風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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基本的に態度が悪い。
自覚してる上で開き直ってるので尚質が悪い。




嫌われる道をガンガン掘り進め

 こうしてグレモリー家へとやって来た一誠。

 しかし取って付けた様な態度を止めたせいか、グレモリー家に属する悪魔達からの視線は極めて冷ややかである。

 

 理由は勿論、グレモリー家の主であるジオティクスとヴェネラナに対する態度の悪さと、その態度に対して咎められる事が無いからである。

 

 

「別に転生したからといって媚びへつらう必要は無いよ。寧ろ畏まられても僕は困る。グレイフィアもそう思うだろう?」

 

「はっ……それは勿論」

 

「ほらグレイフィアもこう言ってる事だから問題無い。

まぁでも僕のグレイフィアに手を出したら流石に許せないけどな?」

 

「…………」

 

 

 魔王直々に許可すらされてる。

 一般の……それも一度は悪魔に牙を剥いた元人間の転生悪魔が魔王に一目すら措かれているというのが、一般悪魔達にとっては気に食わないのだ。

 

 

「さ、遠慮せず楽しんでくれたまえ」

 

 

 例えばそう……。グレモリー家当主であるジオティクスの好意による会食にしても……。

 

 

「ねーちゃん、ギャスパー! まだ食うな……先に俺が毒味する」

 

「ど、毒味って一誠くん……」

 

「は、はい……」

 

 

 当主や奥方に聞こえる声で毒を盛られてるかもしれないと宣い……。

 

 

「さ、流石にそんな真似はしないのだが……」

 

「…………。よし、毒は無いみたいだ。食っても良いぞ」

 

 

 顔を引き吊らせたジオティクスとヴェネラナの言葉も無視し、ただ淡々と打ち首ものの無礼を働く。

 

 

「いきなりどうしたのよ?」

 

「アンタ等二人は実娘と他所様のお嬢様だから盛るなんて真似はしない…………いや、どうだろう、するかもしれないがそれでも確率は低い。

だが所詮使い捨ての捨て駒で、更に言えば悪魔様にご無礼働いてしまった俺なんかは、こうやって毒殺される可能性だってあるんだぜ? 少なくとも俺は思う」

 

「「……」」

 

「果てしない程の嫌われっぷりだな。アザゼルよりかは遥かにマシだけど」

 

 

 普通だったらその場で殺してやる無礼。

 だがジオティクスもヴェネラナも引き吊らせた表情のまま何の反論もしない。

 

 

「お父様もお母様もそんな真似は絶対にしないわ。私が誓う」

 

「……。そっすか、ちょっと神経質過ぎましたかね。いやいや申し訳ございません」

 

「い、いや……」

 

「誤解が解けたならそれで良いです……」

 

 

 この無礼な男は、いくら魔王様やリアスお嬢様達から言われてるとはいえ好きになれない。

 使用人の悪魔達の気持ちは皮肉な事にも一つになっていたのだった。

 

 

「あの……先程から何故お水だけを?」

 

 

 そんな折、当主の奥方であるヴェネラナ・グレモリーが、さっきからグラスの水しか飲まず、一切食事に手を付けない一誠に向かって遂に自分から切り出した。

 その瞬間、使用人やジオティクスに緊張が走る中、グラスを置いた一誠はヴェネラナと目すら合わせようとしないまま……。

 

 

「食べたくないから……と、言えば納得されましょうか?」

 

 

 食べたくないから食ってない……と、それ以上話し掛けるんじゃねーよ的な空気を出しながら、一誠はバッサリと切り捨てた。

 

 

「あ、あらそうですか……お、おほほ……」

 

「一誠君、失礼よ……」

 

「そ、そうですよ。先輩が悪い人に思われちゃいますぅ……」

 

 

 そんな態度を流石に見かねて隣に座っていた朱乃とギャスパーが一誠に注意をする。

 しかし一誠はそんな二人に対し、ヴェネラナに対してとは180°真逆の柔らかい態度でこう返す。

 

 

「失礼とか悪い人に思われるも何も、既に悪魔にしてみれぱ俺は犯罪者だからな。

グレモリー先輩の婚約者殴り飛ばし、結婚式グチャグチャにして台無しにして、あとそこの魔王とくだらん茶番劇まで繰り広げて………寧ろ今この場で袋叩きにされてないのが奇跡だぜ。

まあ、グレモリー先輩と貧………いや、シトリー先輩の下僕だからってのが理由で見逃されてるんだろうけど」

 

 

 ねぇ、皆さん? と周囲に控える使用人の悪魔達ををヘラヘラと見渡す一誠に使用人達は一気に殺気立つ。

 魔王、そしてリアスから一誠には一切の手出しを禁止するという、納得できない命を下されて不満だったのに、今その本人から挑発とも取れる発言をされた。

 

 いくら命でも言って良い事と悪いことがあるだろう……そういう意味で使用人達は一気に殺気を纏って一誠を睨むのだが、本人はヘラヘラしながら平然と水を飲んでるだけで何にも堪えちゃいない。

 

 

「一誠君」

 

「はいはい分かってる分かってる。

もう黙ってるから勘弁してくれ……ったく、だから来たく無かったんだよ」

 

「挑発したのはキミだけどね? 今回くらい穏便にいくってつもりは無いかな?」

 

「わざとやってるんでね。

まあ確かにピリピリしてるのは否定できませんがね」

 

 

 それがまた気に食わない。

 サーゼクスとは『何故』か普通に応対してる一誠を使用人達は睨み続けた。

 

 

「お水、お注ぎ致しましょうか?」

 

「ぁ? あぁ、どうも……」

 

「ふふん、僕のお嫁さんだ。羨ましい?」

 

「テメー……ホント勝った気になってんじゃねーぞゴラ。羨ましいに決まってんだろボケ……!」

 

 

 

 

 

 そんなこんなでどんより空気で進む晩餐。

 結局水しか飲んでない一誠に、またしても意を決したヴェネラナが話し掛けた。

 

「しばらくはこちらに滞在するのですか?」

 

「帰れってんなら直ぐにでも帰りますが?」

 

「いえ違います! 帰れなんてそんな事言いませんわ!」

 

 

 自由すぎる態度故の質問だったが、即座に嫌味で返されて若干ムキになるヴェネラナ。

 リアスとソーナも何でそんな事を聞くのかと不思議に思い、食事の手を止めてヴェネラナをじーっと眺めてると、二呼吸程間を置いた後、こんな事を切り出した。

 

 

「リアスとソーナちゃんの事情、そして貴方が何故二人の眷属になったのか……その事情は既に聞いてますし、先日の聖剣と禍の団の襲撃時に二人を守って頂いた事も、私達は感謝しております」

 

「あ?」

 

 

 つらつらと言葉を並べるヴェネラナ。

 しかしとある部分を聞き流していたつもりの一誠がピクリと反応して、初めてヴェネラナを『興味の無いガラクタ』を前にした目で見据えた。

 その目はあまりにも見下しきったものであり、ヴェネラナもウッと息を飲んでしまう。

 

 

「……続けてください? それで?」

 

 

 しかし何も言う訳じゃなく、ただ一言ヴェネラナに続きを促す。

 そのどこまでもどうでも良い生物を目にする様な、無感情の瞳にヴェネラナは圧倒されてしまうが、それでも彼女は意を決しながら切り出す。

 

 

「そ、その、グレモリー領は初めてでしょう?

ですので、後で観光を兼ねてご案内を致します。

それと……その……リアスの眷属となった以上は、貴方に紳士的な振る舞いも身につけてもらわないといけません……。

な、なので少しこちらでマナーのお勉強を……」

 

 

 段々声量が無くなっていきながらも何とか最後まで話しヴェネラナは、無漂白極まりない顔で自分を見据える一誠を見つめ返す。

 そう、過程はどうであれリアスとソーナの眷属になった以上は、今みたいな傍若無人な態度を控える……とまでは強制しないが、硬軟おり交ぜて貰わないとこの先トラブルだらけになってしまう。

 故にマナー、冥界常識等を学んで貰いたいとヴェネラナは考えていたのだが……。

 

 

「それ、誰が教えるんですか?」

 

「え……あ、それは勿論私が――」

 

「嫌です」

 

「…………え?」

 

 

 誰が教えるのかと質問してきたので、自分がと名乗った瞬間、一誠はノータイムどころが食い気味で拒否してきた。

 それはもう清々しいまでの拒否りっぷりだった。

 

 

「り、理由をお聞かせ頂いても?」

 

 

 此処まで徹底されると最早怒りすら感じないとヴェネラナはおずおずと質問する。

 

 

「何でアナタ様の手をわざわざ煩わせなくてはなりません? 勉強なら女王のお二人から受けますよ」

 

 

 その質問に取って付けた言い方で返した一誠はヴェネラナから椿姫と朱乃に向く。

 その表情はヴェネラナとは嫌味なレベルで真逆だった。

 

 

「悪い、つー訳で二人共教えてくんね? 何か色々と学ばんといけないらしいっすわ」

 

「いや、ヴェネラナ様が直々にお教えするのだからヴェネラナ様に学びなさいよ」

 

「私達より多くを学べると思うわよ?」

 

「えー? 嫌だわぁ……じゃあグレモリー先輩とシトリー先輩は?」

 

「私もヴェネラナ様の方が良いと思うわ」

 

「私は別に構わないけど……」

 

 

 普段の彼はこんなに普通に柔らかいのか……。

 ソーナ、リアス、朱乃、椿姫、ギャスパーと話し合う一誠のどこまでも普通な応対に、とことん自分達は嫌われてるんだと改めて再確認させられ、微妙に傷付くヴェネラナ達。

 

 

「母上の教えは一応為になると思うよ? キミなら半日で全部適応できるだろうしね」

 

「はぁ? じゃあアンタの嫁さんに――」

 

「嫌だ。グレイフィアは駄目。毎日デートするから時間なんて無い」

 

「……チッ」

 

「あ、あの……私達を置いてけぼりにしないで欲しいのですが……」

 

 

 このままでは『自分達悪魔が全員一誠に敵意を抱いている訳じゃない』と知ってもらう作戦がパァになるとヴェネラナが口を挟む。

 

 

「だから嫌です。唯一頷いてくれたアナタの娘さんから教えて頂くので」

 

「で、ですが……」

 

「あの、お母様? 一誠は私の眷属でもありますし、お母様の手を煩わせる必要は……」

 

「あ、アナタはまだ未熟なのよリアス!

そ、そもそも一度ライザーとの婚約を解消しているのよ? 確かに実態は彼が結婚を……結婚相手を半殺しにしたせいで崩壊したとなっておりますが、直接見ていない数多の貴族には『わがまま娘が我が儘言って婚約を解消した』と言われているのですよ? お父さまとサーゼクスがどれだけ他の上級悪魔の方々へ根回ししたか……いくら魔王の妹とはいえ、限度が――――」

 

「……………」

 

「ありま………す――うっ……!?」

 

 

 しまった! と口を押さえたヴェネラナだったが、もう遅かった。

 焦りからついリアスを言い負かそうとしたのが仇となったのだ。

 

 

「母上……それは流石に言い過ぎでしたね」

 

「さ、サーゼクス……」

 

 

 息子のサーゼクスがヴェネラナに何とも言えない視線を向け、そのままリアスと一誠へと視線を移す。

 

 

「全く否定出来ないわね……一誠を巻き込んじゃったのも」

 

「まあ、アンタが朱乃ねーちゃんを巻き込まなければこんな事にはならんかったでしょうね」

 

「何を言うの一誠君、私は彼女の女王なのよ?」

 

「そりゃそうだし、実際ねーちゃんの忠誠心は尊敬するさ。どこかの役立たず共は逃げて俺に擦り付けやがったしな。

だが――」

 

「っ!?」

 

 

 ゴミを見るような目にレベルアップした一誠が気まずい顔をするヴェネラナを見据えながら口を開く。

 

 

「ハッキリ言って、テメーの可愛い娘の意思無視して婚約させた親もどうかと思うがな。

ま、貴族様には貴族様の事情もあるんだし? 仕方ないのかもしれないがね……」

 

「そ、それは……」

 

「おっと、別に責めてる訳じゃありませんよ? 悪魔の事情も中々厳しいみたいですから? 純血の悪魔の数を増やさんといけないらしいですしねぇ? しかし、だからこそ俺には理解出来ないな。

自分の命すら投げ出して娘を守ろうとした母親の姿を知ってるんで余計に」

 

 

 朱乃……いや、朱乃の母である朱璃を思い浮かべながら一誠は話す。

 

 

「このグレモリー先輩だけを好くって奴ならまだしも、下僕すら女で固めて、朱乃ねーちゃんまでセクハラ噛ますボケを婚約者にするその趣味はどこまでも理解したくないっすね。いやー……ホント娘想いの良い親御さんですねぇ? 感服しますわぁ!!」

 

「………ぅ」

 

「あ、あの……あんまり妻を虐めないで欲しいのだが。

失言だったのは謝る……」

 

「謝る? なんすかそれ? 別に謝れなんて一言も言ってませんけど? おいおいおい、そこで頭なんて下げれば俺はますます悪人だな。

大貴族様に頭を下げさせた無礼者ってな……あぁ、最初から最早無礼者でしたね? あはははは!」

 

「………」

 

 

 痛烈な皮肉で閉口してしまう当主夫婦。

 やはり一誠は悪魔……というよりは、子を一切考えないで尤もらしい詭弁を並べる輩が嫌いらしい。

 

 

「イッセーもうその辺で。未熟なのは本当なのだから……」

 

「別にアンタの為に言ってる訳じゃないんすけど……………と、言いたいが、気が変わりましたわ。

――――――おい、そこで勝手に俯いてる奴、テメーだ茶髪のおばはん」

 

「おばっ!?」

 

 

 最早取り繕うのすら止めた一誠は、リアスの咎めを押し退け、ヴェネラナをおばはん呼ばわりする。

 

 

「アンタからは一切の教えを拒否する。未熟だろうが構わないんで、俺はグレモリー先輩に教えを乞わせて頂く。

その代わり……二日でグレモリー先輩がアンタをぼろ雑巾に出来るレベルまで押し上げる」

 

「は?」

 

 

 そして完璧な啖呵を切った。

 二日でヴェネラナを完全に下せるレベルにして見せると。

 

 

「大きく出たね一誠君。二日で母を越えさせるなんて……。それだけ啖呵を切れるんだから根拠があるんだろ?」

 

 

 面白そうにやり取りを眺めていたサーゼクスが、ニコニコしながら一誠に声を掛ける。

 すると一誠は……そんなサーゼクスにククッと悪い顔で嗤うと、困惑するリアスを見ながら口を開く。

 

 

「最初はまさかとは思ったが、例のくだらねぇテロ組織とやらの件でほぼ確信した。

グレモリー先輩――いや、リアス・グレモリーは俺と『限りなく近いタイプ』だ」

 

「え!?」

 

「そ、それって一誠君……まさか……!」

 

「………………へぇ~? その心は?」

 

 

 同じタイプと言われ驚くリアスと朱乃と、続きを促すサーゼクスに一誠は半分ほど入っていたグラスの水を飲み干しながら口を開く。

 

 

「最初にそう思ったのは、テロ組織とやらの件で俺の技を使ってた時だ。

ハッキリ言って四人の中では一番飛び抜けて完成度が高かかったのだが、聞いてみると『見た』だけで何と無く出来たと答えていた。

しかも、その技を三人に簡潔ながらレクチャーしたのもこの人だったと……」

 

「確かに覚えはリアスが一番早かったし、コツもリアスから教えられたのも事実だったけど……」

 

 

 身に覚えがあるソーナが訝しげに頷く。

 

 

「まだ完全では無いらしいが、それでも芽は既に芽吹いている。

ケッ、流石なじみの反転位置であるアンタとなじみに一番近い位置に居るメイドの身内であるだけはある。

よくわからんが、ここ最近で急激に精神構造が変わって急成長したらしい」

 

 

 にやにやするサーゼクスと、どこか嬉しげなグレイフィアにちょっとやさぐれ気味の視線を送りつつ、唖然とするリアスを真っ直ぐ見据えた一誠は宣言する。

 

 

「完全な模倣……それがこの人の異常性。

見たり体験した全てを己の糧にして支配するスキル……そうだな、自分自身の本当の主張……完成(ジ・エンド)―――否、正真翔銘(オールコンプリート)って所かな」

 

 

 数多のスキル使いの一人となっている事を、そして……一番自分に近いという事を。

 

 

「わ、私が……?」

 

「まだ自覚は無いですがね。ふふ、ようこそリアス――俺達の領域へ」

 

「え……い、今私の名前……」

 

 

 それはリアスを同時に祝福する笑みだった。

 

 

「という訳で、二日もすれば親越えなんか余裕だぜ」

 

「なるほどねー? まあ、僕の妹だから素養は十二分だね。だが良いのかい? キミは僕達悪魔を気に入らないんだろ?」

 

「否定はしないが、俺は少なくともこの人達は信用してる。反省し、糧として確実に進化しようとするからな」

 

「ん、それを聞いてかなり安心したよ。やっぱりキミを二人の『代理』に留めるのは惜しい」

 

「はん! 惜しいも何も、決めるのはこの二人だぜ? この二人が眷属を見つけられたら、俺は黙って駒を抜き出すさ」

 

「ふふ、どうかな? 僕が見てる限りじゃ二人共そんなつもりは無さそうなんだけど?」

 

「けっ!」

 

 

 完全に置いていかれたヴェネラナ達を放置してサーゼクスと会話する一誠。

 結局ヴェネラナの作戦は失敗したのだった。

 

 

 

 

 朱乃が私を嫉妬した目で見てくる……。

 

 

「という訳で、俺にアンタが冥界のマナーだか何かを教える代償として、俺はアンタにスキルを自覚させる」

 

「え、えぇ……それは願ったりかなったりなんだけど……あ、朱乃が」

 

「リアスにまで先を越された……ふふ、私なんて……」

 

 

 イッセーの領域に後から出てきた私が一足早く侵入したという事実が朱乃にとってかなりショックだったみたいで……。

 

 

「い、一誠! 私は!? 椿姫にもあるんだし私は!?」

 

「あー? うん、無い」

 

 

 ソーナも焦ってる。

 全員で一誠が眠る部屋に集まり、トランプをしながら夕食の時の話をしてるのだけど、ハッキリ言って私はあまり自覚していない。

 何せ突然の事だし……。

 

 

「そ、そんな……私も無いなんて」

 

「あるって言われたら私は立ち直れませんわ……」

 

 

 ソーナと朱乃が無く、私と椿姫にはある。

 その理由はよくわからないけど、まさか私なんかが一誠やお兄様達の領域に入れる資格があったなんて……。

 

 

「……。ねーちゃんの場合、バラキエルのおっさんととっとと仲直りすれば芽があるんだけどな」

 

「え、そうなの?」

 

「ええ……ですがほら、ねーちゃんは未だあんな難くなだし……それが自分の可能性を閉めちゃってるっつーのに……勿体無い」

 

「ならソーナは?」

 

「ひんぬー会長はまだなんとも……。

ですが、何と無くあったとしたら一番『化け』そうな気がしないでもない」

 

 

 落ち込む二人には聞こえない様に小さく話すイッセー曰く、完全に無い訳じゃないらしいのだけど……。

 

 

「ギャスパーはどうだろうな……うーん……」

 

「あ、あの……そんなに見詰められると恥ずかしいですぅ……」

 

「うーん……わからん」

 

 

 ギャスパーも不明。

 ……。イッセーと深く関わる事がキーなのかしら? 進化を促すイッセーのそれが私達に作用している、とか?

 

 

「それより本当に私を二日でお母様より強くするの? お母様は強いわよ?」

 

「しますよ。アンタの母上様がどれ程強かろうとね」

 

「……。出来ればお父様とお母様とは仲良くして欲しいのだけど……」

 

「印象がどうも変えられなくてね。良いところを発見しようとは努めてますけど、どうもアンタを無理矢理結婚させるバカな親って印象が……」

 

 

 私の発覚した領域もそうだけど、それよりもそろそろお父様とお母様と和解して欲しいと話す私にイッセーは苦笑いしながらスペードのAを出して上がる。

 大富豪のゲームをしてるのだけど、私がビリの大貧民になってしまった。

 

 

「えっと、最下位はトップに膝枕……ですって」

 

「っしゃあ大当たりぃ!!」

 

 

 ただ大富豪をやるだけではすぐ飽きちゃうという事で、最下位は箱から一枚紙を引き、それを罰ゲームとして実行するルールを設けてみたのだけど、最下位となった私が引いた紙には今言った様な指令が書かれており、1位突破のイッセーが物凄く歓喜していた。

 

 

「じゃあ……どうぞ」

 

「あざーっす!」

 

 

 そういう訳でイッセーを膝枕したのだけど、さっきから朱乃達の視線がかなり厳しい。

 というか、朱乃に至ってはバチバチと電気を迸らせてるくらいだわ。

 

 

「先輩先輩、上体を前に……」

 

「ん? えっと……こう……?」

 

「そうそう! うひょう! 特盛だぜおい!」

 

「……………」

 

「落ち着きなさい姫島さん。こうなったら徒党を組んで絶対に一誠を最下位にしましょう」

 

「はい……真羅さんとギャスパー君も手伝ってくれますわよね?」

 

「は、はい……」

 

「仕方ありませんね、あまりいい気分はしませんし良いですよ」

 

 

 しかも徒党まで組まれちゃったし……。

 

 

「あの……イッセー? 別に良いんだけど、その……露骨に私の胸に顔を埋められちゃうと恥ずかしいというか……朱乃達の顔が怖いというか……」

 

「ええやんかええやんか! げへへへへ!」

 

 

 さっきはちょっとカッコ良く見えたのに……。いえ、別にスケベでも良いんだけどね? 頼りになるのは変わらないから。

 

終わり




補足

実は密かに覚醒手前まで来てたリアスさん。
朱乃さんとソーナさんが焦っちゃうけど、ぶっちゃけ朱乃ねーちゃんはバラキエルさんとの仲が何とかなって、直接指導さえ受けたら即座に覚醒できるんですよね。

で、ソーナさんは間違えたらシリーズ屈指の拗らせドチートに……。

それは何としてでも阻止せねば(本気)


で、何故こんな急激かというと、やはり一誠君の異常性の特性のひとつ……『信じ合えばその者をも進化させる』という、インフレにガソリン加える様なそれがあるせいですかね。

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