初期の頃にあったイッセーがレヴィアたんのファンである事の軌跡……。
連投します
セラフォルー・レヴィアタンはあの日物凄くあり得ない転生を経て悪魔へとなった男の子にボロクソになじられた事を思い返し、ムカムカしていた。
「まったく失礼しちゃうよねー!☆」
授業参観の日に人間界の学校にて、眷属に大量脱退されても尚、残った女王と共に頑張ってる妹のソーナの姿を見ようと訪れ、自分の姿に喜ぶ人間達の為にちょっとサービスしていい気分にもなれてた。
だというのに……。
『う、嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ!! アンタみたいなのが、俺の好きなレヴィアたんな訳がない!! 確かに顔とか体型とか衣装のチョイスは思い返せば同じだけど、お前なんか真っ赤な偽物だ!!!』
ソーナの新しい眷属でもあるその男の子は、自分の事を最初は分からないで居たが、何かの拍子に気付いたのか、自分の事を人間だったらまず知らない筈の魔王☆少女レヴィアたんなのかと聞いてきたので、驚きつつももしかしてその唯一の人間はキミで、それもギルバという名前を使ってファンレターを何時もくれた子かと聞いた。
そしたらその男の子は盛大に狼狽え、あろうことか自分を否定し……。
『俺の知ってるレヴィアたんは痴女じゃねーもん! 強くて可愛い魔王少女だもん!! オメーみてーな単なるコスプレ女じゃねーもん!!』
『ファンレターに返事してくれたのも、Blu-rayセットと等身大抱き枕を送ってくれたものテメーじゃなくて魔王少女のレヴィアたんだ!!!ふざけるな! この似非コスプレイヤーめが!!』
思いきり泣きながら似非コスプレイヤー呼ばわりまでしてきた。
それだけならまだ許容できたが……。
『うるせーうるせーうるせぇぇぇ!!!! 俺は認めないかんな! 魔王少女レヴィアたんはもっと可愛いんだよ! このコスプレ勘違いブス!!』
この台詞だけはかなり頭に来た。
ブスなんて女の子に言ってはならない台詞ナンバーワンなのに、あの男の子はハッキリと偽者呼ばわりと共に言ってきた。
だからセラフォルーもムキになって、最初はひょっとして自分の方向性の励みになってくれた人間唯一のファンだったギルバな訳が無いと言ってやったが、それでもセラフォルーは明くる日もムカムカが止まらないでいた。
「何が偽者よ。私が本物なのに……!」
いっそ一発ビンタでも咬ましてやれば良かったとすら思うほどにムカムカが止まらないで居たセラフォルーは冥界でのお仕事も手付かず状態であり、このままではいけないと、取り敢えず業務の机に装備させてるノートPCを開き、冥界内でも正直殆どゼロに近いアクセス数である自サイトを開き、少し前からピタリと来なくなっていた愛しの……じゃなくて、理解者であり励みになってくれるあの名前のファンメールが来てないかのチェックをする。
「今日もやっぱり来てないのかな……。
最近サイトにも来てくれてないし、もしかして忙しいのかな……」
が、開いてみたもののセラフォルーの表情はすぐれない。
更新の度に絶対といって良いほどコメントやファンメールを送ってくれる唯一の存在、ギルバはここ最近更新をしてもサイトに来てくれる形跡も無ければ、メールやファンレターすら来ないのだ。
もしかして飽きられちゃった? とネガティブに考えてしまうセラフォルーなのだが、それでもコメントが来てないかのチェックを毎日欠かさない辺り、顔も本名も知らないギルバという存在は中々大きくなっていた様だ。
「………あっ!!」
そんなセラフォルーに遂に朗報舞い降りる。
今日も来てないだろうな……と半ば諦めムードのまま自分で作ったサイトを眺めていたセラフォルーの目にはメール欄に輝く便箋マークの横の1の文字。
「あはっ☆」
最近まで見なかったその数字と、本日のアクセス数にも堂々と表示される1の数字を何度も確認しまくったセラフォルーの表情が誰も居ない自室にて自然と明るくなる。
「来た……えへへ、来た!☆」
久々の事故か、一気にセラフォルーの全身に活力が浸透していく感覚がし、それはやがて歓喜という気持ちとなりて、メールマークを迷わずクリックする、
「GILVER……ギルバ……えへへ、間違いないよ、ギルバちゃんからだ!」
一体何故そこまで彼女程の魔王を歓喜させるのか。
実の所このサイト、セラフォルーが初めて開設したサイトなのだが、冥界の悪魔達ですら知らないというか……当時も今も見向きすらされてないまま勝手に秘密化したサイトだったという変な歴史がある。
当然冥界の悪魔達は冥界に放映されるTVにてセラフォルーが魔法少女コスプレしてなんやかんややるというのは知ってるが、このサイトの事は殆どどころか、サイトのアクセスカウンター的に誰も知らないのだ。
故にセラフォルーも誰にも教える事も無く、それでも誰かが気付いてくれるかもしれないと、自作した動画を配信していたのだが……あれはそう、つい4年程前だったか。
『はじめまして、知り合いにパソコンを貰ってネットサーフィンをしていたら、偶々このサイトの事を知り、コンテンツを拝見して一気にファンになった者です。
魔王☆少女レヴィアたん……実に面白かったです。レヴィアたんさんはアイドルさんでしょうか? 出来れば有名になって間このサイトで動画の配信を続けて欲しいなぁ……とかなんとか勝手な事を思いつつ、応援の意味を込めてメッセージを送らせて頂きます。
それでは次回の更新も楽しみにしています
GILVER』
どうせ誰も来ないんでしょ? ふんだ、ただの趣味だもーん……てな具合で、誰もアクセスをしてくれない事が最早普通に思えて来た時にやって来た一つのメール。
読んでみればそれはファンレターだったのだが、こんなドマイナーどころか、敢えてURLを晒しても誰もアクセスすらしてくれないサイトに偶然とはいえアクセスしたばかりか、配信した動画やコンテンツを全部見た上でメッセージまで残してくれた事に、セラフォルーはえらく感激を覚え、思わずこのGILVER――ギルバという者に対してメッセージを送り返したのだ。
すると、ギルバと名乗る者からまた返事が届き、それが嬉しくてその内メールアドレスの交換までしたりして、ギルバなる者に興味を抱いて色々と聞いてみると……。
ギルバは学生。
ギルバは日本人。
ギルバは男子。
ギルバは人間界からアクセスしている。
とまあ、なんやかんやで色々と知った後、更新する度にファンメールが送られ、変な期待を込めて人間界にある別荘の住所を教えてみれば紙媒体のファンレターが届いたり……。
まるで売れないアイドルと古参のファンを越えたやり取りがなんやかんやで続いた。
「えへへ……しばらくメール出来なくてごめんなさい――そんなの全然良いよぉ……☆」
だからセラフォルーはこのギルバというファンを一番に覚えており、更には自作した抱き枕やら映像を纏めたBlu-rayBOX、更には生写真にサインまで送ってあげたりもしたりした……勿論それはギルバにのみの超特別措置だ。
そして今、しばらく音信不通であったファンからの久々のファンメールに、セラフォルーは完璧に舞い上がりながら、実に嬉しそうにはにかみながら届いたメッセージの朗読を始めた。
『暫く応援のメッセージを送れず、またサイトのチェックも出来ずに申し訳ありません。
最新の更新まで全てチェックし、やはりレヴィアたんは最高だぜ! という気持ちを改めて固めることが出来ました。
これからなるべくこの様な事が無いように――って、所詮只のファンだしそれは気持ち悪いかな?(笑)
とにかく次回の更新も首を長くして正座待機させて頂きます』……かぁ……えへへ……☆」
画面上でのやり取りではあるが、4年もの付き合いで がギルバからだと一発で分かるもののせいか、セラフォルーはかなり嬉しそうにカチカチとメッセージ画面を下にスクロールする。
よかった、やっぱりあの失礼な男の子がギルバちゃんな訳が無い。
アレは只の似非で、何かと勘違いしてるだけだとセラフォルーの心も晴れ始めた…………のだが。
「あれ? まだ続いてる……えっと『ところで、最近になってレヴィアたんを語る似非コスプレイヤーを見掛けました。
別にレヴィアたんのコスプレをするのは構いませんが、そのコスプレ女はあろうことか、自分こそが本物のレヴィアたんだと言い張り、まるで男を誘ってるかの様に囲まれて悦に浸ってました。
自分としては正直それがかなり許せず、思わずその偽者と言い争いをしてしまいました。
なので、レヴィアたんも偽者に負けずに頑張ってください』………………って……」
最後に続く文章に、マウスを操作するセラフォルーの手が完全に止まってしまった。
偽者、言い争い……。
「…………………」
いや、勿論自分が本物なのだが、つい先日全く同じ状況で全く同じような展開で男の子に喚かれたという事を、本気で泣きながら自分を罵倒してきたあの憎たらしい男の子の事を思い返しながら、セラフォルーは暫し声を出せずに画面をぼーっと眺めていた。
「ギルバちゃん……や、やっぱりあの男の子がギルバちゃんなの?」
あまりにも偶然にしては同じ過ぎる。
ギルバという名前についても口に出した瞬間、ギョッとした顔もされたし、第一人間界でレヴィアたんサイトを知る人間なんて一人しか存在しない。
「や、やっぱりそうなんだ……わ、私本物なのにギルバちゃんに偽者だと思われてるんだ……」
セラフォルーの顔から先程までの幸せそうな表情が消え失せた。
そして、この応援メッセージを送ってくれたギルバ本人が本物で間違いない自分を偽者と否定しているという現実に胸が急に苦しくなった。
「ど、どうしよ……ギルバちゃんに嫌われてこのサイトに来てもらえなくなったら……」
そんな1ファンごときにオーバーなと思うが、セラフォルーにしてみれば全部肯定してくれるギルバはある意味自分の道を堂々と歩ける為の心の支えになっていた。
だからこそ、ギルバに今後失望されファンも辞められ、挙げ句二度とメッセージも貰えなくなってしまったと思うだけで……。
「三大勢力の会談……そうだ、アレの時に……!」
セラフォルー・レヴィアタンは、カタカタカタカタと高速で文字を打ちながらブツブツ言い、そして送信をクリックして勢い良く椅子から立ち上がる。
「衣装はこれ。そしてギルバちゃんの目の前で変身すれば……!」
そしてクローゼットを開け、動画配信限定の衣装を選定すると、何やら瞳を燃やしながら、近々駒王学園で行われる三大勢力会談に挑む決心を固めるのであった。
終わり。
オマケ
「スマホってのは便利だな……お陰でパソコンからじゃなくてもお気に入りのサイトがチェックできるぜ……へ、へへへへ!」
「またエッチなサイト? 消去するこっちの身にもなって欲しいわよ……」
「ちゃうわい!! ほら見ろ! 俺が見てるのはレヴィアたんの特設サイトだっつーの!」
「はい? ちょっと待ってください。姉の開いてるサイトがあるとして、それは冥界からしかアクセス――」
「違う!!! アンタの姉じゃない! レヴィアたんのサイトなの!!!」
「あ、あの……厳しい事言っちゃうようで悪いけど、そのレヴィアたんというのは間違いなくセラフォルー様――」
「絶っっっっっっっっっっ対にっ!!!!!! 違う!!!!!! レヴィアたんは強くて可愛いの! アレは単なる勘違いコスプレ馬鹿! 一緒にすんな!!」
「あ、は、はい………」
「完全に現実逃避してるわね……」
「というか、然り気無く姉の事を誉めちぎってるのがムカつきます」
「やっぱりもっと前から駄目だと禁止させるべきだったのかしら……」
「多分それをしても逆効果だと思うわよ姫島さん……」
「先輩、それがレヴィアたんですか?」
「そうだぜギャスパー! 魔王☆少女レヴィアたん。にへへ、やっぱり何時見ても可愛いなぁ……」
「………。あれ? この方ってまさかセラフォルー・レヴィアタン様―――」
「……………………」
「あ……いや、気のせいかなぁ……なんて……」
「だろ? へへへ、ギャスパーは違いの分かる子で偉いなぁ」
「あ、あの……僕そこまで子供じゃないからそんなに頭を撫でられると恥ずかしいですぅ……」
現実到来・近し。
「ん? な、なにぃ!?」
「ど、どうしたのよイッセー?」
「急に大きな声出さないでくださいよ。びっくりするじゃないですか……」
「い、いや……すんません。(駒王町にレヴィアたんが来る、だと!? まさか……いやでもこれはレヴィアたんが俺に直々にメールしてきたからマジかもしれねぇ。
マジか……うへへへ、これであの偽者が偽者だったことが証明できるぜ!)」
フラグ回収も……近し。
補足
簡単な話、思いの外互いに画面の上とはいえ地味に近寄ってたんですよね。
だからセラフォルーさんは彼に等身大抱き枕やらBlu-rayBOXやら、限定待ち受けやらとか……全部自作のをプレゼントし、一誠も一誠でそんなレヴィアたんの正体がセラフォルーさんと知っちゃって現実逃避に走ってしまう。
……要するに、色々と本当に間が悪かったって事さ。