風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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新章ですかね。

かなりごちゃついてます


デビル・インフィニットヒーロー
始まり


 弱体化したせいで守れませんでした、なんて間抜け通り越したバカ野郎に他ならならない。

 だから、王様が新しい仲間とやらを作るまでは代行として悪魔にはなるものの、当然の事ながら力はキチンと元の状態に戻す。

 寧ろその先の領域に勿論行くつもりだけどな?

 

 今の所としては、数ヵ月で元の強さを手に入れるって所か……。

 

 

「僕は手伝わないよ。お前が自分で選んで弱体化したんだし、そこは自分で取り戻してナンボだろ?」

 

「最初から頼るつもり無かったよ。大丈夫、寧ろこの弱体化こそ、良い修行ってやつにしてみせるぜ」

 

 

 その為には、弱体化と一緒に弱体化したスキルを鍛え直す所からだな。

 なじみの手伝いなぞ必要ない。自分で必ず取り戻してやるぜ。

 

 

 

 

 結局悪魔に転生しても溝は溝のまま、日は過ぎていく。

 球技大会があった時に、部活・委員会対抗の野球ゲームがあったのだが……。

 

 

「シャアッ!!」

 

「ひいっ!?」

 

 

 人数の理由で風紀委員会と生徒会が合同……それでも足りないのだがチームとなり、オカルト研究部と試合になった際、ピッチャーだった一誠は打者に立つ数人に対してのみ顔面すれすれ計測不能の球を投げつけて、本人達どころか見てた周囲の生徒達からも顰蹙を買い。

 

 

「こ、の!!」

 

「キャオラッ!」

 

「げぶ!?」

 

 

 ドッジボールでは、力自慢の白髪で小柄な少女の投げた球を半笑いで取っては顔面に目掛けてマジ投げしてぶっ飛ばし等々、売られた喧嘩を買いますよなスタンスのまま、ますます溝を深めまくったというオチで終了した。

 

 

「あの人の事、やっぱり大嫌いです」

 

「明らかにわざとやりましたよ……あの人」

 

「兵藤さんにも思いきり当ててたし、酷すぎる」

 

「いや、私は別に……」

 

 

 地雷を踏んだ代償は、じわりじわりと迫っている……という現実に気付くべきなのかもしれないが、三人ともそれに気付こうとはせず、ただただゲスだ何だと一誠をますます嫌うのであった。

 

 

 

 弱体化した……と、軽い調子で兵藤くんは言っていたけど、その軽い口調とは裏腹に見せられた彼の鍛練は、とても真剣なものだった。

 

 

「常時身体が重く感じるというか、見えない重石を常に抱えてる感じだから、取り敢えず王様よ……俺の相手して貰えます?」

 

 

 椿姫と何時も模擬戦をしてる姿を見ていた私は、只今昼も夜も人間が立ち寄る事が皆無な、計画途絶のビル工事跡地にて、コキコキと首を鳴らす兵藤くんと向かい合っていた。

 

 理由はそう……悪魔に転生した弊害で弱体化してしまった力を鍛え直して取り戻す為であり、椿姫ばかりにその役目を負わせるのは酷だからと私が自分で手伝える事は無いのかと聞いたからなのだけど……。

 

 

「うーん……」

 

「こ、このっ! この!」

 

 

 当たらない。

 決して手加減してるわけじゃない……いや寧ろ途中から躍起になって当てようとしたのだけど、放った魔力も、体術による肉弾戦も、まるで踊る様な動きで悉く避けられてしまう。

 

 

「やっぱり身体がまだ重いか。うーん……」

 

「ぜぇ、はぁはぁ……そ、その状態の、アナタに……一撃も、当て、られない……はぁひぃ……私って、一体……」

 

 

 転生した事により持つことになった多少の魔力には一切頼らず、転生前と同じ身体一つで相手をなぎ倒すスタイルを変えるつもりは無いと言っては居ましたが……。

 弱体化したと嘆いている状態なのにも拘わらず、一撃も当てられない私はそれ以下の以下に弱いと言われてる様なもので、自信を軽く失いそうになる。

 

 

「そ、そもそも私、考えてみたら兵藤くんの力について何にも知りません。

本来一度で転生すれば決して戻る事が無いというのに、匙達を元の種族に戻した力とか……」

 

「そりゃあ、聞かれても無いし言ってもいませんからね」

 

 

 そして兵藤くんを全然知らない。

 常識を嘲笑うかの様に否定する力も、人の身である時から持つ強い力についても……何もかもを私は知らない。

 本人は言ってないからと軽く流したけど、私は今此処に来て知りたいと思ってしまう。

 

 おちゃらけ風紀委員長としてでは無い、私の知らない兵藤一誠の事を……。

 

 

「教えて下さい……と言えば教えてくれますか?」

 

 

 知りたい。疲れて動けずに座り込む私は、ビル建築の骨組みの隙間から流れる冷たい風をこの身に受けながら言ってみた。

 

 

「……。はぁ」

 

 

 そんな私の言葉にガシガシと頭を掻いた兵藤くんは、一つ深いため息を吐き……。

 

 

「まあ、暫くはまるっきり他人同士って訳じゃあ無いから良いか……」

 

 

 教えてくれる……そう言外に言ってくれた。

 

 

「他言したらドラゴンスープレックスしますんで」

 

「え、えぇ……」

 

 

 そして釘を刺された後に話された事全ては、飲み物を買いに行った椿姫が戻ってくる間ずっと、私の中にあった人の常識に対する認識を無理矢理すげ変えられた……とだけ言っておきます。

 

 

 

 

 一誠がソーナの眷属に形的にとはいえなってから数日。

 球技大会の事もあってますます自身の眷属達との溝が広がりまくる事に頭を悩ましていたリアスだが……。

 

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい! 本気なの祐斗!?」

 

「本気ですよ……。兵藤さんの家に行った時に見た写真の中にあった時は過去の事だと割りきれましたけど、今日来た教会の遣いの人達が持ってたそれを見て自分を理解しました。『やっぱり割りきるのは無理』と」

 

 

 その悩みの種の一人の抱える怨念が、今日来たとある存在の持つとある剣により再燃してしまい、大雨降り頻る外へと走り去ってしまった。

 

 

「木場君!」

 

 

 当然、止めようとした。

 事情を知らない凛も同じように様子が変わった木場祐斗を止めようと叫んだ。

 しかしそれでも祐斗は止まらず、ずぶ濡れになりながらも走り去った。

 

 

「き、木場君は一体……? 聖剣を見てから急に様子が……」

 

「……。凛とアーシアは知らなかったわねそういえば、祐斗の過去を」

 

「え、えぇ……」

 

「はい……。あんな怖いお顔の木場さんは見たことが……」

 

 

 祐斗が去ってしまった後、部室に残ったリアス、朱乃、凛、アーシア、小猫はただ下がりの重たい空気を充満させながら、祐斗の過去についての話が始まる。

 

 それは、木場祐斗が過去に人が聖剣を操る為の実験に強制参加させられ、まるで実験動物が如くあらゆる非道な実験をその身に受けさせられたというもの。

 そしてその実験に目処が立った瞬間、用済みとばかりに同じ実験に参加させられた者達は殺され祐斗だけが奇跡的に生き延び、リアスによって悪魔として転生して命を拾った事。

 

 そして、今回来た教会の遣いからの話と共に持っていた聖剣の一つを見てその復讐念が再発してしまった事。

 

 

「だから祐斗は聖剣を憎んでる。

ただ、私は凛――貴女と出会ってからその念から少しずつ解放されたと思ってたわ」

 

「わ、私が……ですか……?」

 

「ええ、というか気付いてないの?」

 

「えっと……?」

 

「……………。いえ、何でもないわ。早く祐斗を探しに行かないと……」

 

 

 困惑する凛の様子を見て『鈍いのか……』と思いつつ話終えたリアスは脱力して力の出ない身体に鞭を打って立ち上がろうとする。

 教会側の遣い二人との話し合いにて取り決めた、口頭とはいえ約束事を早速破る訳にはいかない。

 だからこそ、恨まれても構わないから力付くでも大人しくさせなければいけないのだ。

 

 

「わ、私が行ってきます!」

 

 

 だがそれに待ったを掛けた凛だった。

 どうやら自分が追いかけて連れ戻すと言いたいらしく……。

 

 

「凛先輩が行くなら私も行きます。祐斗先輩が心配ですから」

 

「私も行きます」

 

「……」

 

 

 リアスが内心『まさか』と思っていた通り、小猫とアーシアも行くと言い出した。

 連れ戻す……という言葉に嘘は無い。

 しかしそれでも何となくリアスは嫌な予感がしていた。

 

 

「凛はあの……確か紫藤イリナと言ってた子と知り合いみたいだったけど……」

 

「む、昔の友達です。行ってきます!」

 

「え、ちょっと! まだ行って良いなんて――」

 

 

 具体的には上手く説明できない『嫌な予感』が。

 飛び出す凛、そしてそれに続く小猫とアーシアを呼び止める暇もなく去られてしまったリアスは、傍らに控えてくれている朱乃と共に『はぁぁ』と深いため息を吐きながら、どうしようかと相談し合う。

 

 

「事情を知って、祐斗の復讐に荷担するとか言い出さなければ良いけど……」

 

「微妙な所ですわね」

 

「教会側から釘を刺されてるというのに……どうしようかしら」

 

 

 ライザーとの小競り合いから感じるようになった妙な距離感は、一誠が朱乃を助け出すついでに自分を救ってくれた出来事以降から更に感じる様になった。

 

 

「極力兵藤くんの話は普段しないように心掛けててもダメだったし……」

 

 

 だからリアスなりにその距離感を少しでも離さないようにと、あからさまに一誠を毛嫌いしている三人の前では、理由が無い限りはその名前を口に出す事は控えていた。

 しかし、一誠とは関係の無い新たな火種の出現に、更なる溝が深まる予感がしたリアスはただただ嫌な予感だけしか残らず、祐斗や凛達を追いかけて無理矢理連れ戻すべきなのか迷ってしまう。

 

 そして迷ってしまうと最近は何時も――

 

 

「兵藤くんならふて寝してますけど」

 

「……。一応聞くけど、何で生徒会のアナタ達が風紀委員室に?」

 

 

 朱乃の幼馴染みであり、最近異例の方法で悪魔に転生したスケベ風紀委員長である一誠に話をしてみる為に風紀委員室へと赴く事だった。

 よく解らないけど、口が悪い一誠の喋りは精神的重みを緩和するとリアスは最近思ってる様で、最近は朱乃と一緒に訪ねる事が多くなった。

 

 が、今日はたった一人で風紀委員会を存続させている一誠の聖域に、自分と同じく最近はよくソーナと椿姫が訪ねてるという事が多くなり、その都度朱乃が若干不機嫌になることが多く、リアスも拘る事が多々あるようになる。

 

 

「一応、兵藤くんは眷属ですから」

 

「大丈夫ですよ姫島さん。別にいやらしい事はしてませんから」

 

「していたら笑って許す事はなかったですわ」

 

 

 ノックしたリアスと朱乃を当たり前な顔して出迎えたソーナと椿姫の言い分に納得出来ない顔をするものの、取り敢えず相変わらず学園長室や応接室より豪華なインテリアや間取りである風紀委員室に入った二人は、ソーナが言っていた通り、本皮製のソファの上でふて寝してる一誠を見付ける。

 

 

「どうしたのよ一誠くん?」

 

「別に」

 

「別にじゃないでしょう、その反応は? 何かあったの?」

 

 

 険しい顔してふて寝してる所に近付き、事情を聞こうとする朱乃にまで不貞腐れた態度を崩さない一誠に、これは何かあったな? と感じ取ったリアスはソーナと椿姫に耳打ち気味にどういう事なのかと聞く。

 

 

「何かあったの?」

 

「リアスの所に来た教会の遣い二人組が居たでしょう?」

 

「あの二人の内の片割れが、どうやら一誠くんを知ってるみたいだった様なんですよ」

 

「兵藤くんを……あぁ、もしかして凛の」

 

 

 教会の遣いの二人組の内の一人というソーナと椿姫の説明に、あぁと声を出すリアスはちょっと納得した。

 どうやら凛絡みで何かがあったらしく、それをふて寝してる一誠の横で聞いていた朱乃も納得しつつ当たりかどうかを聞いてみる。

 

 

「そうなの? 私はあの教会の遣いの……紫藤さんだったかしら? を知らなかったのだけど」

 

「俺だって別に知らねーし」

 

「ならどうして怒ってるのよ?」

 

「言い方にムカついただけだ。へ、なぁにが『凛ちゃんの弟さんなのに昔から相変わらず意味もなく毛嫌いしてるのね』だ」

 

 

 良いから黙って寝かしてくれよと言外に態度で訴えながら、ソファーの背もたれの方へとゴロンと寝返りを打った一誠に朱乃はちょっとホッとした。

 凛の昔馴染みという事は、もしかしたら自分と知り合う以前の一誠にとっても知り合いだったかもしれないと心配だったからだ。

 あの紫藤イリナという少女は、どうも見た目だけなら一誠のストライクゾーンに入ってたという意味で。

 

 

「…………。と、いう訳です」

 

「お陰で話し合いをした生徒会室から即刻こっちに戻って引きこもりを……」

 

「難儀ね……」

 

 

 既に凛の事を完全な他人とばかりにフルネーム呼びしてるまで終わってる関係に突っ掛かれる事が一番一誠にとってイラつく事を既に承知してる四人だからこそ直ぐに納得できてしまう訳で。

 特に朱乃にしてみれば『事情と理由』を深くまでとは言わずとも知っているので、一誠の不貞腐れに対してもほぼ一番に理解を示している。

 

 

「はぁ、しょうがないわね。

ほら、そのままだと寝づらいでしょうから枕代わりになってあげるわ」

 

「いーよ。ガキ扱いすんなし」

 

 

 居場所を無くし、人間不振にまでされたからこそ凛という存在を心の底から否定している一誠を、かつて出会った時に見た瞳を知る朱乃だからこそのメンタルケアというべきか。

 背中を向けたまま断る、不貞腐れた状態の一誠を宥める方法も一番知ってる。

 安心院なじみがその上を行ってるが、最近はちょいちょい留守が多くなってるし、そもそもあんな人に負けてるつもりは無いと思ってるので朱乃の中では即座に除外されている。

 

 

「じゃあ私の勝手にするわ。はい頭上げて」

 

「…………」

 

 

 そもそも言えば言うことを聞く頻度にしてみれば、ある意味で朱乃が最強なのだから。

 

 

「あーぁ、眉間に皺なんか寄せちゃって」

 

「見るなよ」

 

 

 結局、不貞腐れた一誠に膝枕する事が出来た朱乃。

 その手腕というか、不貞腐れた一誠をこうも簡単に言うことを聞かせる事が出来る朱乃を間近で見たリアス、ソーナはただただ感心してしまい、椿姫は微妙に悔しそうな顔をしていた。

 

 

「……。で、何しに来たわけ?」

 

「え、あ、うん……兵藤くん達も会った教会の遣いとの話し合いの時に起きちゃった事についてね……」

 

 

 取り敢えず、不貞腐れた態度を緩和した一誠は、ソファの上で朱乃に膝枕されながらという、大分情けない姿のまま、対面側に座るソーナ、椿姫、リアスの内、リアスに何しに来たのかと問いかけ、返ってきた言葉にめんどくさそうに鼻を鳴らす。

 

 

「聖剣への復讐心が再燃して勝手に飛び出して、それを役立たず共が追い掛けたまま戻ってくる気配が無い? 知るかよそんなの、勝手にさせれば良いだろ。最悪消されても自業自得だぜ」

 

「それはそうなのだけど……ほら、教会側との口約束を早速破りました……はねぇ?」

 

「じゃあ追い掛けて、叩きのめしてでも連れ戻すんだな――――と、言いたいけど、それで聞くような聞き分けの良い役立たず共じゃねーわな」

 

「………」

 

 

 元々一誠は凛は論外として、それに何時も引っ付いてる食玩のオマケ菓子以下と思ってる取り巻き達が嫌いだった。

 何かに付けて凛だのと喧しいだけで、常時役にも立たないだけの連中……本来なら相手にもしたくないと一誠は思ってるが、それでもリアスと朱乃の仲間である体である以上、嫌でも関わらなくてはならない。

 

 

「大体、その復讐とやらを出来る強さなのかよあの役立たず野郎は?」

 

「………。一応、ライザーとの小競り合い以降、凛達と鍛えて実力を伸ばしたけど」

 

「だとしても大丈夫とは思えませんね。今回の騒動の発端は聖剣を奪ってこの町に潜伏したと言われてる堕天使・コカビエルの存在がある以上は」

 

「ええ、だから余計に危ないのよ。

コカビエルは聖書にも乗ってる大物堕天使たし」

 

「堕天使……ね」

 

「? どうしました一誠くん?」

 

 

 堕天使という言葉に一瞬だけ一誠の放つ空気の温度が一気に下がるのに椿姫が気付いて声を掛ける。

 

 

「別に。バラキエルのおっさん以外の堕天使は基本ろくでもないな」

 

「…………。父がマシだと思うの?」

 

「マシどころか、下手な人間よりいい人だろあの人は。まあ、朱乃ねーちゃん的にまだアレだけどさ」

 

「………」

 

 

 そういえばあの教会側の遣い二人組との話し合いの時にもコカビエル――いや、堕天使という言葉に顔が険しくなった……とバラキエルをおっさん呼ばわりで語る一誠に椿姫は思い出すが、その理由は何なのだろうか……? さっきから話し合ってるリアスとソーナを目を細めながら朱乃に膝枕されたまま聞いてるのを観察して知ろうと努めるが、何時にもなくシリアスな様子故に、返ってわかりづらい。

 

 

「暫くは朱璃さんの周囲を警戒しておくか。

あのクズ共のやった事を思えば当然だぜ」

 

 

 分かった事と云えば、悪魔に対して不信感を持ってるのが可愛いレベルに、堕天使に対して強烈な敵愾心を持っているという事くらいか……。

 

 

「大体思ったけど、その教会の二人組でその堕天使を殺れるのか? 正直無理だろ」

 

「彼女達の言い分だと、コカビエルの手に渡った聖剣をどうにか出来れば良いらしいのよ。それこそ玉砕覚悟で」

 

「信仰している神の為には自分の命なんて軽く投げますからね彼等は」

 

「神ねぇ?」

 

 

 意味深に神と呟く一誠。

 膝枕されてるとはいえ、おふざけ無しの状態の一誠は妙に新鮮だったりする椿姫は、暫くジーッと一誠を眺めていた訳だが、そこで一つ気がついた。

 

 

(? 一誠くんの視線がソーナ会長とリアス様のに向いてる割りには随分低い様な――)

 

 

 さっきから一誠の視線が話し合ってるソーナとリアスに向けられてるのだが、その視線が妙に低く、具体的にいうと座ってる二人の足元……いや――

 

 

「ほほぅ、ベージュと黒レースか」

 

 

 スカートの中であり、ハッと半笑いで色をと種類を言い出した一誠に、視線の先に気付いた椿姫以外の三人が声を揃えてキョトンとした顔をしながらニタニタし始めた一誠を見る。

 

 

「グレモリー先輩はオーケーだとして、王様は随分と顔の通りに地味っすね。ベージュて……くくっ!」

 

「はっ!?」

 

「なっ!?」

 

 

 そして漸く一誠の言ってる意味を理解したリアスとソーナはハッとしながらスカートを押さえる。

 しかし遅い……バッチリ一誠は網膜に焼き付けてしまった時点で勝敗は決していた。

 

 

「み、見えてたのね……。

兵藤くんに見られると恥ずかしいわ……」

 

「わ、私に対する言い方に悪意があるのは気のせいですか?」

 

 

 リアスは恥ずかしそうに笑うが、ソーナは顔を真っ赤にしつつジト目で一誠を睨む。

 膝枕してる朱乃の顔つきが一気に変化してる事に気付いてない一誠は、ケタケタ笑ってそんなソーナを煽りだす。

 

 

「地味で貧乳でキャラもつまんねーし、アンタらしいと寧ろ誉めてるんですがね? まあ、色気なんて全く感じないけどね………ぷっくくく、オバハンかってんだ」

 

「バカにしてますよね!? 今絶対しましたよね!? というか貧乳は止めてと言いましたよね!?」

 

「してないっての。まあ心配しなくても、世の中にゃあアンタみたいな地味で、貧乳で、ベージュで、マグロっぽくても良いって理解しがたい性癖を持つやつが居るんだから悲観すんなよ?」

 

「ま、まぐ!? し、知りもしない癖に!」

 

 

 ひっひっひっ! と笑って煽る一誠に思いきり引っ掛かってしまってるソーナ。

 一応主従関係なのに、その様子が微塵も無い。

 

 やがて朱乃の膝枕から起き上がった一誠は、ゲラゲラと大笑いし、「うーうー」としか言えなくなったソーナは何かが切れでもしたのか。

 

 

「は、はっはーん、分かったわよ兵藤くん?」

 

「え?」

 

 

 急に真っ赤な顔しながら無駄にドヤ顔で何かを理解したぞと宣い出し、それまでヘラヘラしていた一誠がポカンする。

 一体何が分かったのか? 一誠本人もそうだが、リアスも椿姫も、一誠の後ろでバチバチとしていた朱乃も分からずにドヤ顔してるソーナを見てると……。

 

 

「そ、そうやってからかうのは私の事が好きだからでしょう?」

 

 

 完全に斜め上の事を言われてしまった。

 

 

「…………は?」

 

 

 これには一誠も困惑。

 

 

「か、会長……?」

 

「何を言ってるのよこの子……」

 

「……………」

 

 

 そして椿姫とリアスも一誠と同じく困惑したが、朱乃だけは目付きが一気に変化して困惑した一誠の横顔を見据える。

 

 

「グレモリー先輩じゃないけど、アンタ何言ってるの? 頭大丈夫っすか?」

 

「ふ、ふんだ。

理由を知った今、私は怒らないわ。

まったく、好きなら好きとハッキリ言えば良いのに、ヘタレだから言えないなんて可愛いじゃないの。

てっきり椿姫や姫島さんやリアスみたいなのがタイプかと思ってたけど、貧乳と言ってたのも照れ隠しね?」

 

「おい、医者呼べ医者。この王様イカれちゃった」

 

「ソーナ? 落ち着きましょう? いくら何でもそれは無理があるわよ?」

 

「これぞまさに現実逃避ですか」

 

「……。気が抜けましたわ」

 

「何よ三人して? あらまさか嫉妬かしら? しょうがないですもね、アナタ達は無駄にその脂肪の塊があるし? 私だけがストライクゾーンだからって嫉妬しちゃうのも仕方ないわよね? おほほほほ!」

 

 

 流石に本気で頭の心配をする一誠達だが、ソーナは勝手に吹っ切れたが如く一人勝ち誇っている。

 その余りにもアレな姿に流石の朱乃も怒りが吹き飛んでしまう。

 

 

「あ、そうだ。折角こうして好きだと言われた事ですし、断るのも悪いので今日は今後の関係について話し合う為にアナタのお家に行きましょう。

私もアナタの求愛を受けるにしても、もっとお互いの事を知らないといけないと思ってますしね?」

 

「いや、俺が何時アンタを好きなんて言ったんだよ? つーか別に好きじゃねーよ。何だこの人? ポンコツだったのか?」

 

「さ、さぁ? こんな会長を見るのは初めてで……」

 

「というかいくらシトリー様でも一誠くんのお家に行かせる訳がありませんわよ」

 

「兵藤くんが煽り続けるせいでもあると思うけど……」

 

 

 どんどんと壊れていくソーナに流石に罪悪感が再燃してしまう。

 それ故に勝手にテンパってるソーナにただただ平謝りでもしようとヘコヘコ頭を下げるのだが……。

 

 

「マジすか。あー……何かごめんなさい王様。もう無意味に煽りませんから何卒元に……」

 

「え、添い寝? も、もうそんな段階が欲しいの? だ、駄目よ一誠……そういうのはデートを重ねてから――」

 

 

 然り気無くソーナの中ではランクアップでもしたのか、名字呼びから名前に切り替わり、更には全く話を聞かずに一人で暴走が進んでしまう。

 

 

「マジでごめんなさい。割りと本気ですいません。

憎まれ口でも叩けば、俺のせいで無くした仲間に対する複雑さを若干緩和できると思ってたから……すいません、すいませんすいません!」

 

 

 それを見てしまった一誠は、かなり本気になって謝った。

 自分のせいで巻き込まれて眷属を失うことになったソーナに、せめてそれを引きずらないようにと、自分なりに色々と憎まれ口を叩いていたつもりが、予想を斜め上に行く展開だった。

 

 ほんのりと頬を染めながらどんどんと話が変な方向に飛ばしていくソーナにひたすら謝りまくる一誠は、基本的に損な性格なのだ。

 

 

「一誠くん……取り敢えず浮気は許さないからね?」

 

「まさかとは思いますが、会長が好みとは言いませんよね?」

 

「それこそまさかだよ。大体俺がそんな素振り見せ――」

 

「え、ええっ!? そ、そんな……一緒にお風呂で洗いっこするなんて……。

そ、そこまで求めて来られると……わ、私……」

 

「ソーナ、そんな事兵藤くんは言ってないからね? 冷静になりなさい……!」

 

 

「…………。妄想癖があるとは知らなかったけど」

 

「「……」」

 

 

終わり




補足

イリナさんはどっちかと云えば凛派。
それ故に一誠はめちゃめちゃ嫌ってます。

ゴチャゴチャ言われたのもあって余計に。

その2

風紀委員室がソーナさんとリアスさんにとってのメンタルケア室と化してるのは……まあ、仕方ない。


その3
そんなメンタルケアの方法を失敗したせいで、ソーナさんがエライ事になってしまった。

というか、完全に一誠の失敗でした。

顔真っ赤、目はテンパって渦巻きみたいにグルグル、アワアワしているソーナさんは……まあ、普通に匙が居たら―――うん。

まあ、ベージュだけどね

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