風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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こんなシリーズ始めて数種類。

ある時は変態。
ある時はストーカー
ある時は畜生。

と、ありましたが……遂に今期にて確変開始。


色んな意味でド優遇

 来ると思っていたから悲観はしなかったし、一誠くん以外の男にベタベタ触られても我慢できた。

 

 

「こんな派手な真似をしてくれたばかりか、リアスと親しそうにしている様だけど、一体キミは誰なんだい?」

 

 

 一昔前の不良が着てた様な、背に風紀と大きくと書かれた丈の長い学ランと腕章を携えてやって来たのには驚いたというか、確かあの二つって私やリアスにとっても先輩に当たる方々が現役の頃にそれぞれ身に付けていた奴だったのを思い出したわ。

 まさか一誠くんが引き継いでたなんて……。

 

 

「駒王学園・風紀委員長」

 

 

 いえ、それよりも今は魔王様や悪魔の上層部の前で冥界の象徴の一つである魔王の城を更地にした事について、魔王・サーゼクス様が穏やかに見えて鋭い殺気を放っているこの状況をどう切り抜けるかだ。

 ライザー・フェニックスをボコボコに殴り付け、それを止めようとした一部の来賓悪魔達も巻き込む形で張り倒してしまった以上、ただ私を迎えに来ただけと主張しても『はいそうですか』とすんなり帰して貰える訳も無く、現に更地となっても残った椅子からゆっくりと立ち上がったサーゼクス様は、位置的に見下ろす様にして何者かと問い掛けてきている。

 

 

「只の人間として、姫島朱乃を迎えに来た」

 

「リアスの女王をかい? それにしては随分派手にやってくれた様だけど、その理由は?」

 

 

 サーゼクス様の殺気を真正面から受けても涼しい顔ながら、それでも私を迎えに来ただけだと言い切る一誠くん。

 

 

「『迎えに来ました』『姫島朱乃をつれていきます』『さようなら』と言った所で、アンタ等がすんなりとお見送りしてくれるとは到底思えないからな。

ましてや、人間を見下してるっぽい悪魔共(オマエラ)だしな」

 

 

 不法入国、悪魔への攻撃、魔王への不敬。

 今の時点での一誠くんは間違いなく悪魔にしてみれば罪人だと見なされているだろうし、サーゼクス様も冷静ながら見たこともない程に鋭く重苦しい殺気を放っているからしてそう思われているのだろう。

 

 

「なるほど、キミが冥界(ココ)へどうやって来たのかもそうだが、間違いなく他種族の不法入国者だ。

加えて多数の悪魔への攻撃に器物破損……」

 

 

 だからこそ、避けることは既に不可能。

 

 

「以上の事から、魔王として侵入者であるキミを排除する」

 

 

 ふわりとその場に浮かんだサーゼクス様は厳格な声で一誠くんにそう宣言する事で始まってしまった……戦いに。

 

 

「お兄様!」

 

 

 ルシファー城の破壊の余波で砂埃に汚されたウェディングドレスを着たリアスが、止めようと叫ぶ。

 

 

「退いてなさいリアス。

お前の知り合いらしいけど、冥界をこうも荒らされてしまったとなれば、黙っている訳にもいかない」

 

 

 しかしそんなリアスをサーゼクス様は一言で斬り捨てると、傍らに控えていたグレイフィア様に命じ、リアスの身柄は抑えられた。

 

 

「下がってなねーちゃん。どうやらあのボス犬みてーなのを黙らせれば堂々と帰還出来そうだぜ」

 

「……。ここまで騒ぎを大きくしなければダメだったの?」

 

「別にねーちゃんだけなら普通に拐う形で持っていけたけど、どうも俺はこの悪魔ってのにムカついて仕方ねぇんでね。

あのボス犬を一撃ぶん殴ってスッキリしてやりてぇのさ」

 

 

 そして一誠くんも私から離れろと言って構えた。

 ……今回の事で悪魔の大半を、父以外の堕天使と同じく嫌ってしまった様で。

 

 

「まあ見てな、何だかさっきから頭も目も冴えまくってて、力もみなぎりまっくて何でも出来そうなんだ。

無事にねーちゃんを家に帰すよ……絶対にね」

 

 

 私達とは違い、たった10日で急激に強くなった覇気を纏いながら一誠くんはサーゼクス様に向かって地を蹴り、飛翔する。

 

 

「人間ごときと堕天使もほざいてたが、敢えて俺は言ってやるよ。

テメー等ごときが、人間様を嘗めてんじゃねぇってなぁ!!!」

 

 

 回す必要もなかった悪魔をも敵に回して……。

 

 

 

 一誠の強みは、破壊力でもなければ速さでもない……適応能力であった。

 

 

「っ!?」

 

「はははは!! 全部が遅せぇ!!!」

 

 

 どんな環境であろうが瞬く間に適応し、そして進化する。

 姫島朱乃の身が何処の馬の骨とも知らない悪魔に好き勝手させられるという現実をただ否定したいが為にその精神は爆発し、緩やかであった進化の速度が急激に上昇する。

 

 

「セリァ!!」

 

「がっ!?」

 

 

 最早今の一誠はルシファー城を更地へと変え、ライザーを殴りまくっていた時とは別次元でありその速力も、腕力も何もかもが異質な程に進化をし続けており、空中から見下ろしていたサーゼクスがまるで反応できずに殴られるというレベルにまで達していた。

 

 

「さ、サーゼクス様!!」

 

「ば、バカな!? サーゼクス様が殴られただと……!?」

 

 

 運良く一誠に飛び掛からずに無事だった悪魔達は、自分達を統括する王の一人が殴られ、地面へと叩き付けられる姿を見て大きく取り乱す。

 冥界最強の一角にて超越者とも呼ばれるサーゼクスがたかが人間に殴り付けられたのだ。

 動揺しない方がおかしいのだが……。

 

 

「ぬ!?」

 

 

 サーゼクスとて魔王だ。

 殴られただけでやられる程柔では無く、地面に叩きつけられたその瞬間に放った滅びの魔力で着地した一誠の左腕を消し飛ばした。

 

 

「おおっ!?」

 

「人間の腕を消し飛ばしたぞ!」

 

「やはり流石サーゼクス様だ!」

 

 

 左肩から先が消し飛んだ人間の姿を見た悪魔達が、砂煙を背に姿を見せたサーゼクスを絶賛する。

 

 

「驚いた。油断したつもりは無かったのに、呆気なく殴られるなんて。

だけどこれが最終通告だ、今降伏すればそれなりに話は聞いてあげよう」

 

 

 全身から魔王たらしめる滅び魔力を放ちながら、砂埃で汚れながらも自分の左肩を見て顔をしかめる一誠に警告しつつ、身体の一部を失っておきながらこの冷静ぶり。人間の子でありやがら何て強靭な精神力……と内心舌を巻いていたサーゼクスは、恐らくこの程度で降伏するつもりは無いだろうと今度は完全に油断無く身構えていたのだが……。

 

 

「腕消したくらいで勝った気になれるなんて、魔王ってのは気楽だな」

 

「なっ……!?」

 

 

 消し飛ばした筈の一誠の左腕は、着ていた長ランを含めて何事も無かったかの様に、一誠の腕としてそこにあった。

 これにはサーゼクスも、そして見ていた悪魔達も訳が解らずに動揺している。

 

 

「今、何をした? 確かに私の攻撃でキミの腕は……」

 

 

 グルグルと健在だぜとばかりに左腕を回して見せる一誠にサーゼクスは幻覚の類いを疑いながら一誠に問い掛ける。

 

 

「正直に種明かしをするバカなんざいねーだろ、漫画じゃあるめーしよ!」

 

「ぐっ!?」

 

 

 だが一誠はそんなサーゼクスの質問に取り合う事無く斬り捨てると、初激の時よりも更に上昇した速力で反応が出来ずに固まるサーゼクスな懐に潜り込み、右手を翳していてがら空きだった腹部に左拳でリバーブローをめり込ませる。

 

 

「ごほっ!?」

 

 

 鈍い骨を砕く音がサーゼクスから放たれ、肝臓が悲鳴をあげる。

 

 

「チィ!」

 

 

 しかしサーゼクスも負けじと自分の懐へと入ってきた一誠に向かって自爆覚悟の滅びの魔力を打ち込もうと一誠の頭を掴まんと手を伸ばそうとしたが。

 

 

「あがっ!?」

 

 

 成就を待たずして、上体を屈めていた一誠の拳がサーゼクスの顎をカチ上げた。

 

 

「ぐ、ぉ……!?」

 

 

 所謂ガゼルパンチと呼ばれるボクシングの技の一つだが、力も速力も今のサーゼクスを越えている一誠の一撃だ。

 そのダメージは計り知れないものがある。

 

 

「つ、強……。お兄様を圧倒してるなんて……」

 

 

 レイナーレの時に見せられた力で既に一誠が只の人間では無いと認識していたリアスですら、目の前の現実が信じられ無いといった表情だ。

 勿論、他の悪魔達も、そして約10日振りに見た朱乃もだ。

 

 

「こ、の……!」

 

 

 そんな悪魔達の期待を背負っていた魔王は、脳が揺られ平衡感覚が麻痺した意識の中歯噛みしながら、目の前の――身体を丸めるような構えをしながら∞を描く様に身体を大きく振る隙きだからけの動作を前にして自分の身体が言うことを聞かない事も含め……。

 

 

「オラオラオラオラァ!!!!」

 

 

 かつて無い力で思いきり左右から顔面を叩き付けられたサーゼクスは……。

 

 

「ぐ、ぐふ……」

 

 

 50発目を待たずして両膝を地面に付き、そのまま前のめりに倒れ伏すという決定的な敗北を久々に味わったのだった。

 

 

「……ふ、ふふ」

 

 

 何故か笑いながら……。

 

 

 

 

 

 う、嘘でしょ……? お、お兄様が負けた、の?

 

 

「サーゼクス様!」

 

 

 しこたま殴られ、そのまま倒れたお兄様を見たグレイフィアが慌てて拘束していた私から離れて飛び出すのも気に出来ずに私は、お兄様を怪訝そうな顔して見下ろす兵藤君を見るしか出来ない。

 

 

「サーゼクスさま、サーゼクス様!!」

 

「…………」

 

 

 グレイフィアがお兄様に駆け寄るのをそのまま見つめてるだけの兵藤君に、誰かが信じられないといった声を放つ。

 

 

「ば、ばかな……た、たかが人間が……!」

 

 

 お兄様が倒れた事が信じられないのか、生き残った悪魔の一人が呟く。

 それは、私の父と母も同じ様だった。

 

 

「んー……?」

 

 

 だというのに兵藤君は『え、そんな訳なくね?』的な、寧ろお兄様が狸寝入りしてるのを疑っている様な顔をしているけど、お兄様は本気を出せなかったにせよ間違いなく負けたのだ。

 

 

「……。で、残りは誰が来るんだ? 誰でも良いぜ? 何か消化不良だしどうせなら宣言通り皆殺しにでも――」

 

「う、うわぁぁぁぁっ!! サーゼクス・ルシファーがやられたぁぁぁっ!!!!」

 

「あれ?」

 

 

 その事実が受け止められず、されど目の前の人間でありながら人間を超越している兵藤君に一人がそう恐怖にひきつった形相で悲鳴をあげると、次々とその場から逃げ出した。

 

 

「…………あれー?」

 

 

 残ったのは既に兵藤くんに殴り飛ばされて気絶した悪魔の屍と、私と朱乃と、父と母……そして気絶したお兄様とグレイフィアだけ。

 

 

「え、一応魔王倒した体なのに逃げやがったんだけど……」

 

 

 これには逆の意味で驚いたのか、兵藤君は困惑した顔だ。

 

 

「え、何なん?

人間ごときに魔王がやられた体なら寧ろぶち殺してやる的な気位持つだろ。何で逃げるの?」

 

 

 そして徐々に呆れ始めたのだけど、『ま、それならそれで確認しやすいし……』と小さく呟いた兵藤君は、グレイフィアに抱き寄せられていたお兄様に……。

 

 

「おい、どうせ寝たフリだろ魔王よ?」

 

 

 ゲシゲシと脚を軽く蹴りながらお兄様を起こし始めた。

 

 

「き、キミ、息子に何を……!」

 

 

 その行動にお父様が声を荒げた。

 しかし――

 

 

「…………。いやいや、予想以上に強くて本当に気絶してたんだけどな僕……」

 

 

 お兄様は腫れた顔で兵藤君の声に呼応して起き上がった。

 

 

「え、え……?」

 

 

 もう意味が分からない。

 顔は腫れてるけど平然とグレイフィアの介抱無しで立ち上がるお兄様に、朱乃も驚いている様だけど……。

 

 

「いつつ……10日程前に聞いてたのと違いすぎるよ」

 

「は?」

 

「でもまあ、色々と滅茶苦茶になってくれたし、僕達にとっては都合が良いや」

 

 

 そう兵藤君に対してにこやかに手を差し出したお兄様は――

 

 

 

「改めて『僕が』サーゼクス・ルシファーだ。

待ってたよ『彼女の弟子』の兵藤一誠君」

 

 

 腫れていた顔が『一瞬にして元に戻り』、そして周りの瓦礫の一部が砂となって砕けるという現象を背にお兄様は何をどうしてなのか、兵藤君に方膝を付きながら頭を下げたのだ。

 

 

「……。チッ、あのアマ。今日まで姿を見せないと思ったらそういうカラクリか。

つくづくアイツの掌の上ってか?」

 

 

 そういえば昔からお兄様は滅びの魔力の他に、私達でもわからない不思議な力がある事を久々に目の前で見せられた事で思い出した。

 それをどうやら兵藤君……そして朱乃は身に覚えがあるみたいで。

 

 

「サ、サーゼクス様は『そう』だったのですか?」

 

「えっとごめんね? キミや兵藤君を騙すつもりは無かったんだけど一応そうだ。

 あ、ついでに言うとこのグレイフィアと僕達の子供も……」

 

「あのアマァ!!

これじゃあ俺が只のピエロじゃねぇか!!」

 

 

 急に空気がゆる~くなり、そこにグレイフィアも交えた四人のトークに私や父や母はただただ困惑するだけしか出来なかった。

 

 

 冥界の王が一人……サーゼクス・ルシファー

 種族・純血悪魔

 

 備考・分身――否、 この世界における反転院相当の人外。

 

 『全てを反転させるスキル』

 

 

 

「いやぁ、グレイフィアのナイスアシスト演技が光ったね」

 

「……。やめてくださいサーゼクス様。微妙に恥ずかしいのですから」

 

「……。うほ! 冷静になって見ると、このメイドさん美人――ビリビリィ!?!?」

 

「……。一誠くんのばか」

 

 

 制御できない不運さをサーゼクスに救われし悪魔

 

 グレイフィア・ルキフグス

 種族・純血悪魔。

 

 備考・まごとう事無きサーゼクスの妻にて分身。

 

 『相手の持つ幸運に対して、己の不運を相応に押し付けるスキル』

 

 

 




補足

リバーブロー→ガゼルパンチ→そして……と、元ネタが分かればお分かりかと……




やったねサーゼクスさん! 一部除いて他世界のサーゼクスさんがぐぬぬだぜ。

しかも背中合わせポジだし、スキル持ちだぜ。

……割りとチートな。

『全てを反転させるスキル』

その名の通りに反転させるスキル。
ボコボコになぐられても、新品の壁とでも逆転させたら綺麗さっぱりにて、破壊能力および無限やら夢幻やらに対抗まで可能なスキル。

名前?……うん、決めてない。


その2
グレイフィアさんとは普通に夫婦です。
というか腹立つレベルでイチャつく事多し。

そしてスキル持ち。


『相手の持つ幸運に対して相応の不運を押し付けるスキル』

名の通りです。
まんまその通りです。

例えは、グレイフィアさんにダメージを与えた事を幸運とするなら、その分の不運が相手に降り掛かる的な。

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