風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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です。


いや、ギャーきゅんとかな?

かなり駆け足の適当文です。


デビル・風紀委員長
ギャーくん


 授業参観の明くる日、一誠はまだ落ち込んでいた。

 

 

「…………」

 

「何時まで落ち込んでるのよ……」

 

「そんなに私の姉だったのがショックだったのですか?」

 

 

 ズーンと風紀委員長の席で突っ伏してる一誠の姿たるや、まるでサンタを信じていた子供が心なき大人にその存在は架空だと教えられてショックを受けたそれそのものであり、授業参観を終えた今日も朝からずっとこんな調子だった。

 

 ちなみにソーナは普通に戻ってる。

 

 

 

 

 

「余程ファンだったみたいで……携帯の待ち受けにしてましたから」

 

「私も前に目を輝かせながら語られた事がありました」

 

 

 知らずにセラフォルーのファンだった事を当時から言うに言えなかった朱乃と椿姫も、女々しく落ち込む一誠に何とも言えない表情を送りながら、ファン歴の結構な深さを二人に教える。

 

 

「ライザーとの件が無かったら、もしかしたらセラフォルー様だとしても特に何も思わなかったのかもしれないわね」

 

「ええ、間が悪いとしか言えませんね」

 

 

 もし悪魔に失望の感情が無ければ、それはそれで厄介なことこの上無いが、こうまで露骨に落ち込まれると非常に居たたまれない。

 セラフォルーが悪い訳じゃない……単に間が悪かっただけなのだ。

 

 

「よし、偽者が居るって本物のレヴィアたんにメールで送っておいたからもう大丈夫だせ………ふへへへへへ」

 

「「「「………」」」」

 

 

 兵藤一誠……現実を知っても逃避出来ない辛さをまた一つ知る。

 

 閑話休題。

 

 

 

 

 何時までもレヴィアたんで落ち込んではいけない……と、現実逃避しまくった結果ある程度メンタルを回復させた一誠は、まだテンションは低めなものの、何時も通りともいえる状態へと戻っていった。

 

 

「グレモリー先輩に残ってる僧侶?」

 

 

 そんな状況の最中、リアスの口にしたその言葉に一誠はソーナや椿姫や朱乃と一緒になって旧校舎へと踏み込みながら、話を聞いていた。

 

 

「ええ、そう……実は凛や小猫、アーシア、祐斗の他に私には後一人眷属が居るの」

 

「あぁ、そういや無理矢理取り込んだ時、確かに駒が一個足りなかったような……会長さんの時は戦車でしたけど」

 

 

 リアスには残された最後の純眷属が残っていて、それが何と旧校舎の部屋の一つに封印されている。

 その話を聞いた一誠は別段驚く事も無く、そういえばシケたツラしてたリアスを見ててイライラして無理矢理駒を強奪して取り込んでやった際、僧侶の駒が一つ分足りてない事を呑気に思い出していた。

 

 確か名前もその時聞いた気がするが、何て名前だったか……。

 

 

「眷属を失ったというのに、兄が今なら大丈夫だと思うからと解禁を許されたのだけど、正直今の私にそんな自信は無いのよね……」

 

 

 開かずの扉の前にまでやって来た時、リアスは自信無さ気にそう卑下する。

 眷属だった者達の制御すら儘ならない今、封印する形で処置していた残り一人の眷属を解放した所で、その強大な力を上手く導ける自信が無いとリアスは弱音を吐く訳だが……。

 

 

「物理的に強くはなってんだし、別に大丈夫なんじゃないっすか?」

 

 

 特に何も考えてない一誠のこの一言に、リアスは少しだけ重たい気分が晴れた気がした。

 というかそもそも、不完全とはいえ言彦に乗っ取られた一誠相手に生き残れたというだけで、既にその価値は高まってたりするのだ。

 

 

「そうよ、何時までも封印したままという訳にはいかないのだし、思いきってみなさい」

 

「ある意味一誠くんの主をやってるんですから」

 

「特殊ケースですけど」

 

「そ、そうね……よ、よし!」

 

 

 ソーナ、朱乃、椿姫にも後押しされる事で顔つきを変えたリアスは、遂に封じられた扉を開け放ち、封印していた最後の眷属を解放した。

 

 

「イヤァァァッ!!!?!?!?」

 

 

 そして開けた瞬間、中から物凄い悲鳴が衝撃波の如く5人の耳をつんざいた。

 

 

「う、うるせぇ……」

 

 

 これには一誠もお目めがパッチリする程の衝撃だったらしく、両耳を思わず塞いでいると、隣に居たリアスと朱乃が少しばかりため息を吐きながらスタスタと解放された部屋の奥へと入っていく。

 

 

『元気だったかしらギャスパー?』

 

『な、な、何事ですかぁぁぁぁぁぁぁ!!??』

 

 

 薄暗くて中の様子が分からず、先んじて入っていった朱乃とリアスと……何やら悲鳴まじりに叫んでる何者かの声だけが、部屋の前で待機している一誠とソーナと椿姫の耳に入っていく。

 

『あらあら、封印が解けたのですよ? もうお外に出られるんです。さ、一緒に出ましょう?』

 

 

 慣れてるというのか、ギャーギャー喚き散らす声の主に対して朱乃が優しげに外へ出ろと促すが……。

 

 

『嫌ですぅぅ!! お外なんて出たくないぃぃ! 人に会いたくなぃぃぃぃっ!!!!』

 

 

 声の主は物凄く頑なに、外へ出る事を拒んでいた。

 

 

「……。この声がグレモリー先輩が言ってた僧侶?」

 

「ええ、やっぱり変わるなんて事はありませんね」

 

「私も一度くらいしか会ってませんが……確かに変わってません」

 

「ふーん?」

 

 

 何か想像していたのとは違ったコメントを二人から貰った後、少しばかりその封印されていた僧侶とやらが気になり出した一誠は、ちょっとした興味本位で部屋の奥へと侵入してみる。

 するとそこに居たのはリアスと朱乃の前でへたり込みながら嫌嫌と喚いてる……。

 

 

「……。これが封印していた僧侶っすか?」

 

 

 金髪、赤目の美少女……だった。

 

 

「ええ、そうよ。ギャスパー・ヴラディ、唯一残った眷属」

 

 

 やっぱり想像してたのと違う。そう思った一誠は、一応美少女の前なのに妙にシラケた顔になってリアスと朱乃に確認しながら、涙目になって震えもしてるギャスパーなる僧侶をじーっと見下ろす。

 

 

「ふーん?」

 

「だ、だだ、誰ですかこの人はぁ……!?」

 

 

 当然初対面なので、ギャスパーとやらは一誠を指差しながら怯えた様に訪ねて来たので。

 

 

「……。一応、同業者」

 

「へ?」

 

 簡潔に、というかいい加減の適当に自己紹介をする。

 そのいい加減さはギャスパーの目を思わず丸くする程であり、どういう事なんだと無言でリアスと朱乃を交互に見合わせるに十分な程だった。

 

 

「えっと、これから話すと結構長いというか複雑なのだけど、ちゃんと聞いて欲しいの。

その上で彼の事をアナタに紹介したいから……」

 

「この場で構わないから、聞いて貰えるかしら?」

「ぇ……あ、は、はいぃ……」

 

 

 そんなギャスパーに対し、リアスと朱乃は絶対に伝えなければならない事を伝えなくてはと、真剣な面持ちでギャスパーと目を合わせる様にその場に腰を下ろしながら静かに語り掛ける。

 ギャスパーもそんな二人の心を端的に感じたのか、先程までの狼狽えも少し収まり、ちょっとビクビクしながら耳を傾けようとする。

 

 だが、二人から語られた話はあまりにも信じられず。

 あまりにも酷いものだった。

 

 

 自分の知る仲間の祐斗と小猫が、その後に仲間になった兵藤凛とアーシアなる眷属と共につい最近眷属を抜けた。

 

 そして今もこの学園に元の種族として通っていて、その代わりをこの一誠という風紀委員長が勤めてくれている。

 

 更にいえば、普通ならありえない二人の悪魔の王が持つ駒の両方を取り込み、現状はリアスとソーナの二人の下で交互に悪魔として活動している事。

 

 

「ふ、風紀委員会の人だったんですかぁ?」

 

 

 荒唐無稽な話をある程度まとめて話されたギャスパーは、小猫と祐斗が仲間では無くなってしまった事に少し処じゃないレベルに狼狽えつつ、今その代理として存在している風紀委員長に少しびくついてしまう。

 

 一応ギャスパーも学園の旧校舎に引きこもっていたので風紀委員会のあれこれについては知っていたのだ。

 

 

「おう……ま、心配せんでも次の仲間が揃ったら俺はお役御免だ」

「は、はぁ……」

 

 

 だが、思っていた以上に乱暴そうには見えない。

 ギャスパーは代理でやってると自己紹介する一誠を見ながら、ほんのちょっとだけ恐怖の風紀委員に対してのイメージを内心変化させる。

 

「で、でも小猫ちゃん達が眷属を抜けたって……本当なんですか?」

 

「えぇ……私の底が浅かった結果が招いたのよ」

 

「違う、奴等が勝手に裏切っただけだ」

 

「う、裏切った……?」

 

 

 リアスの言葉を否定して訂正する一誠にギャスパーが信じられないと目を見開く。

 

 

「その……塔城と木場、それとアルジェントってのにとって大事なのは、グレモリー先輩より兵藤凛だった様でな。

事の始まりはこのグレモリー先輩に降り掛かった婚約話をレーティングゲームで破棄させるという話からだ。

勝ったら婚約解消だっつーのに、自信満々な台詞までほざいた奴等はものの見事にぶちのめされた挙げ句、あっさりとグレモリー先輩と朱乃ねーちゃんを見捨てて、テメー等だけで人間界に逃げ帰ってきやがったんだよ」

 

「え……」

 

「そのケツを拭いたのは……いや、個人的理由も重なったからだが、その時は俺が冥界に乗り込んで、魔王ぶちのめして無理矢理言うこと聞かせたから、グレモリー先輩の婚約話も無いことにはなったが、そっからだっけか? 奴等が俺に『グレモリー先輩を洗脳してる』なんて言い出したのは?」

 

「それと匙達の件もその時期ですよ」

 

「あぁ、それもあったな……。まぁ、とにかくだ。俺はこのグレモリー先輩とシトリー先輩の事を洗脳して、エロイ事しようとするクソ野郎って言いたいらしく、それを二人が否定した瞬間、今度は主の言うことに露骨に逆らい始め、遂にはテメーで勝手な真似した挙げ句死にかけた所をグレモリー先輩達に助けて貰った分際で、俺とつるんでるから信用できないって、勝手に抜けたって訳だ。どうだ? 笑える話だと思わねぇか?」

 

「そ、それ……本当に小猫ちゃん達が言ったんですか?」

 

「……。凛と一誠はその……戸籍上は姉と弟の関係でね? その、一誠は凛を嫌ってるのよ。で、凛を慕う小猫達にはそれが許せなく、一誠を嫌ってたんだけど、ライザーとの件で私は多大な恩を彼から受けた。

そのお返しも、尻拭いもしてもらったのにも関わらず、お礼も言わない小猫達に注意をしたら、その時から……………うん」

 

「つまり、半分は個人的な理由で余計な真似して引っ掻き回した俺のせいだって事だ」

 

 

 だから俺は、代わりが見つかるまで二人の部下を代理でやってるって訳。

 

 そう話を締めた一誠に、ギャスパーは正直困惑から抜け出せないでいた。

 だがしかし、この場に小猫と祐斗も居ないし、一誠からは異常な数の転生悪魔の駒の力を感じられてしまう。

 

 小猫達から話を聞いてみない事には百パーセント信用は出来ないけど、何よりリアス自身が肯定しているという時点で、少なくとも嘘ではない事を半分は理解してしまうのだ。

 

 

「こ、小猫ちゃんや祐斗先輩は今何を……?」

 

「あー……確か聞いた話だと兵藤凛の家に転がり込んで仲良くやってるみたいだぞ? だよなグレモリー先輩?」

「ええ、今日も4人で仲良さそうに一緒に帰るのを見たわ……は、ははは」

 

「ちなみに、あの子達からアナタの事については一切触れてないわ。

言い方は悪いかもしれかいけど、ギャスパー君の事なんてどうでも良いと思ってると思うわ……」

 

「……。そう、ですか……」

 

 

 その上、引きこもっていたから仕方ないにせよ、小猫達は自分の事に一切触れようともせず今を楽しく生きているらしい。

 その凛とアーシアというのは知らないけど、小猫と祐斗とは知らない仲じゃないつもりだったのに、ギャスパーは余計にショックだった。

 

 

「………。外、出たくないならやめとけよ? その能無し共も学校に引き続き通ってるし、その様子だと多分見たらグレモリー先輩みたいにナーバスになるだけだと思うわ」

 

「ぅ……」

 

「確かに……私だって見るだけで辛いもの……」

 

 

 そしてこれはレヴィアたんの正体にショックを受けた反応なのか知らないが、珍しく初対面相手に……いや、週末のボランティアでしょっちゅう遊ぶ小学生の子供達とギャスパーが重なって見えたせいか、一誠の対応が嫌にマイルドであり、粗暴、乱暴、スケベの側面をまだ見てないギャスパーの中で一誠の評価が勝手に上昇していく。

 

 心なしか、その言葉に落ち着きを取り戻した影響で制御の出来ない神器が暴走する気配も無い。

 

 

「封印っつーか、本人の意思に任せるべきだろ。

あの薄情共が居るのに、見せてショック受けて重度の引きこもりにでもなったら元も子も無いだろうし……」

 

 

 そんなギャスパーに対して、一誠はかなり珍しく『慎重』になってやるべきだと主張する。

 今のギャスパーとかつて同じ目をした子供を知っているから……。

 

 

「ええ……そうね。

それより随分とギャスパーに優しいのね……一誠にしては?」

 

「あ? 別にそうじゃねーよ。ただ、前に近所のガキの中に何時も独りぼっちで、身体中に痣ばかり作ってた子があんな顔してたのを思い出しただけだ」

 

「っ……それってもしかして」

 

「あぁ、クソみてーな親に虐待されてたみたいでな。

当然、そのクソ共には行方不明になって貰い、子供好きの金持ち老夫婦の元で今は元気でやってるよ。

毎週ボランティアに参加もしてくれる様になったよ」

 

 

 ヘッと笑って割りととんでも無い事をしてると然り気無くカミングアウトする一誠だが、誰もそれには突っ込まない。

 どうであれ、その子供の今はとても明るく幸せそうなのだから……。

 

 

「つー訳だ……えーっとギャスパー? 封印の扉は敢えて開いたままにはするが、もう無理矢理外に出ろとは言わねぇ。

ただ、何かアレば直ぐに俺を呼び出しな、可能な限りは行ってやるよ」

 

「ぁ……」

 

 

 へっへっへっ、と椿姫や朱乃にすれば見慣れた『子供を相手する』時の様な目線に合わせた笑みを浮かべて、ギャスパーと話す一誠。

 

 同年代相手じゃまず見せない、一誠の持つ側面であり、学園では無く町全体から支持を受ける理由。

 

 

 ぱんぱん

 

「ひゃん!?」

 

「あ、やっぱお前男だったか。まあ、そんだけ女っぽい顔してりゃあ、そんな格好でも許されるか……」

 

「な、な……!?」

 

 

 それが風紀委員長・兵藤一誠なのである。

 どこかの悟空の幼少期みたいに、ギャスパーをぱんぱんして性別を確かめる変態じみた真似をしようが……。

 

 

「いでぇ!?」

 

「何やってるのよ! ギャスパー君が男の子だったからよかったけど!」

 

「か、軽い冗談だし、初見で大体見抜いてたっつーの! いってぇ……マジで殴んなよ……酷いねーちゃんだと思わねぇギャスパー?」

「あ、い、いや……そのぉ……」

 

「ギャスパー君も何赤くなってるの!」

「ひぇ!? だ、だって急だったから……!」

 

 

 好かれる相手には好かれるのだ。

 

 

終わり




補足

基本、本気で何かをトラウマってる子相手には、風紀委員としてやって来た経験でかなり態度が軟化します。

というか彼って割りと子供にゃ何されても優しかったりしますので。


その2
それがタイミング良く発動したから、洗脳と呼ばれてもしょうがない。

やろ?


3

パンパンすなっ!!

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