風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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一誠君にモテ期。

そのモテ期は転生者のお姉ちゃんも含まれちゃう。



モテ期イッセーとお姉ちゃんとシスターちゃん

 うーん参りましたねぇ。

 いやー困ったねぇ……マジで。

 いやいや、コイツはモノホンにガチでお困りになっちまったぜぇ?

 

 

「ク、クケケケケ!」

 

 

 人生には3度は訪れるとある周期がある。

 それが聞いて驚けの『モテ期』。

 その名前の通り、一定の期間モテモテになる嬉し飛び跳ねなどきどきするイベントであるのだが、あひゃひゃひゃ、いやいやいやいやいや参った参った。

 まさかそのモテ期が俺様にも訪れるたぁ……。

 

 

「ド変態と罵られてもモテ期は来る!

今度の論文はこれで決まりだ!! あっひゃひゃひゃ!!」

 

 

 笑いが止まらんね。

 モテ期万歳だぜ!!

 

 

 

 

 

 思わぬ告白をされた一誠。

 しかもその相手は、何と無く一生相容れそうに無さそうな、絵に描いてそのまま飛び出て来たような真面目少女なのだから、一誠も何時ものセクハラ的言動や行動も出来なかった。

 

 

「おもちが……じゃなくて『はい』じゃねーよ。正気かアンタ!?」

 

「何が?」

 

 

 ツンからデレという流れに危うく流されかけた一誠だったが、変なところで変に真面目に――いやヘタレとなる気があるせいか、ハッとしながらどうしようもない鈍感でも無ければ分かってしまう程のストレートな告白をしてきた椿姫にわたわたと詰め寄る。

 

 

「取り敢えず女の子の尻ばっか追い掛けてばっかりで、見てるだけで石をぶん投げたくなるくらいにムカつくとか言われてる俺に対して何を言ってるんだ!

いや、確かに餓鬼の頃から変に色気付いたせいで変な事を言ったかもしれんが……」

 

 

 『俺がこんな黒髪ロングの眼鏡っ娘美少女に好かれるわけがない』的な、どっかのラノベみたいなタイトル文句が頭の中で行ったり来たり状態のテンパり全開で、『考え直せ、今ならまだ間に合う、早くしろー! 間に合わなくなっても知らんどーー!!』と、椿姫の両肩を掴んで揺さぶる一誠。

 

 基本的に彼は避けられる事やバカをやって嫌われる事の方に慣れすぎて『好意』に対しては免疫が実はそんなに無い。

 故に、ツンツン副会長さんモードからあの時出会った女の子モードにいきなり切り替え、『一度じゃなくてずっデートする』などと宣う椿姫に考え直せと何故か良心の呵責的な気持ちで説得するのだ。

 しかし椿姫は決めてしまった己の道を今更変えるつもりは毛頭無いらしく、ツンツン副会長さんモード……じゃなくて一個人・椿姫ちゃんモードにのみ存在する可愛い笑顔で両肩を掴む一誠の手をソッと包みながら言った。

 

 

「大丈夫よ一誠くん。

私はどちらかと言えば姫島さんタイプじゃなくて安心院さんタイプだから、セクハラ言動や行動……あと無意味に他の女性を口説きさえしなければ、姫島さんと安心院さんだけなら何をしてようと文句は無いわ……」

 

「いやいやいや、間違えてるからそれ!

そんな悟り開いた目をしないでくれませんかね!?」

 

 

 転生した悪魔なのに妙に聖母の様な暖かい微笑みを浮かべて、色々と道徳観念ぶち壊しな事を宣言する椿姫。

 どうやら余程幼い頃の一誠と根底が変わってなかった事が嬉しかったようだ。

 一誠とてそこまで鈍くない。

 椿姫の言うことがどういう事かくらいは解っている。

 

 これこそまさに常日頃からだらしない顔で宣う『ハーレム』という奴なのだが、こうして直面すると素直に喜べない。

 

 自分のせいで人生観を狂わせてしまった朱乃。

 人外で何を考えてるのかあんまり分からない師匠のなじみ。

 そして小さい頃に出会い、最近になって本当の意味で再会した椿姫。

 

 

 誰もが認める美少女から好かれてる……それは正直誰かにドヤ顔で自慢したい話であるのだが……。

 

 

「いや、俺が言うのも何だけど、アンタも男の趣味が悪すぎだぜ……」

 

「自覚はあるわ。でも……ふふ、たまたま好きな男の子がアナタという、趣味の悪い男ってだけよ?」

 

「………ぬぐ」

 

 

 何処か朱乃を思い出させる笑顔で考え直すなんてしませんと宣言する椿姫に、一誠はこれでもかというくらいに渋い顔をして黙ってしまうのであった。

 

 

 

 

 

「~♪」

 

 

 というイベントがあったのが約3日前。

 結局、あの先輩とは最後まで自分の言ったことを撤回しないままあそこでは別れたんだけど、そこからは彼女自身も吹っ切れたのか、個人的に俺とひょっこり会った時は高確率で『デレモード』で接してくるんだわ。

 あの、取り敢えずお固いイメージしかない生徒会の――しかも副会長の人が普通に女の子で接してくるんだぞ? そらお前、自分でモテ期来たわと思うし、今日のパトロールだってテンションあげあげにもなるわい。

 

 

「ちょっとちょっとイッセーちゃん!」

 

「あ、三丁目の角の奥さん?」

 

 

 問題があるとすれば、朱乃ねーちゃんとまだ正式に仲直りしてないという所なんだが……何か良い案は無いものか……なんて鼻歌混じりで歩いていると、向こうから小学生と中学生の息子を持つ人妻さんが慌てた様子で俺の名前を呼びながら走って来て、返事をする暇も無く俺の手を引っ張りながらちょっと来いと言っている。

 

 

「お、なんすか? まさか旦那に内緒で俺と不倫――」

 

「アタシは旦那一筋よ!

そうじゃ無くてとにかく来ておくれ!」

 

「おわーっ!」

 

 

 小・中学生の子供を持つとは思えん若々しい姿+おばちゃんみたいな服装なのに、その下は実にムチムチしてそうなボディを持つ奥さんに即フラれつつ、半ば無理矢理引っ張られながら連れていかれた訳だが……何だろ?

 こんな慌ててる奥さんを見るのは実に新鮮な気分にさせるんだが、それ以上に何か大変な事があったのかと察した俺は、口説くのは後にして黙って付いて行く事にした。

 

 

 

「ハァ……」

 

 

 一誠にモテ期が到来し、学外でのパトロールの最中に近所の奥さんに連れていかれているその頃。

 茶髪のボブカット……そしてアンテナを思わせるアホ毛が特徴的な女の子、兵藤凛は思っていた以上に厳しい弟との関係修復について何度もため息を吐きながらトボトボと町中を一人で散歩していた。

 

 

「何で『めだかボックス』の……しかもその中でもバグキャラみたいな人がこの世界に居るんだろ……。

しかも一誠とキスしてたし……うぅ……」

 

 

 そう一人で嘆きながら歩く凛。

 チャームポイントのアホ毛も凛の精神状態とリンクするかの如く垂れたがっている。

 

 

「うぅ……でも安心院さんのキスの意味って、確か能力(スキル)を貸し出す為で深い意味は無いんだっけ?

いやそれでも……やっぱりアレを見せられると胸がズキズキする……」

 

 

 転生者たる凛には、転生前の知識がある程度備わっており、その中には一誠の師匠と名乗る安心院なじみについてもある程度ある訳だが、知っているからこそ、彼女が手に負えない存在なのもしっかり理解しており、正直彼女をどうこうすることは不可能に近かった。

 

 それでも、まだそれだけなら良い。

 凛からすれば別に安心院なじみはイレギュラーだけど、敵意があるわけでは無いのだから。

 しかしながら、彼女が妙に一誠を気に入っているというのなら話は別だった。

 ここ数日、同じく一誠に想いを寄せる朱乃の様子がおかしいということもあるし、恐らく随分前から安心院なじみを顔見知りになっている事も想像できる。

 

 つまり……安心院なじみは明確に一誠をお気に入りなのだ。

 

 

「自業自得で一誠に嫌われてるのに、あんな人まで現れたらますます私なんて……くすん……」

 

 

 凛にとって転生前の兵藤一誠という存在は所謂創作された存在だった。

 そんな存在を凛は所謂『いきすぎたファン』レベルで好意を持っており、転生する事になった時は真っ先に彼の近くに居れるポジションを志願した。

 

 特別な力なんて要らない。

 ただ、彼の近くで彼と一緒に居たい。

 

 そんな小さな願いを込めて生前と変わらない容姿のまま転生した凛だったが、転生後の人生はそんな彼女の願いを嘲笑うかの様に真逆の道を歩まされた。

 

 特別な力なんて要らないと願った筈なのに、本来一誠が持つ力だったそれが宿っていたり。

 転生後時系列が適当にされたお陰で、一誠以外は『自分が兵藤家の長女として生まれた』と認識されてる癖に、当の一誠には『5歳の誕生日に急に湧いて現れて姉と名乗ってるヤバイ奴』とハッキリ認識されていて、周りはそれを知らないので一誠が頭のおかしな奴扱いをし、とうとう家出までしてしまったり。

 一番仲良くなりたかった一誠からは、上記の事があって嫌われてると来た。しかも、家出してからは一度も帰らず、いつの間にか朱乃と幼馴染みになったり、安心院なじみと出会ってあり、最近じゃ本来一誠とフラグなんて立たない筈の真羅椿姫からも好意を寄せられていた…………。

 

 

「みんな胸が大きいんだよね……。

安心院さんも決して小さくないし……それに比べて私は……」

 

 

 しかも皆が皆一誠のお好みど真ん中な女の子ときた。

 歩きながら自分の全く成長の兆しが無いソレと、一誠に好意を寄せる女性達のソレを思い浮かべて比べ、より惨めな気分になる凛。

 いや、決して無いわけじゃない。

 こう……あるにはある……ふにょんとはする。

 けれど、一誠が求めるのはドタプンとした大きさであって凛の持つレベルはお呼びじゃないのだ。

 そうでなくても凛自身に一誠は無関心なのだ……関係を少しでも良好にしたいという以前の問題だった。

 

 

「一誠……」

 

 

 胸も少ないし、本人から避けられてる。

 周りはあの弟の何が良いのかとよく言われるが、それでも凛は一誠が好きだった。

 もうどうしようも無く好きだった。

 というか、近親者として転生したことを後悔してるレベルでだ。

 

 此処だけの秘密で、あんまりにも一誠が恋しすぎて自室のベッドの中で夢想しながら………………………なんて事も1度や2度ではない。

 というか、むしろ犯してくれるならやってくださいとすら思ってる。

 

 

「……。ごめんさい一誠……私もド変態なんだ……」

 

 

 しかし無い。

 現実は非情だ。

 近親者という時点でそんな未来はあり得ない。

 いくら夢想しながら自分を慰めても、一誠はその事を知ろうともしない。

 というか、多分高確率でドン引きする。

 そしてますます近付こうとはしなくなる……。

 

 

「寂しいよ……いっせー……」

 

 

 兵藤凛……困ったお姉ちゃんだった。

 ブラコンという言葉なぞ生温い感情を一誠に向ける……残念なお姉ちゃんだった。

 

 だが、一誠の事に関してだけは不運しか無い彼女には不思議な程に人を惹き付ける独特な魅力があった。

 例えば、凛の後輩である搭城小猫なんかは、凛を姉の様に慕っていて懐いており、同級生の木場祐斗に至っては、一誠以外だと意外と母性的な面が多い凛に惹かれていたり実はする。

 

 つまりだ、何が言いたいのかというと……。

 

 

「うわっ!?」

 

「わっ!?」

 

 

 望まずにして主人公(イッセー)の代わりにされた主人公(リン)は、本来の出会いも代わりに勤めてしまうのだ。

 望む、望まずに拘わらず……

 

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「い、いえ大丈夫です……こちらこそ――え?」

 

 

 一誠、イッセー、いっせー

 さっきからずっとそれしか頭に入らなかった凛は、当然として注意力が大幅に欠けていた。

 そのせいで人とぶつかってしまった凛だったが、謝ろうとしてぶつかってしまった相手に目を向けたその瞬間……見覚えがあるその姿に身体が硬直してしまった。

 

 というのもだ、凛にはこのぶつかってしまった相手に思いきり見覚えがあったのだ。

 厳密にはアニメかラノベの中でしかまだ見てなかったという話なんだが、とにかく知っていた。

 

 

「あ、あのお怪我は……?」

 

「あ、う、うん……大丈夫、です……あはは」

 

 

 コテコテの神様を信仰してますと主張するシスターの制服を着こなす少女。

 こちらを心配そうに覗くそのグリーンの瞳にケープから除く金の髪……。

 そう……彼女に凛は見覚えがあった。

 これもまた、本来なら一誠が出会うべき相手の一人……。

 

 

「えっと……此処で何かしてたの?」

 

「あ、は、はい……。私、アーシア・アルジェントともうしまして、ちょっと道に迷ってて……って、あれ? 言葉がわかる……?」

 

「え、あ……う、うん……外国通訳のお勉強してるからある程度は……」

 

 

 アーシア・アルジェント……その人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、奥さんってば強引なんだから……!

で、本当にどうしたんすか?」

 

 

 このまま愛の逃避行も悪くねぇな……とかとか夢想しながら連れていかれること5分。

 そろそろ辺りも暗くなり、子供達も居なくなってる公園に一体何があるのか……ハッ!? ま、まさか旦那が構ってくれないからって俺を使って――

 

 

「さっき夕飯の買い出しの帰りに女の子と会ったんだけど、どうもその子日本語が分からないみたいなのよ」

 

「………あ、え?」

 

 

 え、なんだ……違うのか。

 モテ期突入したからてっきり人妻からもモテモテだと思ってたのに……ちぇー

 あ、でも今女の子って言ってたな……。

 

 

「なるほど……でも俺も外国の言葉とか全然無理なんすけど……」

 

「え!? イッセーちゃんも駄目なの!?」

 

「あ、いや会ってみないと分かりませんけど。

ほら、案外ジェスチャーとかで何とかなるかもしれないし……」

 

 

 最悪、色々と逃げる能力(スキル)で調整すれば普通に話せるしな。

 これが外国人の男とからだったら、そのままさよならバイバイしてたけど、女の子と聞かされたら行くっきゃねーっしょ。

 という訳で、ちょっと不安そうにしながらも案内を続ける奥さんに引っ張られることそれから約2分後に、その問題の外国人の女の子を待たせているらしい場所へと来たのだが………………。

 

 

 

 

 

「へぇ、その人が誰か連れてくるから待っててって言ってたんだ?」

 

「ええ、日本語でイマイチなにをおっしゃっているのか分かりませんでしたけど、身ぶり手振りで何となく……あ、来ましたあの人ですよ! ……あ、誰か連れてます!」

 

「あ、本当……………………だ……?」

 

 

 確かに外国人の女の子は居た。

 何か、萌えを感じさせる格好をした女の子が、多分必死こいて『誰か連れてくるから待っててくれ』とジェスチャーしたんだろう奥さんの戻ってきた姿を見て明るい表情を浮かべてるのが、視力の良い俺にはよく見えた。

 うん……ついでに隣でギョッとしか顔をしてる人もな。

 

 

「あら、女の子と一緒に居るけど、あの子の制服ってイッセーちゃんの通ってる高校のじゃないの?」

 

「…………。そっすね……えぇ」

 

「?」

 

 

 俺は親とは喧嘩別れしたと、近所の人達に言っており、兵藤という珍しくも無い苗字のお陰でこの兵藤凛と兄弟という事は伏せて来た。

 故にこの奥さんが自称姉と俺が嘘っぱちの兄弟関係だということも知らないし、シスターちゃんはもっと知らない。

 

 

「何だかよく分からないけど、キミってこの子の言ってることがわかるの?」

 

「え、あ……はい……いちおう……」

 

「あらそうなの? なーんだ、イッセーちゃんを引っ張ってくる必要が無かったわね! ごめんごめん!」

 

「いえ、別に」

 

「? ?」

 

 

 ……。あーぁ、モテ期とチョーシこいたらすぐこれだ。

 




補足

着々とヒロイン度を稼ぐ椿姫さん。
学園内だと副会長モードだけど、プライベートだとエラくデレる。

 何せライバルが強敵すぎるからね(笑)


残念な思考だけど、どっかの帰宅部の夏希さんとほぼ同じの容姿の彼女に無関心な一誠。

しかし、夜な夜なベッドの中でも夢想しながら………………という話がある感じ、寧ろ本能で逃げてるのかもしれない。
※夢想しながら………………の………………は――――まあ、ね? ナニと考えといてくだせぇ。

その2

一誠がらみだと残姉ちゃんですが、それ以外だと割りと良い娘さんではあります。
小猫さんからはかなり慕われ……いや懐かれてますし、木場きゅんからもかなり好かれてますね。

というのも、凛さんって一誠がらみが無ければ相当に母性度が高いというか……一誠さえ絡まなければね。


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