風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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双子のおねーちゃん。




風紀委員長と双子の姉

 スケベェな一誠には同志が居たりする。

 決して親友では無いし、一緒に帰って買い食いしながら遊ぶ仲にもなってないが、とある一点に於いてのみ立場やその他という壁を取り払って手を取り合う同志が一誠には今のところ二人居た。

 

 

「どうよイッセー隊員。今回は自信あるぜ?」

 

「イッセー隊員のお好みを考慮した選りすぐりのブツ点だぜ」

 

「ほほぅ? 何時に無く強気じゃないか元浜・松田隊員よ……どれどれ」

 

 

 駒王学園二学年の教室のど真ん中。

 座学オンリーで眠気との戦いを乗り越え、憩いの時間であるお昼休みに突入したこの時間に、昼飯も食わずに一誠含めた計三人の男子が机をくっつけて囲み、何やらニヤニヤと下劣な笑みを互いに浮かべている。

 

 職権乱用万歳風紀委員長・兵藤一誠と同等レベルの変態さを周囲の視線なぞ物ともせずにオープン化させ、同じくらいに女子から顰蹙を買いまくるこの二人とこんな下劣きわまりない顔で笑っているともなれば、何をしているのかなど想像しやすい。

 

 

「どうだイッセー! このおっぱい祭り5連発は!」

 

「エ~~クセレント!!」

 

 

 そう……只今一誠君は、この同志と謳う二人と自身の持つコレクションの見せっこをしていた。

 

 

「すんばらしい! 文句の付けようがない! 流石は我が隊最高の斬り込み隊長よ!」

 

 

 元浜・松田双方が堂々と机に広げる様々な作品に目を輝かせ、素晴らしいと大声で絶賛している姿はしょうもない程にだらしがない。

 いっそひっぱいてやりたくなる表情と変な声でニヤつく三人へ、当然の様に昼休みの教室のど真ん中で何しくさっとんじゃいとばかりに、嫌悪感丸出しな表情をした女子達が一斉に三人に向かって怒りの言葉を叩き付ける。

 

 

「最低! そんなものを学校に持ってくるな!」

 

「そうよそうよ! そもそも兵藤は風紀委員なのに!」

 

 

 とまあ、当然のごとく総スカンの嵐な訳だが、一誠も松田も元浜も涼しい表情だった。

 

 

「ふっ、らしいぜ一誠隊員?」

 

「ふん、愚問な事を言うおんにゃのこ達だ。

何で持ってくるかだなど決まってるだろ……?」

 

「ズバリ、そこにエロスがあるからだ!」

 

 

 いっそ清々しい返しだ。

 寧ろキミ達のその露骨な反応が楽しいと云わんばかりのニヤケ顔だった。

 

 わざと声が聞こえる大きさで会話してたのも、全部テンプレ宜しくな反応をする女子達を見て楽しむ為であるのだから、この三人が言われて止める事は皆無だった。

 寧ろそういう否定的な声をBGMにコレクション自慢大会を行う方が余計に盛り上がってよろしいと、何ともレベル高いようで低い次元に立つ三人は、引き続きブツの選定を続ける。

 

 

「見ろよこのビキニからこぼれんばかりのおっぱいを……。

実に素晴らしいとは思わないかね一誠隊員?」

 

「まったくだね、どこも否定のしようが無い。

おろ、こっちはパツキン洋モノか……!?」

 

「Exactly(そのとおりでございます)。

ちなみに他には、コスプレ枠ということで巨乳巫女物もあるぜ?」

 

 

 いい加減通報されても文句が言えないやり取りを続けていた三人に自重の二文字は無く、金髪の外国人ものに興奮していた一誠へ、松田がこれもおすすめだと差し出した一枚の作品。

 が、それまでピンク色の上がり方をしていたテンションがピタリと止まる。

 

 

 

「神社の巫女さんものだと?」

 

「おう、しかもよく見てみろ……。

この女優さん、誰かに似てねーか?」

 

 

 巫女ものという単語にもの凄く微妙な顔になっている一誠に気付いてない様子でパッケージを渡してきた松田。

 

 

「あぁ?」

 

 

 ヤケに自信満々に言ってくる松田に促される形で、パッケージを手に取って表紙をしげしげと眺める一誠。

 誰かに似てると言うのだから、恐らく自分が見たことのある人物が該当する訳だが、一誠は一瞬でその『誰か』が誰なのかを見破った。

 

 

「………………。あー……」

 

「な、すげーだろ?」

 

「この前二人で漁りに行ったら偶然見つけたんだぜ?」

 

 

 こりゃあ、永久保存決定だぜ! とニヤける松田と元浜を見ず、榊の枝を持ちながら微笑んでいる写真の女優に目を落とす一誠は、それまで上がっていた自分のロマン心が急速に冷めていくのを自覚した。

 

 長い黒髪をリボンで一つに束ね、縛ってる箇所から後ろに伸びる二本のアホ毛が物凄い特徴的な『誰かに』似ているその女優は、巫女服に身を包んで温和そうに微笑んでいる。

 それは確かに二人が言うように似てるのかもしれないし、一誠もほんの一瞬だけそう思ってしまった。

 思ってしまったからこそ、目の前で自分の良いリアクションを期待してる元浜と松田の期待を裏切る形で、そのDVDのパッケージをパタンと机に置きながら一言――

 

 

「これは無いな」

 

「「はぁ!?」」

 

 

 心の底から好みじゃねぇとハッキリした口調で言い切るのだった。

 当然、予想を完全に裏切られた反応をされた元浜と松田は信じられない様な顔で一誠に迫る。

 

 

「馬鹿な、よく見ろイッセー! この人は姫島先輩にクリソツなんだぞ!?」

 

「本人な訳無いにしろ、激レアものなんだぞ!?」

 

「いやー……そうかもしれんけど、巫女服は無いわぁ」

 

 

 考え直せと説得する二人に、一誠は引き続き冷めた態度だ。

 

 

「んなアホな、お前巫女服嫌いだったか!?」

 

「嫌いじゃねーけど、どうにもこの女優から感じる雰囲気があざとそうというか……」

 

「いやいやいや、チェックしたけど別にそんな事ねーからな!?

第一そうであっても姫島先輩に似てるんだぞ!?」

 

「いや、お前等こそよく見てみろ、これ全然似てねーよ。アイツはもうちょい――」

 

 

 一瞬だけ騙されたが、よく見てみれば全然似てないと判断した一誠の言葉に、否定されたショックで大騒ぎしている二人へ微妙に落ち込んだ気分で説明しようとしたその瞬間――

 

 

 

「あらあら、楽しそうにしてますわねぇ……」

 

「いっ!?」

 

「わっ!?」

 

「げげっ!?」

 

 

 ご本人が降臨した。

 

 

 

 

 

 学校の時はあんまり接触してこなかった朱乃ねーちゃん。

 故に周りの連中はねーちゃんとどんな関係なのかとか、何で定期的に変なやり取りをしているのかという理由を知らない。

 だからこそ俺はなるべくねーちゃんと学校では距離をとってたし、出来ることなら他人のフリもしたかった。

 だってお前……学園二大お姉様とか言われて全生徒の大半から崇められてるのに、最早ド変態の烙印が拭えなくなっちゃった俺とそれなりの関係ですだなんてバレてみろ…………高校生になって健全なお付き合いが出来る彼女を作る俺の夢がぶち壊されてしまう。

 だから今までは誰かに『どんな関係だ?』とか聞かれても『顔見知り程度で何の関係もない』って誤魔化して来たのに……。

 

 

「キャーッ!! 姫島先輩よ!!」

 

「お姉様が教室に来たわ!!」

 

「おおおっ!? やはり素晴らしき美貌……!」

 

「うふふ、こんにちわ皆さん」

 

 

 ぐぅ、人気者がこんなこんな場所に現れればこうもなるし、笑ってる様で実は全然笑ってないぜちくしょうめ!

 

 

「は、早くあのブツを隠せ……!」

 

「お、おう!」

 

「本人にこれを見られたら流石にヤバイ……!」

 

 

 ちきしょう何をする気だねーちゃんよ……!?

 お姉様だ美人だと騒ぎ散らす連中をBGMに、下手な真似が出来ず固まる俺がジーっと様子を伺ってると、見てくれはさっきのDVDのパッケージに写ってた女優みたいに温和そうに微笑んだねーちゃんが、俺…………と、机に広げられた沢山のお宝を見て、更に笑みを深めている。

 ……。あ、ヤバイ……怒ってる?

 

 

「お年頃だから多少仕方ないかもしれませが、ダメですよ? 学校にこういうモノを持ち込んでは?」

 

「「は、ははは、はいっ!!」」

 

 

 噂をすれば何とやらを地で行くタイミング良い出現と、二人にとっては間近の生姫島朱乃というのが合わさり、何時もの調子が一切見えず、ただただニコニコしとるねーちゃんにもげるのでは無いのかと心配になる勢いで首を縦に振っている。

 

 クソッタレ、何テンパってんだよ情けねぇな……! 下手な事を喋れねぇ俺の代わりに撒いてくれると信じてたのに、これじゃあどうしようも……。

 

 

「しかし、風紀委員長さんである一誠くんも一緒になってやっていたとは……ふふ、そんなに外人の女の人が好きなんですか?」

 

「え"!? あ、アンタどっから……!」

 

 

 笑顔の裏を敏感に感じてしまうからこそ、ねーちゃんが只今ヤバイってのが分かってしまう自分が可哀想に思えて仕方ないし、予想もしない所から聞かれてしまった事に動揺してつい声が出てしまう。

 するとそれに満足でもしたのか、それとも他に思うところでもあるのか……今まで何とか地雷を回避していた俺の苦労と努力が一気に水泡と化す言葉を、朱乃ねーちゃんは人の良さそうな笑顔を『ズイッ』という擬音が聞こえそうな勢いで座ってる俺の眼前まで近付かせてから言ってくれちゃったのだ。

 

 

「この前も言ったけど、その『アンタ』って呼び方やめてくれないかしら?

学校が無くて二人の時は『朱乃ねーちゃん』と呼んでたのに、どうして今はそんな呼び方なのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、一誠くん……。

アナタと私は小さい頃からの幼馴染みでしょう? そんな他人行儀な呼び方されると寂しいわ……」

 

 

 彼女作りと、この学園でこれ以上変な敵を作らない為にひた隠しにしてきた事を平然と……してやったりと言わんばかりに、シーンとしている周りにわざと聞こえる様な声量で宣いおった……しかも素になって。

 

 

「は、はは……なんてこったい! 俺の彼女作りの夢がまた遠退いちまったじゃねぇか!!」

 

 

 さっきまで罵倒してきた女子達も、それを見ていただけの少ない男子も、元浜も松田も……とにかくこの場に居た全員が絶句顔で固まってしまっている。

 あまりにも衝撃的だったせいで、わーわーと喚く気配すら無い程に連中にとってはショックだったんだろうよ……よりにもよって俺と昔馴染みだったんだから。

 

 

「彼女?ふーん、まだ言ってるのね。

ふふ……あの時死ぬまで守るって約束は嘘だったんだ……」

 

「いや待て待て待て待て待て待て待て!? 死ぬまでなんて言ってねーぞ俺は!?」

 

 

 バレた……。

 いや、前から少しだけ疑われてたので、遅かれ早かれと無理矢理考えれば、仕方がないと割り切れるといえばそれまでなんだが、それに加えて今日の朱乃ねーちゃんは学校で見せてるキャラじゃ無くなってる気が言動から感じられ、こうなると別の意味でマズイと俺の中の勘が警告音を絶えず鳴らす。

 

 

「そもそも何で此処に来たんだよ!」

 

 

 小中学生時代の記憶が次々と呼び起こされる様な、感情の欠落した光の無い目をしながら近付いたまま離れないねーちゃんを落ち着かせようとするも、此処まで来ると落ち着かせるのにもかなり骨が折れる事は昔から知っている。

 

 

「放課後ウチの部長がアナタに用があるらしく、それを伝えに来たのよ……。

アナタは随分とスケベな持ち物で興奮していたみたいだけど」

 

「だ、だってしょうがねぇだろ……! 俺だって何時までも餓鬼のままじゃ無いんだぞ」

 

 

 グレモリー先輩が俺に用があるって伝言を伝えに来たのがそもそもの理由なのは分かった。

 何時もの俺ならこの時点で『グレモリー先輩が!? 行く行くぅ!』とハシャイでたのかもしれんが、今のねーちゃんを目の前にしてると、とてもハシャげる気分じゃないし、どうもさっきからエロDVDに目移りしてた事を気にしてるっぽくてそれに対する言い分を話すと、ねーちゃんは光が無い目を俺だけに見せながらピクリと瞼を動かす。

 

 

「そう……わかったわ」

 

 

 一見すれば物分かりの言いように聞こえるが、表情からしてそれは120%無いのは分かっている。

 変な所で変に俺に対して我が儘なこのおねーちゃんが、思春期だから一々干渉すなと言って理解と納得をする様な都合の良い女じゃねぇのだなんて百も承知で――――

 

 

「そう……グスッ……一誠くんは私が嫌いになったのね……っ……う……うぅ……」

 

「Oh……」

 

 

 本気で己が傷付くとマジ泣きし始めるのは本当に昔から変わってないやぁ……。

 そして更にそれが進行すると。

 

 

「嫌……嫌……!

守ってくれるって言ったのに、私を捨ててどっか行っちゃうのなんて嫌ぁ……ヒック……エグッ!」

 

「そ、そこまで言って無い――あぁ、もう!!」

 

 

 昔の頃のねーちゃんの精神に退行してしまうのだ。

 ほら、こんな事があるかもしれないし、ねーちゃんのイメージを守る為にわざわざ遠ざけてたのに。

 これじゃあ完全に俺が極悪人じゃねーかよ――そうかもしんねぇけど。

 ええぃ、この姿を見せる訳にはいかんし……取り敢えずねーちゃん抱えてこの場から消えるしかあんめぇ!!

 ポロポロと泣きながらくっついて来たねーちゃんを横抱きに抱え、衝撃的事実で意識がショートしているクラスメート達の間を縫って教室を出た俺は、なるべく人とすれ違わないルートを使って旧校舎に移動するのであった。

 

 

 

 

 

 朱乃ねーちゃんに男の影がまるで見えない。

 それ即ち、そのせいで朱乃ねーちゃんが俺に構う訳であり、好青年気味の男でも捕まえてくれれば俺も彼女作りに没頭可能……なんだが、今までの行いと今回の騒動でこの学園じゃあ彼女が作れなくなってしまった。

 あぁ……。

 

 

「これより裏切り者の断罪を執り行う」

 

  おおっー!!!!

 

「………」

 

「嘘よ、あんな奴が姫島お姉様と幼馴染みなんて……!」

 

「……………」

 

 

 ほーらこうなった。

 メソメソ泣いてるねーちゃんをあの手この手で元に戻して教室まで送って戻って来てみりゃあ、クラスメート……いや学年の殆ど連中が椅子に縛り付けた状態の俺を殺気だった目で睨んでいるじゃあ無いか。

 しかも同志と信じてた元浜と松田も……ぐぅ。

 

 

「イッセー……いや兵藤一誠。

貴公が姫島朱乃と幼馴染みだったというのは事実か?」

 

「……。否定したってお前等どうせ信じねーんだろ?

ケッ、だったらyesと答えるしかねーじゃねーか」

 

 

 ほら、恐れていた事が現実化しおった。

 ねーちゃんと幼馴染みってだけでまるで死刑囚扱いだぜ。

 結構昔からの付き合いですだなんて言ったらコイツら一斉に椅子で殴りに来そうだわ。

 

 

「どの程度の仲なのか、そして何故それを隠していた?」

 

「隠すて……。

じゃ何か? 一々誰と幼馴染みですと言う必要があるのか? 私は姫島朱乃と幼馴染みなんでそこのとこよろしくお願いしますってか? バカみてーじゃねーか」

 

 

 尋問官気取りで椅子に縛られている俺に質問をしてくる元浜と松田に俺は、もう良いや的な気分で正直に答えていると、よく突っ掛かって来るクラスメートの女子の一人がボソッと呟いているのが聞こえる。

 

 

「そういえば偶に姫島先輩に手を掴まれて何処か連れていかれてるのを見るけど、まさか……!」

 

『!?』

 

「ひょ、兵藤一誠貴様っ!! まさか姫島先輩と人気の無いところで……!」

 

「はぁ?」

 

 

 物凄い穢らわしいものを見るような目を向けながら呟くクラスメートの女子の一言に、元浜と松田以下男子共が中々の形相で俺を睨んで事実確認をしてくるので思わず呆れてしまう。

 いや、コイツ等の中には幼馴染みだって居るんだろうし、そんな相手とわざわざ学校で変な事を訳がねーっつーのという意味合いで。

 

 

「それこそ無い無い。あるわけねーだろ馬鹿馬鹿しい」

 

 

 そもそも俺に最も親しい存在の一人なんだぞ。それこそ親兄弟以上にな。

 そんな相手に……アレな言い方だが欲情とかそんな感情は無いよ。

 ほら、よくあるだろ? 親し過ぎで逆に……みたいな。

 ったく、漫画の見すぎか知らんけど幼馴染みに幻想持ちすぎなんだよコイツ等は――――なーんて一から説明したってコイツ等は信用しないんだろうけどよ。チッ、メンドクセーな。

 

 

 

 

 

 二学年が……兵藤一誠の隠していた秘密が明るみ出たその頃。

 同じ兵藤の苗字を持つ一誠の双子の姉……凛は椅子に縛り付けられて尋問されている最中、質問攻めを受けていた。

 

 

「凛ちゃんって姫島先輩と幼馴染みだったの?」

 

「え……っと、それは……」

 

 

 双子の弟でド変態な一誠とは真逆に、凛は男女問わず一定の人気を持っていた。

 同じ部活仲間であるリアスや朱乃や小猫に隠れがちだが、穏和そうな見た目と雰囲気と何より顔立ちも悪くない。

 胸はちょっと残念だが、それが逆に良いという男子生徒からは結構な人気がある凛は、隣のクラスで弟が縛り上げられているのを知って『助けに行きたい……けど無視されたらどうしよう……』と迷っていると最中、クラスメートの友達から質問をされ、そして困った。

 

 

「え、ええっと、私は別に朱乃先輩と幼馴染みじゃないんだよね……あはは」

 

「え、そうなの?」

 

「うん……いつの間にか一誠と知り合ってたみたいで、私は知らなかったっていうか……」

 

 

 困った様な笑顔を浮かべながら話す凛に、クラスメートの女子は察した。

 そういえば兵藤一誠は凛を露骨に避けている言動が多々あり、恐らくそれが幼少期から続いていたことに。

 

 

「そっか……酷いわね。こんなお姉さんを蔑ろにするなんて」

 

 

 どうして露骨に避けているのかは知らないが、少なくとも凛の友人目線から見れば、凛に落ち度があるとはとても思えず、自然と学園一ド変態な一誠を内心攻める。

 が、凛はそれは違うと首を横に振りながらあくまでも一誠を庇う。

 

 

「違う一誠は悪くないよ。私が悪いの……」

 

「何言ってるのよ。

私が見る限りアンタの好意をアレが突っぱねてる様にしか見えないわよ?」

 

 

 凛の友人が見た限りじゃ、折角一誠の為に作ったお弁当を渡そうとした時なんか――

 

 

『要らない。見回りで食ってる暇がねぇ。ていうか、別にわざわざ作らなくても結構だから。(ねーちゃんから貰ってるし)』

 

『ぁ……ご、ごめんね? 余計な事だったよね……』

 

『謝るとかやめてくれません? そうまでして俺を悪役にしたいのか? まあしたいならしたいで良いけど』

 

『な……ち、違っ――』

 

『おおっと? ヘイそこのロングヘアーの彼女ぉ!

スカートの丈チェックをさせて頂こうか!!』

 

 

 この様に、見回りなんてしない癖に凛の好意を真っ向から突っぱねる。

 ハッキリ言って事情は知らないとはいえ、凛の友人としては一誠を快く思わないのは必然であった。

 が、そんな凛を慰める時、何時もこう言うのだ。

 

 

「良いの……私が一誠の可能性を潰してしまったんだもの……」

 

 

 暗く、罪悪感に苛まれた表情で俯きながら呟く凛の言葉の意味は友人には分からない。 

 だが、友人としては凛のこの暗い表情を見るのは辛い。

 けれど一誠の可能性を潰したという意味を聞こうにも、この表情を見せられては無理に聞くのも気が引ける。

 

 

「そう……何時か仲直りできると良いわね」

 

「……………。うん」

 

 

 こんな言葉しか掛けてあげられない。

 力なく頷く凛に友人の気分も沈んでしまうのであった。

 

 

 

 

 一誠の双子の姉。

 なのに私はその役割が一切出来ていない。

 原因は分かってる……私自身の問題だ。

 私が考えもしないで、兵藤一誠というキャラクターの姉になりたいと『神様』に言ってしまったから。

 ただ姉になりたかっただけなのに、スケベだけど真っ直ぐな兵藤一誠が好きだったってだけなのに……。

 

 

(ハァ……)

 

『また落ち込んでるな凛よ?』

 

 

 本来一誠の力である筈の神滅具・赤龍帝の籠手(ブースデッドギア)は、私の力になっていた。

 そんな事は一切頼んで無かったのに、何故か私の中に赤い龍……ドライグが居た。

 

 

(大丈夫……ありがとうドライグ)

 

『また例の小僧のことか?』

 

(……。うん、まぁ……)

 

 

 ドライグは結構優しく、私の心が落ち込んでいると決まって話し掛けてくれる。

 そして、ドライグだけが私の秘密を知っている。

 

 

『お前が全く違う世界から転生とやらを果たして俺を宿そうがそうで無かろうが、もう俺はお前にしか力を貸さんぞ。

誰が何と言おうが、お前が転生者だという事を端的に一誠という小僧が察していようが、お前は兵藤凛なんだ。

何時までもそんな小さな事で悩むんじゃない』

 

(あはは……ありがと)

 

『ふん、これまでの宿主とは比べ物にならん才能を持っているお前がそんなんじゃあ、白いのに負けてしまうからな。

尤も、今回はそんなに白いのと戦う意欲は無いが』

 

 

 ぶっきらぼうだけど、私はドライグが優しいのを知っている。

 だからどんな言い方をされても腹を立てる事は無いけど、本当ならこのドライグの言葉も一誠が掛けて貰うべきだったんだと考えれば……ハァ。

 

 

『それに、あの女王(クイーン)の小娘と一誠という小僧が上手くやっている様だし、放って置くべきだ』

 

(そうだけど……そうなんだけど……)

 

 

 昔家出をした一誠がまさか朱乃先輩と知り合ってたなんて……悪魔に転生した時に知った時は驚きと……少しだけ先輩に嫉妬した。

 私が知らない一誠を愛しそうに語るあの表情を見れば、先輩が一誠をどう思ってるかなんて分かっちゃうし……。

 一誠も一誠で先輩と楽しそうにしてるし……。

 

 

(………ハァ)

 

 

 姉じゃなくて幼馴染みだったら少しは変わってたのかな……。

 

 

『しゃらくせぇぇ!! 俺様は風紀委員長なんだよぉぉっ!!』

 

『あ、異端者が逃げたぞ! 追えぇぇぇっ!!』

 

 

 ……。恐らくだけど変わってたかもしれない――いやでもこの体型だと今以上に見向きもされないかもしれない。

 あぁ……どうして前と全然変わらない体型なんだろうか。

 案の定リアス部長にはあんなにデレデレしてるし……あ、でも小猫ちゃんには割りと興味なさそうなのは所謂『原作』の一誠とは違うんだよね。

 ……。多分だけどその……小さいからだと思うのと、小猫ちゃん自身が私と結構仲が良いからというのもあるんだと思う。

 前に一度だけ、小猫ちゃんがちょっと怒りながら一誠に話し掛けた時なんか、一誠ってば物凄い小馬鹿にした顔で……。

 

 

『グレモリー先輩の所の後輩さんだっけキミ?

あぁ、申し訳ないけどもっとボインな人じゃないと基本俺はチェンジなんで』

 

『……………』

 

 

 私というイレギュラーのせいなのか、一誠の好みのタイプは単なる女の子全般では無くなってるとわかった良いけど、だからってそんな言い方を小猫ちゃんにしなくたって良いのに……と思ってしまう程にヘラヘラした態度だったっけ。

 言われた小猫ちゃんも、その場で怒りはしなかったけど、多分かなり傷付いたと思う。もしこれが私だったら……立ち直れる気がしない。

 

「朱乃先輩が羨ましい……」

 

 

 だからこそ、ある意味で一誠の理想系である朱乃先輩が羨ましい。

 あれだけくっついてても心の底からの拒絶はされないし、この前なんておんぶもされてたし……。

 良いな良いな……私も一誠におんぶとかされないな……。

 こんな風に――

 

 

『足を挫くたぁ間抜けだな』

 

『あ……あはは、ごめん』

 

『チッ、しょうのねー姉貴だ。ほら乗れよ……』

 

 

 なんてぶっきらぼうに言われながらもおんぶとかされてみたいな……。

 そして家までおんぶされて帰ったらまず――

 

 

『冷たくない?』

 

『怪我人が気にする話じゃねーだろ、さっさと冷やされてろ』

 

 

 と、こんな風に氷嚢とかで冷やして貰ったり――

 

 

『ったく、かなり派手に挫いたみたいだなこれ……』

 

『痛っ……! あ、あはは……ドジだね私って』

 

 

 包帯巻いて貰ったり――

 

 

『あ? 風呂なら母ちゃんが入れろよ――は? 今忙しいからお前がって……チッ』

 

『い、良いよ! そこまでして貰わなくても……』

 

『風呂場で転んで頭打たれるよりか面倒じゃねーよ、仕方ねー……おら行くぞ』

 

 

 一人じゃ無理だからって理由で一緒にお風呂とか入れてくれたりして――

 

 

『ひゃ!? く、くすぐったいよ一誠……っ!』

 

『なにもしてねーよ』

 

 

 それから……それから――

 

 

「え、えへ……。

い、一誠ってば駄目だよぉ……♪

姉弟だからってそこまで洗って貰わなくても……えへ、えへへへ……❤」

 

 

 色々な所に触れてくれて、その後一緒に寝て、それからそれから……あは、あはははは♪

 

 

 

「大変、凛の持病が始まったわ」

 

「本当にブラコンね……あの弟の何処が良いのかさっぱりだけど」

 

 

 重度のブラコンなのは周知されてる残姉ちゃんなのだった。




補足

この方は己が転生者という自覚がハッキリあります。

そして一誠だけがこの方が何処徒もなく現れて急に家族面し、それまで兄弟なんていなかった筈なのに周りの全てが初めから居たって認識をしている……という本人にとっては不気味極まりない怪現象を体験させられたせいで、一切警戒を解いてないという感じです。


備考データ
兵藤 凛

スリーサイズ……皆様のご想像に

容姿……一誠くんの双子だが、やはり性別の違いが如実に顕れており、女の子らしい愛嬌のある瞳と二重瞼。
 唇は思わず奪い取りたくなる程に健康的で血色良しの理想系。
染み一つ無しの健康的な肌を持ち、全体的に一誠より一回りは小さく、ブラウンのボブカットで、アホ毛が一つ頭頂部にある。

※ぶっちゃけ某帰宅部の夏希さんそのまんまかもしれない。
無論体型も……

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