風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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です。

まぁ閑話みたいなものかな。


その後の動き

 妙な情を持ってしまうという弱味が一誠を悪魔としては混沌とも云うべき領域まで突き進めた。

 

 しかしながらそれが決してプラスに作用するのかと言われたら、そうでは無く、寧ろ本人にとってはマイナスだらけであった。

 

 

「うぉぉぉっ!! マッスル・グラヴィティーーっ!!!」

 

「あんぎゃぁぁっ!?!?」

 

 

 弱体化。それが今一誠の身へと二重にのし掛かっている。

 

 

「あだだだ!? こ、この状態で使うと体がバキバキになりやがる!? こ、腰がいでぇよ!」

 

 

 例えばそう、憧れという理由で必死になって練習して習得した物理法則無視の必殺技が、使えば反動で身体に多大な負担が掛かる様になってしまったり……。

 

 

「今日のはぐれ悪魔って妙に強くありません?」

 

「あ、いえ……この前の時とレベルは殆ど変わらない筈ですけど」

 

「なぬ!? ま、マジかよ、感覚的にこの前の10倍くらいは強く感じたんですけどね……。

割りと笑えないレベルに弱くなってら……」

 

 

 ロビン王朝の息子が使う必殺技を完コピしてひびちのめしたはぐれ悪魔と同等レベルのはぐれ悪魔相手に今回三発も攻撃を受けてしまったりと……。

 余裕を以て倒せた事には変わり無いものの、それでも一誠の身に宿る二人の悪魔を主軸とした無数の駒は、彼を相当な弱体に作用していた。

 

 

「こ、腰が痛い……朱璃さんに揉んで貰おう……」

 

「大丈夫ですか? というか、あの程度の相手にあんなド派手な必殺技なんて使うから……」

 

「使わないと錆び付いちゃうでしょ? いててて……」

 

 

 これがコカビエルとの戦いから、二日目の夜の出来事であった。

 

 

 

 

 

 ソーナが言ってたけど、一誠……あ、いやイッセーはどうやら本当に笑えないくらいに弱体化をしてしまったらしく、正直私はかなり悪いことをしてしまった気持ちでいっぱいである。

 

 

「えぇ……? 俺達の代のみ風紀委員と生徒会を統合するって……」

 

「ええ、生徒会も私と椿姫だけですし、風紀委員も新規加入者無しで一誠のままだし、先生方も少し思うところがあるみたいです」

 

「だから一時的に統合すると? 合わせったって三人しか居ないのに意味ねーやん」

 

「本音としては予算を一本化にしたいだけだと思いますね」

 

「チッ、大人って奴は……」

 

 

 嘘だと思いたかったけど、結局本当に部活から何から全て辞めていってしまった凛、小猫、アーシア、祐斗。

 オカルト研究部も最早私と朱乃と……ギャスパーを残して三人のみとなってしまったせいで部活から同好会に格下げされてしまったのは云うまでも無い。

 

 4人とも今日も普通に学校に来ていたのを見たけど、これからどうするつもりなのかしら……? 私の実家の支援はもう無くなるし、家にしても無くなるというのに……。

 

 そんな事を思いながら、私と朱乃はオカルト研究部の部室……じゃなくて風紀委員室でお茶を飲みながら、目の前で生徒会と風紀委員として話し合ってるソーナ、椿姫、イッセーをぼんやりと眺めてる。

 

 

「どうします? 私達は特に異存はありませんけど」

 

「どうするって言われてもなぁ。冥ちゃん先輩と雲雀先輩に知られたら俺ぶっ殺されるぞ……」

 

「あのお二人ですか……そういえば難攻不落のOBが居りましたね……」

 

「おう、只でさえ今の状況も良くない顔してたしね……今年の学園祭の時にこの現状見られたら、仕込みトンファーと甲賀卍谷戦法の餌食にさせられちまうよ」

 

 

 自分の弱体化を知った上で尚、『近くでしょぼくれられてもテンション下がるから、新しいの見つかるまで代わりにパシられてやるよ』と、かなり強引な手段でソーナの駒に続いて私の駒まで取り込んだイッセー

 嬉しくないと言われたら勿論そんな事は無いとハッキリ思えるけど、それにしたって自分の力を犠牲にしてまでともなると、私はどうやって借りを返したら良いのか……。

 

 

「どうよグレモリー先輩? 何か良い手とかありません?」

 

「え? あ……えっと……な、何の話だっけ?」

 

「生徒会と風紀委員の統合についてよリアス……」

 

「あ! そ、そうね……ええっと……学園祭の日までに雲仙先輩と雲雀先輩を説得できる方法を考えることにするとか?」

 

 

 あぁ……あの日からイッセーの顔を直視出来ないわ。

 見ると変な気分になるというか……うー

 

 

「やっぱりそれしか無いか。

おっかねぇ先輩なんだよなぁ、どっちも……」

 

 

 大きくため息を吐くイッセーを見てても、段々ザワザワしてきて目を逸らしてしまう……。

 何なのかしら? これって……。

 

 

「そういえば安心院さんは? 今日は姿が見えないみたいだけど」

 

「んぁ? あぁ、アイツなら今日休むとか言ってたぜ。

何でもグレモリー先輩の兄貴に用があるんだと」

 

「お兄様に? えっと、何で?」

 

「知らね。グレモリー先輩の兄貴はなじみの対だから、何かあるんじゃねーんすか? 俺はあの男嫌いだからどうでも良いけど」

 

「サーゼクス様が嫌いって……まだ根に持ってたの一誠くんは?」

 

「当たり前だぜねーちゃん。

何せあの野郎、あんなボインな銀髪エロメイドを侍らせてるんだぜ? 許せる訳がねぇよ。

今度ツラ見たら三発は殴ってやんぜ……!」

 

「エロメイドって……。グレイフィアはそんな人じゃないわよ?」

 

「でもあの魔王はエロい事したんだろ!? その時点で有罪じゃい!」

 

 

 乱暴でスケベなのに……。

 

 

 と、まぁリアスが一誠に対して戸惑っている中、それまでサーゼクスに対してあれこれと……特に専属メイドことグレイフィアとにゃんにゃん出来る事を勝手に妬んでた一誠が、唐突に思い出しでもしたのか、リアスに対して嫌そうな顔で話し出した。

 

 

「そういや、あの役立たず……いや、役立たずの糞薄情共は今日も平然と学校来てたけど、アンタの支援で学校に通えてたんじゃなかったんすか?」

 

 

 役立たずにプラスされ薄情共と統一して呼ぶ一誠。

 勿論それは木場祐斗、塔城小猫、アーシア・アルジェント、そして兵藤凛の事である。

 

 

「一応学費は三年分前払いしてたというか……ほら、まさかこうなるとは思わなかったから……」

 

「そっか、そういやグレモリー先輩の実家って金持ちっすもんねー……」

 

 

 一誠ですらドン引きする程にあっさりと、命の恩人でもあるらしいリアスの眷属から抜けた連中を最早名前で呼ぶことすら嫌悪している一誠は、あんな真似をしておきながら図々しくも学園に通い、のうのうと固まって『自分達仲良しですよー』なんてしてる連中に殺意すら沸いている。

 

 その分、そうせざるを得ない様に追い込んだというのもあるが、学園から転校という形で消えた匙達の方がまだマシだと思える程、連中の図々しさは腹立たしいものがあった。

 

 

「俺なら絶対に殴り飛ばしてるけどな。だって信じられるか? 言われて開き直ってテメーから離れておいて、同じ学校に通うとか……マジありえねぇわ」

 

「うん……でも良いわ。

学校に通うのは自由だし……」

 

「うっわ、甘いねアンタってお方は。マジで信じらんねぇわ」

 

 

 だが現状はリアスがほぼ諦めた表情で放って置けと言っている以上は、一誠も呆れながらも放置するしか無い。

 まあ、向こうから吹っ掛けて来ればその限りでは無いし、甘さという点ではある意味一誠もリアスとそう変わらないのだ。

 

 

「アンタが言うなら黙ってるが、吹っ掛けてきたら容赦はしませんからね?」

 

「その時は何も言わないわ。もうあの子達とは無縁なのだから……」

 

 

 ただ、ベクトルだけは微妙に違うのだが。

 

 

 

 

 

 その甘さが命取りになるというのに、一誠はそれを承知で更にやっちまった。

 

 人外の少女にそう告げられたサーゼクス・ルシファーは、妻のグレイフィアと共に、一度きりしか会ってない人外の弟子である少年を思い出していた。

 

 

「ソーナさんに加えてリアスのねぇ……。

確かに彼のマイナスならそんな滅茶苦茶も可能だけど、どんな心境の変化なんだろうね? 確かリアスにも風当たりが強かった気がしたけど……」

 

「曰く、『近くでしょぼくれてんの見てるとイライラするから』らしいぜ? 当然嘘だけどね」

 

「なるほど、つまり彼は意外とお優しい所があるという事ですか?」

 

「優しいというか、甘いんだよアイツは。

少しでも関わりが深くなる相手にはかなりね」

 

 

 極秘のお茶会。

 人外とその分身の最高位に位置する魔王とその妻の暢気な会談は当然他の存在には知る余地すらないものであり、お茶会での話の内容はやはり一誠についてだった。

 

 

「相当に弱体化したというのは本当みたいですね。

まさか言彦が出てくるなんて……」

 

「うん、今はまた大人しくしてるけどな。

だけどやはりムカつくけど言彦だったよ。久々に僕も一撃で肋を持ってかれちまったよ」

 

「安心院さんの言った通りという事か。

参ったねこりゃあ……」

 

 

 一誠の甘さ、そして内に宿す言彦について。

 嘗ての時の名称をそのまま使うのであれば、悪平等(ノットイコール)であるサーゼクスとグレイフィアは、その元締めであるなじみですら負けるとされる獅子目言彦について、決して他人事では無いと少々表情を固くする。

 

 

「今回は偶々上手く行ったけど、次も同じことになるなら正直かなり厳しい。

だからキミ達二人にも一応話しておこうと思ってね……まあ、単なる忠告だけど」

 

「心しておきますわ安心院さん」

 

「いっそ逆にイッセーくんが言彦を取り込めば簡単に済むんですけどね」

 

 

 人外を少なくとも1億回は敗北させた堕ちた英雄の影は、さしもの人外領域に踏み込んだサーゼクスとグレイフィアも無視できない程の強大さであり、お茶の入ったカップを取るその手にも自然と力が入ってしまう。

 

 

「近々人間界に行くらしいし、今度改めて会ってみたらどうだい? 多分サーゼクス君は顔見て露骨に嫌な顔すると思うけど」

 

「勿論そのつもりですよ、近い内にコカビエルの件で三勢力で会談をする事になりましましね。

しかし、何でそんなに嫌われてるんだろ僕って……?」

 

「何でも『銀髪エロメイドを侍らせてスカしたツラしてるのがムカつく』らしいよ?」

 

「え、エロメイド? それってもしかしなくても私の事でしょうか?」

 

「スカしたって……別にスカしてるつもりとか無いんだけど。それに侍らせてる訳じゃあ……」

 

 

 だからこそ今一度一誠と顔を合わせる必要がある訳で、近々行われる三大勢力会談の時が絶好のタイミングとしてサーゼクスもグレイフィアもリアス共々その様子を確かめようと決心するのだが、なじみから特にサーゼクスが嫌われてると理由と共に告げられ、ちょっとだけ複雑な気分になってしまう。

 

 特に銀髪エロメイド呼ばわりされてると知ったグレイフィアはかなり複雑だ。

 

 

「グレイフィアはエロメイドじゃない、そこだけはちゃんと訂正させないとダメだ。

大体グレイフィアは――」

 

「あ、うんわかったわかった。わざわざ膝の上にグレイフィアちゃん乗せながら力説しなくてもよーく解ってるよ僕は……」

 

「あ、あのサーゼクス? さっきから安心院さんの前で恥ずかしいのだけど……」

 

「やだ! こうしてないと僕は安らげないんだい!!」

 

 

 ……。言い返せないかもしれないという意味で。

 

 

「すいません安心院さん。その、結婚して子供が生まれてからもこの人ったらまだこんな感じで……」

 

「あー……うん……見ればわかるよ、見ればね」

 

 

 グレイフィアを自分の膝に乗せ、後ろからめっちゃ抱きつきながらギャーギャーといつの間にかグレイフィアを誉めちぎりまくるサーゼクスに、本人となじみも慣れてるとはいえ呆れている。

 

 そう、サーゼクスは表向きは控えてるものの……基本的に二人だの素を知る者の前ではグレイフィアLOVEの……どことなく一誠に似てる男なのだ。

 

 

「グレイフィアは僕のものだい! 誰にも渡さないぞ!」

 

「別に誰も一誠が取るなんて言ってねーよ」

 

「すいません……。

この人、未だに別々に寝ましょうと言ってみると泣き喚くので……」

「グレイフィアちゃんも然り気無く僕に惚気話しなくても良いよ」

 

 

 そう、バカという意味でも似た者同士であり、一誠はそれを端的に感じて一種の同族嫌悪に近いものを抱いているのかもしれないのだ。

 

 

「わーい、今日もグレイフィアは柔っこくて良い匂い~」

 

「ちょ、ほ、ホントにやめなさい! 安心院さんに見られてるのに恥ずかし……ぃ…ん……! み、耳はひゃめてぇ……」

 

「………アホらし」

 

 

 

 

「へーっくしょい!?」

 

「あら大きなくしゃみね、風邪かしら?」

 

「じゅる……いや違う、何かムズムズしただけ。

さてと、今日はねーちゃんの所を手伝うぜ。何すりゃ良いんだ? パフパフなら得意だぜ俺」

 

「えーっと、近々三大勢力の会談をこの学園で行うから、その準備を……」

 

 

 終わり。

 

 

 

おまけ・位置的に妬まれる男

 

 

 とあるモブは思った。

 

 あれ、アイツ何であんなに囲まれてるの? と……。

 

 

「一誠、今日の放課後の事なのだけど……」

 

「へーいへい、わかったからわざわざコッチ来ないでくださいよ。変な噂が立つでしょうが」

 

 

 伝統的に敵対してる筈の生徒会長然り……。

 

 

「お昼を一緒にと思って来たのだけど……どう?」

 

「行く行くー!! 椿姫ちゃんなら喜んでー!!」

 

 

 その副会長然り……。

 

 

「へぇ、真羅さんとだと喜ぶんですね一誠くん?」

 

「げっ!? あ、朱乃ねーちゃん!? い、いやいや……別に俺はねーちゃんに誘われても喜ぶよ……うん……」

 

「あらそう? なら行きましょ?」

 

 

 二大お姉様の片割れ然り。

 

 

「あの……私もオマケに付いて来ちゃうのだけど……だめ?」

 

「え? 別に断る理由ないというか、何で俺に許可を求めるんだ?」

 

「い、いやだって……なんとなく……」

 

 

 もう片方然り……。

 何でそうなったのか……一体どんな化学反応が起きたからなのか。

 何も知らないモブからしたら訳がわからない。

 

 ただ一つ言えるのは……。

 

 

「兵藤ォ!!! 貴様は敵じゃぁぁぁっ!!」

 

「殺せぇ!!」

 

「ぶっ飛ばせぇぇ!!!」

 

 

 モブからしたら、嫉妬と妬みで殺意を抱くに充分であった。

 

 

「あぁん? ……へっ、そういやこの四人のファンって奴だったなテメー等は? はっはっはっ、デキル男はこういう面でも強いんだよこの負け犬共がぁぁっ!! ヒャハッ!」

 

 

 そして一誠も一誠でよせば良いのに、わざわざ四人を器用に傍らに寄せながら煽りまくるものだから、ますますヒートアップするのは云うまでも無かった。

 

 

終わり




補足

サーゼクスさん、全シリーズ内である意味一番変態だった。

取り敢えずグレイフィアさんが傍に居ないと泣きわめくくらいにゾッコンらしく、表向きは何かかっこよく伝えられてるけど、実際彼が結婚までこじつけた理由が、安心院さん経由で出会って、その時は悪魔の派閥的な意味で敵対してた体なんだけど、実のところ完全に一目惚れした彼は、シスコン男だとか何だとかをなぎ倒して彼女に

『グレイフィアー! 好きだー! 結婚してくれー!!』

と叫びまくってたらしい。

それこそとある戦いで血まみれになろうと、花束片手に会いに行ってドン引きさせたり。

グレイフィアのコントロール出来ないスキルの制御のて手伝いを本気になってしたりと……


まあ、色々あった後、彼女を冗談でも口説く輩が居るならぶち殺しに行くくらい変態になりましたとさ。

 だから一誠は何となく同族嫌悪を感じて嫌いらしく、リアスさんもこの事実を知らない。(仲睦まじい夫婦程度の認識)

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