風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

46 / 48
次の章までの閑話

ぶっちゃけ冥界には二度と行きたくない一誠くんだけど……。


頑張れソーナちゃん

 3日という時間を掛けて回復に専念したお陰か、見事なまでの復活を遂げた一誠。

 本来なら甘く見積もっても全治に数ヵ月は掛かるだろう重症を3日足らずで全快させる一誠のゾンビじみた回復力もまた異常だが、それ以上に今の一誠は病み上がりでありながら感じる己のパワーに少し驚いていた。

 

 

「凄い……」

 

 

 新調した制服に身を包んだ一誠が、アロガント・スパークでカテレアを葬った屋上にて軽く拳を突き出す。

 その行為自体に意味は無いが、突きだされた拳から強烈な風圧が放たれ、巨大な固まりとなって空を斬る現象が起これば、まるで無意味という訳では無いし、偶々見ていた少女達が思わずといった様子で呟くのを内心一誠も同意する。

 

 

「死にかけるダメージでも負ったせいなのか、お陰でやっと進化できたみたいだぜ」

 

 

 突きや蹴り等を虚に放ち、その度に巨大な風圧を生成しながら一誠はニタニタと笑っている。

 色々あって悪魔に転生してからどうしようも無く弱体化してしまい、それまで恩恵を受けていた無限進化の異常性も拗ねたみたいにソッポを向かれてしまっていたお陰で思う通りに力を上げられなかった。

 

 しかし先日の無茶がやっと自身の異常性と結び付いたのか、転生悪魔の身でありながら漸く別次元の進化の第一歩を踏み越えられた。

 

 

「あれがイッセーの異常性という奴なのね? 何というか……そこら辺の神器より凄いかも」

 

「凄いかもじゃなくて、実際は凄いんですよリアス。

何せどれだけ差のある相手でも戦っていく内にリアルタイムで適応し、進化して越えるのですから」

 

「転生悪魔と親和性が低いせいで恩恵を無くしたと言ってましたが、条件さえ合えばちゃんと進化できる……という訳ですか」

 

「元々これは自分の精神に直結するものですからね、私としては同じ転生悪魔なのに何で一誠君だけああも弱体化したのかが不思議でしたよ」

 

 

 同じスキル持ちとしての椿姫の言葉に、持たないリアス、ソーナ……そして朱乃はちょっと複雑な気分で耳を傾ける。

 

 持つ者だからこそ理解できる領域に椿姫だけが居る。

 そのアドバンテージはやはり大きいのだ。

 

 

 

 

 

 そんなこんなのパワーアップを挟んで暫く平和に時は流れ、人間界の学生は待ちに待った夏休みを迎えることとなる。

 

 それは勿論学生をやっている悪魔のリアスとソーナにも訪れるイベントな訳だが、リアスとソーナの場合只夏休みを満喫する……という訳にはいかなかった。

 

 

「冥界に帰る? あぁ、そういえばそんな季節でしたね」

 

 

 そう、夏休みという長期休暇は冥界の実家に帰らないとならない。

 今年は特に『眷属の大半を失った』という理由と『冥界に単騎で乗り込んで魔王を殴り倒した』人間の小僧を類を見ない特殊な条件で眷属にしたという理由で色々とやらなくてはならない事がある。

 故にその話をその特殊過ぎる条件で眷属となった一誠に、最早溜まり場となった風紀委員室にて何時もの様にお茶しながら打ち明けてみるリアスとソーナなのだが、返ってきた言葉は肩透かしを食らう程に軽いものだった。

 

 

「毎年この季節になると朱乃ねーちゃんが居なくなりますからねぇ」

 

「あ、そっか……だからそんな反応だったのね」

 

 

 毎年夏休みになると朱乃が居なくなる……という一誠の言葉にリアスとソーナは納得するように小さく頷くのと同時に、この反応なら大丈夫かもしれないと、本題に移行する。

 

 

「じゃあ今年はイッセーも冥界に行くことになるということで……」

 

「それは普通に無理っすね」

 

 

 形はどうであれ多数の駒を使って眷属となった一誠も今年は冥界に連れていく。

 その話を出した途端、案の定というべきか即答で一誠は行かないと答えた。

 

 

「その返事は予想通りですが一応聞きます……何故?」

 

「まず冥界に俺が行ったら碌でもない事になるのは間違いない。何せ恐らく向こうの悪魔共からしたら俺は単なる犯罪者ですからね。

それともう一つ……俺は風紀委員になってから毎年夏休みは町内会の人達のイベントの手伝いをしなくちゃならないのと、俺が冥界に行ったら誰が風紀委員の仕事をするんだって話です」

 

 

 冥界に行くより駒王町での風紀委員の仕事の方が大重要である……と、割りとまともな答えにリアスとソーナもちょっと言葉に詰まってしまった。

 

 この男、学園内じゃチャランポランとしてるが、学園外ではかなりまともに風紀委員をやっていて、それを裏付けるだけの巨大な支持率を町内の……特に老人・子供・主婦から集めている。

 だからこそ今一誠が口にした町内会でのイベントの手伝いというのは嘘じゃないのだろう……。

 

 そこら辺の事に関してだけは誠実な一面を知ってしまったリアスとソーナだからこそ、無理に連れていくというの躊躇わせてしまう。

 

 

「それに朱璃さんが一人になるのも不安だ。

また堕天使共が勝手でくだらねぇ理由掲げて襲ってくる可能性もあるしね」

 

「今は多分違うと思うけど……」

 

「甘いなねーちゃんは。この前俺はあのアザゼルってのを見たが、やっぱりどうポジティブに見ようとしても信用できねぇ。

バラキエルのおっさんが自由に動けない以上、ねーちゃんと朱璃さんの肉壁になるのは俺の役目なのさ」

 

「………」

 

 

 朱乃の言葉にも即答で返す一誠が、こうして見ると普通に暇人では無いことを改めて窺える。

 そうで無くても冥界自体に良い印象を持ってない時点で、暇人だろうと行こうとはしないだろう……サーゼクスが演技とはいえ倒された時、あっさり逃げたという印象は一誠に大きなマイナスポイントを与えていたのだ。

 

 

「え、イッセー先輩は行かないんですか?」

 

「おう、俺ってこう見えて結構予定に生きる男だったりすんだぜギャスパー?」

 

「そうですか……」

 

 

 それが例え、あの日以降完璧に懐いたギャスパーの残念そうな表情を前にしても揺らぐ事は無く、ちょっと申し訳無さそうに風紀委員で使用した書類を持つその頭を撫でている。

 

 

「イッセー先輩が行くなら怖くないと思ったのにな……」

 

「俺が居なくてもギャスパーなら大丈夫だって。現に今はこうして学園に復学したし、風紀委員の手伝いまでして貰ってんだだぜ? もう充分立派になったさギャスパーは」

 

 

 一誠に影響というか懐いたせいか、最近になって復学し、更には風紀委員の手伝いまで進んでやり始めているギャスパー。

 勿論、性別・ギャスパーと呼ばれて男女共に人気のあるせいで、只でさえ最近露骨に美少女と共に何かやってる風紀委員の変態男の近くに居ようとするもんだから、その顰蹙を一手に受けてたりする一誠。

 

 だがその変態性を越えた先にある妙な誠実性を知ってしまっているギャスパーにしてみれば変態な面なぞどうでも良く、悪く言ってしまうと半分程一誠に依存じみた懐きっぷりを見せていた。

 

 まあ、懐かれてる本人は近所の子供達と同じ様な扱いをしてるに過ぎないのだが。

 

 

「一度正式な手続きを経て冥界へ自由に出入りする権限を得れば、冥界と人間界を自由に行き来出来る筈よ。

そうすれば半日を人間界で風紀委員として過ごし、半日……いや2~3時間で良いから冥界に滞在すって方法が取れるから――どう?」

 

「えぇ? そこまでして俺を引っ張り出したいんすか?」

 

「父と母が一誠を見たいと言うんですよ。どうやら姉のセラフォルーがかなり色々と喋ってくれちゃったみたいで……」

 

「はぁ? ……チッ、あの女……余計な事を」

 

 

 セラフォルーが色々と触れて回っているという話をソーナから受けた一誠は隠しもせず舌打ちをする。

 魔王☆少女レヴィアたんである事は認めたものの、だからといってセラフォルー本人に対しては正直どうとも思ってなかったりする。

 

 どうやら彼の中では魔王☆少女レヴィアたんは好きだが、所謂中の人であるセラフォルー本人はそこら辺の女魔王といった認識らしい。

 何も知らない一般男子生徒が聞いたら殴り飛ばされても仕方ない話である。

 

 

「その町内会のイベントのお手伝いを私たちも手伝うから、行くだけ行ってみない?」

 

「えぇ~? だってグレモリー先輩やひんぬー会長の実家に行くんでしょう? てことは嫌でもあの魔王とその嫁……あとあの話の通じなさそうなアンタの親と顔を合わせなきゃならないのが確定してるじゃん。

なじみみたいに『腑罪証明(アリバイブロック)』なんて便利なスキルがある訳じゃないし……」

 

 

 然り気無くソーナを貧乳呼ばわりしつつ、行くのがめんどくさいと露骨に顔をしかめる一誠。

 だが……。

 

 

「別に僕を移動手段として使ってくれても構わないぜ?」

 

『!?』

 

「安心院さん……」

 

 

 そんな一誠の呟きに対し応えるかの如く腑罪証明(アリバイブロック)を使って委員長席に座る一誠の背後に現れるは、久々の安心院なじみ。

 神出鬼没という言葉がこれ以上似合わない現れ方に、慣れてないリアス、ソーナ、椿姫はギョッとした表情を浮かべ、朱乃は相変わらず現れては嫌味な如く一誠に一々近いその姿に顔をしかめ、一誠はといえば特に抵抗もせず座ってる後ろから思いきり抱き締められても平然としていた。

 

 

「どうせ冥界――というかサーゼクス君とグレイフィアちゃんの所に行くつもりだったしね、片手間にもならないよ」

 

「えー? だとしてもめんどくせぇよ。

夏休みはパワーありあまってるガキ共に注ぎ込む予定だし、キャンプの約束とかもしてるし……」

 

「キャンプって……風紀委員は何時からボーイスカウトの真似までする様になったのよ?」

 

「俺が冥ちゃん先輩から引き継いでからだから……去年の夏休みが最初っすよ。

これが意外と評判良くてね、今年も期待されてるからやるしかないっしょ?」

 

 

 へっへっへっと、少ないながらも抱き締められてるせいで胸とかモロに当たってる体勢で笑って言う一誠に、少なくともソーナと朱乃はかなりモヤモヤした気分だ。

 

 

「本当に学園外だと人気者ねイッセーは?」

 

「別に猫被ってるつもりとか無いんですけどね。まぁ、町内の人達のノリの良さに助けられてるってだけっすよ」

 

 

 いい加減離れろ……。

 ソーナと朱乃の怨念じみた瞳をニヤニヤしながら受け流すなじみを他所に、一誠は一誠で呑気にリアスとくっ喋ってるというこの態度が余計にヤキモキさせる事を本人は知らずにスルー安定であった。

 

 

 

 姉のファンだったと知った時、私は意味も分からずムカついた。

 姉の正体が悪魔である事を知らなかったとはいえ、それを知ってからも態度がそんなに変わってないのがまたムカムカする訳で……。

 

 一応私は妹なんだぞと言っても彼は何時だって……。

 

 

『あ、そっすか……ハイハイ、会長さんは巨乳巨乳~』

 

 

 と、かなり素っ気ない態度で煙に巻こうとする。それがまたムカムカを助長させる事も知らずに。

 

 そもそも一誠は目がおかしいと思う。

 貧乳だ貧乳だと私を貶しているけど、私は貧乳じゃない。

 リアス達がおかしいだけで私は普通にあるのだ……それを一誠はそれしか語彙が無いのかって言うくらいに私を貧乳と……。

 

 

「朱璃さんから『行ってこい』って言われちまったよ……」

 

「じゃあイッセーも冥界に行くという事で良いわね?」

 

「…………。まあ、行かないと先輩二人としても困るっぽいし、行くだけは行きますよ。

ただし、こっちの行事予定優先ですからね?」

 

「勿論、さっき話した通り私たちも手伝うわ」

 

 

 姫島さんのお家にて、彼のお母様である朱璃さん直々に冥界に行くことを勧められてやっと首を縦に振った一誠に私を含めて全員がホッとする。

 結局記憶までも完全に消した匙達の件もあって一度は眷属としての一誠を紹介しないといけないという当初の目的もこれなら何とか果たせそうだ。

 

 まあ、本人は冥界に行く事にかなり気が進まない様子だけど。

 

 

「あの日以来か。

あー嫌だなぁ。絶対嫌な顔されるわぁ……自業自得だけど……」

 

「イッセー先輩は一度冥界に行ったんですか?」

 

「ちょっと色々あって不法侵入って形でな……あははは」

 

 

 朱璃さんの笑顔一つでそれまで何を言っても渋っていたのをアッサリ撤回させる辺りにまたモヤモヤとした気分を感じる中、リアスとフェニックス家の件の詳細を知らないギャスパー君に曖昧な笑みと共に誤魔化す一誠。

 

 そういえば元を辿ればあの一件が今に繋がるのよね……。

 手引きしたのが椿姫だったと聞いた時はかなり驚いたものだわ……。

 

 

 

「んじゃ俺は帰りますわ」

 

「じゃあ僕も」

 

 

 不思議な縁というか、寧ろ変態な所に苦手を感じていた一誠に精神的に助けられるとは思わなかったというか………む。

 

 

「当然の様に一誠くんの家に一緒に帰ろうとしないで貰えますか安心院さん?」

 

「何でだい? 一応学園では一緒に住んでるって形で通してるんだけどな僕は?」

 

「それが気にくわないなから今こうして文句を言ってるつもりなんですけど? というか、わざと言ってますよね?」

 

「まぁね、最近一誠の甘さにほだされちゃった子が増えちゃったし? 僕もちょっと本気出してやろうかなーって?」

 

 

 安心院なじみ。一誠の師匠らしいこの女性は、言彦の件の時にちょっとは正体を知ることが出来た、人外らしき方みたいですが、一々見せ付けるように一誠にナチュラルに近いのがモヤモヤする。

 今も鬱陶しそうに顔をしかめる一誠と腕なんか組んじゃってるし……うぅ、モヤモヤする。

 

 

「また始まりましたか……」

 

「アナタは冷静なのね?」

 

「まあ私の場合、一番になりたいって訳じゃありません……一緒に居られたらそれで良いので」

 

「あらあら大人ねぇ? 朱乃にも見習って貰いたいわぁ」

 

 

 こんな時椿姫は何時も冷静というか……くっ、ある意味一番一誠を理解してる分の余裕が窺えるのが悔しい。

 私にはスキルという概念が存在しないから余計に……。

 

 

「何時ものおぶさけなんだから朱乃ねーちゃんも目くじら立てなくても良くね? 今更だけどさ」

 

「一誠くんは黙ってて! そうやってホイホイ何でも受け入れるから安心院さんが……!」

 

「おいおい、それはお互い様だろ朱乃ちゃんよ? キミだって一誠の包容力に長年甘えてきたんだから、僕の事なんて言えないだろ?」

 

「っ……!」

 

 

 包容力……言い得て妙ね。

 確かに一見するといい加減でスケベでだらしない男って印象しか無いけど、それを無視しして付き合ってみると、一誠って案外献身的というか……それで私は精神的に救われてるのだからこれは間違いないと思う。

 それに姫島さん母娘を守る為に毎日隠れて鍛練も欠かさないし……。

 

 本人にそれを突っ込むと『笑わせるな、俺は強くなってモテモテになりたいからやってるだけだぜ』と誤魔化そうとするけど、それが嘘だってのは私達は分かってるつもり。

 

 

「一々お前もねーちゃんを煽るなよ……。

ったく、わかったわかった、此処に居ればねーちゃん的にも納得するだろ?」

 

「う、うん……」

 

「あーあ、これじゃあ何のためにあんなボロアパート借りたのやら」

 

「んなもんエロ本を誰にも邪魔されず思う存分読む為に決まってるだろ。

お前が来るせいで最近それもできねーけどよ」

 

 

 変な所で律儀な人……それが一誠という人なのだから。

 

 

「んじゃそういう訳でギャスパー、一緒に風呂入ろうぜ」

 

 

 姫島さんと安心院さんの小競り合いのお陰で、元々は此方が実家とも言える姫島家に泊まる事になった一誠なのだが、持ってた荷物を元々使っていた自室に放り込むや否や、いきなりギャスパー君に一緒にお風呂に入ろうとだなんて誘いを掛け始めた。

 

 

「え? ぼ、僕とですか?」

 

 

 いきなり誘われたギャスパー君も少しビックリしている様子。

 いえ、というかパッと見女子に見紛う容姿の彼と一緒にお風呂って……。

 

 

「? 嫌なのか? ちぇ、バラキエルのおっさん以外で初めて背中の流しっことか出来ると思ったのになぁ……」

 

「背中の流しっこ……」

 

 

 こんな時だけ下心が全く無い様子を見せるのはかなり卑怯だと思う。

 それもこれも同性で同年代の友人が零なのがいけないのと、ギャスパー君に対しては妙に誠実な態度なのが理由なのかもしれない。

 この時も何か言いたげな顔の姫島さんに気づいてない様子でちょっと揺れてるギャスパー君を誘ってるし……。

 

 

「会長、まさかとは思いますが『自分も』だなんて言いませんよね?」

 

「言うわけ無いでしょう!? 椿姫は私を何だと思ってるのよ!」

 

 

 なんと無く二人のやり取りを見ていたら、急に椿姫に言われて私は反射的に返してしまう。

 誰が好き好んで男子と風呂なんて……。

 

 

「どうかしらね、最近のアナタを見てるとあながち間違いでは無いんじゃないの?」

 

「リ、リアスまで……。言っておくけど、別に私は一誠なんかと……」

 

「誰も一誠くんとは言ってませんけど」

 

「っ!? は、話の流れ的にそう思っただけよ!」

 

 

 くっ、揃って変な目で私を……。

 大体私が思ってるのは、私だけには変に意地の悪いあの態度が気に入らないだけで、そんなフワフワした感情なんて……。

 

 

「おーい一誠~ ソーナちゃんが一緒にお風呂に入りたいんだってさ~?」

 

「なっ!? な、何を言いますか安心院さん!!」

 

「はぁ? 会長さんがぁ?」

 

 

 そうとも知らないで安心院さんまで余計な事を……! しかも一誠本人に!

 

 

「何でまた急に? つか無理だろ、この人一応女じゃん」

 

「一応ってどういう意味よ!?」

 

 

 何とも覇気の無い顔……つまり何時ものどうでも良さそうな態度で私を一応呼ばわりするので思わずムカッとしてしまう。

 これが椿姫とかだったら180°態度が違うと知ってるからこそ余計に腹が立つ。

 

 

「あー……一応って言ったのは謝りますよ。

けどねぇ……何ですかね、このガッカリした気分。

仮にも女に言われても全然わくわくしねぇ……」

 

 

 と言って私―――の、胸を見つつヘラヘラと小馬鹿にした笑みを見せる一誠。

 

 

「グレモリー先輩と比べると一目瞭然で無いからなぁアンタって……そら萎えるわ」

 

「そのネタで私を弄るのはやめなさいって言ったのに!!」

 

 

 くぅ、やっぱり差別だ。

 あんな邪魔そうなもの一つで優劣を付けるなんて、視野の狭い男よコイツは!

 

 

「元気出しなよ会長さん。

アンタみたいなのでも好みと言う物好きも世の中にゃあ多分沢山居るんだろうし? そう悲観するもんでも無いぜ? あっはっはっはっはっ!」

 

 

 ポンポンとバカにしかしてない態度で私の頭を軽く叩いてくるのに腹を立て、その手を思いきり叩く。

 

 

「う、うるさい! そんな知りもしない不特定多数に好かれても嬉しくないわ! 大体毎回言ってるけど全く無い訳じゃないし、寧ろ平均的にある!」

 

「見たところなじみ以下じゃん。平均ってのはなじみレベルの事を言うんだぜ? アンタの場合やっぱり貧乳だわ」

 

「然り気無く僕を引き合いに出されてもな……。まあ、昔僕もめだかちゃんにそんな自虐の台詞を言ったけど」

 

 

 そう言ってる割りには私に対して勝ち誇ってる安心院さんだけど、私とて安心院さんくらいはある筈……いや

、ある。

 

 

「よく見なさい! 安心院さんと同じくらいあるわ!」

 

「いやねーし、然り気無く盛るなよ……聞いてて悲しくなるぜ?」

 

「あるったらある! 何なら直接見れば良いじゃない! そうすれば嫌でも解る筈だから!」

 

「何が悲しくてアンタの壁を見なきゃならなんですかね。それこそ罰ゲームじゃないっすか」

 

「壁じゃない! あるったらある!! ………あ、あるもん!!」

 

 

 気付けばリアス達の生温い眼差しを受けつつ、私は一誠に対してムキになって詰め寄っていた。

 胸さえあると分かって貰えれば少しは扱いもマシにしてくれる……後から出てきた姉があんな意味の解らない優遇をされてて、リアスよりも先に眷属となってくれた私が今でもこんな理不尽に弄られる役なんて納得できる訳が無い。

 

 だからギャスパーくんがちょっと引いた顔になってるけど、此処は私の主張を通させてもらう。今後の付き合いの為にも。

 

 

「別に貧乳で良いじゃん。貧乳だからって別にアンタをしばき倒すって訳じゃないんだから……」

 

 

 だから、この態度をされると私は……。

 

 

「それが嫌なの! こ、この前だってお姉様の事を急に優遇し始めるし、このままじゃ私だけ変な扱いのまま―――ひっく……ふぇぇぇん……!」

 

 

 勝手に涙が出てきて止まらなくなる。

 

 

「!? お、おいおい……泣いちゃったよこの人……」

 

「あーぁ、いけないんだ一誠ったら? 泣かしちゃいけないんだー」

 

「え、俺の―――――いや、俺のせいだな100%」

 

「何回泣かせてるんですかアナタは……」

 

「いやだって最初の方はこの程度じゃ泣かなかったし……」

 

「他に理由があるとか考えないの?」

 

「他? 貧乳って事実をそのまま言ってやる以外に何があるって言うんですか? 逆に聞きたいわそんなの」

 

「私、つくづくお母さんの体型を受け継げて良かったと思うわ……。いくらなんでもソーナ様が可哀想よ……」

 

「はぁ? ねーちゃんまで何言ってんだよ……なぁギャスパー?」

 

「いえ、僕でもソーナ先輩の気持ちが分かる気がします……」

 

「お、おう……ギャスパーにまで怒られちまったよ……」

 

 

 逆に楽しんでる安心院さん以外の皆に白い目で見られてやっと言いすぎたのかと感じたのか、ちょっとだけ罰の悪そうな顔で涙が止まらない私にペコペコ頭を下げ始める。

 

 

「……。なんかすいません?」

 

「くすん……くすん……こんなに泣かすなんてアナタだけよ、ばか……」

 

「……………。はぁ」

 

 

 それでも根底の部分を理解してないって顔なのが果てしなくムカつくけど、ちょっとは反省させられただけまだマシだと思う事にする。

 

 

「も、もう一度言うけど、私の胸は安心院さんくらいはあるんだからね?」

 

「えー……? あ、いや……ハイ……そうですね、ハイ」

 

「あと、お姉様ばっかり優遇しないで?」

 

「はぁ? いやだからその優遇って意味が解らないんですけど……」

 

「じゃあもし、今姉がアナタの好きな格好して現れたら?」

 

「そりゃ記念に一枚撮影して部屋にでも飾る――」

 

「それが優遇してるっていうの! ぐすん……仮に妹の私がもし同じ格好しても騒がない癖に!」

 

「い、いやだってそんな格好をアンタ自身がしないじゃん――――――しても多分微妙な気分にしかならんだろうけど――――――あー嘘嘘!! ちょっとは気になるかな会長さんの魔王少女化! あっははははは!!」

 

「そ、そう? じゃあ少しだけ考えといてあげる……えへへ♪」

 

「そ、そりゃどーも……。(こ、こんなめんどくさい女だったっけ? 何か日を追うごとに扱い辛いんだけど……)」

 

 

 それにセラフォルーお姉様みたいな格好すれば少しは……ふふふ、今日は許してあげよう。

 

 

「じゃあ……はい」

 

「何が『はい』なんすか? つーか、両手広げる意味もわかりませんけど……」

 

「姫島さんに泣かれた時何時もやってることと同じ事をしなさいって事。

今アナタに思いきり私は泣かされたんだから」

 

「はぁ!? 何で俺がねーちゃんと同じ事をアンタに――」

 

「してくれないの? ま、また差別するんだぁ……!」

 

「いっ!? わ、わかったよ! おいねーちゃん! これはそんなんじゃねーかんな!?」

 

「…………。ええ、別に怒らないわ……」

 

 

 

 

「俺は保父さんじゃねーのに……」

 

「えへへ……♪」

 

「せめてグレモリー先輩だったら―――」

 

「………ぐすっ」

 

「いや、もう何も言わないから………うん」

 

「♪」

 

 

 

 ソーナちゃん、地味に駄目女になりつつあるの巻。




補足

然り気無く死にかけるという極限状態を体験したお陰か、ほぼ封印されていた無神臓がやっと顔を出し始めてパワーアップ。

まあ、全盛期にはまだまだ程遠いんですけどね



実の所ある意味一番一誠くんに構われてたりするソーナさん。

でもセラフォルーさんと比較して納得できないソーナさん。

弄られて泣かされても最後はなんやかんやで許しちゃう駄目女になりつつあるソーナさん。


頑張れソーナさん、キミがある意味No.1や。


その2
これ、ソーナさんとリアスさんだからこんな態度ですけど、基本的にその他の悪魔相手だと態度がクソ悪くなります。

特にフェニックスの件の際のサーゼクスさんとの戦闘で、さっさと逃げた悪魔達が一番嫌いであり、リアスさんの両親も寧ろ嫌いです。

なので、両親と会った時がソーナさんの色んな意味での勝負となります。


ちなみに冥界における一誠くんの名前はセラフォルーさんが触れ回ったのと、元々の不法侵入が合わさって、正直悪い印象しかありません。

てか、フェニックス家から特に目の敵にされてたり……。

なので何処かの世界線みたいにレイヴェルたんとのフラグなんて多分互いに叩き壊すどころか……。


「不死身ねぇ……へー? 技の実験台に最適だなぁ……!!」


と、レイヴェルたんだろうとマッスル技の実験体と言ってのけるかも……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。