝具と、着替えだな)

 

 専用機? そんなことよりお掃除だ。

 一度帰ることを彼女に伝え、掃除手順を指示してからゴミを持って来た道を戻る。

 

「ああ、無事でしたか……何ですか、それは?」

 

 待ってくれていたのか、十蔵さんは俺が持っていたゴミを見て聞いてきた。

 

「向こうの部屋にあったゴミの一部です。これから一度戻ってから再び来ようかと」

「……はぁ、そうです………はい?」

 

 俺の言葉に違和感を覚えたのだろう。本気で驚く十蔵さん。

 

「いえ。ちょっと問題があったので、その解決を図っているだけです」

「………はぁ」

「なので、明日……遅くて月曜まで休ませてもらえないかと」

「……はい?」

「あ、勉強に関しては問題なく。テストとかには十分間に合うレベルですし、それにもう皆勤賞は狙えませんから。あ、あと、ゴミ捨て場ってどこですか?」

 

 本来なら、掃除した後にゴミ捨てに行くのだが、この学校は清掃時間というものが存在しない。どうやら過去にひと悶着あったらしいのだが、その時に勉強していたこともその部分しか聞いていなかった。

 

「そ、それは私が捨てておきましょう。それと今度から個人的に捨てたいものは用具室の隣にありますのでそこにでも捨てておいてください」

「わかりました」

 

 エロ本とかを指しているなら誤解をしているみたいだが、ここはありがたく返事をしておく。

 

「ではすみません。一度戻ります」

「わかり……いえ、ちょっと待ってください。専用機はもう既に受領してますよね?」

「まだです。それに、そんなことよりも優先するべきことがありますので」

 

 勝手なのは重々承知なんだが、とにかくあの女のため……ってのは少し癪だが、一度帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はぁ」

 

 その頃、一年生用の寮の一室で一人の生徒が呆然としていた。

 

「……あの、リン?」

「………何?」

 

 布団の上で枕の胸当てとして使い、ゲームをする鈴音に、同居人のティナ・ハミルトンは思わず声をかけた。

 

「本当に大丈夫? 昨日ぐらいから全然元気ないんだけど……っていうか、何でさっきから女の子が出てくるゲームなんてやってるのよ」

 

 すると鈴音は画面から視線を外し、顔を上げた。

 

「ギャルゲー」

「は? ギャルゲー? ……もしかして、ずっとそれ?」

「当たり前でしょ。それに悠夜の言う通り、これも男を知る機会の一つだわ」

 

 鈴音は再び画面に視線を戻し、話を進める。それを見たティナはため息を吐いた。

 

「だったら別にゲームじゃなくて、本人に聞いてくればいいじゃない。織斑君と違うタイプとしても、同じ男なんだしそれなりに知れるじゃない」

「………この前、二度と来るなって言われた」

 

 途端に室温が下がったような錯覚をティナは感じた。

 そしてカーディガンを羽織って外に出た。

 

「ちょっと行ってくる」

「え? どこに―――」

 

 外に出たティナはそのまま悠夜の部屋に向かった。

 

(この際、はっきりさせるべきよ)

 

 本人たちにそのつもりはないようだが、傍から見れば――少なくともティナにしてみれば――二人の仲の良さは一夏たちよりも上だと認識していた。

 特に二人でいるときは仲の良い兄妹に近いと言っても過言ではないほどであり、なんだかんだで彼女自身も羨ましく思っていた。

 

(それに別れを告げるって、一体どういうことよ)

 

 周りを引かせながら目的の部屋に着いた彼女は躊躇いもなくインターホンを押す。

 

『はーい』

(え? 女? しかもこの声って……)

 

 ドアが開くと、中から楯無が現れたことでティナの思考が停止した。

 

「あれ? 確かあなたは二組の……。どうしたの?」

「あの、どうしてあなたが………。ここって桂木の部屋ですよね?」

 

 すると楯無はあまり部屋の中に見せないようにして、ごまかすということを悟られないように言った。

 

「ええ。私はここで桂木君の勉強を見ているの。ほら、彼って仕方がないこととはいえ何度も休んでいるでしょ?」

 

 「まぁ、さっき連絡があったから今日はもう帰るけどね」と続ける楯無を気にせず、ティナの思考は暴走していた。

 

(待って。それじゃあ生徒会長とは何度も会ってるの? もしかして、ちょうどいいのがいたからもう必要ないってこと? だから鈴音はいらないってこと? 良い度胸じゃな……もしかして、今会長をそういう目で見て……)

「あの、どうしたの?」

 

 様子がおかしいと思った楯無はティナに声をかけると、垂れていた頭を勢いよく上げた。

 

「安心してください! 私が絶対、桂木の悪行を止めて見せます!!」

「え? 悪行って―――」

「では失礼します」

「あ、ちょっと………」

 

 ティナは急いで移動する。悠夜を探しに行ったのだとしたら機密性が高いあそこなら問題ないとは思っているが、念のために警戒するよう、彼女の姿が見えなくなってから悠夜に連絡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『———ということだから、そこから出る時はくれぐれも気を付けて』

「……まぁ、ここって結構重要度高いしな。そうするさ」

 

 そう言って電話を切り、モノレールが止まるまで待つ。そして止まったので降り、そのまま中に入っていく。

 さっきの所まで行くと、轡木さんが姿を現した。

 

「また行くつもりですか?」

「ええ。あの巣窟に行くこと嫌ですが、あの状態で放置するのも嫌なので」

 

 そう答えると轡木さんが俺の前に立ち、行くのを防ごうとする。そうわかるような殺気が襲い掛かってきた。

 

(どうやら、この先に行くのは難しそうだな)

 

 だとしても、この先には専用機があるし、何よりもあの巣窟は片付けていないんだ。知った以上、見過ごそうと思えない。

 

「そうですか。……ではISだけを手に入れてください。それ以上は、彼女に関わるな」

 

 思わず意識が飛びそうになった。それほどまでに濃密で、恐怖すらも覚える。少なくともこの学校にいる女たちになんて負けるわけがないと思えるほどに。

 

「お断りします………って言ったら?」

「………仕方ありませんね」

 

 瞬間、俺の視界が紅く染まった。

 すぐに腕を動かして視界を確保しようとしたが、それよりも早く何かが腹部を突き刺さる感触が俺を襲う。

 

「———弱いんですよ、あなたは」

 

 声をかけられ、俺はようやく自分に何も起こっていないことを理解した。さっき視界を汚したものはもちろんのこと、腹部には何も刺さっていない。

 

「そんなあなたでは、彼女を救うことはできません」

「………」

 

 そう言われて俺は言葉を飲み込む。この先を言えば、俺はおそらく織斑と同じになる。なるけど、

 

(……やっぱり無理だわ)

 

 あんな恐怖した瞳を持つ女の子を放置するってのは、俺にはできない。臭いけどそんなものはどうにでもできる。

 

「………意外でした。まさか轡木さんでも気付いていないことがあるんですね」

「何が言いたい?」

 

 その言い方がおそらく彼の素なんだろう。

 

「気付いていないようなので失礼を承知で言わせてもらいますが、彼女を救えるのはあなたではない。何も知らない俺です。何も知らないからこそ、入り込めないこともある」

「………フッ」

 

 何故か笑われてしまった。た、確かに中二っぽかったし、仕方ないと言えば仕方ないだろうけど。

 

「さすがはあの二人の血を受け継いだ者だ。わかりました。そこまで言うのならばあなたにかけます。だから―――

 

 

 

 

 

 

 ———孫を頼みます」

 

 そう言って俺の肩に手を置いてその場を去っていく轡木さん。

 

(……そういうことだったのか)

 

 だとしたら納得いく。おそらく轡木さんは自分の孫を信頼しているから俺の専用機を作ったんだろう。そして孫の方も、本当は男に対して極度なイメージを持っていないはずだ。それで攻撃したということは、俺が彼女の世界を壊したということだ。

 

(だとしても、あの現状のままを良いとは思わない)

 

 だから俺はそのまま先に、お孫さんの部屋と再び向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということで、戻ってきた」

「……………」

 

 部屋の隅っこでバリケードを張りながら俺を睨んでくる轡木さん。孫だということは、

 

「IS学園の保険医で「轡木」って女医を知ってるんだけど、その娘さん……で合ってる?」

 

 すると彼女は持っていたらしいキーボードに何かを打ち込む。すると目の前にさっきもあった空中投影ディスプレイが展開され、そこに文字が現れた。

 

【だったら何?】

「一応、知り合いなんだ。だから名前を教えてくれると嬉しいんだけど」

【………必要ない】

「とりあえず風呂場を洗いたいんだけど、その前に洗濯機って洗浄してる?」

【あれは私が改造したものだから、常時洗浄機能付き】

「ドラムの外を洗う必要が―――」

【必・要・ない! ちゃんと自動吸水機能も付いている!】

 

 どうやら大丈夫みたいだな。

 ならばと思った俺は近くの引き出しを開けると、妨害するようにディスプレイが現れた。

 

【変態! 触るな!】

「ああ、もしかしてここって下着? ちゃんと洗ってる?」

【洗ってる! 余計なお世話!】

「OK。じゃあ、まずは散乱しているタオルから洗うことにするよ」

 

 そう言って俺はタオル類…そしてパジャマを入れて問答無用で洗濯機を使った。家にあったのと似たようなものだったで操作は簡単だ。

 そして次に風呂場に入った俺は、まず湯口の蓋を取り、そこに薬を滑らせるように奥に入れる。そしてシャワーのノズルを外して躊躇いなく洗浄した。先端の部分に薬がある。

 

「この薬って?」

【汚水を清水に変える薬。人体に影響がないのは確認済み】

「なるほどね。まぁ、汚いってのは理解できるよ」

 

 そう言いながら湯口からシャワーの水を入れる。ある程度流し終えたら蓋を桶の中に入れ、持って来た浴槽洗剤を使って洗浄。そして浴槽と床、壁も磨いて徹底して綺麗にした。

 そこで俺は洗剤などがないことに気付く。

 

「ボディソープとかはないのか?」

【何それ?】

「………」

 

 男女に向けて最近発売されていた香り良くなる肌艶ソープを持ってきて正解だったようだ。

 それを出して、女性用向けのシャンプーとコンディショナーも準備し、風呂用の蓋も綺麗にして湯を入れる。

 新しく出した足用のバスマットをセットし、リビングに戻ってたまっているゴミを外に出す。

 

(台車を借りれば良かったな)

 

 とても女が住む部屋とは思えないゴミを見ながらそう思いつつも、俺は作業を続ける。

 

(いや、その前にだ)

 

 未だに震える女の子を無理やり持ち上げると、激しく抵抗すると共に何度もディスプレイを通らせる。その攻撃を耐えつつ、見ないように服を脱がせて持ってきていた洗濯籠に入れる。

 セクハラで訴えられるレベルだろうが、こっちとしては悪臭をまき散らされているからおあいこということで。

 

「ちゃんとシャワーで体を流してから、ボディーソープをそこにかけているタオルに付けて体を洗えよ。髪は俺が後で洗うから」

 

 そう言って俺はまずたまっているゴミを外に出す。途中で研究員にばったり会ったが、親切にゴミ捨て場の場所を教えてくれた。

 そこに行くと台車があったので無断で拝借することにして、とりあえずたまっているゴミを捨てる。

 そして手を石鹸で洗ってから風呂場のドアをノックしてから開けると、既に沸き終っていたのか風呂の中に入って自分の体を抱くようにして隠していた。

 あまり体の方を見ないようにして、「触るよ」と言ってから髪に触れ、軽く櫛ですいてから丁寧にシャンプーを付けた。

 

「……目的は何?」

 

 刺々しい声が聞こえる。その刺々しい中にはわずかながら震えを感じる。

 

「ISはもうできている。だから、持って行っていいから、もう関わらないで」

「いや、ISは正直いらないんだが」

 

 そう言うとこっちを見た。その時シャンプーがこっちに飛んできた。

 

「冗談は私に通じない」

「いや、冗談抜きでそこまでいらないっていうか、そもそも俺は技術者志望なんだが……」

 

 確かに最初は専用機だけをもらいに来たが、あんな部屋を放置するほど俺は大人じゃない。というか、

 

「やっぱりというか、可愛いな」

「……そっちが目的なんだ」

 

 すると彼女はお湯を俺の顔にかけた。

 

「出てって」

「はい?」

「出てけ!!」

 

 再び、そして何度も顔にかけられはじめ、次第にそれもコントロールも悪くなり、最後には俺のジャージは全身ずぶぬれになった。

 

「何で帰らないのよ……帰ってよ!!」

「いや、まだ髪の毛洗い終わってない」

 

 彼女はすぐに桶を取り、お湯を救って俺にぶっかけた。

 

「この変態! ロリコン! 性犯罪者!」

「性犯罪者なら、とっくに生徒数人孕ませてるけどな。むしろ俺ぐらいだろう。きちんと自分の立場を理解して、自重しているのは」

 

 胸を張るとさらにお湯をぶっかけられるだけでなく、すぐさま桶自体が飛んできたので思わず防いだ。

 

「ちょっと、今のはマズイから!」

「うるさい! 死ね! この変態!」

 

 桶をキャッチした彼女は何度も桶で攻撃してくるのでそれを防ぎながら愚痴を叫び始めた。

 

「男なんてみんなそう! 女を自分たちの奴隷としか思っていない! 私たちだって……私たちだって!!」

「ISが力だって言うなら、それは「自分から男に敗北している」としか思えないけどな」

 

 俺はそう言って桶を右手で止める。

 

「お前たち女は何もわかっていない。男を活かすのは女、女を生かすのは男だ。それすらも理解できないくせに優良種なんてお笑い草だな。第一、アンタの祖父なんて絶対に化け物レベルだろ」

 

 正直なところ、あの人に喧嘩を売る人を見てみたい。さっきの立会いで思ってしまった。

 

「それに少なくとも、俺は君をどうこうする予定はない。ほら、さっさと座れ」

 

 肩に手を置いて座らせる。

 すると意外なことにおとなしく座った。

 

「じゃあ、ご褒美おもしろいことを話してやるよ」

 

 彼女を頭を撫でた俺はそう言って俺の黒歴史の紐を解いた。


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