風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

35 / 48
この件に関してそろそろ決着をつけるべきか?


答えは……


風評被害……でもない

 凛はこれで一誠との関わりのほぼ全てを失った。

 両親はすでに一誠を初めから存在してない様に扱い、自分に近しい存在もまた同じく一誠を嫌っていた。

 

 そして何より、一誠自身が最早自分と関わろうともせず、簡単言えば下手な真似しても怒る処かそこら辺のゴミを見るような目で一瞥するだけで、何も言わないのだ。

 

 

『えーっと、諸君も知っての通り、我が風紀委員は先代達の卒業により俺だけしか居ないという状況であり、加えて生徒会も役員達が家庭の事情で会長と副会長を除いて転校してしまったという、宝くじを大当たりさせる確率並みの出来事により、二人しか居ない』

 

『ぶっちゃけた話、生徒会の数が減ってしまおうが風紀委員としてはザマァ見さらせといった感想なんだけど、このままだと共倒れしちまうという懸念が生まれてしまって静観という訳にゃあいかんのよ』

 

『――従って本日より、現風紀委員会と生徒会は今代に限り、統合する事になった。

活動については今までと何ら変わらんが、違いは風紀委員と生徒会の仕事を互いにフォローし合うといった所かな』

 

 

 加えて今となっては自分より原作に近い位置にまで入り込んでるという始末。

 いや、ある意味じゃそれ以上なのかもしれない……。

 

 

『会長・支取蒼那です。

只今いっせ……あ、じゃなくて兵藤風紀委員長の説明の通り、本日より生徒会と風紀委員を兼任する事となりましたので、どうかよろしくお願いします』

 

『副会長の真羅椿姫です。

会長同様、本日より兵藤風紀委員長と力を合わせて人数不足にも負けずに頑張りたいと思いますので、皆様これまで通りの応援よろしくおねがいします』

 

 

 何せ本来なら有り得ないシトリー眷属と、グレモリー眷属の両方を兼任しているのだから。

 

 

『改めて、風紀委員長の兵藤一誠だが……はっはっはっ、こうして壇上から見下ろしてみりゃあ、納得してねーってツラばっかだなぁ?

まあ、そりゃそうだよなぁ? 特にこの二人の自称ファン共からは殺意すら感じるぜ? くひゃひゃひゃ、こっちの貧乳はどうでも良いとして、俺って実はこの椿姫ちゃんとは結構仲良しなんですぅ! ざぁぁんねぇんでしたぁぁっ!! ふひゃひゃひゃ!!』

 

『降りてこい!! ぶっ飛ばしてやる!』

 

『あんな変態に支取先輩や真羅先輩と一緒にさせられるかぁ! 反対運動を起こすぞ!!』

 

『ギャハハハハ!! 言ってろ負け犬野郎共! これは教師陣からの指示なんだよーん!! だから何を言おうが無駄なんだよぉぉぉぉっ!!! グヒャヒャヒャ!!』

 

 

 入れ替わる様に……まるで何者かが全てを軌道修正せんと……。

 

 

「下品な人……」

 

「やっぱり何か仕込んでシトリー先輩達の事を……」

 

「…………」

 

 

 一部、取り返しのつかない事を挟みながら……。

 

 

 

 既にご卒業された雲仙先輩と雲雀先輩に殺される。

 そう言いながら最後まで躊躇っていた一誠だけど、結局は首を縦に降って了承してくれた。

 

 

『まあ、人手不足だったのは否定できないからよ』

 

 

 元々先代の加入試験で一誠以外が完全に弾かれてしまったからというのもあるけど、今年になっても風紀委員会に誰も入ろうとしなかったのが決意を固めた理由だったらしく、この日私と椿姫だけしか残ってない生徒会と一誠のみが委員を存続させている風紀委員会は今の代にのに合併する事になりました。

 

 

「あーぁ、やっちまった。

今年の学園祭にあの二人が来なければこんなビクビクする事なんて無いんだけど――というか、今年の一年が誰も入ろうとしなかったのがそもそもの始まりだな……今更ながら」

 

 

 全校集会での一誠の言葉で大顰蹙を買ってでの合同式

も終わり、クラスメートから『だ、大丈夫なの? あの風紀委員会ともそうだけど、兵藤君とだなんて身が危なくない?』なんて何度も言われて色々と大変なまま放課後を向かえ、第一回の活動が今まさに生徒会室――じゃなくて風紀委員室で執り行われようとしている。

 

 同意はしたものの、やはり後々考えてしまっていたのか、風紀委員長の椅子に座ってクルクル回りながら一誠がブツブツと下級生の加入者が居ないことを嘆いている様子なのだけど、正直先代の加入試験をそのまま引き継いでやらせた結果を考えれば入る人間なんてそれこそ悪魔でも無い限り居ない気がしてなら無い。

 

 そうで無くとも、アレだけ現委員長――つまり一誠の独断と偏見という名の、顔とスタイルの良い女子だけを入れようと躍起になっていた姿を思い出すだけでも、一人になるのは仕方ないのかもしれないとすら思う訳で。

 

 

「その時は私もちゃんと頭を下げるから大丈夫よ一誠くん?」

 

「え? うん、椿姫ちゃんの申し出はありがたいけど、冥ちゃん先輩もヒバりん先輩も生徒会ですとか言った瞬間襲ってくるかもだしなー……しばき倒される被害が最小限で事足りるなら俺だけで良いよ」

 

 

 椿姫に対してのひねくれ皆無な優しさをちょっとでもいいから私にも見せてほしいと言うか……。

 どうせ私は姫島さんや椿姫やリアスと違ってインパクトの欠片も無い身体よ……ふんだ。

 

 

「んーで? 結局これからどうすりゃ良いんだ? リーダーはアンタで良いとして、何をすれば良いわけだ?」

 

「え? わ、私がリーダーなんですか?」

 

「当たり前だろ。裏事情を考慮すりゃあアンタの方がリーダーに相応しいだろうし、何より愚民共が納得しねぇっしょ?」

 

「愚民共って……まさかそれって生徒の事?」

 

「おうよ、奴等のほぼ100%が今回の事に納得してねーみたいだしね。

そんな状況でリーダーやりまーすなんて俺が言ったら、デモでも起こされそうなもんだぜ。だからアンタやれよ、ソーナのご主人様」

 

「ご、ご主人様……」

 

 

 然り気無く今名前で初めで呼ばれた気がする。

 貧乳だの、会長さんだのと今まで呼ばれてただけに、然り気無くとはいえちょっと動揺してしまう。

 ……ご主人様って後ろに付けてる辺りに皮肉を感じるものだけど。

 

 

「ちなみに椿姫ちゃんは知ってるけど、風紀委員会の主な活動は学園内の風紀取り締まりは勿論の事、町全体の風紀も取り締まる事になっているんだなこれが。

しかも、先々代……つまりヒバりん先輩のせいで町長公認」

 

「この町に人間の犯罪率が異常に低い理由はそれでしたか。

なるほど、以前の女子学生の制服窃盗はかなり珍しいケースだったのですね?」

 

「ありましたねーそんなの。

一応先代から受け継いだ時の犯罪率だけはずっとキープしてますからねー

愚民共が雑魚共からかつあげされたりしないのだって、実は俺のお陰なんだし、少しは感謝して欲しいもんだぜ。まあ、実際言われても要らんけど」

 

 

 なるほど、こうして聞いてみると一人とはいえ本当に先代まで行っていた風紀委員としてのオーバー気味な仕事を全部一人で請け負っていたという訳ですか。

 確かに未だに風紀委員の支持率は学園の外からは異様に高いせいで潰すに潰せないでいましたが……。

 

 

「最近小僧共に変な女に引っ掛からない為の極意の伝授をしとるんだが、これが中々好評なんだよね。

メンヘラ女の見分け方とか」

 

「小学生になんて事を教えてるのよアナタは……」

 

「それは言いっこ無しだぜ椿姫ちゃん。

拗らせた女に追い回されるなんて誰だって嫌だし、女の子からしたらストーカーに付きまとわれたくもない。

だからこそ、女の子にゃあ軽い護身術も教えてるんだぜ? お陰で最近隣町から来たイキッた小僧共を小学生の幼女がぶちのめしたんだ」

 

「さぞ相手の不良達は惨めな気分でしょうね……」

 

「と、思ったんだけどそのバカ共は幼女にしばかれて目覚めでもしたのか、その日以降からすっかりロリコンになっちまったらしい。

最近わざわざ隣町から週一のボランティアに来ては、その小学生の幼女達に奴隷の如く働かされてるみたいだぜ」

 

 

 話を聞いてみると、斜め上な話は多いけど支持を受ける理由だけは何となく分かった気がする……。

 

 

 

 

 

 

 リアスはあの日以降、気にしない様に心がけるなんて言っていたけど、そんなのはまだ無理な事ぐらい私だって分かってる。

 祐斗君、小猫ちゃん、アーシアちゃん、そして凛ちゃん。

 

 あの日の夜……いえ、それよりももっと前から千切れ掛かっていた糸は、完全に切れてしまい、今はもう4人共リアスの眷属では無くなっている。

 

 

「楽しそうね……あの4人」

 

「リアス……無理して気にしないなんて思わない方が良いわよ? 正直そんな直ぐに割り切れるものじゃないんだから……」

 

「う、うん……」

 

 

 シーンとしてしまっているオカルト研究部の部室に居るのがちょっと耐えられなくなり、聞き手になってくれる一誠くんの所にでも行きましょうと私が誘う事でリアスを連れ出したのだけど、ふと風紀委員室へと続く廊下の窓から見えてしまった4人の楽しそうに正門を出ようとする姿を捉えてしまい、リアスの顔はみるみると元気が無くなってしまった。

 

 

「……。もう自分で判断できる歳なんです……あの子達はリアスよりも凛ちゃんを大事にしたかったというだけの事……なんですよ」

 

「…………」

 

 

 正直、こうもアッサリ薄情な真似をされるとは流石に私も思わなかった。

 祐斗君も小猫ちゃんもアーシアちゃんも、リアスの眷属となることで外敵から守られているという自覚もあると思っていた。

 それなのに……それがどうしたんだとばかりにあの日の夜、リアスに対して一誠くんに洗脳されてるんだからもう付いていけないなんて……。

 

 

「はぁ……」

 

「一誠くんに変な踊りでも踊って貰って気を紛らわしましょう。ね?」

 

「うん……何時までも引き摺ってたら、イッセーに悪いものね」

 

 

 何時一誠くんが洗脳したんだ。私は頭に来るがままにあの日叫びたくなったくらいに頭に来た。

 安心院さんが言っていた事だけど、確かに一誠くんは何故か敵を多く作ってしまうし、凛ちゃんが絡むとまるで世界が全て凛ちゃんの味方になってしまうような状況に追い込まれてしまう事もある。

 

 でもだからと言って一誠くんにそんな力は無い。

 気落ちさせない為にと、表向きは憎まれ口を叩きながら幻実逃否でソーナ様とリアス様の駒を取り込んで、新しい眷属が出来るまでの凌ぎななってくれたのだって、決して狙っていた訳でもなければ、お二人に良からぬ真似をする為でも勿論無い――――スケベな真似したら私が怒るんだから尚の事だ。

 

 それなのに洗脳だなんて……失礼にも程がある。

 

 

「一誠くん」

 

「んぁ? あぁ、朱乃ねーちゃんにグレモリー先輩…………っと、何かテンション低いな」

 

「うん、今此処に来るまでに凛ちゃん達が帰るのを見ちゃってね……」

 

「あー……」

 

 

 それでも一誠くん本人は『そう思いたいのなら存分に思わせておけ』とケタケタ笑ってたけど、その内悪魔の間でもそんな話が勝手に広まったとしたら、私が耐えられない。

 勝手な与太話で一誠くんがそんな人格だと決めつけられるなんて……。

 

 

「学園から転校する話も無いみたいですね、あのご様子だと」

 

「ええ、寧ろ実家からの援助が途切れた瞬間凛の家に厄介になるみたいだわ。

偶々お昼頃に4人で話してるのを聞いちゃって」

 

「そこまであの姉……いや、兵藤凛にくっついて居たいのか? あーあ、俺を作成したご両親共も大変だねー? まあ、俺は頼まれても顔も見せたくねーからもう関係なんかねーけど」

 

「前に凛ちゃんの家に行った時にご両親に一誠くんの話をしたら『居ないもの』扱いしてましたからね……」

 

「あぁ、実の娘が可愛いんだろよ……『実』の娘がなぁ」

 

 

 風紀委員室に行ってみると、朝の集会での話の通り合併した関係でソーナ様と真羅さんも居り、慣れでもしたのか一誠くんも最初の頃に比べると私達が来ても特に嫌そうな顔もしなくなった。

 

 

「茶、飲みますグレモリー先輩? あ、そうそう、この前ボランティアをした時に町内会のマダムから生チョコを貰ったんすよ。良かったら食いましょ? ほれほれ」

 

「あ……う、うん……」

 

 

 寧ろリアスにかなり気を回している。

 本人に指摘したら『はぁ? やってーねーよそんな七面倒なことなんざ』なんて言うと思うけど、あの態度は昔よく私が気落ちとかした時にしょっちゅうしていた態度だから隠したってお見通しだ。

 

 

「ちなみにダイエットとか変な事とか考えてませんよね?」

 

「え? あ……まあ、食べ過ぎたらとかは考えちゃうけど」

 

「あ、そう。じゃあ先に言うけど、その体型からして少し体重増えたって問題なんかねーから、変な事考えるなよ? 寧ろムチムチ具合が増して俺にとっちゃ……げへへへ!」

 

「一誠くん?」

 

「っ!? じょ、冗談だぜねーちゃん。へ、へへへ……」

 

 

 ……。ちょっとリアスに妬けちゃうけど、今回だけは見逃してあげる。

 

 

 

 4人の事を忘れろなんてまだ私には無理だし、学園でその姿を見る度に目の前の景色が滅茶苦茶になる感覚もする。

 その度に朱乃や椿姫やソーナに励まして貰えるのだけど、最近はイッセーが眷属になった事で関わりが更に増えたせいか、段々と彼の事が解っていく気がした。

 

 

「プール掃除ねぇ? 確かに今の会長さんと椿姫ちゃんだけの生徒会じゃ、やれないこともないけど時間は食うだろうな」

 

「ええ、こんな事で悪魔の力を使うのもアレですし、自分達の手でちゃんと清掃したいとは思ってますけど……」

 

「だろうな、デッキブラシでゴシゴシやって、サラピンになった所に塩素で消毒した水を張る……それこそ人間のやり方ですからねー」

 

 

 彼、悪辣的な態度をするせいであんまり友達が居ないみたいだけど、それを無視したりそれでも付き合わざるを得無い状況で深めていくと、結構というかかなり彼なりの優しさが分かってくる。

 

 

「ちなみに清掃が早く済めば、その分先んじて入って遊んでも良いらしいです」

 

「へー? でも三人じゃなぁ? それに泳ぐ程プール好きって訳でも無い面子ですしねー」

 

「まあ、そこまで拘ってない事は確かかも」

 

「でしょー?」

 

 

 例えばだけど、こうして生徒会と風紀委員としての話し合いの最中も、部外者である私と朱乃に対して……。

 

 

「そうだよ、朱乃ねーちゃんとグレモリー先輩にも手伝わせりゃ良いんだよ」

 

 

 ちゃんと加えさせようとしたりする。

 

 

「どうせ暇だろ? 頼むぜねーちゃん」

 

「良いけど、水着着たら誉めてくれるの?」

 

「そりゃあねーちゃんのチョイス次第だな。つーか俺的にはグレモリー先輩と椿姫ちゃんの方が―――あーっとと!? 嘘嘘! ねーちゃんも三番目くらいには気になる……じゃなくて気になって夜も眠れねーぜ!」

 

「あらそう? ふふ、なら私もお手伝いしてあげようかな? リアスはどうなの?」

 

「えーっと……確かに暇だし、皆がそうするなら……」

 

「うーっしゃ! 当日は一眼レフのキャメラ持ち込みだな!」

 

 

 正直三人だけでも余裕で終わる程度の労働なのに、お前等も聞いてるだけなんて許さねぇよ的な言い方で私達も一緒にと言ってくれる。

 朱乃曰く『あれでもあの日の夜以降、かなり考えてましたからね、自分が原因でまた余計な事になってしまった』との事らしいけど、この態度を見れば確かにどの程度までとは解らないが、考えているんだと分かる気がする。

 

 

「水着ですか……。

一応この先の事を考えて新しいのを買っておいた方が良いのかしら?」

 

「あ、別に会長さんは何でも良いっすよ。

パッドでも仕込んでみたら? とは言っておきますけど」

 

「パッ!? そ、そこまで無い訳じゃないわよ!」

 

「どうかなぁ……? 今日も居ないけど、なじみ以下って時点でなぁ……揉みごたえも無さそうだしー?」

 

「くぅ! じゃ、じゃあ当日見せてやるわよ! 腰を抜かしても知らないんだから!」

 

「へーへー……その無駄な努力の結果を楽しみにだけはしときますわ」

 

 

 ソーナも結構立ち直ってるみたいだし、あの日安心院さんもいってたけど、イッセーはその外見の性格だけで敬遠しないで付き合ってみたら、意外な一面を知れて結構良いのかもしれない……なんてね。

 

 

 

 …………。思うに、会長って一番姫島さんを除いたら一誠くんに構われてる気がする。

 

 

「え、会長さんって姉が居んの?」

 

「あれ、この前コカビエルの時に聞いたと思ったのですけど……」

 

「あー……何かこの辺で言ってたような。

そうか……姉で魔王ねー?」

 

「セラフォルー・レヴィアタン様よ。会長の眷属を代行している間に会う可能性は充分にあると思うわ」

 

「だよなー……チッ、めんどくせぇ……」

 

 

 そして……まあ、前の時を考えたら察する事は出来るけど、一誠くんは魔王って単語を聞くとかなり嫌そうな顔をする。

 

 

「随分と気の進まなそうなお顔ね?」

 

「え? あー……うん、まぁ……グレモリー先輩のほら、婚約だっけ? あの件の事が残ってるというか、正直言ってよ、俺って悪魔にしても信じられんのって椿姫ちゃんと朱乃ねーちゃん覗けばアンタ等二人だけなんだよねー」

 

「……え!?」

 

「し、信じられるって……わ、私とソーナの事を?」

 

「うん。会長さんは同じ……まぁ転生とはいえ滅茶苦茶言われた挙げ句ボイコットされたし、グレモリー先輩に至っては勝手に結婚させられそうになった挙げ句、その阻止にしても役立たず共のせいで……なぁ?」

 

「だからお二人は信用できると?」

 

「まぁ……ねーちゃんと椿姫ちゃんが王様って認めてるってのもあるんだけどね……。

それに言彦の件でアンタにも助けて貰ったし」

 

 

 寧ろ逆に何で今まで気付かなかったのかとすら思う、会長とリアス様の反応。

 少し見てればわかるというか、一誠くんってその性格以外も好き嫌いが激しいのもあるせいか、一度『無いな』と感じた相手は男女問わず辛辣になる。

 

 確かに一度はお二人とも姫島さんがフェニックスとのレーティングゲームの景品にされかけた件でかなり嫌悪されたのかもしれないけど、その後の対応でV字回復したのだし、現にこうして風紀委員室に出入りすら出来てるのだから、少しは自覚して欲しいと私は思う。…………微妙に敵が増えた気がするけど。

 

 

「「………」」

 

「……。なんすか二人してその目は? あの言っときますけど、悪魔の中じゃマシだって話だかんな? グレモリー先輩にしたって身体だけだし、会長さんに至っては……あー……別に何もねぇわ」

 

「……ふ、ふふっ」

 

「へー、リアスとは違って何もないのにマシですか……ふふ……」

 

「な、何だよ気持ち悪いな……! 別にアンタ等なんざねーちゃんと椿姫ちゃんと繋がってなけりゃあ別にどうでも――」

 

「はいはい、分かったからその辺にしてあげなさいな」

 

「お二人とも分かってるみたいだし」

 

「いやわかってねーよあの顔! 見ろよ! ちょっと甘いされたらコロッと結婚詐欺にでも騙されそうな顔じゃねーか!」

 

「別に一誠くんは結婚詐欺なんてしないでしょ?」

 

「そうそう」

 

「ぬ……! ……チッ」

 

 

 例えるなら、不良が雨に濡れてる捨て犬を見て何も言わずに優しくしてる所を見せられた……といった心境か。

 結婚詐欺師に騙されやすそうな気も確かにしないでもないけど、少なくとも一誠くんの隠しに隠してる情の深さをこのお二人にも理解して貰えて何よりだと素直に思う。

 

 

「けっ! だから洗脳なんて訳のわからねー因縁つけられんだよ。

大体おかしいと思えよ……つーかチョロすぎなんだよ悪魔の分際で」

 

「そうね、チョロいと言われたら否定できないかも」

 

「眷属達に離れられてた私たちに『シケたツラされるとイライラする』なんて言われて転生されたら、そりゃあ申し訳なさとかでいっぱいになるものね?」

 

「へっ、どうせ代わりが見つかるまでの代行だっつーの。で、その魔王ってのはどんなんなんだ? まさかグレモリー先輩の兄貴みたいなスキル持ちとかじゃねーよな?」

 

 

 それを言われると決まって一誠くんは不機嫌になり、それ以上話しても不利になるだけど悟ったのか、当初話題に出た魔王様についてソーナ会長に聞き始める。

 

 

「んー……どうなんでしょう? サーゼクス様が安心さんや一誠と同じだった事をリアスが見抜けなかった様ですから、もしかしたら私も見抜けなかった……とも考えられるような……」

 

「お兄様どころかグレイフィアもそうだった事は父と母も分からなかったみたいだし、身内だからって見抜ける訳じゃないのよね……一誠達のそれって」

 

「まあ、持ってる者同士だと隠さない限りじゃ一目でわかりますからね。姫島さんもそうでしょう?」

 

「私の場合は、一誠くんと彼女の近くに長年居たというのが大きいですね。………私自身スキルは持ち合わせないので」

 

 

 姫島さんが少し伏し目がちに自分はスキルを持ってないと話す。

 その表情はどこかコンプレックスを感じさせるものがあり、一誠くんも少しばかり目を細めて姫島さんを見つめてた。

 

 

「……。ちなみにその魔王ってのはアンタと同じで貧乳なのか?」

 

 

 そして露骨に話題を元に戻した。

 ……。多分一誠くんなりに気を使っての事だろうけど、私は正直姫島さんを見てるとこう思う。

 

 

「えーっと……はい、私より無いですよ?」

 

「え、ソーナ……あなた――」

 

「ねっリアス!? …………………ワタシヨリナイデスヨネ?」

 

「……………。そうね、正直言うとそんな感じかも……あ、あははは」

 

「あ、そう……何かますます興味失せたぜ」

 

 

 

「………。会長、そんな直ぐにバレるような……」

 

「もし一誠くんがレヴィアタン様に鼻の下を伸ばすようなら、目の前で本気で泣いてやる」

 

「ええ、そうした方が良いわ。私も手伝う」

 

 

 姫島さんの中に堅牢な鍵で押し込んでるソレがあるという事を……。

 

 

 

 

 

 何やかんやで5人がしょっちゅうツルむ様になったこの現状は、やはり何も知らない一般生徒達からすれば妬みの対象になってしまう。

 この日も、何やかんやで風紀委員室に招き、生徒会と風紀委員の初仕事を終えて、最近めっきり拠点となった姫島家へと適当に話でもしながら帰ろうとした5人……というか一誠の前に、大量のファンが立ちはだかった。

 

 

「おい兵藤。先生達はそうさせたのかもしれないが、俺達は納得なんかしてないかんな」

 

「そーだそーだ! 今すぐ4人から離れろ!」

 

「羨ましいんじゃ!」

 

 

 

「しつけー……。ほら、アンタ等のファンの声が生で聞こえるぜ?」

 

「……。正直全然嬉しくない」

 

「ほっといて欲しい」

 

「私は一誠くんのお嫁さんだから邪魔」

 

「帰って宿題をすべきだと思う」

 

 

 獣みたいな目で一誠を睨むファン集団に、4人の少女達はげんなりとした表情を浮かべる。

 その時点で自称ファン達の士気は半分以下にまで落ち込んだりもしたけど、それでもやはり妬みパワーというものが後押しでもしているのか、ちょっと前から異様に色んな美少女と一緒に居る機会が多くなってる変態風紀委員長にブーイングの嵐を見舞う。

 

 ちなみに暴力で来ないのは、風紀委員会に所属しているという時点で一誠の戦闘能力が半端無いと知っているからである。

 

 

「うっせーな、だったら一人一人口説きでもすりゃあ良いだろ? それも出来ねぇヘタレ共の分際で、妬みだけは一丁前か?」

 

「う、うるせー! そんな機会が無いだけだ! オメーが4人付きまとってるせいでな!」

 

「そうだそうだ! 機会さえあれば実行してるんだよ!」

 

 

 へっと半笑いで煽りまくる一誠に、二学年までの自称男子ファン共は一誠が居なけりゃやってたと騒ぎ立てる。

 

 しかしどう見てもそんな気概のある連中は居なさそうだし、何よりやったとしてもこんな場面を本人達に見られてる加えて、引いた反応されてる時点で終わってるとしか思えない。

 なので、一誠も適当に疲れるまで言わせてやるつもりだった……………のだが。

 

「聞いたぞ兵藤! 木場の野郎はともかくとして、小猫ちゃんとアーシアちゃんと凛ちゃんを、姫島先輩とグレモリー先輩欲しさに部から追い出したってよ!」

 

「それに支取先輩と真羅先輩とも仲良くなりたいからって、匙達を転校させたってのもな! 最低だぜテメェ!」

 

「しかも姫島先輩に至っては弱味を握って無理矢理抱きつかせたりさせて――」

 

 

 

 

 

 

 

「…………………あ?」

 

 

 地雷だけは、誰だろうと踏んではならない。

 

 

「っ!?」

 

「ばか……!」

 

「最低な事を言ってくれたわね……!」

 

「誰の入れ知恵よ……」

 

 

 さんざん、オカルト研究部のメンバーを追い出しただの生徒会のメンバーを私欲でどうのと宣っていた連中をスルーしてきた一誠だが自称ファン共の集まりの先頭付近から口走った最後の言葉にのみ、一気にその表情と雰囲気を無へと変えて反応する。

 

 当然聞いてしまった4人もそれぞれ集団達に対して嫌悪した表情を見せる訳だけど、ある意味じゃ一気にこの目の前の邪魔な集団の命を心配しなければならなくなった。

 

 

「ごめん、もう一度言ってみてくんね?」

 

「え?」

 

 

 それまで適当に聞き流す態度をしていた一誠が、信じられない程に重苦しい空気を放ちながら、されど顔はニヤニヤとさせながら視線を向けて口を開く。

 

 

「今、そこのお前だったな? もう一回言えよ、俺が朱乃ねーちゃんになんだって?」

 

「え……あ、いや……」

 

 

 笑ってはいる。けれどあまにりも何時もと真逆の雰囲気に、勢い任せて口走ったとある二学年の男子はゴニョゴニョと口ごもり始めるのだが。

 

 

「ひっ……!」

 

「何だよ、今言ったことを忘れた訳じゃないだろ? ほら、ちゃんと聞いてやるからもう一度聞かせてくれよ? 俺がねーちゃんに何だって?」

 

 

 一誠は最早恐怖すら覚える笑みを浮かべながら、その男子生徒の肩に手を置いたかと思えば、そのまま片手で軽く持ち上げながらもう一度言えよと何度も問う。

 これには普段女子生徒にセクハラしまくるバカな風紀委員長だと思っていた他の連中も一気にお通夜の如くシーンとなり、小さく悲鳴をあげるその男子生徒を助けようともせず、恐怖で硬直してしまう。

 

 

「テメーの脳みそは鳥以下なのか? え? 俺は今さっき言ったことをもう一度言えって言ったんだぜ?」

 

「わ、悪かった……い、言い過ぎ――」

 

「だからそうじゃ無いって。もう一度言ってみなよ? それとも何だ? その頭にショックでも与えてやれば思い出すのか? ん??」

 

「ひぃっ!?」

 

 

 激昂するとはまた違った恐怖が、持ち上げられてる男子の全身を激しく恐怖で震え上がらせていく。

 しかし一誠はそれでも下ろそうとはせず、無垢な子供を思わせる笑顔すら浮かべ始める。

 

 

「そうか……手頃なコンクリの壁にでもぶつけて潰れたトマトにでもするしかないかぁ……」

 

「ひぃぃっ!?!?」

 

「ま、待て! い、言ったのは木場と小猫ちゃんとアーシアちゃんだ!」

 

 

 そろそろ本気で殺しかねない事を言い始めた一誠に、持ち上げられた男子生徒を……いや、己の身を守るという生存本能からなのか、一人の男子生徒が必死の形相でネタの出所について暴露した。

 

 

「な、なんですって!?」

 

 

 そのまさかな答えに、一誠よりも早く……それもかなりショックを受けた表情で驚愕するリアス。

 

 

「ほ、本当に言ったの!? よ、四人が……!?」

 

「は、はい……最近部活に行かなくなった理由を小猫ちゃんやアーシアちゃんにクラスの女子が聞いた所、木場と合わせてそんな回答が……」

 

「そんな……く、あの子達は……!!」

 

 

 だが嘘にしてはあまりにも男子生徒の話がリアルだったので、リアスはヘナヘナと力が抜けてその場にへたり込みそうになるのを朱乃に支えられる。

 その朱乃も、ソーナも椿姫も憤慨した表情なのは云うまでもない。

 

 

「転校した匙達についてもですか?」

 

「は、はい……聞いた時は確かに一斉に転校するなんて変だし、話を聞いてみたら兵藤ならやりかねないかなって……」

 

「丸々信じたと?」

 

「は、はい……」

 

「………」

 

「ひ、ひぃひぃ……!」

 

 

 男子生徒の罰の悪そうな表情での告白に、一誠は掴んでいたその手を離す。

 

 

「どけ」

 

『!?』

 

 

 そしてただ静かに目の前の有象無象に向かって退けと告げ、モーゼの十戒の如く開いた道を無言で抜けていく一誠と、それに続く四人に対し最早誰もが口を開くことも出来ずに居た。

 

 

「最低……」

 

「失望しました」

 

「一生放っておいてください」

 

「二度と騒がないで」

 

 

 何よりも、その四人に心底失望された表情をされた事が自称ファン達の心をバキバキに砕いたのは云うまでもなかった。

 

 

 

 

 さて、そんな空気を残してやっとか正門を出た一誠は、暫く何て声を掛ければ良いのかわからない様子の四人を背にテクテクと歩いて学園から離れていってたのだが……。

 

 

「……………四人とも犬耳コスプレして俺に傅けぇぇ!!!!」

 

「「「「!?」」」」

 

 

 急に振り向いたかと思えば、閑静な住宅街のど真ん中で急に、どこぞのグラサンハンドパワーマジシャンよろしくに念を打ち出すポーズをしながら、びっくりする四人に向かってそんな事を言い出した。

 

 

「………………どう?」

 

「はい?」

 

 

 何が? 四人の気持ちは只今完全に一つだった。

 

 

「念が足りないのか? よし……『犬耳と尻尾つけたコスプレしながら俺に傅けぇぇぃ!!!』―――――ほら、どうだ?」

 

「いやあの……だから何なのよ?」

 

 

 さっきまでの怒気は何だったのかとすら思える、どこか期待するような眼差しをしながら、四人に向かって何かを確認してくる一誠に、朱乃もこれにはキョトンとしてしまう。

 

 すると一誠は、四人に向かってハンドパワーポーズをしたまんま、こんな事を言った。

 

 

「いやほら、洗脳してるって言われたからよ。もしかして本当にそんな力が俺にあんのかなぁ……と思って、もしあったら折角だから有効活用しようかと思ったんだけど……むむむ、どうよ? 犬耳と尻尾のコスプレして俺に傅く気分とかになった?」

 

「「「「…………えぇ?」」」」

 

 

 何とこの馬鹿。朱乃についてはマジで切れてたのだが、洗脳という指摘を本気で真に受けたのか、それを目の前の四人に対して実行しようとしていたのだ。

 しかも中々過激な内容のという……。

 

 これには要らん心配をさせられたという気分で四人もあきれてしまう他無く、あるわけもない洗脳能力を信じて……若干ゲヘゲヘと涎なんて垂らして夢想している一誠にため息しか出ない。

 

 

「いや洗脳なんてあるわけ無いでしょう? 元々私達は別に洗脳なんてされてないんだから……」

 

「まさか本気で信じてたの? しかも悪用しようとしてるし……」

 

「さっきまでの気持ちをちょっと返して欲しいのだけど……」

 

「………」

 

 

 犬耳つけて傅く気分に今なる訳がないと呆れるソーナ、リアス、椿姫の態度に、やっぱり無いと分かった一誠はハンドパワーポーズを止めてあからさまに肩を落とす。

 

 

「チッ、愚民共に言われてちょっとは信じたんだけどなぁ……くそぅ、成功したら俺の天下だったのに……!」

 

 かなり本気で悔しがってる一誠。

 しかし……。

 

 

「わん! わん!!」

 

「なにぃ!?」

 

「「「嘘ぉ!?」」」

 

 

 急に、急にの事だった。

 無いと分かって残念がっていた一誠に向かって、急に朱乃が物凄い笑顔で飛び付いたと思ったら、わんわん言いながら一誠の頬に頬被りし始めたのだ。

 

 

「犬耳も尻尾も無いけど、一誠くんに洗脳されちゃったせいでわんって言っちゃう……わん!」

 

「おおっ!? せ、成功したのかこれ!? 朱乃ねーちゃんだけってのが実に残念――いでででで!!!??」

 

「酷いわん。他の女にばっかり構う一誠くんなんか食べちゃうわん……!」

 

「いでででで!!!?? お、おい!? やっぱ洗脳なんてされてねーだろ!? これわざと……あ、あぁん!? ちょっと待て!? ど、どこに手ェ突っ込んで……いひぃ!?」

 

「えへ、一誠くん……しゅきぃ……♪」

 

「只の素のねーちゃんじゃねーか!! 離れろ! つーかベルトを緩めようと……あっ、そ、そこやめて……!」

 

 

 

 

「………………。見せられてる私はどんな気分になれば良いのかしら?」

 

「わからないわよそんなの……さっきから胸の中がモヤモヤしてるし……」

 

「はぁ……姫島さんに一本取られましたね」

 

 

 兵藤一誠。

 ある意味、朱乃にのみ洗脳が効く説。

 

 

「ま、マジでやめて……ね、ねーちゃんのが当たるしねーちゃんの匂いが……がぅ……」

 

「ならお嫁さんにしてくれる?」

 

「そ、それはちょっと……あふぅ!?」

 

「してくれる?」

 

「いやだから……ひむ!?」

 

「して、くれないと……やらぁ……!」

 

「な、なんで素になんだよ!? やめろよ、罪悪感で死ぬぅぅぅっ!」

 

 

 大いにありえる。

 

 

おわり




補足

うん、本人がそれで幸せなら良いんじゃない? 死ねば良いと思うけど。


ちなみにですが、リアスさんもソーナさんも別に恋愛観情は無いです。



その2
一誠くんの洗脳術。

彼に掛かればコスプレプレイもできるし、犬主従プレイも可能だぜ!

ただし有効な相手は朱乃ねーちゃんだけで、いつの間にか主従関係が逆転してしまうけどな!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。