やはり捻くれボッチの青春は大学生活でも続いていく。 作:武田ひんげん
第一話
ピピピピッ、ピピピピッ、ピピッ
「ん…」
うるさい目覚ましを止めた俺、比企谷八幡は眠気眼をこすりながら起き上がった。
「ん…もうこんな時間か」
今日は11時からセミナーがあるんだった。今は…10時か。あと1時間で始まるな。
俺が住んでいるのは大学の近くにある学生寮。ここで一人で暮らしている。まあ隣の部屋には陽乃もいるんだけどな。
たしか今日は陽乃は朝から出てるんだったな。てことは居ないのか。
ちなみに俺は大学生活に入ってから一応ボッチではなくなったが、ほぼボッチだ。3人、留学生同士で仲良くなったやつが2人、イギリス人で1人。みんな同級生だ。だけど、それ以外の奴とは関わりがなかった。まあもともとコミュ能力ないしな。それに日本人だからすこし差別的なのもチラチラある。
一方の陽乃はやはり人気があった。ユーモアもジョークもあり、やはりどこでも人気が出るんだな。ただ、日本の時のように信奉者がでるほどではなかった。それでも凄いんだけどね。
陽乃とは毎日会っている。部屋も隣だし、よく行き来している。俺はそこでようやく日本語を喋れるようになるんだ。それ以外は英語だから、やっぱり母国語を喋れるというのは幸せだとここに来て気づいたことだ。
陽乃も俺も心の底から願って留学したわけではない。陽乃は陽乃のお母さんから強制的に。そして俺は陽乃に付いてきた、ということになる。
まあそれでも有名なL大学に入れたから、何かを得ようと、2人で思っている。滅多にない経験だしな。
まず陽乃はサークルに入った。そのサークルというのは各国の文化を研究する異文化研究サークルという名のサークル。そのままだな。そこにはイギリス人の生徒や、数多くの留学生が入っている。俺も一応籍はおいている。しかしよく顔を出しているわけではない。
俺はもう一つ、サッカーサークルにも入っている。なぜかというと、俺の一番最初に仲良くなったやつがサッカー好きて、俺も半ば強引に入れられてしまった。まあ、この国は国民の生活の一部にサッカーというような国だ。その異文化に慣れることで見えてくることもあるだろう。
どちらかといえばこっちの方が多く顔を出している。陽乃が入っている異文化研究サークルの方は人が多いんだ。大学内のサークルに入っている生徒の6割がいるらしい。だからたった10人のサッカーサークルの方が俺には合ってるってことだ。
おっと回想をしている間にもう30分だ。準備しねーと。
――――――――――――
時は流れ5時。
セミナーも終わり、俺はサッカーサークルに顔を見せることにした。
「お、きたなハチマン!」
出迎えてくれたのは今朝の回想で何度も出てきたサッカー好きの奴だ。彼は南米、ブラジルで名はジョアロ・パオロ・オリギという。俺を始め、皆はJPとよんでる。黒人で、背は俺と同じくらいで、痩せ型。でも筋肉はついていていわゆる細マッチョ。そしてなによりもイケメン。ブラジル代表のネイマールそっくりのイケメンである。しかし、彼は南米人特有のノリ、そしてお喋りだ。まあ日本人からすれば異世界の住人のような気がするのだ。だけど南米ではだいたいこんなもんだということらしい。文化って違うね。
あ、それから日本人以外との会話はすべて英語なのでよろしく。お、きたなハチマンも英語なのでよろしく。…これ誰に言ってんの?
「よう」
「なんだ素っ気ないなー。ま、いつものことか」
JPはバルセロナのユニフォームを来ていた。彼はバルサファンである。理由は母国のエース、ネイマールや、南米の有名な選手達がこのクラブにいたかららしい。
ちなみに俺はここイギリスのマンチェスターUのファンだ。日本でも認知度が高い上に、イギリス国内でも人気が高く、よくこのクラブのことについて教えてもらううちに俺はファンになった。
「お、やっぱお前ら来てたか」
「お、ジェームズ!」
ジェームズと呼ばれたこの男は、イギリス人のジェームズ・ショー。俺たちは名前で読んでいる。この男はいわゆるイギリス紳士だ。すごくマナーがしっかりしていて、このサークルの中でもリーダー格だ。まあ俺と同級生だけど。
でもコイツでも熱くなる時がある。そう、サッカーの話の時だ。こいつは幼少の頃からのマンチェスターUファンで、俺がファンになったきっかけの奴でもある。サッカーの話になると、いつもの冷静な佇まいは飛んでいき、目をキラキラ輝かして子供のようになる。逆に凄いと思う。
そして、もう一人も入ってきた。
「今日はこれだけか」
「だな」
そいつの名はペレイラ。彼はJPと同じく南米出身で、彼はアルゼンチン人だ。
彼もまたサッカーが好きだけど、ファンチームは特にないって言ってたな。サッカーを広い目でみたいとか言って。ただ、アルゼンチン代表は別みたいだな。
彼はこのサークルの中で唯一のサッカークラブ経験者だ。たしかアルゼンチンの強豪のリーベルのユースだったかな?リーベルはアルゼンチンでのベストチームである。
まあ紹介できるのはこのくらいかな。今日はこれだけしか集まらないし、残りの6人はまた次回ということで。これ誰に言ってんの?
この後俺達はサッカーの話で盛り上がった。
――――――――――――
サークルが終わり、部屋に戻った俺は部屋の明かりがついていることに気づいた。
「あ、八幡おかえりー」
「おう、ただいま」
そうだった。今日は陽乃が飯を作りに来てくれるって言ってたんだった。
陽乃の料理は絶品だ。俺の好みにの味付けで美味しく作ってくれる。最高だね。
「はい、出来たよー」
「お、旨そうだ」
今日は日本から持ってきた醤油と味噌がメインの和食だ。やっぱ日本人はこれでしょ。
味噌汁をすすると…うまい!うまいしか出てこない!言葉のボキャブラリーが少ないというわけではなくとにかくうまい!
「おいしい?」
「ああ、うまい!」
「ありがと」
陽乃も嬉しそうだ。もう最高です。
俺達は美味しい夕食を食べていった。
――――――――――――
夕食を食べ終わった俺達は、2人でのんびりしていた。
大学での出来事とかいろいろと。実際日本にいた頃にはなかったこうして夜のんびりくつろぎながら2人で過ごすというのはなかった。これも留学のおかげだろうか。
「あ、そういえば静ちゃんから手紙が届いたんだよー」
「ん?なんだ、結婚します、とかか?」
「そんなわけ無いでしょー?」
平塚先生、すみません。本人いたら鉄拳が飛んでくるんだろうな。なんか懐かしいな。
陽乃は手紙を見せてくれた。
「「お二人ともお元気ですか?向こうでの生活慣れましたか?私はとても心配です。特に比企谷な。まあ先生として言えることはもうあまりないですが、どうか体調だけは気をつけてください。それからいい男がいたら連絡を。平塚静」」
最後の一文までは良かったんだけどな。てか平塚先生、日本で出会いがないからってグローバルに手を出さないでくださいよ。もうほんと誰でもいいからもらってやってくれ…。
「静ちゃんもこんな心配してるんだから、私達頑張らないとね!」
「ああ、そうだな」
そうだな。俺達頑張らないとな。
この先何があるかわからないけど、それも試練としてやっていかないと。
続く
さて、前作のやはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメは存在しない。の続編ですね。今回からはイギリスでの大学生活ということになります。
これからも皆さん、応援よろしくおねがいします!
ちょっとここで改めて設定の確認をしますね。
比企谷八幡と雪ノ下陽乃は同級生で共に大学一年生。平塚先生はアラサー。
それから今回出てきた三人も大学一年生です。
今のところこのくらいかな?
では、これからもよろしくおねがいします。