風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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風紀委員長一誠が風紀委員長一誠として覚醒したもう一つの理由。

それは、割りと親身に全てを叩き込んでくれた――――


『師匠は完璧さ……胸以外はな』byイッセー

 物凄い唐突なんだけど、俺は一人暮らしだ。

 両親と悲しき別れがありましたからとかじゃなく、喧嘩別れして勘当同然で家を飛び出したから、俺は一人暮らしだ。

 あぁそうだ、俺は兵藤って苗字を名乗ってるが勘当されてるよ、両親という存在が信じられなくなってからな。

 

 

「ふぁ……」

 

 

 今にも崩れそうな我が住みか。

 入り口のネームプレートも風化しちまって、アパートの名前なんて分かりゃしない。

 壁や天井は水漏れの跡のシミだらけ、階段も一段一段体重を掛けて上る度にギシギシと嫌な音が聞こえるし、他に住民が居ない部屋の扉を横切り、一つ、二つ、三つ目の突き当たりに位置する部屋が俺の今の住みかだ。

 

 

「ぬ……? また立て付けが悪くなってら……」

 

 

 レトロなんて生易しもんじゃない。

 近隣住民からは廃墟扱いさえされている程に老朽化してるせいで、部屋の主を潜らせる扉すら満足に開かない。

 無理矢理こじ開けるようにしなければ入らせて貰えないなんて、最初はちょっとした文句も言ってたけど慣れればどうってことない。

 

 

「っと、ただいま……って誰も居ないけど」

 

 

 家主すら潜らせないぽんこつセキュリティのドアをクリアーし、中に入った俺は靴を適当に脱いで畳の上へと踏み込み、プラプラと吊るされた紐を引っ張って電気を点灯させる。

 スイッチなんて便利なものはない。電灯も一昔前の白熱電灯で、夏なんか蛾がヒラヒラとよってきやがる無機質な白光。

 在庫処分セールで買った小さな布団を真ん中に、部屋の隅には洋服箪笥と、近所の人が新型に買い換えるとかで捨てる予定だった所を頂いた古いテレビとそれを支えるラックとDVDプレイヤー

 8畳ワンルーム。奇跡的にトイレと風呂付きな部屋だけど、余計な物は一切置いてないので割りと広く感じるこの部屋こそが、俺様の城って事だ。

 

 どうよ、とてもじゃないけど合コンしたおんにゃのこをお持ち帰りは出来ねー部屋だぜ。

 

 

「……はぁ」

 

 

 持ってた鞄を適当に放り投げてから、明日にでも干す予定の布団の上に横になった俺は、チラチラと小さな蛾が電灯の光に寄っているのも追い出す気にもなれずボーッとしていた。

 何時もならDVDでも観るのだが、ねーちゃんを家まで送って来たせいか、観る気にもなれない。

 このアパートは当然TVの電波を受信する環境が無く、貰ったTVの使いどころは100%DVDの視聴だったりする。

 

 

「はぁ……ときめきメモ○アルなときめきがしてぇ……」

 

 

 そんな環境でも、個人で住むには悪くないと思う俺は、今日も結局ホイホイとねーちゃんの好きにさせ、最近ますますモテモテおっぱいハーレムから遠ざかっている現実に軽く凹んでいた。

 

 いや、別にねーちゃんが悪いんじゃないんだけどさ……こう、もう少しエロゲー……じゃなくてラブ○ラスでもない普通にときめきメモリアルな高校生活を送りたいというか……。

 最近はねーちゃん自身が俺との関係を隠さなくなってきてるせいで、野郎からもおんにゃのこからも敵意バシバシな視線を向けられてしまってるのが……なぁ。

 これじゃあおっぱいハーレムなんて夢のまた夢――

 

 

「などと、相変わらず欲望に素直なキミの姿はお笑いだったぜ?」

 

 

 …………………………寝よう。

 うん、寝よう。

 せめて夢の中ぐらい誰の干渉も受けず、右見ても左見ても、上も下も前も後ろも巨乳なおんにゃのこに色々と挟まれる素晴らしき夢を見よう。

 真横から聞こえる声は知らんし、俺は何も聞かねぇし、お眠お眠――

 

 

「おいおい。キミの愛する師匠が来てやったのに寝るのか? そうか……なら起きた時に南極でしたというささやかな悪戯を――」

 

「ういっす師匠! 遠路はるばる御苦労様ーーーっす!!」

 

 

 は、やめた。

 何か急に目が覚めた。

 今から誰かにセクハラでもしてやりてーくらいにね。

 決して寝て起きたら南極でしたなんて悪夢を味わいたくないからとかじゃない、真横でニタニタしながら此方を見てた――つまり我が師匠が来てくれたのにおもてなしをしないなんて正義じゃないのさ。だろ?

 

 

「やっほー一誠。

毎晩夢の中で熱い夜を共に過ごしてたけど、こうして現実に向かう合うのは、キミが高校進学をした時以来だね」

 

「そっすね」

 

 

 返答間違えて南極に飛ばされて堪るかと、おっかなビックリな内心を隠せずに、口調に出す俺は餓鬼の頃に出会ってから『全く容姿の変わってない』師匠を見て、何となく正座する。

 誰もが目を引くだろう『かわいすぎる魅力的な顔立ち』。

 誰もが目を引く長い黒髪と何と無く特徴とすら思えてしまうヘッドバンド。

 そして、どっかのアニメキャラみたいな魅力的な声。

 

 内面さえ抜かせば誰もが羨み、誰もが欲しがる人として完璧な姿である師匠は、黒いハイソックスにセーラ服というごく普通の女子学生的制服を着て正座する俺に、相変わらずな笑顔を見せていた。

 

 

「師匠が此処に来るなんて珍しいね。

何かやるつもりとか?」

 

「コラコラ、毎度言わせる気か?

僕のことは親しみと愛情をもって『なじみ』と呼びなさいとさ?」

 

「……あ、うん」

 

 

 朱乃ねーちゃんと同じ様に、何もかも無かった俺に道を示し、ありとあらゆる事を教えてくれた師匠。

 師匠であるはずなのに、師匠と呼ばれる事を嫌う変な人外。

 

 

「ハァ……で、なじみちゅわ~んはどうして此処に来たの?

新しい修行でもつけに来てくれたとか?」

 

 

 安心院なじみ。

 おっぱい少ないけど、引くほど可愛く。

 おっぱい少ないけど、引くほど魅力的。

 おっぱい少ないけど、引くほどの人外。

 彼女と出会う以前にスキルを発現させたことにより、彼女の目に留まってあらゆる事を叩き込んでくれた、恩人でもある人外さんは、久しぶりに現実(コッチ)に現れた事に不思議に思う俺に微笑みながら、よっこらせと余り綺麗とは言えない畳の上に腰を下ろすと『ちょっとそこのコンビニでジュース買ってくるぜ』的な軽い言い方で、言ってきた。

 

 

「最近することが無くてさ。

僕や一誠みたいにスキルを発現させる人間も他にはいねーし、だからと言ってチョロチョロとアッチコッチ行く気にはなれない。

だから暫くはキミの側でのんびり過ごさせて貰おうかなってさ」

 

 

 要約するとこうだ。

『僕 暇 だから一誠と遊ぶ』らしい。

 女の癖に一人称が僕という、誰を狙ってんのか分からん属性すら持つ『なじみ』は人外故にお暇らしい。

 

 

「なるほどね、まぁ良いけど」

 

「そう言ってくれると思ってたぜ一誠。よし、それなら今からこの部屋に僕も住まわせて貰うぜ!」

 

「え……なんで?」

 

 

 暇潰しに俺を使いたいのなら別に構わん。

 何せ彼女にはその程度では足りねー程の借りがあるしな。

 ただ、いきなしこんな8畳で家具も布団も一人分しか無いこの部屋に住むぜなんて言われても困るというか……。

 

 

「折角だし、なるべくキミに合わたライフスタイルを送りたくてね。

僕は自宅という物が無いし他の知り合いも朱乃ちゃんや朱璃ちゃんかバラキエル君……………と、あと一人くらいしか居ない。となれば、一人弟子であり最も僕に気を使わないキミの世話になるのが一番だねと」

 

「は、はぁ……」

 

 

 それって理由になってないんじゃないのか? とペラペラとアニメ声で語るなじみに内心突っ込む。

 いや確かに師匠曰く、俺以外にコンタクトを取ってるのが姫島一家だというのは分かってるけど……うーん。

 

 

「どう? キミがエロDVD見てようが僕は文句なんて言わないし、何なら溜まってる分とか僕を使って吐き出させてやっても良いぜ? ちなみに僕は未経験だったりする」

 

「いや、豊胸で誤魔化せるとはいえ、デフォルトのアンタはあんまおっぱい無いし、それは要らねーや」

 

 

 何を考えてるのか知らんけど、住み家を半分貸せというのであれば、あんま人の生活……いや性活に口出しして来ないなじみなら別に良いか……と悪戯っこみたいな笑みでヒラヒラとスカートを捲くり、何か凄いことを宣う彼女から目を逸らして断る。

 俺は積極的な女に流されるより、恥じらいたっぷりなおんにゃのことイチャイチャするシチュの方が好きなのさ。

 

 

「なーんだ、ざんねーん。

ま、我慢出来なくなったら何時でも言えよ? 安心院なじみに此処まで言わせる男は、過去現在未来を見てもお前しかいねーんだからよ」

 

 

 目を逸らしてまで断ったのが効果を発揮したのか、全然残念そうに聞こえないし見えもしない態度で、ヒラヒラさせていたスカートを元に戻し、昔からのヤケに俺を特別扱いするような台詞を聞かせてくる。

 いや、冗談なのかもしれんが、それでも彼女からすればカス以下な俺に色々と仕込んでくれた事を考えれば少しは本当なのかもしれない……一応未だにこの世界全体でも、俺だけがオリジナルの能力保持者(スキルホルダー)らしいしな。

 

 

「という訳で、久々に一緒に寝る?」

 

「もうそんな歳じゃねーよ。

俺はそこのがら空き押し入れで寝るから、なじみはこの布団使えよ」

 

「ありゃ、言ってる事とは裏腹に相変わらず固い男だ」

 

 

 住まわせる……というか寝床を提供する事になった俺は、早速また誤解される様な事をおっしゃるなじみの言葉を丁寧に断りながら、のそのそと何も入ってない押し入れの中に入る。

 一緒に寝るなんてしてみろ……朱乃ねーちゃんにバレたら絞め殺されるわ。

 アンタはそれを見越してか知らんけど、昔から俺を使ってねーちゃんを怒らせて遊んでたけどよ……。

 

 

 安心院 なじみ。

 

 種族・人外

 所属・無所属

 

 

備考――

 

 

 

 

 師である安心院なじみからの頼みで、部屋に住まわせた一誠は、そのまま何も無く押し入れで一晩を明かし、今日もセクハラ目的での風紀委員を執行しようと元気よく女子達の白い目も気にせず登校した。

 けれど、朝のSHRで軽く絶望した。

 

 

 

 

 

 

「僕の名前は安心院なじみ。

ご覧の通り、只の転校生さ☆」

 

 

 『転校生』として担任の横に立ち、あのポーズをしてる師匠の出現に。

 

 

「…………」

 

 

 SHRの始まりと共に、突如担任が口にした転校生にクラスメート達はざわめき、そして男子達は一誠を含めてしきりに『女の子ですか? おんにゃのこなんですか!?』と鼻息荒くして喚き、担任は『yes』と答えた。

 その時点ではまだ、一誠も他の男子達に混ざって『女の子の転校生』にテンションを鰻登りさせていた。

 そう――

 

 

「か、かわいい……!」

 

「や、やった……このクラスで良かったぞオレ!」

 

「まったくだ! しかもボクっ娘属性とかやべーよ!!」

 

「ちょっと男子! そんなに騒いだら可哀想でしょうが!!」

 

「そうよ、アンタ等の穢らわしい視線を向けるな! 目を潰しなさい!」

 

 

 

「…………………………………」

 

 

 案の定な反応が男女問わず巻き起こる中を、ただ一人額を思いきり机にぶつけながら頭を抱えている一誠は、朝までケロッとした顔で送り出しておきながら、ケロッとした顔で学園の生徒として入ってきた師匠に対して、何とも言えない嫌な予感を感じていた。

 

 主に三年生の朱乃とか朱乃とか朱乃とかの反応という意味合いで。

 

 

「絶対やばい……!

もしねーちゃんに『寝床を貸してる』とバレたら大泣きされるか、リアル処刑される……!」

 

 

 周りの全員が師であるなじみの外面良さに引っ掛かり、何処の席にするかで大騒ぎしてる中を、ただただ頭を抱えながら絶望する一誠。

 基本的になじみにも朱乃にも頭が上がらない男の、逃げようにも逃げられない状況にぶちこまれた姿は、何とも同情を誘うものは……あんまり無かった。

 つまり、それだけ二人……いや少なくとも現状4人の美少女に囲まれているのだ。

 まごうことなきリア充なかもしれない。

 だからこそ、一誠は受け入れるべきなのだ。

 

 

「僕って今親戚の事情で一誠と一緒に安くて身体が密着しちゃうくらい狭いアパードに住んでてね、出来たら彼の隣が良いと思ってるんだ」

 

「やっぱり余計な捏造すると思ったわ!

8畳ワンルームだけど家具とか無いから、密着なんてしてーねーし!!!」

 

『なん……だ……とぉぉぉぉっ!?!?』

 

 

 再び開かれる異端者裁判で『死刑宣告』されることを……。

 

 

「て、テメェェェッ!! 最近は姫島先輩と幼馴染みというクソ羨ましいポジションにいただけでは飽きたらず、安心院さんと同棲してるだとぉぉっ!!!

しかも何だよ密着って、どういうことじゃゴラァァっ!!」

 

「コロス……兵藤コロス!!」

 

「ありえないわ、この性欲バカと一緒なんて……酷いわ親戚の人!」

 

 

 

「ふーん、大人気じゃん?」

 

「ほぼお前のせいだ……絶対に朱乃ねーちゃんにバレたし……。

あ、あぁ……こ、殺されるぅぅ……!」

 

 

 何処から用意したのか、頭から足の先まで真っ黒なローブをクラスの男子は愚か女子まで身に付け、あっという間にのほほんとしているなじみと、ガタガタとちょっと先の未来の朱乃を思い浮かべて震える一誠は、もう早退してしまおうかとすら考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一誠くん、なんで安心院さんと一緒なの?♪」

 

 

 もう、それすら後手なのだが……。

 

 

 備考――転校生




補足

『平等なだけの人外じゃなかったかって?
あぁ、それはもう彼と出会ってからは飽きたし止めてるよ。
今はスケベな弟子を弄くって遊ぶ方が楽しいしね』

『え、ちなみに今話の台詞はどこまでが本気だって? そうだな~』







『あの子の子供を産んでやっても良いかな程度くらいかなと、思わんでもないぜ』


 その2

良かったね一誠くん。
たった一人加入で無敵の戦力だぜ! 世界征服も夢じゃねーぜ!!

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