風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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一誠の強みであり最悪の弱点。

駆け足気味に行きます。



怒りと憎悪を引き金に

 グレモリー先輩により、その場から一切動くな……なんて命令を奴等にしたみたいだけど、ぶっちゃけた話それを大人しく聞くとは俺には思えない。

 

 グレモリー先輩もそれを予見しているのか、もしまたも命令無視をした場合の覚悟を既に決めてしまっている訳だけど……はぁ、まったく以てうざったいことこの上無いな。

 

 

「コカビエルが学園で聖剣を元通りにする儀式を行う……らしいです」

 

「チッ、結局こうなるのかよ……クソが」

 

 

 余計な火種がどんどん増えて、やがては燃やし尽くす。

 その火消しをしなければならんというのは、まったく以てウザいぜ。

 

 

『魔王の妹二人に、バラキエルの娘。

くく、この三人の居る場所で事を起こせば間違いなく戦争の火種になるだろ?』

 

 

「なんてあの堕天使はほざいてたが、やるんなら悪魔か天使の領域内でやれや。

わざわざ人間様の支配域でやりやがって……」

 

 

 役立たず共を黙らせた後、一秒たりとも居たくなかった元実家を飛び出そうとしていた俺たちの前に現れた堕天使の男。

 見るからに悪人顔のその男は、今回の人間にとってみれば邪魔でただただ迷惑としか思えない騒動を勝手に引き起こして姿を隠していた主犯の堕天使だった訳だが、あろうことかその堕天使は俺達の通う学園で余計な事をしようとわざわざ俺達に教えて来たのだ。

 

 マジで良い迷惑だし、駒王学園でやるとはマジでぶっ飛ばすぞって話だ。

 

 

「なじみ、一応朱璃さんの事が心配だし、頼める?」

 

「ん、任された。まあ朱璃ちゃんに関しては大船に乗ったつもりで任せたまえ」

 

「…………。感謝はしておきますよ安心院さん」

 

 

 だから今すぐ堕天使とその一味をぶちのめし、とっとと学園の風紀を守りに行こうと思う訳で……。

 奴等が人質とかこすい真似をしてくるだろうを考慮し、なじみに朱璃さんのボディーガードを頼んで別れた後、俺達は駒王学園へと走っていった。

 

 

「コカビエルってどんくらいなの? 俺バラキエルのおっさん以外の堕天使とか基本知らんのですが」

 

「聖書に名を載せる程には有名な名前……かしらね、後あの風体と言動からして相当の戦闘狂だと思うわ」

 

「三大勢力間でかつて起こった戦争の時も相当暴れていたとか」

 

 

 その間にそのクソ傍迷惑な堕天使についての情報を仕入れた訳だが……。

 この前の堕天使集団よりも遥かに次元の違う相手らしいという事に、現状の自分の状況を考えて思わず舌打ちをしてしまう。

 

 

「なるほど、偉そうにものだけほざくだけの堕天使とは違うってわけかい……あぁ、クソうぜぇ」

 

 

 悪魔に転生してからの弱体化はかなり著しい。

 こうなりゃ一度きり否定して人間に戻る事も視野に入れなきゃならない………と考えたが、そういやその弱体化のせいでまだ幻実逃否を再使用する為のインターバルが過ぎてない事を思いだし、結構ピンチかもしんない現実に、自爆覚悟で道ずれにする方法の方が建設的なのかもしれない……俺はそう考えるのだった。

 

 

 

 

 駒王学園に異様な力が現れたのを察知した木場祐斗は、一足早く逃げられた聖剣使いがそこに居ると確信し、独り乗り込んでやった。

 長年自分の心を苦しめた聖剣への復讐。

 凜や仲間達はそんな自分を助けてくれたけど、こればかりは自分自身のケジメでもあったので、祐斗は一人で儀式の巨大な魔方陣が展開されている校庭へと乗り込んだのだが……。

 

 

「ミカエルの所から派遣された聖剣使い二匹に続いて、今度は魔剣創造の使い手か……。

こんなガキしか寄越さんとは俺も嘗められたものだ」

 

「ぐっ……ぅ……!!」

 

 

 当然一人で何とか出来る相手では無く、聖剣を持っていたはぐれ悪魔祓いとの交戦に敗れた祐斗は、自分を見下すようにコカビエルを睨みながら倒れてしまう。

 

 

「あれれ、お仲間の連中は来ないけど、もしかして見捨てられちゃった系かなぁ?」

 

「ち、がう……! 兵藤さん達は……」

 

 

 その際、凜達と一足早く交戦していたはぐれ悪魔祓いのフリードから煽られたが、祐斗は言い返すのも満足に出来ずに居た。

 だけど祐斗は確信していた……凜達は必ず来る。

 優しい凜ならきっと……。

 

 

(兵藤さん……!)

 

 

 だが祐斗は知らない。

 その凜達が自分共々主に見限られ始めていた事を。

 

 そして、この場に駆け付けたのは――

 

 

「学園関係者以外の立ち入りおよび、危険物持ち込み。

風紀違反以前の問題として、今からテメー等を迅速に殺戮する」

 

 

 長ランと腕章を身に付けた現風紀委員長にて、最近転生悪魔へとなった嫌いな男……。

 

 

「祐斗……! どうして一人でそんな無茶を……!」

 

「ぶ、部長……?」

 

「動かないで祐斗君、今治療しますから」

 

 

 そしてその男と一緒に来た主と女王、それから男の主と女王の5人だけだった。

 

 

「来たか、リアス・グレモリーとソーナ・シトリー……それからバラキエルの娘よ」

 

「っ……よくも祐斗を……!」

 

 

 間一髪の所で祐斗を救出したリアスが、朱乃と一緒に治療を施しながら上空から見下ろすコカビエルを睨む。

 

 

「余興にもならん小僧だったが、殺さないでおいただけ感謝して欲しいものだな」

 

「っ!」

 

 

 しかしコカビエルはそんなリアスの殺気を涼しい顔で受け流し、逆に煽る事でリアスの怒りを助長させる。

 そう、コカビエルにとってすれば聖剣を一つにするというのも、今回引き起こした騒動にしても全てがある目的の為の土台でしかないのだ。

 

 

「何故こんな事をするのですか! こんな事をすれば戦争になります!」

 

「それが目的なんだよセラフォルー・レヴィアタンの妹よ。

だが、魔王の妹が二人もいるこの街で暴れれば魔王が釣れるだろうと思ったのだが、やはりリアス・グレモリーと貴様を犯して殺したりでもしない限りサーゼクスやセラフォルーの激情は買えんか」

 

 

 ふんとソーナの問い掛けに対して軽く返すコカビエルだが、言ってる事は聞いていた一誠ですら一気に気分の悪くなるものだった。

 

 

「戦争になる? ははは、そんなものは願ったり叶ったりだ!

エクスカリバーを盗めばミカエルが戦争を仕掛けてくると踏んでいたが、寄越してきたのは雑魚の悪魔祓いエクソシストばかり。

そしてようやく援軍をよこしたと思えば聖剣を持たせただけのガキが二匹。全くもってつまらん!」

 

「戦争狂……!」

 

「そうだ!

私は三つ巴の戦争を望んでいる! 前回の戦争が終わってから私は暇で暇でしょうがなかった。

アザゼルもシェムハザもバラキエルのやつでさえもう戦争はしないと言い出す始末。

挙句の果てに神器とかいう玩具の研究にうつつをぬかし始める? ふざけるな! そんな退屈を与えられるのなぞ耐えられん!」

 

 

 コカビエルの叫びにリアス達はただただ相容れないといった顔をする中、一誠だけはコカビエルの持つ戦力の把握に勤しむ。

 

 

(何かやってるジジィ一匹、俺達と歳の白髪のガキ一匹……? いや、まだ何か隠してるのか? メンツが少なすぎる)

 

 

 戦争がどうとか、日本人に加えて平和な世の中を生きてきた一誠にしてみればいまいちパッとしない話だし、本気でそんな目的の為にこんな真似まですること自体が理解したくも無かった。

 だからこそ油断してる間に一気に潰して終わらせるつもりで、自分達の居る校庭内に蔓延るコカビエル側の戦力を把握していたのだが……。

 

 

「バラキエルの娘と人間の嫁を人質に出来れば、バラキエルとてノーとは言えなくなるだろうしな……くくく」

 

 

 

 

 

「……………………」

 

 

 地雷を踏まれた瞬間、戦力把握なんてどうでもよくなった。

 

 

「っ……」

 

 

 まずその変化に気付いたのは、一誠の近くにいたリアス達全員だった。

 

 

「ん? 何だ転生悪魔の小僧? その目は俺に何か言いたいのか?」

 

 

 そして戦闘経験豊富のコカビエルも、自分の肌をチクチク刺すような殺意を一誠から感じ、目を細めて問い掛ける。

 

「……ろ……す」

 

 

 だが一誠は答えない。いや、答えないというよりは、言葉を交わす必要も無くなったというべきなのか。

 

 

「粉々にしてやる……このゴミ共がァ……!!」

 

 

 小さな殺意はやがて爆発するかの如く広がり、一誠の見た目すら禍々しく変化させてしまう程になってしまったのだがら。

 

 

「っ……何だ、貴様は……?」

 

 

 その変化はコカビエルも、ニヤニヤしながら見ていたフリードも精神的に退かせる程の何かがあった。

 

 

「い、一誠くん……あ、アナタそれ……」

 

「角……?」

 

「っ!? だ、ダメよ一誠くん! それは安心院さんも禁止させていた状態じゃない!」

 

「どういう事姫島さん? 確かに今の一誠から物凄い殺意が感じられるけど……」

 

 

 人を越えた何かを思わせる白と黒が反転した瞳。

 その怒りを主張しているかの様に、左右の額から伸びる二本の角。

 人間でも転生悪魔としてもあり得ない外見の変化に、何かを知っている様に止めようとする朱乃にソーナが訪ねる。

 

 

「ソーナ様も知っていると思いますが、一誠くんはその心のあり方を具体的に示せる『力』があります」

 

「ええ、椿姫も実は持っていたスキル……でしたか?」

 

「はい、一誠くんはそのスキルを約一京持つと自称している安心院さんの指導と性質でその力を無限に強めていました。

ですが一つだけ、安心院さん自身が教えて後悔したものがあります」

 

「後悔? まさか今の一誠くんの変化が……?」

 

「は、はい……爆発的な怒りと殺意が引き金となる事で出てきてしまう一誠くんの力。それが――」

 

 

 

「げげげ……やぁっと出てこられたなぁ……げげげげげ!!!」

 

 

「獅子目言彦という、一誠くんとは違うもう一つの人格……!」

 

 

 見たくなかった姿を前に顔を歪めた朱乃は、まだ知らぬ一誠の一面を皆に教えた。

 そう、一誠の強みであり最悪の弱点こそが……。

 

 

「今代の依り代はオリジナルの儂以上にしっくり来る………げげげげ――新しィィィィッ!!

 

 

 呼び寄せてしまった破壊の権化の人格であった。

 

 

「ぬぅ!?」

 

「きゃあ!?」

 

「くっ!?」

 

「な、さ、叫んだだけでこの威圧……!?」

 

 

 歪んだ笑みと共に叫んだ一誠……いや、一誠と入れ替わる形で表へと現れし獅子目言彦なる人格の声が、衝撃波の如く校庭……いや、学園全体を震わせる。

 その余りの衝撃に、上空から見下ろしていたコカビエルが両の腕でガードするまでの威力であり、近くに居た朱乃達は吹き飛ばされてしまう。

 

 

「チッ、何なんですかあのクソ悪魔は!?」

 

「バルパー! 聖剣はまだか!」

 

「今完成した!」

 

 

「げげげげ……素晴らしい肉体だ。

儂の思う通りに動く……げげげ……!」

 

 

 一誠(?)が自分の身体を撫でながら、ニヤニヤしているのを見て、コカビエルが聖剣を一つに纏める儀式をしていたバルパーに向かってまだかと叫ぶと、事の事態が急変したのを察して焦ったバルパーが、一つに纏めた……それも回収した七本全てを纏めた本来のエクスカリバーをコカビエルに向かって投げて寄越す。

 

 しかしコカビエルはその聖剣をそのままフリードに向かって投げて寄越すと、受け取ったフリードに命じた。

 

 

「フリード! その意味のわからん小僧は転生悪魔だ! その再び一つへと戻った聖剣の力で斬り殺せ!!」

 

「!? なるほどぉ? いくら意味のわかんねー変身しても、クソ悪魔はクソ悪魔ですからねぇ? わっかりましたー! 首チョンパにして差し上げましょー!!」

 

 

 ちょっと一誠に対して怖じ気づいたフリードだが、七本全てを一体化させた聖剣を手にした瞬間、最早負けるわけが無いという自信をその胸に、自分の身体を触ってて余所見をしている一誠に向かって間髪入れずに斬りかかる。

 

 

「ばいなら、クソ悪魔ァァァッ!!」

 

「げげげ、げげげげげげげげ!!!」

 

 

 威力、タイミング、速度、全てが聖剣の力により強化したフリードを後押しするかの如く、一誠の肉体を頭から真っ二つにせんと降り下ろされる。

 

 

「っ!? い、一誠!!」

 

「な、なんで余所見を……! くっ、間に合わない……!」

 

「いえ、私のスキルならギリギリ……!」

 

 

 吹き飛ばされたリアス達が焦る中、椿姫がスキルを併用して援護しようと刀を構えた。

 しかしそれを止めたのは朱乃だった。

 

 

「…………大丈夫よ真羅さん」

 

「「「は?」」」

 

 

 何が大丈夫なものか。そう思った椿姫が反論しようとしたが……。

 

 

「は?」

 

 

 間に合わず、降り下ろされた聖剣により一誠が真っ二つにされた……そう思っていたフリードは、その手応えの無さに思わず変な声が出た。

 そして、ふと自分の手元を見てみた……。

 

 

「は? は?? はぁ????」

 

「な、なに……!?」

 

「そ、そんな……馬鹿な!?」

 

 

 降り下ろされた聖剣の刃が一誠の頭を切り裂こうとした……までは良かった。

 だがそこであり得ない事態が起こった。

 

 なんと、降り下ろされた聖剣の刃が、根本から丸ごと……。

 

 

「んん~? 何だかさっきから儂の周りを蚊がやかましいな……」

 

 

 へし折れ、そのまま刃が回転しながら少し離れた箇所に刺さって落ちたのだ。

 これには見ていた全ての人物の思考が停止してしまった。

 

 

「う、嘘だろ? 聖剣様よ? 無敵の聖剣様なのになんで折れてんだよ?? 意味わかんねーよォォ!?」

 

 

 降り下ろした本人であるフリードがいち早く叫ぶが、現実の聖剣は何もせず突っ立っていただけの一誠の強度に負けてへし折られたというのは変わらない。

 

 そして……

 

 

「がぁっ!?」

 

「うむ、力もオリジナル以上。げげげ、もっと試したいが、相手が蚊ではこんなものか」

 

 

 フリードは一誠の放った凸ピンだけで右肩を文字通り千切られるが如く破壊され、そのまま校庭の端までゴムまりの様に何度も地面を跳ねながら吹き飛ばされるのだった。

 

 

「んっん~! 老人一匹に烏一匹だけかぁ? いや、烏というよりはやはり……蚊だなァ?」

 

「っ!? 俺を愚弄するか小僧!!」

 

「正当な判断というものを知らんのか? げげ、イッセーの中から貴様の話は聞いていたが、蚊のやる事はやはりつまらんなァ?」

 

 

 そして遂に一誠……いや、入れ替わった獅子目言彦の目がコカビエルへと向けられ、これでもかという程に口を歪めて嗤う。

 

 

「とんだ掘り出し物を発掘できた様だが、俺を嘗めるなよ化け物が!!」

 

「げげげげげ!! 風体なら今の儂の方がハンサムだが?」

 

 

 処刑じみた何かが始まる事になる……。




補足

うっかり教えてみた安心院さんのミス。

教えられたまま、一誠の中で作り上げられてしまった獅子目言彦本人の人格という、バーサーカーモード。

この状態だと一誠の人格と入れ替わるので、止めるすらかなり手間取る。

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