IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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おととい、ポケモンの映画のチケットを持っていたので映画館に行ったのですが、オープニングは熱いわ内容はヤバいわで何度か涙腺が崩壊しました。

俺、絶対に子供とポケモンするんだ……ガチの方で(とか言いながら大して強くなかったりする(笑))


#134 恐悪愛女

 すべてが収まってから数時間。あることが判明したことで学園側は対応に負われていた。生徒たちが全員いなくなっていたのである。

 だがそれもすぐに所在が判明して事なきを得たが、勝手に行動したことで一部の教員たちから反感を買うも、ティアの一言に黙ることを強いられた。

 

 ―――四神機に勝てるの~?

 

 気怠そうに発言し黙らせたティアはそれ以降、零夜の膝枕で眠っている。

 彼女は彼女で色々することがあり、その影響だろうと零夜は思って今は黙って眠らせている。

 

「―――失礼する」

 

 桂木一族、そしてお付きのアル、コウの二人もセットになって揃っている空き教室に、轡木十蔵をはじめとする一家三人、織斑千冬に生徒会の二人に簪とラウラも入ってくる。人数はこれだけでない。

 さりげなく朱音が混じっていることに訝しむが誰も尋ねない空気の中、教室のドアが開かれると白衣姿の遥が立っていた。

 

「待たせたね」

「手術はどうだい?」

「問題ないよ。会長様の方はちょっと苦戦したけど、どこかの誰かの力が働いていたしね」

 

 その力の主も今は眠っているのでこの場にはいない。

 遥が窓側の一族の方に座ると、さらにドアが開かれてイージスの二人以外の代表候補生も全員揃って入ってきた。

 

「……君たちは招いた覚えはないが」

「ですが、わたくしたちもあの場にいましたわ。お話しを聞く権利はあるかと」

「………別に構わないが、この話を聞いたところで君たちが無駄に絶望するだけだ。それでも構わないなら同席すれば」

「では、お言葉に甘えて」

 

 そう言ってセシリアが先に入る。その後に箒が続き、シャルロット、鈴音も入室してすぐ近くの席に座った。

 全員が自分たちに注目するのを改めて確認した剣嗣は立ち上がり、話を始める。

 

「さて、一体どこから聞きたい?」

「………全部だ。何故、桂木悠夜も貴様らもあの能力を使うことができる。そして、〈ルシフェリオン〉とは一体何だ?」

「相変わらずせっかちだな、織斑は。まぁいいだろう。どうせ時期だとは思っていたからな」

 

 そう言った剣嗣に周りは誰も反対の意を示さない。

 

「まず最初に、桂木悠夜と更識楯無の二人の話をしておこう。と言っても特筆する点はないがな。ただ出会いは、ある意味いつも通り常識知らずで型破りだったらしいが……まぁ要は、あの二人は小学校の時に同じクラスだっただけだ」

「………それだけ、ですの?」

 

 セシリアの問に剣嗣は頷く。

 

「ああ。ただのクラスメイトというだけだ。それ以上も、以下もなかった。ただ一番仲が良いというだけの存在だったな。実際」

「でもその時に外出が増えたんだよねぇ。あの時は寂しかったなぁ」

 

 暁がしみじみしながらそう言うと、箒が食って掛かるように言う。

 

「では、そんな関係なことで我々はあんな目に遭ったとでも言うのか!」

「そうですわ! そのせいで……一夏さんはあんな状態に……」

 

 悲しそうな声を出すセシリア。しかし、その空気を遮断するためか、それとも心の底から笑っているのかある場所から笑い声が響いた。

 

「―――それはちょっと、酷いんじゃないかな?」

 

 一通り笑った後、修吾は冷たい声でそう言った。

 あまりの冷たさに全員が意外そうに修吾に視線を向けるが、修吾は構わず言葉を続ける。

 

「セシリア・オルコット。実は僕、君のことが気になったから調べてたけど………同じスナイパータイプにしては随分なお粗末な成績だよね。まぁ、そもそもISであんな舐めた真似をしているから未だに専用機持ちランキングで下位周辺を飛べるわけだけど」

「……何が言いたいんですの? それにわたくしのことが気になるって―――」

「リーチャド・グリント・オルコット」

 

 まるで呪文を唱えるように言った修吾。そして一番に反応したのは、零夜だった。

 

「嘘、この女があのグリントの娘?!」

「可哀想に。どうやら才能は遺伝しなかったようね」

 

 遥までも同情的な声を上げる。セシリアはわけがわからず声を荒げて尋ねた。

 

「い、一体何だと言うんですの?! あの人が何を―――」

「僕が知る限り、コモンタイプで唯一僕を追い詰めることができたスナイパーだよ。しかも、君のようにISの保護の恩恵を持たず、生身でね」

「………はい?」

 

 間抜けな声がセシリアの口から漏れる。だが、修吾は構わず続けた。

 

「君は何も知らずに彼がただ気弱な男だと思っていたようだけど実際はそうじゃない。君に対して気弱だっただけだ。昔に誤って君を殺しかけたからね」

「……そ…そんな……」

 

 修吾は止めを刺そうと思ったが、遥が止めたことで黙る。

 

「ありえない………そんなの……」

「さて、今度は君の番か」

 

 箒を見た修吾は笑みを浮かべるが、それよりも先に遥が言った。

 

「彼に関しても心配ないわ。一応、一命は取り留めた。けど、おそらく二度とまともに動けないでしょうね」

「……そんな」

「あら? あなたたちにとってはチャンスだと思うけど? 彼が動けないとなれば、彼を好きにできるし、介護ができる分距離も近くなれるじゃない? だったら、このチャンスを生かして―――」

 

 途端に机がはじけ飛び、黒い影が遥に掴みがかる。

 

「貴様……どれだけ生徒たちを侮辱する」

 

 怒りを露わにする千冬。だが、誰も掴み持ち上げられている遥を助けようとはしない。

 

「……馬鹿な女ね。ホント、あなたの母親と同じ」

「何?」

 

 千冬の腹部に衝撃が走る。

 

「―――愚かなのよ、織斑は」

 

 その強さゆえにか、窓ガラスを割って廊下に投げ出される千冬。それを見ていたほとんど全員は驚きを露わにしていた。

 

「お、織斑先生!」

 

 シャルロットは慌てて外に出る。

 

「貴様、どうしてこんなことを―――」

「頭の悪い子供には体で教える方が楽よ。それにここにいる人間のほとんどがとやかく言える立場にないわよね? 恋愛感情を持っているからって、気に入らないことをしたらすぐにISを持ち出して制裁しているくせに」

 

 それを言われて、その場いにいる全員は反論できなくなった。今にも戦い始めそうな遥と箒を修吾が抑えているのを見ながら、零夜はティアを抱えながら立ち上がった。

 

「ねぇ、もう帰っていいかな? あんまり開けているとスコールたちがうるさいから」

「ま、待ちなさいな! 逃がしませんわよ!」

 

 部分展開をして《スターライトMk-Ⅲ》を展開するセシリア。だがすぐにそれは切断された。

 起こる爆発にそれぞれがバリアを張って防ぐ。

 

「いい加減諦めなよ。あの時は手加減して相手してあげただけ。本気出せば、IS学園なんて余裕で落とせるんだから」

「レイ」

「……はいはい」

 

 剣嗣に止められ、渋々手に顕現した水を片付ける。

 するとドアが急に開かれると、銃を携帯した特殊防護服を装備した人間たちが姿を現す。その中から十蔵には見覚えがある人物が現れた。

 

「―――メアリー・ハードソン」

「お久しぶりね、轡木十蔵。まさかこうしてあなたを捕まえることになるとは……後継の理事長を探すのが面倒だけど、それはそれ、ね」

 

 銃口は十蔵だけでない。菊代や晴美、そして朱音の方にも向いている。

 簪たちの方にも向いているが、簪とラウラがすぐに戦闘態勢を取っているため本音はおそらく大丈夫だろうと安堵しながら、万が一のことを考えていたが、次の言葉でその情勢は変わったと言えるだろう。

 

「ご安心を。あなたたちも仲良くまとめてあの世に送ってあげますわ。当然、あの桂木悠夜も」

「………それを本気で言っているのか?」

「ええ。眠っている今だからこそチャンス。今、病棟に兵を向けています」

「……そうか。では、今すぐその者たちを撤退させろ」

 

 冷静な声で言う剣嗣だが、内心彼は焦っていた。

 幼い頃から亡国機業にいる零夜とティア、あまり他のことに関心がない修吾や遥。そもそも悠夜とはそれほど交流がない陽子には知らないことだが、剣嗣、リア、アル、コウ、そして暁は冷や汗をかき始めていた。それを聞いて怯えているのだ。

 もし警告を発せられた場合、状況によるが織斑一夏を差し出すだけで終わるならそれでいい。だが、そうじゃないなら―――

 

 ―――差し向けられた兵たちの死は、免れない

 

 

 

 ―――ミア・ガンヘルド

 

 彼女は生まれた三人の中で、唯一何のとりえがなかった。姉のように幼いころから優秀なわけでもなければ、妹のように科学の知識に強いわけでもない。一般人に比べれば身体能力は高いが、それでも家族が求めるほどの水準には届いていなかった。10年前に悠夜に選ばれた時も家族から反対されるほどだったのである。

 ガンヘルドの一族の特徴として、成長の見込みがあまりない。その代わり幼いころから才能が開花することが多いのだが、ミアはそうではなかったのだ。だが、「幼さ故に引き裂かれた」という事実がその常識を一瞬で覆したのだ。

 

 ―――100回以上

 

 それが離れていた10年間に、ミアが島から脱走しようとした回数である。

 もし一度でも成功しようものなら、とっくに桂木家は崩壊。郁江は精神を、幸那は人生を壊されていただろう。それほどまでミアは幼い頃から荒れていた。それを良く知っているからこそ、剣嗣はすぐに下げるように言った。

 

「あら、その態度はないでしょう? ちゃんと頼むなら、その方法があるのではなくって?」

「止めて! お願いだから早く回収して!」

「コウ! アル! 今すぐ兵を無効化してきなさい!」

 

 暁の懇願、そしてリアの命令が辺りに響く。二人はすぐに窓から出て兵たちを止めようと行動するが―――

 

 ―――バリンッ!!

 

 窓ガラスが割れ、同じ服装をした隊員が仲間を倒していく。

 メアリーがどういうことかと飛んできた場所を見ると、髪によく映える服に身を包んだミアが宙に浮いていた。

 

「………あなた、一体」

「ああ、まだいたんですか?」

 

 今の声を聞いて、シャルロットが震えあがる。おそらく、この前のことを思い出したのだろう。

 

「サーバス様、この人たちがさっきユウ様を撃ち殺そうとしていたので動けないようにしたんですが、これはどういうことですか?」

 

 虚ろな瞳を剣嗣に向けながら尋ねるが、剣嗣が答えるより先にメアリーが言った。

 

「あなた、何者?」

「私ですか? 私は、あなたたちが「桂木悠夜」と呼ぶ男性の専属メイドであり、ハーレム管理人である「ミア・ガンヘルド」です」

「は……ハーレム管理人? しかも、あんな男の……?」

 

 その言葉が引き金になったのだろう。メアリーの腹部に衝撃が走って壁に叩きつけられた。

 

「随分とうるさいブタですね。そんなに殺されたいのですか?」

 

 雰囲気が変わる。それを感じた剣嗣はメアリーとミアの間に入った。

 

「何のつもりですか、サーバス様?」

「そこまでだ、ミア。これ以上の攻撃は禁じる」

 

 戦闘態勢に入ったのだろう。ミアは剣嗣とはする気はないのか大人しくなった。

 

「わかりました。では、私はユウ様の世話に戻ります」

 

 突風が室内に吹く。ミアの姿は消え、目の前で見せられたマジックに慣れていない人間は騒然とした。

 

「君たちも彼女を連れて帰りたまえ。まだやると言うのなら、今度は私が相手になるが?」

「剣嗣様だけに戦えさせません。ここは私が」

 

 だが、彼らも最初から事を構えるつもりはなかったらしい。すぐにメアリーを回収して学園から去っていく。

 姿が見えなくなったところで、十蔵が提案した。

 

「―――ここは汚くなったので、続きはあの部屋でしましょうか」

 

 

 

 

 案内された学園長室はどうやら被害に遭っていないようで、周りと比較して綺麗な方だ。

 そこで織斑千冬と篠ノ之箒などの専用機持ちは省かれた。当初、剣嗣は凰鈴音にだけは同席する許可を出したが、鈴音は敢えて辞退を選んだ。

 

(今回のことで恐ろしく感じたか。……見どころはあるし、彼女の存在をどうにかすること自体は容易なのだがな)

 

 それはあくまでも悠夜の嫁候補の一人としての思考である。

 リアにばれないように考えるのを止め、座るように言われたソファに腰を掛けて説明する。

 

「それで、私に話とは一体何でしょう?」

「いえ。幸い、まだあの愚弟は誰とも関係を持っていないようなので、「ヤード」一族であるあなたには私たち4人のことを説明しておこうと思いまして」

「……説明? それは、王族の中でも群を抜いてとんでもない力を持っていること、でしょうか?」

 

 剣嗣の眉が少し動く。菊代はともかく、晴美と朱音は何の話かわかっていない。

 

「やはりお気づきでしたか。異常者がいるので彼女を基準に考えられている、というのは杞憂だったようですね」

「ええ。確かに陽子様の存在は異端であれど、陽子様からあらかじめ〈ルシフェリオン〉が「封印具」だとは聞いていたので」

 

 剣嗣は陽子を睨むが、陽子は気にせず知恵の輪を外そうと躍起になっていた。

 

「……それに、いくら王族と言えどプライドが高い二人の科学者はよほど自信がなければ「四神機」という大層な名称は使わないので」

 

 修吾と遥がそれぞれ照れを見せる。

 

「確かにそうですね。確かにこの二人は家庭能力はともかく得意分野に至っては無駄にプライドがあるので。……では、今の内に話しておきましょう」

 

 一息入れ、剣嗣ははっきり言った。

 

「私、風間剣嗣、桂木悠夜、零夜、暁の4人は、遺伝子改造素体(アドヴァンスド)を超えた遺伝子改造素体―――遺伝子進化素体(エヴォノイド)です」

 

 その言葉にいち早く反応はラウラだった。

 

「遺伝子改造素体を越えた遺伝子改造素体? つまり、兄様は―――」

「君の予想通りだ。我々4人は通常の遺伝子改造だけでなく、より高度の調整と肉体改造を経て通常ではありえない耐久性を備えている。非能力者である君にはわからないだろうが、能力の使用には身体に負担がかかる。更識簪が今も眠そうなのは、彼女がまだ能力に目覚めて1年も経っていないのが原因だ。非改造でも身体に慣らすために平均して1年前後かかる」

 

 そう説明されたラウラは恐る恐る簪を見る。実際、簪は眠そうだったが、まだ時間は午後の2時半。たまに昼寝をする人間もいるにはいるが、それでも今のような真剣な場で眠たそうにするような性格ではないことをラウラは知っている。

 

「かんちゃん、大丈夫?」

 

 心配そうに本音が尋ねると、簪は「大丈夫」と答える。

 

「通常、ラウラ・ボーデヴィッヒたちのような「遺伝子改造素体(アドヴァンスド)レベル」ならば、成長の促進程度しか効果が得られない。だが、我々「遺伝子進化素体(エヴォノイド)」なら、その成長力は各段に跳ね上がり、能力行使の反動すらも生身で相殺できる。もっとも―――」

「―――もっとも、これから始めることには絶対的に必要なんだけどね」

 

 剣嗣の言葉を引き継ぐように修吾が言った。

 

「これから始める、こと?」

「そう。僕らが本来住まう国の再興だ」

「―――なるほどのう。だから、お主らは「エヴォノイド」を作ったのか」

 

 陽子からの厳しい視線を修吾は軽く受け流しながら答えた。

 

「まぁね。物事を始める時には何らかのインパクトが必要だ。特にあの国は一度日米連合部隊に曲がりなりにも滅ぼされている。だからこそ、どうしても強者が必要だったんだよ。そう言う意味ではこのIS学園で印象強く残す必要がある。だから、朱音ちゃんには「サードアイ・システム」のレプリカを渡しておいたんだ」

 

 急に話を振られたからか、朱音は慌てて晴美の後ろに隠れた。

 

「でも正直驚いたなぁ。まさか僕が送ったものはそれ以外まったく使わなかったなんて。おかげで悠夜はノリノリで発病させて戦うことができたけど」

「……じゃあ、〈ルシフェリオン〉の存在意義は? 朱音に送るなら、アレを最初に送れば―――」

「残念ながら、〈ルシフェリオン〉のスペック制限は4割までが限界だったのです」

 

 今度は遥が答えた。

 

「4割……?」

「あの時は幸い、悠夜の拒絶の意思をくみ取って3割程度に抑えることができたようですが、最初から全力で行使すればおそらく銀の福音のコアは半壊。操縦者も仮に生きていても障害が残るくらいにはダメージを負っていたはずですよ」

「あと、空気を読んでか相手を舐めたか、武装と能力を抑えるか以外は使用しなかったことが大きな要因だ。そう言う意味では、君たち四人には本当に感謝してもしきれない」

 

 もし仮に、悠夜が本当の意味で本気を出した場合の説明をする剣嗣。それを聞くたび、ラウラ、本音、朱音の3人は改めて自分の身近にいた悠夜がとんでもない存在だということを改めて認識するのだが、

 

「? 何故簪は平然としているのだ?」

 

 真顔で聞いていた簪は平然と答えた。

 

「だって私とお姉ちゃん、そして虚さんは10年前に悠夜さんに助けてもらっているから」

 

 そんな、本音ですら耳を疑うようなことを口にしたことで、3人の顔色が変わった。




いつものことかもしれませんが、これって解決編?
まぁ、一応目明し編にはなるかな……アレはマジで驚いた。


一応、7章は後1話続きます(区切り良いし)

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