やはり捻くれボッチの青春は大学生活でも続いていく。 作:武田ひんげん
長期休暇の折り返し地点の日、俺は久しぶりに大学に来ていた。部屋にいてもなかなか暇なもんで、とりあえず身近にある大学の図書館でも行って本を読もうかと思っていた。陽乃もまだ日本だしな。毎晩のように長電話するけど。一体今までトータルで何時間話してるんだ?一日2時間くらいだから…。…数えるのやめよ。
俺は図書館に入ると早速読みたい本を探すことにした。まあ特別目的の本はないから、目に付いた面白そうな本を見つけることにした。
と、しばらく流し目で見ていくと、集団生活から離れる術、という本が目に止まった。なんだこのボッチになる為の入門書は。こんなもんとっくの昔に自分で編み出したよバカ野郎。てかこんな本誰か読むのか?こんな本までおいてるなんて流石でかい大学だな。
とか考えていると、その本をとる奴がいた。そいつは、綺麗な金髪ロングの女だった。…おいおい、見た目だと集団生活の中にいるような奴だろうがよ。
…てか、あれ?なんか見たことあるような…。
と、不意に金髪ロングが振り向いた。そいつは俺を三秒ほどじっと見た後。
「あれ、あんたハチマンじゃない? 」
そうだ、この女はいつか日本食レストランで会った女だ。名前は確か…ジェシカだったかな?
「えーと、ども」
ジェシカほどコミュ力高くない俺の挨拶はこれだ。てかここでコミュ力高いやつはどう言うんだ?よっジェシカ、久しぶりっ!か?…うわ、一生言えないセリフですねごめんなさい。
「ふっ、相変わらずね。てかあんたここの学生だったのね」
「あ、おう」
「ふーん、あんた大学生だったんだ」
「おう」
あの時会ったときも大学生くらいかなって思ってたけどまさか同じ大学とはね。しかも沢山学生がいる中まさか遭遇するとはね。しかも図書館に金髪とか合わねーだろ。いや、外国だから普通か。日本とは違うなー。しかしそれにしてもなんでその本手にとったんだ?疑問だな。
「こんなとこで何してんだ?」
「うおっ?」
背後から突然声をかけられた俺は大きめの声を上げてしまった。恥ずかしい…。てか誰だよ俺に話しかけるやつとかどんだけレアなんだよと思いながら振り返ると、
「久しぶりだなハチマン」
「あ、ジェームズか」
俺に声を掛けたレアな奴はジェームズだった。まあ俺に話しかけるやつとかサークル仲間か陽乃位なもんだな。言ってて物悲しくなっちゃったよ?
「あら?ジェームズじゃない!久しぶりね!」
「お、ジェシカがじゃないか」
なんだ?この二人知り合いか?
「まさかこんなところで会うとはなー。なにしてたんだ?」
「見てのとおり本を探していたのよ」
「それよりもハチマンとは知り合いなのか?」
「まあねー」
「意外な組み合わせだなー」
二人はどこか親しそうに話していた。
「ハチマン、彼女は俺の幼馴染なんだ」
「…は?まじ?」
二人がこんなに親しげに話していたのは幼なじみだからなのかー。うん、納得納得。外国人だからそのあたりのコミュ力が高いのかと思ってたー。…いや、高いか。
「このまま少し話したいところだが、ちょっと時間がないな…。あ、そうだ、サークルについてなんだが、学校が始まる前に一度集まろうと思ってるんだ。もうあいつらもこっちに帰ってきてなー。予定空いてるか? 」
「うーん、多分空いてるだろうな」
「了解。それじゃハチマン、ジェシカ、またな! 」
ジェームズはすこし早歩きで去っていった。
「あんたジェームズと知り合いなの?」
「まあな、サークルが同じなんだよ」
「ふーん…」
なんだそのふーんは。これはあれか、俺ほどの奴がジェームズなんかと友達やってんじゃねーぞこの野郎ってことか?…俺どんだけマイナス思考なんだよ。はっぱ隊もびっくりだぞ。
「わたしも帰るわ。またねハチマン」
「おう 」
続けざまでジェシカも帰っていった。…さて、本選んだら俺も帰るか…。
――――――――――――
「……」
…暇だ。何も無いし何も無い。日本語おかしいけど気にしない。
うーん、何もすることがなくなったなー。結局借りたかった本は誰かに借りられてて無かったし、今日は陽乃からの電話が今のところ無いし。これはもう寝るしかないか。て、まだ21時過ぎかよ。良い子はねる時間だけど、じゃ12時くらいまで起きてる子は悪い子と言いつけていいのか?もしかしたらいい子もいるかもしれないぞ?
なんて下らないことを考えて時間を潰そうとしたけど無理そうだな。これは部屋を暗くして瞳を閉じるか。
…。
コンコンコン
…?誰だこんな時間に?
「はいはい、今出ますよ」
ガチャっとドアを開けたら、
「たっだいまぁー!はっちまーん!」
「うおっ」
開けると同時に陽乃が抱きついてきた。いや、柔らかいし柔らかいし柔らかい。柔らかい三連発やでー。
「ちょ、おま、どうしたんだ?」
「どうしたんだって、帰ってきたんでしょー?」
「いや、帰ってくるんなら事前に言ってくれれば良かったのに」
「サプライズにしたら面白いじゃーん」
まあ陽乃らしいといえばそうか。
――――――――――――
その後しばらく2人で部屋でお話。陽乃の日本での話とか、すこし深入りした話もしてきた。
「もー、八幡と話さないと落ち着かないー」
「いつも電話で話してたじゃねーか」
「そうだけどさー、やっぱ目を見て話すのとはちがうのよー」
「…まあそうだな」
しかしこんな事前の通達なしで帰ってくるところはさすが陽乃というところだな。サプライズだよほんとに。
「あ、そうだ八幡」
「どした?」
「えーとね、次の長期休暇にも私日本に帰らないといけないことになったんだけど…」
「ん?どうしたんだ?」
「…八幡も来なきゃいけないかも」
「え、まじ?」
「うん。お母さんが言ってたから絶対だよ」
つまりはあのお母さんから呼び出されたってことか。おいおい、なんかヤンキーに放課後呼び出されるような気分になってきたぞ。経験ないけど。
「…まあ、陽乃とは付き合ってるんだし、と、当然だな」
「大丈夫よ、お母さんにあの時あんな事言った八幡なら!」
「あの時は結構その…テンションというか、陽乃を救わなきゃって思ってたから言えただけ…というか」
だから今はきっとなにも喋れなくなると思うようん。
「そ、そう。ふーん、私を救う…ね。それでこそ私の彼氏よねうんうん」
陽乃は口では上から目線な言葉を言ってるけど態度はキョドり気味だった。顔も赤いし。ほんと、陽乃と付き合いだしてから色んな一面を見れてるよなおれ。最初のイメージから随分変わったぞ。
続く
大変長らくお待たせしました。改めてあけましておめでとうございます。かなり遅いですが…。
さて、次回の更新はなるべく早くしたいと思います。応援コメントも何通か頂いているので頑張りたいと思います!