キーワードは残姉ちゃんが居たら……。
とりあえず、細かく修正しました。
なるへそ、そう来たか。
カミサマってのはとことこん俺が嫌いなようだ……もう死んでるらしいけど。
片や日本語が壊滅的な金髪の女の子……これはまあ可愛いから良いとしても、もう片方に関してはどうすりゃ良いか分かりゃしねぇ。
てか、転生悪魔になったお陰で言語能力が最強化してるこの人が居れば俺は帰っても良いよな?
シスター服な女の子と仲良しになれないのは残念極まりないけど、それはもう仕方無いと割りきってさっさと帰って――――
「ええっと、これはどうやって食べれば……」
「これは――えと、隣の男の子みたいにして食べれば良いよ」
「……………………………」
…………。オイ、何でバーガーショップで俺は飯なんて食ってんだ? しかもこの金髪の女の子を隣に、チラチラ此方の様子を伺う所属不明な奴と一緒にという訳の分からないポジションで。
おかしい……この自称姉貴が居るから平気だろうと三丁目の奥さん連れて帰ろうとしてた筈なのに、何でこんな所でこんなジャンクフード食ってんだ? 謎過ぎて僕には訳がわからないよ。
「包みを開いて食べる――あ、美味しい……」
「でしょ?」
「はい、初めての味です!」
「……………………………………………」
俺の居る意味が既に無いとしか思えない。
そりゃあ困ってる美少女がこの街に流れ着いたからとはいえ、こんなチャラチャラした高校生や勘違いしてるバカなカップルだとかが往来しまくるジャンクフード屋なんて入りたくも無かった。
見ろよ。この二人は勝手に楽しんでるが、バカな連中がその中に混じって黙々と食ってる姿に勝手な勘違いをしてくれてるせいで俺だけ損しかしてない。
具体的にいうと同年代くらいの男共から向けられる訳のわからん殺意の視線がな。
「あ、あの……」
「……。なに?」
「う、うぅん、何でも無いよ! あ、あははは」
極めつけは、事あるごとに無言でいる俺が気にでもなるのか、チラチラと自称姉がこっちを血圧でも高そうな赤い顔をして見てきやがることだ。
もう俺も良い年してるし、今更この何処から沸いて来たのか分からん変な奴に気味悪さは残ってるものの嫌悪感情はある程度失せてはいるが、だからといってこんな所で飯を食うほど親しくなんてないし楽しいなんて思わねぇ。
そもそもこういうジャンクフード屋を朱乃ねーちゃんはあんま好まず、自動的に俺も入らなかったので居心地が悪いんだよ。
引き続き向けられる周りの男共から向けられる視線もあってな。
「あの……お二人はどの様なご関係なんですか?」
「へ? あ、ええっとね……」
そんな俺達のどうだって良い関係をまだよく知らない金髪と緑目の女の子である……えっと、そうだアーシア・アルジェントさんが物凄い無愛想になってる俺と自称姉を隣から交互に見交わしつつ当然とも言える質問をしてきた。
既に俺の
最初は何語を喋ってるのかすら分からなかったから何も思わなかったが、こうして聞いてみると実に可愛らしい容姿に合った声で聞き心地は悪くない。
ぶっちゃけ、目の前であの引きちぎりたくなるアホ毛を犬の尻尾みたいに揺らしながら言葉に詰まって俺に視線を向けてくる自称姉さえ居なければ、最近モテ期でウハウハな俺としては是非とも仲良くなってゲヘヘとなりたいが、生憎そんな気が一切起きやしない。
というか、真羅副会長さんと朱乃ねーちゃんの事すらまだ曖昧になってる今、そんな無責任にナンパだとかセクハラなんて出来ない。
一応こんな俺でも、そこら辺のケジメはあるつもりだ。こんな俺でもな。
「………。双子だよ、この人は俺の姉さん」
取り敢えず無言で居る訳にもいかないし、そもそもこの子には何の罪も無いので食い終わったバーガーの包みを折り畳みながら、簡潔にやっぱり引きちぎりたくなるアホ毛を揺らす身元不明人物との『そうなっている事になっている』関係を話すと、アルジェントさんは『へー?』と目を丸くしていた。
「そうだったんですね。ちょっと羨ましいです……」
眩しいものを見るような目をするアルジェントさんに、自称姉が何やら神妙な顔をしている。
聞けばこのアルジェントさんというのは、胡散臭さMAXとしか個人的に思えない宗教団体所属のマジシスターらしく、急に偉い人から『日本の駒王町に行って祈りでも捧げてこい』的な事を言われ、日本語すらまともに出来ないまま放り出されたとか何とか。
所謂『神の加護が一切無い唯一の人間』かつ『神の存在なんて居ても居なくても役に立ちはしない』という考えを持つ俺としては、神の癖にくたばって天界の偽善者共が作ったシステムとやらで誤魔化されてると知らないで、マジになって『神様最高です』と宣う人種が憐れに思えて仕方ない。
「お二人と引き合わせて頂いた主に感謝いたします」
「ぅ……わ、私もアーシアちゃんと会えて嬉しいよ……あはは」
「…………」
アルジェントさんはその典型的な『騙されタイプ』だ。
いやまぁ、俺もなじみとバラキエルのおっさんに聞かされでもしなければ知りもしなかった事実だが、やはり何も知らずに天界リーダーの……誰だっけ? ミカエルって人が作って誤魔化してるシステムに成り下がったハリボテに祈りを捧げてる姿は……何とも言えない気分だ。
自称姉貴は転生悪魔のせいか、アルジェントさんが首にぶら下げてた
まあ、しないけど。
「えっとそれで、アーシアちゃんは教会に行きたいんだよね? 私、その場所なら知ってるんだけど……」
「本当ですか!?」
「うん……いや知ってるのだけど……ええっと……」
「あ?」
結局この引き合わせもアルジェントさんの迷子が起因であり、解決するには彼女を目的の場所まで案内するだけの簡単な仕事。
シスター所属という訳で当然アルジェントさんの目的地は教会であり、確かにこの街の外れに寂れた教会があるのは俺も知ってるし、この自称姉も言動を察するに知ってるだろう。
だが、何で知ってて案内も出来る筈の自称姉がわざわざ此方を遠慮しがちに見てるのかがわからん。
案内できるんだったらさっさとすれば良いのに、何をそんなに俺を気にしてるんだ? 言っておくが道案内が出来るアンタだけで十分すぎる仕事にわざわざ首を突っ込む気なんて無いぞ俺は。
「何かご用事でもあったとか……?」
「ち、違うの! そ、そういう訳じゃないんだけど……」
「そういう訳じゃ無いなら案内してあげれば良いじゃん」
「え!? あ、そう……だね……う、うん……。(は、話してくれた! じゃなくて……ど、どうしよう、この流れって本来は一誠の立場なのに肝心の一誠があんまりアーシアちゃんに関心が無さそうなんて……)」
毎度思うが、この自称姉の俺を前にするとこんなビクビク顔色を窺ってくる様な態度なんだ? 正直イラッとするからやめてほしいし、藁にもすがる思いな顔のアルジェントさんの事を考えてやれよ。
「えっと、私は大丈夫だから……。
それじゃあ案内するからお店出ようか?」
「はい、ありがとうございますリンさん!」
「……………」
やがて観念したのか、そろそろ本気で引きちぎりたくなるアホ毛を気落ちした内心とリンクするようにシュンと垂れ下げながら無理に笑ってる自称姉に、アルジェントさん感激した表情で何度もお礼の言葉を言ってるという姿を、俺は無言で眺めながら『まあ、あの自称姉なら何とかするだろうし、俺は帰るかぁ』などとボンヤリ考え、氷が溶けて味が薄くなっていたコーラを一気飲みして席を立つと、もう仲良さげに見えるお二人さんに別れの挨拶を済ませさっさとサヨナラしちまおうとアルジェントさんに向かって言う。
「じゃあ俺はこの辺で……。
まあ、その人に付いて行けば目的地に行けるだろうし、後は頑張ってね」
「え……」
「あ、は、はい……ありがとうございます……」
案内役が二人いたところで何の意味なんて無く、当然とも言える俺の行動と言葉に何故か二人とも変な反応だ。
まるで『付いて来てくれないの?』という顔だ……………はん。
「何その顔?」
「あ、いえ……出来ればお二人ともう少しお話しながら行きたいな……なんて」
「えと……私も……」
ふーん? こっちの自称姉は別にしてこっちのカワイコちゃんの今の言葉は、一誠的にポイント高かったな。
小動物みたいな目とか表情とか、汚れ無きシスターって属性もあるし……何時もの俺なら『イィィィィヤッフゥゥゥゥ!!!』とこの場で空中二回後方宙返りをして歓喜したのかもしれない。
だけどなぁ……。
「ごめん、幼馴染みの子にこれから会う予定があるから一緒には無理なんだ」
ごめん、無理はものは無理なの。
今まで避けてきた相手と並んで歩くなんて事は、いくら嫌悪感情が薄れた今でも無理。
アルジェントさんは知らんだろうけど、俺はこれを本心じゃ姉なんぞと思えないのさ。
「あ、そうでしたか。それなら仕方無いですね……残念です」
「また朱乃先輩……」
あぁ、俺も実に残念だよアルジェントさん。
けど大丈夫さ……そこの『魅力的で誰からも好かれる完璧な姉』がキミと仲良くなってくれる筈だし、俺なんて刹那で忘れるさ。
だからバイバイ……『またいつかとか。』
一誠にはトラウマがあった。
当たり前の様に信じていた肉親、そして初恋の女の子を兵藤凛という少女の出現で全て消えたという思い出が。
だからこそ一誠は、既に凛と仲良くなったアーシアに必要以上に近付こうとはしなかった。
かつてのように、それまでの宝物が凛という存在によって失われたように、アーシア・アルジェントも恐らくは凛に傾倒するだろうという考えがあるから。
「はぁ~あ、何時までも女々しいぜ俺は……」
それまでの全てが彼女に成り代わり、自分は使い捨てカメラのように見向きもされなくなったあの記憶。
両親も、それまでの友達も、初恋の女の子の全てが何の前触れも無しに突然現れた凛を『まるで最初から居たように受け入れ、そしてちやほやする』
まるで催眠術に掛けられたかの様に一誠は見向きもされず、疎外感だけが残され何もかも信じられなくなるまで追い込まれる。
だから一誠はそれら全ての虚構という重圧から逃げるために、変わってしまった両親を幼心に見限り、のたれ死にしても構わないと本気で思いながら家を飛び出した。
決して誉められる行動じゃない事は分かっていたが、それでもツラい思いをするくらないならそこから逃げた方が一誠にとっては楽だったのだ。
そのお陰で、後の自分のアイデンティティとなる少女とその家族――そして師匠に出会えることになれたのだから。
出会ったその人達は、凛という存在をまだ知らず、一誠と凛を比べる事もしない。
ただひとりの兵藤一誠として接してくれたそれらの人物達は、死にかけていた一誠の心を元のやんちゃな少年に戻すに十分すぎる程優しかった。
ちょっと年上の女の子、美人なお母さん、めちゃくちゃイカツイおっちゃん……そして美少女な師匠。
後にもう一人年上の女の子と同い年の女の子と出会う事にもなり、一誠は無くし掛けた心を取り戻して再起した。
「アレが何者なのか……結局俺にはよく分からなかった。
けれどもう彼女も彼女なりの人生を送ってるし、俺にそれを否定する権利もない……。
だからもう恨むなんて事はしねぇけど、フッ、好き好んで近くに居たくもない」
身元もわからない、考えてることもわからない、目的もわからない。
何もかも不明瞭な双子の姉を一誠はもはや恨む事はしていない。
それは彼には彼なりの大事な人達が出来たから、そしてその人達の恩に報いるためにひたすら上を目指すからであり、その為に一々凛の動向を気にする余裕なんて無いのだ。
彼女は彼女の人生を、一誠は一誠の人生を。
世間的に姉弟なのかもしれないが、歩む人生はその人個人のだけのモノなのだから。
「さぁてと、ごめんなさいしないとな!」
一誠にとって大事なのは肉親でも無ければ姉でもない。
初恋の女の子への気持ちはとうに風化してる。
それよりも大切な人が今は居るのだから……。
「土下座する前に何とかねーちゃんに話を聞いてもらう体勢を作らないといけねぇな……ふぅ、モテる男の辛いところだぜ」
日が傾き始める住宅街を歩きながら、一誠はまっすぐ空を見上げてニヤニヤ笑い、そして走り出す。
全ては自分を救ってくれた少女の為に……一誠は全力で走った。
私は……どうしても一誠くんが大好きだ。
どうしても他の女の子にデレデレする姿を見てるのが我慢できない。
それが遠からず一誠くんに愛想を尽かされてしまうかもしれないというのにも拘わらずだ。
「…………」
一誠くんは自分で『無責任な事を言ってしまったばかりに、ねーちゃんを縛り付けてしまった』と言ってるが、それは違う。
確かに弱々しくも意志のある瞳で、どうしようもなく落ち込んでいた私に言ってくれた言葉によって好きだと自覚はしたかもしれない。
けれどそれだけじゃない……決してその言葉だけで惹かれた訳じゃないのに、一誠くんは分かってくれない。
私の態度がそう思わせてしまってるから……と言われたらそれまでだけど。
「……………」
部活でやることがなく、凛ちゃんに続いて一足早く帰る事にした私は、周囲の生徒達の憧れの視線を受けても何の感慨も沸かずに正門を出て一人歩く。
隣には誰も居ないし、視線も自然と斜め下だ。
ふふ……怒りで我を忘れていたとはいえ何で一誠くんを無視する様な真似をしたのか、あの時の自分にビンタでもしてあげたいわ。
「あら、駒王の制服着たカワイコちゃんが一人だなんて物騒だぜ?」
「オレ等が家までお供してあげよーか?」
「………………」
一人で帰ると何時もうるさいのに声を掛けられる。
全然知らない男の人で、頭と素行の悪そうな背格好……。
オープンにスケベな一誠くんとはまるで違う、何の魅力も沸かない人達。
「おいおい、無視はひどいなぁ?」
「そうだよぉカワイコちゃーん」
「……………。離してくださる?」
こういう手合いは無視するに限るのだが、今回の人はどうも気安いのか素通りしようとする私を顔面ピアスだらけの男が通せんぼし、見た目だけならガタイの良いもう一人が私の腕を無許可で乱暴に掴む。
虫の居所が悪い私は、不愉快だという顔をして二人の名も知らない男共に警告をするが……。
「あらら、怒っちゃった? 良いね、そんなお顔も可愛いぜ?」
「いじめたくなるなぁ~」
「…………」
私の姿だけでか弱いと判断してるのか、ニヤニヤとゲスな笑い声を出すだけで離してくれず、通せんぼをしてきた男の手が私の身体に触れようと手が伸びてきた……。
…………。警告は一回きりだ、見た目だけで判断したらどうなるかわからせてやる。
相当にイライラしていた私はそのまま二人を伸そうと殺気を放ち、気絶して貰おうと軽く力を解放しようとした――
「あ、居た居た!」
その時だった。
後ろから聞こえるのは、私にとって毎日でも聞きたい人の声。
喧嘩して、一方的に無視してしまっていた大好きな男の子の快活な声……。
私は当たり前の様に心臓がドキリとし、チンピラみたいな反応しながら振り向く男共と一緒になって振り返ると、そこにはやっぱりカバンを片手に何時ものヘラヘラした笑顔をしながらゆっくり近付いてくる一誠くんの姿があった。
「ぁ……一誠く――」
「あーん? 何だ小僧?」
「今お兄さん達忙しいから後にしてくれませんかねー?」
うるさい、私の声をかき消すな。
というか何時まで私の腕を――ぁ……。
「「ひでぶっ!?」」
「何勝手に触れてんだコラ。
殺戮してやるから迅速に死亡しろやボケ……!」
「「べ!? ばわっ!?」」
あっという間というか、速いというか私の腕を今は一誠によってボコボコにされてる男達が掴んでると視認した途端、風紀委員とは思えないやり方で殴り付けていた。
まるでヤクザの喧嘩みたいに……。
「い、一誠くん、もう良いって……!」
このままじゃあ本当に殺しかねない一誠くんを慌てて私は止める。
……。こうやって誰が相手でも私が危ないと判断したら突っ込むのは昔からそうなんだけど……こう言うことを当たり前の様にしてくれるから私は嫌いになれないのよ。
「ペッ、このドブサイク共が!
テメー等が朱乃ねーちゃんをナンパするなんざ千年はえーんだよ。
精々木場のくそイケメンクラスに輪廻転生してから出直せや!」
「「あ、べし……」」
「もう良いから!」
これじゃあ風紀委員長も何も無いわよ。
人気の少ない場所で助かったわ……。
うーむ、ねーちゃんがブサイクな野郎共に囲まれてるのを見てつい反射的にやっちまったぜ。
「まったく、あの程度なら私一人で何とでもなるのに……」
「あぁ、いや……ついな? あははは」
しかしアレのお陰で最近ずっとだった変な空気は薄れた様で、公園にやって来た俺達は割りと普通に話ができた。
そう考えるとあのブサイク共には感謝してやらんこともないかもしれない。
「はぁ……何だか怒ってたのが馬鹿馬鹿しく思ってきたわ」
「あー……その事なんだけど」
「えぇ、えぇ……もう良いわ別に。私も少し過敏になりすぎてたし」
おぉ……よくわからんけど許されてる方向? やったぜ俺!
「はぁ~ぁ……まさか真羅さんと昔会ってたとはね……」
「アレは相当な偶然だったというか、まさか向こうが覚えてるとは思わなかったというか……」
「どうせまた変な事でも言ったんでしょう?」
「た、多分」
公園まで超絶ど丁寧エスコートをし、VIPの如く扱い、ちょっとお高い飲みものやら何やらをして何とか機嫌を回復させるように努める。
正直、自業自得が祟ってねーちゃんに無視されるのはかなり辛いのだ俺も。
「まぁ良いわ。一誠くんのお嫁さんになるのは私だから、安心院さんじゃないけどある程度は許してあげる。
そろそろ私も大人な心を持たないとね」
「ア,ハイ」
お嫁さんて……なんて言ったらまたヤバイのでイエスマンの如く頷いておくと、ねーちゃん的には満足したのか久々に笑顔をみせてくれた。
「ふふ、ごめんなさい一誠くん……大好きよ」
「ア,ハイ……」
「お詫びに今日は私の家でご飯作ってあげる。だから行こ♪」
「ア,ハイ………………ってマジ?
おお、今日の晩飯は豪華確定じゃねーか……。
よし、だったらなじみにも――」
「むー……彼女は後で私から言うから早く!」
「お、おおぅっ!」
一応寝床を提供してるなじみにも話をしておこうと携帯を取り出すも、その前にねーちゃんに取り上げられてしまった。
まだねーちゃんになじみの話はタブーなのか、学校や表では見せない素の姿で頬を膨らませながら俺の背中に飛び付き『おんぶ』をせがむので、そのまま背負いながら朱乃ねーちゃんのお家目指して歩くのであった。
「ねぇ、また他の女の子の匂いがするんだけど?」
「え゛? あ、そ、それはアレだ。
姉貴と姉貴が引き連れた迷子の子とちょっと対面する羽目になってだな……」
「ふーん?」
「いやマジだぞ? 何なら明日姉貴に聞いてくれても構わないし」
「そ、なら良いや! ほら早く一誠くん!」
……。こんな風にちょっとあったけど、概ねねーちゃんとは仲直り出来たと思う。
しかし、何で分かるんだろか……二人の女の子の匂いがするんだけどとか超ピンポイントに。
終わり。
オマケ
~一誠くんの携帯の待ち受け画面とお宝~
結局元の鞘に収まる形となった朱乃は、一誠におんぶされながら自宅を目指す最中、一誠から取り上げていた携帯を何と無くの気持ちで見ようとホーム画面を立ち上げたのだが……壁紙設定していたソレを見てちょっとだけムッとなり何も知らずに歩く一誠に聞いてみようと片腕を首に回しながら話し掛けた。
「ねぇ、この待ち受け画面ってどういうこと?」
「待ち受け? あぁ、それは『魔王少女☆レヴィアたん』の主人公、レヴィアたんの限定待ち受けだよ」
てっきり『いや違う! こ、これはだな……!』とテンパるのかと思いきや、何て事なく返す一誠に朱乃は目を細めて取り敢えず耳を傾けてみる。
「偶々エロ画――コホン、健全なネットサーフィンしてる時に発見した、そのサイトのみで配信されているメチャコアな特撮ドラマなんだよ。
で、小バカにしながら見てたら意外とハマってしまい、最近は洒落のつもりでファンレターとか送ったらその待ち受け画像と一緒に返事が返ってきて……って、まさかねーちゃん的に許されないのか?」
決してイヤらしくない目で、単純に楽しかったからハマっただけだと訴える一誠。
ちょっと際どい変身シーンを見て完全にハマったという事実は一誠だけの真なる秘密だ。
「そうなの……ふーん? まあ、それなら良いけど」
聞いてる限りでは嘘では無いと察した朱乃はソレ以上は追求せず、ホーム画面いっぱいに映って様々なあざといポーズをしてる『魔王少女☆レヴィアたん』なる姿をジーっと観察し……顔をひきつらせた。
長い黒髪をツインテール縛り、子供向けで誤魔化されない肌の露出したピンク択の服と武装らしき棒。
「……。(これって完全にあの人よね……)」
人間でありあんまり興味が無いという理由で大まかな三大勢力について知らない一誠は、この魔王少女なる人物の正体をどうやら知らない様だが、転生悪魔である朱乃には見覚えがあった――というかインパクトがデカ過ぎて無理矢理頭に叩き込まれたといった方が正しいか……。
「何なら今度一緒に見る? 今配信されているのは第2シーズンなんだけど、この前レヴィアたん役の人から第1シーズンのBlu-rayBOXをタダで送ってくれたんだよ。
何でも『人間の男の子で熱心なファンはキミだけだよ☆』――なんてキャラを守った手紙付きで」
「ふ、ふーん……こ、今度機会があったらね」
人間の男の子っていう表現もキャラも全部素なの一誠くん……と、実は知ってるとは言えない朱乃は相当にハマってるのか勧めてくる一誠には見えないように苦い表情を浮かべ、この話はすべきでは無いと話題を変えるべく一誠の携帯を動かし……。
「何これ?」
ショートカットのアイコンをタップした先に表示されたありとあらゆるデーターに、朱乃は思わず携帯を握り潰しそうになった。
しかしそれは我慢し、朱乃の様子に気付かず悠長にレヴィアたんがどうのこうのと語る一誠の首に両腕を回し――
「で、不思議な力を得たレヴィさんは愛と何とかを守る秘密の魔王――うげぇぇ!?!? 首がくる――じぃ!?!?」
全力でチョークを開始した。
そして倒れそうになる一誠に、甦る怒りをぶつける。
「こ、これは何なの?
縛り付けた人妻との6日間とか、お隣の奥さんとのイケナイ関係だの……その他65GB分のエッチなデータは?」
「うげっ!? な、なんでキー付きの隠しファイルにいれたのにバレ――ぐぇぇぇっ!?!?」
身に覚えがありすぎる単語を朱乃の口から聞かされた一誠は、苦しみなが認めてしまう発言をしてしまった。
どうやら隠しキーの設定をし忘れたのを忘れたまま、朱乃に取り上げられた様だ。
「流石にこれは無い。アナタはいくつなの?」
「じゅ、じゅうななしゃい……」
「そうね……なのに、どう見ても成人向けのコレについてのコメントはあるかしら?」
「ぐっ……ぐっ……あ、朱璃さんに筆下ろしして貰えたら全部消去してもいべべべべ!?!?!?」
一誠の背中にしがみつき、体内に宿る雷の巫女と言われるだけの魔力を解放して電気処刑のごとく一誠にぶつける。
しかも自分より母親にどうこうされたいと言われたので尚更だ。
正直今すぐにでも椿姫辺りを連れて、『一誠はこういう人でアナタの思ってる以上にスケベだからやめた方が良い』と『親切』で言ってやりたくなるくらいだ。
「お母さんが良いんだ? へー?」
「しびびび! ち、ちが……ま……!」
「ごめん、何を言ってるのか分からないわ一誠くん。
え、もっとやって欲しい? うん、わかったわ……それ!」
「びゃびゃびゃ!?!?」
やっぱり浮気は許せないby朱乃おねーちゃん。
補足
凛さんは望まずして他人を物凄く惹き付ける変な才能があります。
故に、先にアーシアさんと出会った事により一誠のアーシアさんに対する興味は――
『あぁ、完璧な自称姉様なら彼女も何とかなんだろう』
てな感じで再構成前に比べるとかなりドライです。
……。まあネタバレじゃないけどこの後呪いのごとく凛とセットで絡みますがね。
ちなみに一誠くんから見た例のアホ毛は作中何度も思ってたように
『引きちぎりたくなる衝動に駆られる』
その2
特定のブログを周ってたどり着く幻のブログにのみ置いてある特撮ドラマ『魔王少女・レヴィアたん☆』
閲覧者は人間界ではたった一人らしく、そもそも都市伝説となっていた。
レヴィアたん。何者なのかは一誠も全然知らない……。
一体何者なのだ(棒)