やはり捻くれボッチの青春は大学生活でも続いていく。   作:武田ひんげん

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過去最長の中断期間。お待たせしました、続きです。


第六話

大学の講義も始まり、再び学生生活に入った俺達は長期休暇中になかなか会えなかったこともあって、二人でよく行動していた。学生の本分は勉強である、という言葉は俺たちには関係ない。

そんなことで、今もこうして二人でランチタイム。

 

「やっぱりここ美味しいねー」

「だな。安定だな」

 

俺たちは行きつけとなった日本料理店で仲良く食事。日本では当たり前でも、イギリスといった外国に来たら和食が懐かしくなるというのはどうやら本当の話のようだ。

 

そういえば、最近は先程も言った通り二人でいる時間が多いせいか、お互いあまりサークルに顔を出してない。たまにジェームズとかにあったりすると決まってそろそろ来いよ、と言われる。今日辺り顔を出してもいいかな…。

 

「ねえ、今日午後講義とか終わったらなにする?」

「…そうだな、ぶらっとするか」

「じゃ、服を見に行きたい!」

「じゃ、そうするか」

 

訂正。今日も行かないでおこう、うん。陽乃と今日も一緒にいることにしよう。

結局この流れがここ1ヶ月ほど続いている。まあ、気にしなくてもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

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英語力も本場さながらの早さで会話が成り立つほど上達した俺たちは、どの店に行ってもまったく支障はなくなっていた。たとえば服を買いに来たとしても、当初は本場の英語に慣れていないせいか、何度も聞き直したり、あるいは全くわからなかったりして店員に迷惑をかけたが、今となっては日本で買い物をしている時と変わらないほどとなっている。

 

「いらっしゃいませー」

 

服屋に入った俺たちを迎える笑顔の女性。英語で会話している筈なのに地の文が日本語になっていることなんて気にしない。

 

「おや、カップルかな?デートでここに来たの?」

「ええ、そうよ」

「なら、デートにも着ていける可愛い服を選んであげなきゃね!」

 

英語力が上達し、すべての会話が通じるようになった俺は気づいたことがある。それは、日本と比べて店員はすごく馴れ馴れしいと言う言い方が正しいか。すこし語弊がある気がする。なんというか、日本の店員に比べてややお節介というか、ジョークとかも言ってきてすごくフレンドリーというか。

 

「うーん、それなら…、彼を悩殺出来ちゃうくらい可愛いのをよろしくね!」

 

さすが陽乃。もうこの店員のツボを掴んでらっしゃる。俺には永遠に真似できない芸当だな。

 

「えーと、あ!これならきっと彼は悩殺どころかほんとに倒れちゃうかも!」

「あ、これなら倒れちゃうわ!」

 

女子二人のトークにはついていけない。にしても倒れちゃうって大げさな…。いや倒れるかも。陽乃に似合いすぎるから。

店員が選んだのは黒のワンピースに白の長袖のカーディガン。…うわ、超似合いそう、うん。

 

「八幡が似合いそうって顔してるからこれ買いまーす!」

「あらら、彼氏の顔色だけで彼のことがわかるなんてうらやましい!わたしサービスで割引しちゃうわ!」

「あら、ありがとう!」

 

この辺のハングリーさは海外ならではだね。日本にはないからこれはこれで凄くいいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

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「いやー、買っちゃったねー」

「おう」

 

今日の目的を終えた俺たちは薄暗くなってきた公園のベンチでしばし休憩。今まで説明してなかったけど、季節は秋から冬に変わる時期なので、日が落ちるのが日に日に早くなり、少しずつ肌寒くなってきた。

 

「ねえ、八幡」

「なんだ?」

「私、今幸せよ」

「…急にどうしたんだよ」

 

陽乃はずっと繋いでいた手をより一層ギュッと握ると、

 

「なんだか唐突に言いたくなったの。ドキッとした?」

「…まあ、多少は」

「ふふっ、本当はすっごくドキドキしたでしょ」

「…さあな」

 

陽乃はからかうような声色と、これまたからかうような表情を見せながら言った。でも、次の瞬間、コロッと表情が変わる。からかいの表情から一瞬にしてトロッとしたような表情に変えてみせたのだ。そして、今まで片手でしかつないでなかった手を両手で包み込むようにしてより一層ギュッと握ってきた。

 

「ねえ、今ドキドキしてる?」

「…」

 

もう俺は答えることができなかった。それだけ急激な表情の変化に驚いているのと同時に、その魅惑の瞳に意識を吸い寄せられてしまった。

 

「八幡…」

 

お互いの瞳がどんどん近づいていく。もう1センチほどの距離まで迫っている。

陽乃からはいつもよりも甘い匂いがして頭がおかしくなってしまいそうになる。このまま抱きしめてしまいたいとも思ったが、まだ自重する。

 

「んっ」

 

お互いに唇を重ねた。陽乃の唇は柔らかく、そしてより一層いい匂いがしてきた。俺はたまらず陽乃を抱きしめると、陽乃の唇の中に侵入した。

 

「んんっ、んっ」

 

深い、深いキス。実はここまで深いキスは初めてだ。俺は堪らず陽乃を抱きしめる。陽乃の体はすごく華奢で、抱きしめすぎたら壊れてしまいそうな感じがした。

俺が抱きしめると、陽乃も抱きしめる返してくれた。そのおかげでより一層深くお互いを愛せるようになった。

お互いに唾液を交換し合う。それは恋人の中でも、かなり関係が進んだ恋人にしか許されないものだった。

 

「んっ、んんっ、ぷはぁ」

 

ようやく口を話すと、お互いに乱れた息を整える。

 

「はぁ、はぁ、八幡、今日なんか積極的だね…」

「…元はといえばお前が誘ってきたんだろ?」

「えへへ、そうだったっけ?」

 

チロリと舌を出すその動作に俺は再びドキッとして、次の瞬間には再び唇を奪っていた――――――。

 

 

 

 

 

 

 

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「なんだか今日の八幡、すごく積極的だったね」

「なんかそういう気分になってな…」

 

その後も何回もお互いの唇を求めあった俺たちはあたりもいつの間にか真っ暗になっていたので家路についていた。

 

「ねえ、私達、これからどうなるのかな?」

「ん?どういうことだ?」

「あー、というか、その…、ここまできたらね…その…」

「なんだよ?どうかしたのか?」

 

こころなしか陽乃がすこしモジモジしている。どうしたんだ?トイレでも我慢してるのか?

 

「その…この先のこともするのかなっ…とか…」

「ん?どういうこと…あっ」

 

トイレを我慢しているなどと言った失礼なことを考えていた俺をぶん殴りたい。この展開で恥じらいながら言う事といったら一つしかないだろうに。

たしかに俺たちはまだ最後までいっていない。なにせディープキスも今回が初めてだったから。たしかにこの流れでいったらそういう流れになるだろう。だが、

 

「これが普通ならそういったことになるかもしれない。だけど…」

「…だけど?」

 

陽乃が少し不安げな表情をしたことを見逃さなかった。だが俺は続ける。

 

 

「…俺はお前とそういったことをするのはまだ早いと思う。俺達はまだ学生だし、もっと具体的に将来のことが決まってからするべきだと思う。いや、そうするべきだと思う。だって俺達の関係は他よりも特別だと思うから。だから、そういった大事なことを今することはできない」

 

 

そうだ。俺達は陽乃の母から留学をしろと言われてここにいる。逆に言えばそれしか知らない。つまり将来何をしなければいけないかはっきりしていないのだ。そんな時に中途半端にしてしまうよりも、然るべき時にするべきだと思う。

と、かなり熱弁したが陽乃はどう思っているのだろう、と陽乃の方を見ると、

 

「…」

 

陽乃は目を見開いて硬直していた。すこし不安がよぎる。そのまましばらく佇んだままだったが、やがて口を開いた。

 

 

「…八幡が、私のことを大事に思ってくれてるってのがわかったよ。嬉しい」

「ああ」

 

すると陽乃は目から涙を流し始めた。俺は思わず動揺してしまった。何が起こったのか見当つかなかったからだ。

すると陽乃は涙を流しつつもニコッと笑い、

 

「私ね、私のことをこんなに大事に思ってくれる人がいるってことが嬉しくてね…つい…涙がね…うん…。ほんとにね、八幡が居てくれて…よかった…」

「お、おう」

 

その泣き顔は凄く可愛くて、俺はまたしても抱きしめてしまった。

 

「八幡、だーいすきっ!」

「っ!」

 

その言葉を言った陽乃は今まで見たどの笑顔よりも最高の笑顔だった。

また、俺たちの絆が深まった瞬間だった。

 

 

 

 

続く

 




かなり長くなりましたが、続きをご覧になっていかがだったでしょうか?
更新が遅すぎてこの作品を忘れていた方、一方、待ち焦がれてしまっていた方、大変長らくお待たせしました、甘いお話です!
今回は今までよりもより一層甘くしたつもりでしたが、更新が遅れた分満足していただけたらと思っています。

さて次回の更新はまたしても未定です。その理由としては、私が今年は特に忙しくなり、更新する時間がなかなか取れません。しかし、なんとか頑張って更新したいと思います!

ちなみにこの先の展望とすれば、ざっくりいいますと、まだまだ続きます。だってまだ一年も終わってないんですよね。遅すぎる…。
と言う事で、次回のお話をお楽しみに!ではまた。

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