皆様の応援のお陰で、この『ハデス様が一番!』もついに二桁話数に届きました♪
本当に感謝、また感謝です!
さて、今回のエピソードは……勿論、宴の始まりです(笑)
原作ではベル君を泣かせた”あの宴会”が、果たしてどんな姿を見せるのか?
楽しんでいただければ幸いです。
さてさて、物語の始まりは常に唐突なれど、それはここ……迷宮都市オラリオの西メインストリートにある
【
そしてエルフの少女と、ハデスと比べるなら少し色濃い……
ロキはそれを手に取り立ち上がると、
「先ずは
視線をわざわざ用意した隣の席に陣取らせる小さな
「そして此度ひょんなことから新たな知己を得た【ハデス・ファミリア】との友誼を祝って……」
彼女は杯を掲げる。
「乾杯やっ!!!」
「「「「「「「カンパーイ!!」」」」」」」
「かんぱい」
「乾杯です」
「……けっ」
ロキの音頭に唱和する一同(一部かみ合ってないようだが)に、重なり合うビアマグ。
ただし知恵袋のリヴェリアはぼそりと、
「我が神よ……強行突破したな」
と呟いたという。
***
余談ながらテーブルは立場の分け隔てなく飲み合える円卓方式であるが、席次は当然のように主神であり主催者であるロキの座り位置を上座と捉えると、ロキから時計周りにリヴェリア・リヨス・アールヴから始まりガレス・ランドロック → フィン・ディムナ → ティオネ・ヒリュテ、反時計回りにはロキの隣に座るハデス&ベル・クラネル → アイズ・ヴァレンシュタイン → レフィーヤ・ウィリディス → ティオナ・ヒリュテという順番で、ベート・ローガはヒリュテ姉妹に挟まれて座っている。
見ようによっては、美人と評判の凸凹アマゾネス姉妹を両手に花状態という羨ましくも妬ましいシチュエーションだが、肝心のベートは仏頂面だ。
まあ愛しのアイズの隣に座れなかったのだから、無理もないといえば無理もない。
「なあなあ、ハデスたん」
「なに? ロキ」
さっそくベルの膝の上に座るハデスに攻勢をかけるロキ。幸いにしてハデスは”たん”付けに抵抗は無いらしい。
(よっしゃ! 第一関門突破やっ!)
どうやらロキ流の「可愛いものにつける親しい呼び名」をハデスが受け入れるかどうかが最初の関門だったようだ。
いや、実はこれが馬鹿にできないのだ。例えばアイズが「アイズたん」という呼び名を受け入れる(諦めるとも言うが……)までの間には、「聞くも涙、話すも涙のハートフルボッコな話があるんやでぇ~~っ!!」とはロキの弁。
まあロキの言葉である以上、額面どおりには受け取ってはいけないような気もするが。
「こうして友誼を結ぶこともできた。それはとてもとぉ~ってもメデたいことなんや!」
主にロキ的にはそうなんだろう。
「うん。そうかもしれない」
「でも、ウチはそれを『一夜限りの儚い夢』で終わらせとうない……」
線目を微かに開き、真摯な視線で彼女は告げる。
「せやから、もしハデスたんが良かったらなんやけど……ファミリア同士で友好関係とか結ばんか?」
(肝心なところでヘタレたな……我が神よ)
とこれはリヴェリア。
(何故そこで素直に『友にならんか?』と言えんのだ。この駄神は)
これはガレスで、
(ファミリア同士の繋がりを
何やら思うところがあるのか、チラリとベルを見るのはフィンである。
さて、そんなロキ・ファミリアの幹部の中の幹部、『
「いいよ」
と表情を変えずに短く答えて頷いた。
それとは対照的にロキは”パアァッ♪”と擬音が付きそうなほどに顔を輝かせ、
「そうこなっくちゃな♪ ななっ、どうせやったらファミリア同士だけでなくウチとハデスたんも”
(((あっ、ファミリア同士の話にかこつけて、個神的な事情を便乗させやがった……なんだろう? この小物臭のするやり口は……)))
この時、三人の元老は心は見事に一致したという。
ロキの言葉を受けたハデスは一瞬、少し驚いたようにきょとんとして……
「んー……」
少し考えてから、はにかむように小さく微笑み……
「じゃあロキが
”ぷちん”
その時、ロキの中で”何か”が切れた……
「ハデスたん……」
「んっ?」
ロキはギュッとハデスの両手を握り、
「今日はこのままお持ち帰りして、一晩中スリスリハァハァしてええか?」
***
その頃、テーブルより離れた店の厨房では……
”バリンッ!”
『ニャニャッ!? シル、どうして洗ってた皿がいきなり真っ二つに割れるニャ!?』
『割れたというより引き裂いたという感じですか? シルにそれほどの筋力が備わっていたとは驚きです』
『や、やーねぇ二人とも! そ、そんなはず無いじゃない! きっとこのお皿がもう古くて、見えない皹でも入ってたのよ、きっと!!』
『そのお皿、昨日おろしたばかりニャんだけど……』
『な・に・か・おっ・しゃ・い・ま・し・て!?』
『な、なんでもニャいニャ……』
『シル、今の貴女はウェイトレスがしてはいけない表情をしてるような気がするのですが?』
等という会話が聞こえたような気もするが、きっと気にしてはいけないのだろう。
ともかくロキの奇行は、「そんな変態臭のする不健全な行為を友誼と呼ぶなど私が認めん」とどこからか取り出した愛用の
「そういえば、えっと……ハデスたんと兎の少年、えっと……名前はグラハム・ベルやっけ?」
「ベル・クラネルですよ。ロキ様」
苦笑するベルだが、ロキは気にする様子も無く、
「そうやったな。ともかくハデスたんは全員と、ベル君かてウチとアイズたん以外は面識ないやろ? ここは一つ自己紹介といこか♪ まずトップバッターはウチからやな」
ロキはコホンと咳払いして、
「改めて【ロキ・ファミリア】の主神、ロキや。昔はそれなりに悪名売っとったけど、今はおとなーしゅうしとるよ?」
ニカッと笑いサムズアップするロキ。
表面的な意味では、確かに嘘はついてないのだが……
その後、ロキから時計回りに自己紹介が始まり、
「”リヴェリア・リヨス・アールヴ”だ。差し詰め、ファミリアの参謀役のようなものだ」
「”ガレス・ランドロック”じゃ。見ての通りファミリアの年寄り組の一人じゃな。もっとも、」
ガレスはリヴェリアを見ながら笑いを含んだ口元で、
「歳も知恵も、どこぞの”
ガハハ!と豪快に笑うガレスだったが、「うおぅ……」と笑ってる途中、突然悶絶し出した。情況のわからぬベルとハデスは不思議そうな顔をしているが、理由がわかってるロキ・ファミリアの面々は我関せずという姿勢を貫いていた。
例えとばっちりでも、【
***
「ロキ・ファミリアの団長の”フィン・ディムナ”でございます。以後、お見知りおきを。神ハデス」
宴の余興扱いされた一悶着が落ち着いた頃合を見計らって、華奢なベル以上に小柄な
初見の見知らぬ神に対して、特に(本人は無自覚だが)ハデスのような超大物神に対しては決して的外れでも、大袈裟な礼儀でもない。
間違いなくロキの影響(悪影響?)だろうが……むしろ他の面々が本当なら砕けすぎなくらいだ。
「
ならばハデスも簡易だが”神としての礼”で応え、フィンに立ち上がる事を許した。
「……はっ! 恐悦至極にございます……!」
しかしその言葉にフィンは一瞬心底驚いたように大きく目を見開き、さらに頭を深々と下げた。
様式美と呼ぶにはあまりに短く素っ気無いやり取りのように思えるが、この一連の意味は、実はとても大きい。
まずは地上ではなんら力や権限が無いとはいえ、”
例えば、だが……フィンは小さいとはいえハデスはもっと小さい、例えば二人が立ち話をすれば必ずフィンがハデスを見下ろすことになる。
元来、神仏を人間が見下ろすのはとても不敬なことなのだ。
例えば神社仏閣、あるいは神殿や教会に行けば判るが……”神聖な存在を象りし偶像”は常に人の頭の上に置かれる。
天の御座より人を睥睨するのが神の立ち位置であり、それが逆になってはならない。
無論、地上へ「退屈凌ぎに」降りてくるような神にはその不文律は当てはまらないかもしれないが、とはいえ神は神だ。
その無礼を「ハデスはフィンに許すことを明言した」という事実は、フィンの権威にどのような効果を齎すか想像に難くない。
意味がわからなければただの言葉だが、「お近づきの印」としての贈答物として考えれば、ハデスの言葉は『破格過ぎる大盤振る舞い』と言えた。
***
ハデスの許しを得たフィンは立ち上がると今度はベルに右手を差し出し、
「はじめまして。改めて団長のフィン・ディムナだ」
そのベルの反応を楽しむようなフィンの表情だったが、ベルはハデスを膝に乗せたまま躊躇うことなくその右手を握り、
「ベル・クラネルです。お会いできて光栄ですよ。ディムナ・ファミリア団長殿」
「”殿”はよしてくれ。ファミリア団長もだ。我が主神もそうだけど、僕も堅苦しいのは得意じゃない」
そう苦笑するフィンに、
「じゃあディムナさん?」
「もう一声かな? 僕のことは”フィン”でいい」
するとベルは屈託無く笑って、
「では、折衷案で”フィンさん”と呼ばせてもらいます」
「まあ、そこらへんが妥協点か。ならそのかわり僕も君を”ベル君”と呼ばせてもらおう」
「大歓迎ですよ。どうぞよろしくお願いします」
笑顔の可愛い系少年二人(片方は中身アラフォーだが……)というBL的な意味でのご褒美+美幼女付きという風景に思わずティオネが色っぽい溜息を漏らす。
勿論、彼女は団長が大好きだが、耽美だって嫌いではないのだ。いや、むしろ大好物と言っていい。
ちなみに横目でガン見していた悪神と知恵袋もいたが、それについては多くは語るまい。
「それにしても見かけがアイズの言うとおり白兎っぽくて可愛らしいのに、君は随分と用心深いんだね?」
唐突に自分が引き合いに出されたベルの隣に座るアイズが危うく料理を喉に詰まらせかけ、背中をレフィーヤにさすられながら恨めしげな涙目でフィンを見るという実はレアな一幕もあったが、
「”兎だから”こそ、”余計に”ですよ。小さく臆病で弱い生物だから、用心深くないと生き残れないし……誰も守れないんです」
きっと袖口に隠してる”軽量刺突短剣《スティレット》”のことだろうとあたりをつけたベルは気にした様子もなく応える。
その返答が気に入ったのか、ニヤリッと見かけに似合わぬ歴戦の冒険者らしい笑みを口の端だけ作るフィンに、
「ところでフィンさんって、もしかして”
「なんでわかったのかな?……って、”手の感触”か」
考えるまでも無かったなぁ~という顔をするフィンににっこりベルは微笑み、
「手の皮膚の硬い部分が僕と似てましたから。それ”槍ダコ”ですよね?」
「はははっ♪ これは一本取られたよ。ベル君、君は中々鋭いし洞察力もある……うん。君はきっと近い将来、”すごい冒険者”になるよ。僕が保証しよう」
酒のせいでなく卿が乗ったフィンはより強くベルの手をグリップし、
「改めてよろしく。願わくばこの出会いが今宵限りのものでなく、末永く続くことを祈って」
「そうですね。今日が”始まり”だったら僕も嬉しいですよ」
そして二人の少年は、そしてファミリアの規模こそ”今はまだ”違うが、紛れも無くファミリアを率いる者……『二人の団長』は、堅く握手をし微笑むのだった。
皆様、ご愛読ありがとうございました。
ちょっと原作と雰囲気が異なる……かもしれない(汗)ロキ・ファミリアの面々はいかがだったでしょうか?
ロキ・ファミリアの皆さんは個性が強い反面、文章に書き起こしてアレンジしたりすると途端に描写が難しくなる作者泣かせの集団でもありますが(^^
平常運転のロキはまあいいとして……ファミリア三元老の皆様、特にリヴェリアがツッコミ役(物理を含む)として安定してきたな~とか、ガレスはとばっちりをよくくらいそうとか思ってみたりと色々ありますが、エピソード後半の裏主人公はフィンだった罠(笑)
どうやら彼は原作よりずっと早くベル君を気に入ったようですな♪
ハデス・ファミリアとロキ・ファミリアは長い付き合いになりそうです。
そして後半がフィンなら、前半はまだろくに描写が無い、名前が出てきたのさえ初めてなのにシルが美味しいとこもってったような……?
***
あっ、それと活動報告にも書きましたが……
皆様、この『ハデス様が一番!』をご愛読くださり、本当にありがとうございました!!
驚いたことに一日のお気に入り登録をしてくださった方が三桁、つまり100名に達し、そのおかげでなんと日間ランキングにノミネートされてました(大歓喜!)
いや~、ランキングなんて雲の上の話だと思ってたので、大変驚くと同時にとても嬉しく思いました。
作品をお読みくださり、お気に入り登録やご感想、作品評価など様々な形で応援してくださった皆様に深い謝意を捧げると同時に、これにおごらぬよう投稿していきたいと思う所存です。
それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!