IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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明けましておめでとうございます。今年も稚拙で不定期で独自理論を並べつつ、中二全開の話を展開して行きますが、よろしくお願いします。
ということで、フルバーストしてみました。


今回、後半は推奨BGMとして「亡国覚醒カタルシス」などを聞いた方がテンションが上がるかと思います。

※一応、利用規約は読みましたが、特に問題なさそうなので曲名を載せました。もしマズかったのですから知らせてくださると助かります。


#151 新生徒会長、奮起する

 生徒会長になってまずすることは、現存の学園部隊の解体だ。

 今の学園部隊の機能率を全員を集めて説明する。部隊員は教師も含まれるので、ISを操縦して1年未満の俺に色々言われるのは不服だったようだ。ブーイングをはじめとして色々と俺に対する文句を言ってくるのは当然の反応かもしれない。

 なので俺は、教員10人と俺1人のISバトルを水曜日の夜にIS学園近くの海上で演習という名のリンチを提案した。ちなみに水曜日まで2日あるが、それは整備員との日程調整のためである。いくら何でも仕事を勝手に決めてってのは色々と問題だろう。

 

「じゃあ、勝負は2日後。首を洗って待ってなさい!」

「あ、当日は俺も本気を出しますんで」

「構わないわよ。あの奇妙な技を使わなければね」

 

 ………とだけ言って去っていったが、あの本気は何もそっちの技を使うわけではない。久々にあの3機を解禁しにいくわけだ。

 朱音には前もって射出するように話はしてある。まぁ、無理なら無理で俺は一向に構わないが。

 

「前々から別個にはあるとは思っていたが、部隊として動かせるのは30機か」

「実際は25機として見ておいた方が良いわ。土曜日や日曜日は多く貸し出しているから教員用の方からも5機貸し出しているの」

「1組4機で6隊を作るとして、適宜最適な場所に配置だな。アリーナなどに逃げられた場合は2隊で包囲、撃破が理想か。いや、敢えて5隊で残り1隊は狙撃のみ。数名は近接戦闘もできる奴を配置するってのもありだな。いざとなれば、その時代の生徒会長が救援に行くまでの時間稼ぎにもなるし」

 

 生徒会室で俺と奈々が話しているのを何故か簪と本音は面白くなさそうだ。

 試しに奈々の頬をつつくと、二人は揃って泣きそうな顔をする。

 

「何かしら?」

「ん? 気にするな」

 

 ただ二人で遊んでいるだけだから。

 ちなみにこういった分野はラウラが出張るだろうが、そのラウラは鍛えすぎて今は倒れている。本調子まで休ませるつもりだ。……今頃はミアのマッサージを受けているのだろう。あれは本当は気持ちがいい。

 

「そういえば、教員たちと戦う話はどうするの? 教員の戦闘能力は生徒とは違って高いわ。とても一筋縄では行かないと思うけど」

「連携訓練も積んでいるだろうしな。確かに普通なら一筋縄では行かないだろうさ。……メタルシリーズ以外はな」

「……もしかして、換装パッケージを使うつもり?」

 

 簪の言葉に俺は頷く。

 

「ありがたいことに向こうは俺の本気を所望しているからな。ここは出血大サービスで血祭りにあげるつもりだ」

「わー、ゆうやんがこれ以上ってないくらいに黒い顔をしているよ~」

「これは仕方がないことだ。そう、仕方がないんだ」

 

 なにせ向こうは提案を呑んだんだ。こっちの意図に気付かずにな。

 

「「黒鋼」に俺の身体能力をセーブする機能は付いたし、これで思いっきり戦える」

 

 精々、奴らには俺の引き立て役になってもらうとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2日が経った放課後。IS学園の海域の一部に轡木ラボ特製の特殊なバリアフィールドが張られる。その大きさはアリーナ2戸分に相応するらしい。攻めてきた外部の敵を封じるための物らしいが、今回以降は福音の件もあって海上演習にも使うことがあるだろう。

 IS学園の港から少し沖に向かったところに観客席が設けられており、そこでは通常のアリーナと同じで俺や教員などの様子がモニターされるんだそうだ。

 実はこういうのは前々からあったらしいが、使う機会がなかったようで何故か技術者からは凄く感謝された。

 

「……で、黛は俺のことを何だと思っているんだ?」

「無謀者ってところかしら。まさか生徒たちの前で結婚宣言をするとは思わなかったわ。……てっきり妹ちゃんと付き合っているものと思っていたもの」

「……………」

 

 とてもキスまでしているとは言えないよな。

 

「まぁ、そのおかげで今まで熱烈なラブレターがたくさん送られて来たわけだが」

「そのラブレターはどうなったの?」

「俺のメイドが焼き芋を焼くのに使ってた」

「メイド? 桂木君にメイドっているの!?」

「今もそこにいるけど?」

 

 親指で後ろを指すと、黛が震えあがる。おそらく「一体どういう了見でゴシップ好きのエセライターがユウ様に近付いているのでしょうか? 殺しますよ?」と言った具合だろう。

 

「ミア、そろそろ出て来いよ。お前の席も用意しているから」

「ほ、ホントですか!?」

「……流石に家でお留守番ってのも気が引けたからな」

 

 彼女だって何も俺に迷惑をかけたいわけじゃない。いつも帰ってきたら風呂が沸いているのは当たり前でごはんをいつでも食べられるようになっている。おそらく彼女のような女はパッと出てくるとしたらリアさんぐらいしか出てこない。あの人も大概甲斐甲斐しいからな。俺が知る限り、あの人は朝早く起きて兄貴の分の弁当を作っていた。

 

「ありがとうございます。ユウ様、もし必要ならば私も出ますが」

「いやいや、出なくていい。高が10人程度、俺一人で十分だ」

「それはどうかな?」

 

 黛が何か言いたそうな反応をするが、俺は奈々たちにも言われたことを言った。

 

「「相手の教員は全員が山田先生に匹敵する実力者」、だろう? もう聞き飽きたよ、その言葉は。……それでも相手は弱いと思っているけどな。だって所詮は候補生止まりだろ?」

「うわぁ、強く出るねぇ。あ、ちなみにこれは観客席に放送されているから」

「あ、やっぱり。アンタが来た時点でなんとなく察してた」

 

 談笑していると、仮設ピットに備え付けられた通信端末が音を発する。

 

「何ですか?」

『こっちの準備は良いわ。さっさと出てきなさい』

「へいへい。まぁ、精々頑張ってくれや」

 

 適当に答えた俺は二人から少し離れて「黒鋼」を展開した。

 

「二人は早く観客席に行けよ。桂木悠夜、「黒鋼」、行くぜ!」

 

 カタパルトに接続していつもの口上を言ってから発進する。

 夜の海に自動操縦のサーチライトが照らし出され、観客席にもよりわかりやすく状況を伝えるようになっている。……おそらく、サーチライトの上についているのがカメラだろう。

 

「来たわね、異端者」

「あなたの勝手で私たちを部隊から外すなんて生意気なことを」

「だったらアンタらが戦果を挙げれば良かっただけの話だ。文句は己の無能さを嘆くのみにしてくれ。ゴミ教師」

 

 瞬間、試合開始の合図が鳴り響いて試合が行われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――突然の結婚宣言

 

 運動会の閉会式に悠夜が言い放った言葉は教員・生徒問わずに反響を呼んだ。みんなの憧れである更識楯無を妻とするという宣言は全員の心に深く突き刺さったのである。それに加え、今度は教員を相手に悠夜が喧嘩を売った結果になったため、生徒たちは奮起した。あの憎き悪魔を潰さんがためと様々な生徒が動いたのだ。ある者はより相手にダメージを与える物を、またある者はあらゆる攻撃を防ぐ物を次々と開発していった。

 そのため、整備・開発科所属や志望しようとしているものはギリギリまで製作とテストを行っていたので今にも倒れそうである。

 そんな中、悠夜とは違ってモテているが自覚がない織斑一夏は悶々としていた。

 

 ―――どうして俺がいずれ妻にする女を攻撃しなければならない

 

 一夏の脳内では、あの時の悠夜の言葉が何度も再生される。普段の彼ならば流せたはずの言葉なのだが、自分とはタイプが違う相手で衝突することはあったが、実は少し一目置いていたのだ。しかし、一夏は自覚はないが恋愛に関しては鈍感で、それは自分だけではなく他人に対してでもある。それは彼自身がISという未知の分野を(自業自得とはいえ)事前学習なしで取り組んでいたのも原因だろう。さらに言えば、彼や悠夜を中心に様々なことが起こっていた……いや、起こりすぎていたと言っていい。そんな環境にいたからこそ、恋愛に対しての鈍感さにより磨きがかかったかもしれない。

 

「……か…おい、一夏!」

「え? な、何だ?」

 

 箒に呼ばれ、一夏は我に返って反応する。

 

「一体どうしたというのだ? さっきから呼んでも返事をしなかったが……」

「もしかして気分が優れないのですか? それならば部屋に戻りませんこと?」

「いや、大丈夫だ。心配かけたようで悪いな」

 

 一夏はそう言うと始まっている試合に集中する。

 悠夜が「ラファール・リヴァイヴ」7機、「打鉄」3機で構成された教員部隊を相手に立ち回っている姿に、一夏は劣等感を覚えた。

 

(……やっぱり、すげぇよ悠夜は)

 

 特殊近接ブレード《蒼竜》で《葵》と切り結ぶ。それだけではなく、左腕は《フレアマッハ》によるビーム攻撃を行っていた。

 だが、悠夜が相手にしているのはたった3機の「打鉄」と援護していると思われる「ラファール・リヴァイヴ」1機だけである。

 

(……何を企んでいるんだろうな)

 

 少しばかり楽しんでいると、背後から何かが接近してくる。それを感じた悠夜は「打鉄」を蹴り飛ばして《フレアマッハ》を持っていた手に盾を入れ替えるように展開した。

 

 ―――ガッ!!

 

 間一髪。だが、それだけでは終わらない。

 「打鉄」3機すべてが瞬時加速を行い、その場から離脱した。

 

「今よ! 全員撃ちなさい!!」

 

 その声に悠夜は反応する。振り向いた瞬間、悠夜に向かって弾丸の雨が降り注いだ。そして、おまけにもう一つあるものを放られる。

 

「―――あれ?」

 

 信じられないものを見た悠夜は反応が遅れる。動いた瞬間、悠夜の前でかつて彼が喜々として使用した例の爆弾が爆発した。

 

 

 

 その光景を見た楯無はすぐに立ち上がった。

 

「ちょっと待って。アレってユウ君が学年別トーナメントで使っていた爆弾よね?」

「……ええ。出力も同等ですわ。それがどうしてこんなところで……」

 

 虚がデータを彼女専用の端末で照合させて答える。

 楯無がすぐに試合を止めさせようとした瞬間、簪が服を掴んで止める。

 

「お姉ちゃん。止めなくていい」

「でも、あれは至近距離で爆発させたらISを行動不能にさせるものよ。「黒鋼」ならひとたまりもないわ」

「………お姉ちゃん、忘れてる?」

 

 首を傾げる簪を見て楯無は嫌な予感を感じた。

 

「……何を?」

「にぃには王子で中二病だよ」

「簪ちゃん。私にもわかるように説明してくれないかしら?」

 

 今はふざけている場合ではないと言いたくなった楯無だが、簪の言葉を代弁するように近くにいたミアが言った。

 

「例えどんな状況でも、ユウ様ならば打開できる。彼女はそう言いたいのよ」

「……ミア・ガンヘルド」

「―――え? どうしてアンタがここに!?」

 

 近くにいた一夏が立ち上がる。そして箒やシャルロットも信じられないと言わんばかりにミアを見た。

 だがミアは最初から眼中にないのか、無視して今も爆発によって見えないがいるであろう悠夜の場所を見た。

 

「しかし、随分とここにいる教員は過激なことをするのね。でも、滑稽だわ」

「……答えて。君はどうしてここにいるのかな?」

「そうピリピリしない方がいいわ、シャルロット・ジアン。あなたはここを戦場にして、ダメージを負ったと思って歓喜している間抜けな生徒たちを殺したいのかしら? それに、私はずっとIS学園にいたわよ。たまに外を走っているし」

「………なら、何故私たちがそれを知らないのだ。貴様ほどの危険人物なら知らされてもおかしくはないだろう」

「知っていてもあなたたちでは対処のしようがないからでしょうね。それに私はユウ様以外の男に興味ないの。ましてや病気と思ってもおかしくはないほどの男に恋したところで無駄に時間を過ごすだけでしょう?」

 

 心当たりがいるのか、箒たちは言葉を詰まらせる。

 すると、ほとんど同じタイミングで煙の中から悠夜が落下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『仮にも代表候補生の集団ってことね。意外とやるじゃない』

 

 クロが冷静に言う。俺もそれに同調した。

 今、俺の海面に膝をついている。「黒鋼」は爆発の影響で煙が上がっている。

 

「どうかしら? 舐めていた相手にここまでされるというのは」

 

 彼女らの戦法は至ってシンプルだった。彼女らはまず円形になって俺を「籠の鳥」の状態にしてリンチにする。ホバリングも普通にできるから、上下運動もそこまで苦ではないのだろう。

 

「少し、あなたたちを過小評価していたよ。………まぁ、それでも俺には勝てないけどな」

「強がりもそこまで行けばご立派ね」

「クフフフフ。では見せてもらいましょうか。あなたたちが無様に這いつくばる姿を」

 

 《バイル・ゲヴェール》を展開し、俺は1機に狙いを絞って突っ込む。

 

「まるで猪武者―――キャッ!」

「年齢を考えて叫べよ。そんな叫び方が許されるのは20歳までだ!」

 

 手元の武器が爆発したから仕方ないけど。

 

「忘れたようだから言っておくけどな、「黒鋼」は完成した第三世代型で、本当の意味での私の専用機だぜ? 換装パッケージがなくても―――高々訓練機の集団如きに私が負けるわけないだろ―――が!」

 

 ライフルの先端部分は本来ならば銃剣―――つまりナイフに近い刀剣を装備されている。が、《バイル・ゲヴェール》の場合は「斧」が付いている。俺はそれを思いっきりぶつけて相手のシールドエネルギーを一気に削った。

 

「やったわね、この!」

「…《サーヴァント》」

 

 スラスターを破壊して機動力を削ぎ、一人の喉に斧をぶつける。ぶつけられた相手はカエルが潰れた声を出すが、構わずぶん回した。シールドエネルギーが急激に減っていき、「打鉄」が1台戦闘不能になる。

 

「やったわね! 今よ、ビームを放ちなさい!」

 

 「「ラファール・リヴァイヴ」」がビーム兵器を使って攻撃してくる。俺はマントを出して防いだ。

 

「何で―――」

「悪いな。この「黒鋼」のベースは海賊だ!」

 

 安定と安心の《デストロイ》を起動させてぶっ放す。収束と拡散を切り替えて「鳥籠」状態を解除しにかかる。

 

「この、なんて威力―――きゃぁっ!!」

「こんなの反則よ!」

「怯まないで! まだ数ではこっちが有利よ!」

 

 飛行形態に変えて突っ込む。最初はスラスターのみだが、《デストロイ》を後方に展開することでさらなる加速を得るのだ。

 おそらく「紅椿」と同等かそれ以上のトップスピードを叩き出す。一気に距離を詰めて「「ラファール・リヴァイヴ」」2機すれ違いざまにビームブーメラン《疾風》を展開して斬りつけた。

 

「そんな、今ので削られるなんて―――」

「おいおい、誰を相手にしているのかまだ気付いていないのか?」

 

 宇宙戦艦が180度回頭するように飛行形態のまま前後を入れ替えて人型に戻る。そのどさくさに紛れて《サーヴァント》を展開して「ラファール・リヴァイヴ」のエネルギーを削っていき《蒼竜》の強化斬撃で止めを刺す。

 

「こ、こうなったら―――」

 

 俺はすぐに例の爆弾を用意している機体の手元を《フレアマッハ》で撃ち抜き、爆発を起こす。幸い、俺はすぐに移動したので余波は届かなかったので、残っている機体を処理しにいく。

 

『後は4機よ。一気に決めて』

「じゃあ、アレで行くか」

 

 《バイル・ゲヴェール》を再展開し、俺はさらに上空に飛ぶ。そして一人めがけて光弾と実弾をランダムに撃ちながら移動を始める。

 

「ちょ、何なのよ! 出鱈目よ!」

「この程度で出鱈目とか、慣れなさ過ぎだ!」

 

 こんなの、俺の常識じゃ日常茶飯事だ。………というか、普通に地球壊しかねないことが日常茶飯事になっている。

 今の1機を落としたので残りは3機。俺はそいつらに視線を飛ばす。

 

「さて、7機が落ちた。後はアンタら3機だけだが一応は降参をお勧めしようか?」

「……ふざけないでよ。私たちがそんなものを受け入れると―――」

「降参しても俺は受け入れないがな」

「この悪魔!!」

 

 悪魔? それじゃあ程度が低いだろうが。

 

「どちらかと言えば魔王だろう? それとも、「魔王」の称号を得るにはもう少し激しくした方が良いか? ……いや、激しく、荒々しく、残虐性が必要か。幸い、相手は「男より強い女」だから手を抜く必要はないしな」

 

 結局、換装パッケージは必要ないし。……改めて考えると黒鋼って物凄く強いよな。

 

「さて、ここからは地獄への一方通行だ。死にたくなければ引け。死にたければ我が前に出よ。望み通り、消してやる」

 

 《蒼竜》を展開し、俺は残り3機を潰すために接近した。




彼女らは犠牲になった。悠夜が絶対的勝者になるための犠牲にな。

ということで、IS学園の教員は悲惨な目にあいました。……おそらく、ここまで酷い目に遭うのは後にも先にもこの作品ぐらいでしょうね。(合掌)

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