IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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#13 センパイカウンセリング

 翌日、昼休みになった俺は一目散に混沌と化した教室から出た。

 凰鈴音の転校は一組の人間―――主に篠ノ之箒とセシリア・オルコット二人に多くの影響を与えた。

 と言ってもあの二人は本気で織斑のことが好きらしく、そのことで心を乱していたようだが普通に授業を受けていた俺たちにしてみれば立派に迷惑行為なわけだが。

 どうせ後から織斑たちも来るだろうと思われるので、俺は先に移動していた。……この言い方だと織斑を待っているように聞こえるが、先に一人で食える場所に移動するってだけだからな。もっとも置いてきたはずなのに既に俺の後ろにべったりと張り付いている奴が一人いるが。正直なところ、そこまでの追跡力を持つ彼女の上目遣いには篠ノ之とオルコットの二人と比べて光るものがある。いや、そもそも二人と比べること自体が布仏に失礼だろう。

 早速食堂に着いた俺は、食堂でマグロの刺身定食を頼む。布仏は鮭茶漬けを頼んでいたが、どう見ても市販の茶漬けに見える気がする。

 

「いただきます」

「いただきまーす」

 

 二人で四人分は座れるであろう席を占領すると、次々と後ろにいた奴が席を占領していく。時間もたっぷりあるが、早く勉強したいので急ぎながら食べていると、聞きたくもない声が聞こえてきた。

 

「なぁ悠夜、一緒に食わないか?」

「断る」

 

 それを見た布仏はそっと俺の傍に寄って耳打ちしてきた。

 

「かいちょーから中国のだいひょーこうほせーを調べてこいって言われてるから、いい~?」

 

 畜生。可愛いじゃねえか。

 抱きしめたくなったがなんとか理性をこらえて、布仏の隣に織斑の後ろにいた凰が座ることで条件を飲んだ。

 

「で、いつ中国の代表候補生になったんだよ?」

「あんたこそ、ニュースで見たときはびっくりしたわよ」

「俺だって、まさかこんなところに入るとは思わなかったからな」

 

 と、他愛もない話を進めるこの二人。モテない男子の隣でよく一緒にいられるわ、こいつらは。

 そう思っていると、凰の口から信じられないことがでてきた。

 

「入試の時にISを動かしちゃったんだって? 何でそんなことになっちゃったのよ」

「何でって言われてもなぁ」

 

 そういえばテレビでそんなことをやってたな。「IS学園の入試会場にてISを動かした男」って。

 普通に考えてみれば異常なことだ。どうしてそうなった!?

 

「高校の入試会場が、市立の多目的ホールだったんだよ。そしたら迷っちまってさぁ。係員に聞いてもよくわからないし」

 

 こいつは方向音痴なのか? 入試なんだし、いくら女尊男卑とは言えど普通なら案内させるだろ。

 

「それであっちこっち動いてたらISがあったから、珍しくて触れてみたらISが動いたってわけ」

 

 …………………はぁ?

 いやいや、確かにISは男にとっては珍しいものだ。触れたくなる気持ちはわかる。……だがな、何でこいつは自分の高校受験があるというのに、珍しいからってISに触れるんだよ。

 

(頭…大丈夫か?)

 

 確かに俺もそれなりにヤバイ方だと自覚はある。だがこいつの方はそんな俺から見ても異常すぎる。

 そんなことを思っていると、二人の女学生が乱入してきた。

 

「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが」

「そうですわ! 一夏さん、まさかこちらの方と付き合ってらっしゃるのかしら?」

 

 食事を中断してこっちに来た篠ノ之とオルコット。彼女らは新たなライバルが現れて気が気でないようだ。だがそんな叩き方をすると俺の方に迷惑がかかるので是非とも止めてもらいたい。

 

「べ、べべ、別に私は付き合ってるわけじゃ………」

「そうだぞ。何でそんな話になるんだ。ただの幼馴染だよ」

 

 織斑にとってはその出だしの意味がわからないようでそっけなく返す。その対応は凰にとっては面白くないようだ。

 

「? 何睨んでるんだ?」

「なんでもないわよっ!」

 

 前々から思っていたんだが、どうして「幼馴染」というカテゴリに所属する奴らはこうも暴力的なんだろうね。オルコットもオルコットだ。さっさとデートに誘えばいいのに。

 

「幼馴染……?」

 

 同じく幼馴染の篠ノ之がそんな反応を示す。どうやら篠ノ之と凰はお互いを知らないらしい。

 

「あー、えっとだな。箒が引っ越していったのが小4の終わりだっただろ? 鈴が転校してきたのが小5の頭で、中国に戻ったのが中二の終わりだったから、会うのは一年ちょっとぐらいだな」

 

 ……………それ幼馴染ちゃう。ただの腐れ縁や。

 大体、小2や小3ならばまだわかるが、流石に小5からは違うんじゃないか? まぁ、時期にとっては十分幼馴染だろうが。………そもそも、考えてみたら篠ノ之や凰がその部類に本当に入っているのか? ……考えていったらキリがないので切り上げよう。

 

「で、こっちが箒。ほら、前に話したろ? 小学校からの幼馴染で、俺の通っていた剣術道場の娘」

「ふうん、そうなんだ」

 

 凰は篠ノ之を観察し、一瞬だけ一部分を凝視したのを俺は見逃さなかった。まぁ、凰にはその双丘がないからな。

 

「はじめまして。これからよろしくね」

「ああ、こちらこそ」

 

 二人が睨みあいを始めたところでちょうど食べ終わった。

 そして小さく「ごっそっさん」と言って立ち上がる。

 

「あれ? もう行くのか? もうちょっと一緒にいようぜ」

「お断りだね。お前といると馬鹿が移る」

 

 後ろが騒がしくなったが気にせず食器を返却口に置き、すぐにその場から離れた。

 

(全く、織斑の鈍感さは呆れるな)

 

 奴らと知り合って間もないが、どいつもこいつも我が強い。願わくば嵐が起こらなければいいなと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園のアリーナ貸し出し制度は専用機かそうでないかで違いが出る。訓練機などの貸し出しと同時にアリーナの貸し出しは行えるが、強制的に1/6面となる。しかし専用機持ちはアリーナの貸し出しだけで半面を使うことが可能だ。

 そして俺は授業が終わるとすぐに教室を飛び出し、アリーナに来てホバー状態で射撃練習を行っていた。何だかんだでリアル系のシリーズものの主人公って射撃系が多いから引かれたけど、なんか妙なテンションが湧く。

 

(更識の奴、遅いな)

 

 最も人が借りない時間を抑えた更識は、来ると言っていたのに来ない。

 

(まぁいいや。一人で練習しよ)

 

 練習方法はゲームからの引用で構わないだろうと思い、展開している打鉄から管制室のコンピューターにアクセスしてもう一度「ターゲットクラッシャー」をしようとすると、開放回線オープン・チャネルが開いて聞き覚えがある声が届く。

 

「よぉ! もう復帰したんだってな!」

 

 Aピットのカタパルト発射口で黒をベースに散りばめられたかのようにところどころに紅く塗られている『ヘル・ハウンドver2.5』を装備したダリル・ケイシーさんが立っていた。途端に観客席にいたファンと思われるみなさんからケイシーさんに対して歓声が飛んだ。

 

「お久しぶりです、ケイシーさん。それで、どういった御用ですか?」

「……あ~、もう少しフレンドリーに話せないか? なんていうか、固いって感じが……」

「日本ではこれが普通ですよ。それに性別の差と言えばご理解いただければと?」

 

 そう言うとケイシーさんはどこか申し訳なさそうな顔をし始めた。

 

「あー、なんかその……すまん」

「いえ。で、どういったご用件でしょうか?」

 

 何に対しての謝罪かは検討がつかないし、先に質問する。

 

「実力テストって奴だ。いきなりで悪いがオレと模擬戦しないか?」

「………どう考えても自分があなたの実力と釣り合っているとは思えませんが?」

「実力テストって言ったろ? 軽く体を動かすのに付き合えって……じゃなくて、付き合ってくれないか? 当然、オレは手加減するさ」

 

 と言い終わったと同時に慌てはじめるケイシーさん。

 

「わ、悪いな。やっぱり手加減とか嫌だよな?」

「全然そうは思いませんが。むしろ専用機持ちと言っても所詮は初心者、正しい戦力観察だと思います」

 

 嫌味なく答えつもりだが、ケイシーさんは頭をかく。どうやら俺との会話はやりにくいようだ。

 

「ま、まぁいいや。じゃあ、付き合ってもらうぜ!」

 

 アリーナが急に戦闘シークエンスに移行し、自動的にISの体力とも言えるシールドエネルギーが回復し、弾薬が補充された。

 

「行くぜ!」

 

 瞬時加速イグニッション・ブーストと呼ばれるエネルギー吸収を行って加速する技能を使用して接近するケイシーさん。だがこれをした時には無理に軌道を変えると骨折する恐れがあるためまっすぐしか移動できない。なので回避して近接ブレードを展開、峰打ちで攻撃する。

 酷い攻撃だと軌道先に刃を向けておくという手もあるが、個人的にそれが無理なので峰打ちを使っている。

 

「うわっ!?」

「避けてくださいよ」

 

 アサルトライフル《焔備》を展開してホバー機能で移動しながら撃ちまくる。何発か外れるが、それは狙ってやった。

 

「……お前、手加減してるだろ」

「当たり前でしょう」

 

 どうやらすぐに気付いたらしい。まぁ、誰だってあんなことをしていたら怒るだろう。現にケイシーさんは現在進行形で怒っていた。

 だがすぐに思い当たる節があったようで、

 

「だったら、本気にさせてやるよ!」

 

 両手首に三本ずつの爪を展開する。ハイパーセンサーに武装情報が現れて「ハウンドクロー」という武装名が判明した。

 俺はそれに対してもう一本近接ブレード《葵》を展開し、二刀流で応戦した。

 突き出されるクローをしゃがんでかわし、そこから右に離脱して二本とも分投げた。どう見てもかわせるスピードだったが一本はかわしたケイシーさんだがもう一本は当たった。

 それを次の勝利に繋げようとするとでも思っているのだろうか、ドヤ顔でこっちを見るケイシーさん。

 

「やるじゃねえか」

「自分から当たりに言って何を言っているんですか」

 

 彼女の考えにはある程度察しがつく。おそらくだが攻撃が当たっても平気なことをアピールするためだろう。

 

(悪いが、そんなことには乗れないな)

 

 だが、俺はその思惑に乗ることになった。

 確かにISには絶対防御があり、どんなに致命傷を負ってもそれが守ってくれる。だがそれは見えないから俺は信じられず、人殺しという汚名を被りたくないという理由から逃げていた。しかしさっきケイシーさんに当たったところは左肩で間違いなく切り落としていたはずだ。なのにその傷すら確認できなかった。

 

「これでわかっただろ。ISには絶対防御がある。だから安心して本気出せ、桂木」

 

 ………ケイシー先輩は優しいな。道理であんなにファンがいるわけだ。だけど、俺にはその気持ちに応えることはできない。

 

「お断りします」

 

 まさかここで断ると思っていなかったのだろう。呆然とするケイシーさん。

 

「いや、まさか……嘘だろ?」

「本気で言ってますよ、俺は」

 

 そう返すと口をあんぐりと開けるケイシーさん。絶対にあれ、予想外すぎて反応できなくなっているな。

 

「………初めてだぜ。ここまでないがしろにされたの」

「自分に対して落胆なされたのならそれで良いでしょう。本国には「桂木悠夜は弱かった」とだけ伝えておけばいい。俺はそれを否定しませんし、あなたたちみたいに操縦者として大成する気はありませんから。専用機を受け取ったのは成り行きでしかありません」

 

 ちょうどいいと思った俺はここからは個人間秘匿回線プライベート・チャネルに切り替えて通信を送った。

 

『それにあなたたち女性の気持ちなんて俺には理解できませんから。上限がある兵器を操れる程度で自分たちが強いと思い込む女性あなたたちの気持ちなんてね。逆に俺の気持ちなんてあなたにはわからないでしょう?』

 

 今まで俺がロボットアニメを見てこれたのは敵が人間じゃないのと死ぬ生物が現実では存在しないから自分たちには関係ないと思っていたからである。それに死んだとしてもそれは話の流れであり、感動するシーンもあったが実際に死ぬわけではない。

 だけど今は違う。ISに乗ってはじめて感じた恐怖が俺を襲っていて本当は乗りたくないが、いざという時のための術が欲しかった。

 挑発的な態度で突き放しにかかる。正直、練習に付き合ってくれたのには感謝している。だけど俺は他人を攻撃する―――少なくとも容赦なく攻撃する他人と返しに攻撃する自分に対して恐怖心を持ち始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダリル・ケイシーは困っていた。前々からどこか遠慮しがちな男だとは思っていたが、まさかここまで戦いに対して嫌悪感を抱いているとは思っていなかったからだ。ただ最近頑張っているのを知っていた彼女はどこまで強くなっているのかが気になり、その進歩具合を報告しようと考えていたからである。

 

(あれか? やっぱりいきなり試合に巻き込んだのが悪かったのか? それとも手加減されたから?)

 

 彼女は男勝りの性格と風潮ゆえに男子から遠ざけられているが、れっきとした女の子で汚染されていない彼女は当然なら男にも興味があったが、経験不足ゆえどう接すればわからなかった。だが今年に二人も男が入学してきた挙句、代表候補生ということもあって本国から実力を見ることを言い渡された時に男を学ぼうと思っていた。だが織斑一夏の方に言ったがその容姿ゆえにファンが増えて近づくのが容易と感じられなかった為、正反対で無関心で相手にされていなかった悠夜の方へ近づいた。自分が先輩だったからかそれとも女だったからか警戒こそされてはいたがそれも交流も重ねていくにつれ次第に薄れていった。

 だが悠夜のデビュー戦の日、何者かに襲われたと聞いた時は周りに人がいたが実のところ気が気でなく何度もフォルテを介して楯無に無事かと何度も聞いていて、面会が可能になったと知った日の放課後にお見舞いに行くということすらしていた。

 その時悠夜がISの教科書の丸暗記するという苦行をしていた時は尊敬するほどで、彼女の中で悠夜は「努力を惜しまない人」という印象が付けられてしまい、いつかは戦ってみたいと思っていた。そしてアリーナ申請のときに第三アリーナで悠夜が借りている状況を見たダリルは―――半ば強制的に巻き込んだ。

 もっとも、彼女が悠夜に接しているのは善意だけではないが。

 

 ―――弱くてもいい。それでも本気で向かってくるアイツとぶつかり合いたい!

 

 一生懸命試行錯誤して練習する悠夜を見てすぐにそんな感情が昂ぶり、興奮したまま戦うが手加減しているように感じたダリルは本気を出してもらえるように体を張るが、それも無駄と終わった。

 

(……いや、やっぱり…)

 

 そこで彼女はある推論にたどり着く。それはとても単純で、ずっと同じことを繰り返していたからすぐにわかるべきこと。

 

「……わりぃな。その、悪いついでに二人で話せないか?」

 

 そう提案し、悠夜は警戒しつつもうなずいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリーナの使用終了時間が近づいていたこともあってケイシーさんの提案を呑んだ俺は終了申請を行いアリーナを出る。

 更衣室でジャージに着替えた俺はアリーナに設置されている自動販売機に行くと、予め指示があったベンチに座っていた、型が違うジャージに着替えていたケイシーさんと合流した。

 

「今日は悪かったな、桂木。興奮を抑えられなかった」

 

 自販機で二人分のスポーツドリンクを用意して片方をケイシーさんに渡す。彼女は金を払おうとするが断るとそんなことを彼女は言った。

 

「興奮?」

「オレの先輩が言うには「IS操縦者にはよくあること」って言ってたがな、努力している奴こそ本当に強くて興奮させてくれるらしいが、お前を見ていたら理解してしまったよ」

 

 そういうものなんだろうか? 俺にはよくわからない。というか、

 

「俺、そこまで努力していましたかね?」

「入院中に教科書暗記して必死に覚えようとしたり、遅くまでサンドバッグでトレーニングしている奴の台詞とは思えないがな」

 

 そう茶化すケイシーさん。すると彼女は真剣な顔で俺に聞いてくる。

 

「……ところで、ISで攻撃するのはやっぱりまだ怖いか?」

 

 どうやらさっきないがしろにしたことを怒っているわけではなさそうだ。普通あそこでは怒ると思うが、彼女はとても心が広いらしい。

 

「ええ。そう簡単に慣れるものじゃありませんよ。特に俺が考えた戦闘スタイルだと下手したら冗談抜きで四肢が吹き飛ぶものですから」

「ぜひともお前のスタイルを見てみたいな」

 

 興味ありげに言ってくるケイシーさん。今のところ未定です。

 

「そうですね。俺がすべてを敵として、虫けらと認識したら可能なんじゃないですか?」

「凄いことをサラッと言うな、お前」

「………そうでも考えないと正直怖いですから」

 

 自分に嘘を付き、その上ですべてを潰すという作業をしなければ絶対に無理だ。だが同時にこのままだとダメなもの理解している。

 

「だがよ、正直そうも言ってられないぜ」

「………俺が男性操縦者だからですか?」

「そうだ。これから男って理由で桂木のことを殺そうとしたり実験台にしたりする連中が出てくる。当然だけどISも出てくるぜ。それをどうにかしないとお前に未来はない」

「………」

 

 そのビジョンが明確に見えてしまい、苦い顔をする。

 

「…割り切れよ」

「……割り、切る?」

「ああ、割り切れ。お前が感じている恐怖は人が持っているのが当たり前の感情だ。別に恥ずべきことじゃない。むしろ疑問に感じている方が正常だ。でもな、ここにいるのはISで成り上がろうと思い、努力してきている奴らばっかりなんだ。それと試合してまともに戦えないほうが危ないんだ。剣道だっけ? あれも防具を着けているだろ? 簡単に言えばISも同じようなものだ。ただ、制作費が馬鹿でかくて防具が見えないだけだ」

 

 その言葉に思わず俺は笑ってしまった。

 

「な、なんだよ」

「いえ。確かにそうだって思っただけですよ」

 

 ―――それに嬉しかった

 

 今までこんな親密に聞いてくれる人がいなかったから嬉しかった。……恥ずかしくて言えないけど。

 

「今日はありがとうございます、ケイシーさん。では、自分は打鉄の整備があるので失礼します。ドリンクはそのお礼ってことで」

 

 そう礼を言って俺は整備室ではなく部屋に向かう。

 

(しかし何だろうな。この、どこか和んでしまう気持ちは)

 

 先輩相手だと特にそうだ。まるで内に眠る自分を解放されていっているみたいな感じすらする。……なんて、あるわけないよな。


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