風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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一誠の強みであると同時に弱味でもある。

安心院さん曰く、進化の阻害の原因


約束への執着

 結婚を賭けたゲームに勝つ為、翌日から学校を休んで修行へと旅立つ朱乃を見送る事しか出来ない一誠は、その日からセクハラ行動が一切止まった。

 

 

「……」

 

「ど、どうしたんだアイツ? 今日一回もゲス行為をしてないぞ?」

 

「風邪か? 何かずっとボーッとしてるが……」

 

 

 制服チェックをしてもセクハラしようとせず、黙々淡々と機械の様に行う姿は、彼を知る学園の生徒達からしたら不気味でしか無く、また調子を狂わせるものである訳で……。

 

 

「……………」

 

「シャーペン持ったまま固まってるぞアイツ……」

 

「マジでどうしたんだし。安心院さんは今日休みだから聞けないし……」

 

 

 女子も男子も、まるで未確認の生命体を見てるかの如く、ボーッとした顔をする一誠を遠巻きに眺めるのであった。

 

 

 

 さて、そんな心此処に在らず状態の少年こと兵藤一誠だが、その理由は当然朱乃絡みだ。

 

 

「大丈夫かな……朱乃ねーちゃんは」

 

 

 結局ボーッしたままで放課後を迎えた一誠は、風紀委員室に一人籠ってひたすらに朱乃を心配しまくっていた。

 朱乃に説得されたから矛を収めたものの、そして朱乃自身が決して弱いとなんて思ってないものの、それでもやっぱり心配なのに変わりは無く、彼女の母親である朱璃は『私は心配してないわ。一誠君が傍に居てくれるんですもの』と十全に一誠を信頼してるので割りとのほほんとしているので、実質心配してるのは一誠だけだった。

 

 とはいえ、もし負けたら相手の悪魔男にリアスの他に朱乃や女性陣がという話に関してだけは朱璃も良い顔はしてなかった訳で、もし父親のバラキエルが知ったら悪魔と堕天使の不可侵的関係に亀裂が入ることまず間違いない。

 

 

「……」

 

 

 悪魔と堕天使が仲違いして殺し合いになろうが、一誠にしてみればどうでも良い。

 バラキエルや朱乃……悪魔としては転生した椿姫が無事でさえいれば他がどうなろうと、たとえ美少女悪魔だ堕天使だろうと勝手に死んでれば良い。

 

 だから、今回のこのふざけた話でもしリアス達が負け、ふざけた話に朱乃が巻き込まれでもすれば――

 

 

「………………。冥界ってどうやって行くんだっけ」

 

 

 確実に一誠は激情に駆られた殺戮マシーンにでも変貌するだろう。

 鬱陶しいだとか、別に朱乃は異性としては意識なんざしちゃいないだとか大言壮語を吐いてる一誠だが、その実、自分を自分と認めてくれた大切な人の一人である朱乃はそれこそ自分がゲスになろうが、ゴミクズ人間と罵られようが守ると誓い、その為だけに血反吐を吐く鍛練を積み重ねてきたのだ。

 

 

「散々デカい口叩いといて負けましたなんてほざいてみろ……ヘラヘラと避けてきてやったが、今度ばかりはそのままぶっ殺してやる」

 

 

 故に一誠は久方振りにマジと書いて本気になっていた。

 それこそ、なじみの言うとおり『進化の阻害』となっている原因である事を自覚した上で、朱乃の為にその異常性を剥き出しにするからこそ、一誠の強みであり……最悪な弱味でもあったとしてもだ。

 

 

「もっと、もっと……力を……!」

 

 

 だったら普段からチャラポランしてるなという突っ込みは、恐らく誰も出来ないだろう。

 

 

 

 

 一誠が有事に備え、その異常性を増幅させているその頃、ライザー・フェニックスとのレーティングゲームに勝利する為の修行を行う事にしたリアス達一行は、グレモリー家が所有する自然の山々に囲まれた別荘に訪れ、その力を磨かんと精を出していた。

 

 

「ま、前より強くなったわね朱乃……」

 

「……。これでも一番私が弱いのですけどね……」

 

 

 さて、守るだ守るだの何やかんやで一誠から過保護にされていてる朱乃だが、実の所その実力はある程度高い。

 具体的に云えば、リアスとやりあって勝ったり、赤龍帝の凛と素手でやり合ったり出来たり、戦車の小猫と真正面から力比べして勝ったり、騎士の祐斗にスピードに勝ったり等々……全ての駒の特性を兼ね備える女王としての実力は文句無くあるのだ。

 

 というか、比較対象があの人外なのがそもそも間違いなのかもしれないが……。

 

 

「あ、朱乃ってボクシングみたいな戦い方も出来るのね……。

し、知らなかったわ」

 

「これでも小さい頃は一誠君と一緒に鍛えてましたから」

 

 

 朱乃は決して弱くは無いのだ。

 少なくとも現状の仲間達を全員相手取っても優位に戦える程には。

 だが、フルメンバー状態のライザー含めた下僕達を全員相手取って勝てると思うほど、朱乃は自信家じゃないだけなのだ。

 

 

「リアス、こうなってしまったからには私も全力を出します。

私とて負けて慰みものにはなりたくありませんし、そうなったと決まった瞬間、一誠君が起こすだろう行動を止められる自信もありませんから」

 

「それは勿論よ。けど、もし負けたら彼は何をするつもりなの?」

 

「……………。まず私をそういう状況にさせた本人……つまりライザー・フェニックスを一族ごと根絶やしにした後、アナタを躊躇無く八つ裂きにしてしまうかと……」

 

「え"?」

 

 

 修行も区切りが付き、休憩するリアスに朱乃が真面目な顔で話すそれにリアスは固まってしまう。

 昔から散々朱乃から一誠という存在についてチラホラ教えられてきて、ある程度は知っている。

 しかしそれは流石に言い過ぎなのでは無いのかと思う程度に一誠の事を知らないので、突拍子の無い朱乃の言葉にちょっと疑ってしまう。

 

 

「それは流石に言い過ぎじゃない朱乃? そりゃあ朱乃にしてみれば大好きな彼かもしれないけど、ライザー達を殺すってのは――」

 

「…………」

 

「……………。いえ、やっぱり何でもないわ。

ええ、負けたら殺される覚悟で力を付けないとライザーには勝てないわ……ほんと」

 

 

 しかし朱乃の無言の瞳に、本気さを伺えたリアスは直ぐに思考を切り替えながらやや神妙に頷く。

 普段はヘラヘラ笑ってた一誠の見せた昨日の殺意は、只の人間が放つにはあまりにも強大だった事を考えれば、もしかしたらもしかするかもしれないとリアスは感じたのだ。

 

 

「……。必死とはいえ、朱乃達をを巻き込んだのは本当に間違いだったわね……」

 

 

 故に負けたら死ぬという心意気を搭載したリアスは、休憩は終わりとばかりに立ち上がると、これまで以上に修行に没頭する。

 …………。朱乃の後ろになんやかんやで居続ける凛の弟から失った信頼を回復させるためにも……。

 

 

「ところで凛達は……」

 

「あの子達なら大丈夫ですわ。

…………祐斗君と小猫ちゃんとアーシアちゃんは一誠君を見返すために集中している様ですし、凛ちゃんも一誠君の信用をなんとかしたいた必死です」

 

「そう……。でも、その……ホントあの三人は凛の事が好きよね。

最近は妙な疎外感すら感じる気がするくらいに」

 

「…………。それは、気のせいだと私も思いたいです」

 

 リアスは最近感じる妙な疎外感を押し込め、巻き込んでしまった贖罪の為にも朱乃と切磋琢磨しようと気合いを入れ直すのだった。

 

 

「更にところでなんだけど……その着ている学校のジャージに、何で兵藤くんの名前の刺繍がされてるのかしら?」

 

「一誠くんが予備にと私にくれたので……」

 

「だ、だからやけに機嫌がよかったの……納得」

 

 

 その一誠が物凄い近くにいる事に気付かず……。

 

 

 

 

 

 

 心配って態度が表に出過ぎたせいなのか、様子を見に来たらしい椿姫ちゃんに俺は無理矢理外へと連れ出され、そのまま流されるかの如く椿姫ちゃんに見送られながら転移用の魔方陣にぶちこまれた。

 そして来たのは……。

 

 

「え、一誠くん……?」

 

 

 修行中の朱乃ねーちゃんとグレモリー先輩達の居る山っぽい場所だった。

 

 

「何でここに? というかどうやって……」

 

 

 既に夕方でそろそろ日が暮れる寸前なのだが、ずっと修行をしてたと思われる朱乃ねーちゃんが驚いた様な顔して近寄って来たのだが、そのすぐ近くに居たグレモリー先輩の姿を見て昨日の事を思い出した俺は、そのまま回れ右して帰ろうかと思った。

 

 しかしその前に朱乃ねーちゃんに腕を掴まれてしまい、逃走は叶わぬ願いとなってしまう。

 

 

「いや、気になるならウジウジしてないで見に行けって……」

 

「誰に? まさか安心院さん……」

 

「いや、椿姫ちゃん」

 

「え、ソーナの女王が?」

 

「ま、はい……転移の魔法にぶちこまれて」

 

 

 椿姫ちゃんの名前が出た瞬間、ねーちゃんもグレモリー先輩も驚いた顔をするが、まさか風紀委員室に入るや否や『早く行ってきなさい』と言うとは思わなかったんだよ俺も。

 

 

「邪魔になるし今すぐ帰るよ。例の奴等に見つかるとダルいし」

 

「別に邪魔とは思わないわよ。リアスだって……」

 

「え、えぇ……それはもう。

ただ、小猫と祐斗とアーシアと凛に出くわしたら穏便に済まないのは同意するけど」

 

 

 よくわからんが、別行動で修行してるらしく……今俺が居る場所にはねーちゃんとグレモリー先輩の二人だけだった。

 俺としては顔なんて見たいとも思わない奴等だし、合流した時に顔を合わせるくらいならこのまま帰る方がグレモリー先輩とねーちゃんに迷惑掛けずに済むと思う。

 

 

「昨日はどうもすいませんでした。部外者なのにしゃしゃり出てしまいまして……」

 

「い、いえいえこちらこそ朱乃を巻き込んじゃって……ホントに」

 

 

 取り敢えず、先の事云々抜かして昨日の事をグレモリー先輩に謝る。

 負けたら……まあ、多分アレになるかもしれないけど、まだそうと決まっても無い段階でギャーギャー喚いた時点で悪いのは俺だしね。

 グレモリー先輩は慌てた顔しながら何度も首を横に振ってからしてかなり気にしてた感じっぽいし、この事だけは謝らないと駄目だしね。

 

 

「じゃあ、俺帰りますから……頑張って下さいね」

 

「あ、う、うん……」

 

 

 只、負けたとしたら、俺自身がどうなるか分からなくなるのだけは変え無いけどな。

 だって勝てると踏んだからグレモリー先輩はそんな賭けに出たんだろ? もし負けましたで朱乃ねーちゃんが巻き込まれたなら……。

 

 

「これ、俺の独り言ですから気にしなくても良いですけど、もし負けてねーちゃんがその悪魔男とアレになりましたなんてなったら…………多分、アンタでも許さない」

 

 

 俺はもう……テメーの人生代償にしてでも朱乃ねーちゃんだけを、ソイツ等ぶっ殺して連れ出してやる。

 

 

「う……」

 

「一誠君、今それを言っちゃ駄目よ」

 

 

 俺の独り言にグレモリー先輩の目が泳ぎ、朱乃ねーちゃんが咎めようと俺に注意の言葉を口にするが、これだけはいくらねーちゃんでも聞けない。

 

 

「分かってるよ朱乃ねーちゃん。

別に俺はねーちゃんの親でも無ければ、恋人でも無いし、ましてや悪魔の下僕でも無いからこんな事ほざける権利も資格も無いのも分かってるよ」

 

 

 そう、所詮これは俺のエゴでしか無い。

 そんなの、あの時過負荷(マイナス)に目覚めてから解ってた事さ。

 けど……けどな。

 

 

「でも朱乃ねーちゃんは大切なんだ。

ねーちゃんと朱璃さんの事情もあり、そして俺がどうしようも無く弱かったから、悪魔という後ろ楯が必要で、それがグレモリー一族っていう悪魔の中じゃまともなタイプと知って俺は何も思わないことにしたんだ。

けど、ゲームの景品とばかりにねーちゃんの尊厳が弄ばれるって知った今、黙ってる事なんて出来るわけが無い」

 

 

 弱いから、俺が弱いせいで、後ろ楯になれないからこんな事になったとするなら、それは結局俺のせい……。

 

 

「だからもし、ねーちゃんが後ろ楯の悪魔によって危ないことに巻き込まれるとするなら……」

 

 

 ならどうするか? 簡単だ。

 

 

「俺は、化け物になってしまおうが進化を止めない。

悪魔だろうが、堕天使だろうが、天使だろうが、妖怪だろうが、閻魔だろうが神だろうが何だろうが! ソイツ等まとめて黙らせられる程に強くなって、ねーちゃんとの約束を必ず守る」

 

 

 後ろ楯すら必要なくなる力を得て、ねーちゃんの弾除けになってやるまでだ。

 

 

「ですから、頼むから勝ってくださいよ先輩。

アンタは良い悪魔さんだってのは、ねーちゃんを見てれば分かるんですから」

 

「…………」

 

「一誠くん……」

 

 

 それが間違ってるとしても、師匠の理念から外れてしまっていようとも……。

 

 

「………。とまぁ、此処まで全部只の冗談として、マジで頑張んないと、その婚約破棄したいって悪魔野郎より先に先輩のおっぱいをもにゅもにゅしちゃいまっせ? ふへへへへ!」

 

「え、う、うん……?」

 

「ここに来て浮気発言するんだ? へー?」

 

「いやこれも軽いジョークなんだけどね?

あ、やめて……! ビリビリの刑は勘弁してくれ!」

 

 

 俺はねーちゃんとのこの約束だけは破りたくは無いんだ。

 

 

 

「それより『姉貴様。』とその取り巻きのやる気はあるんですか? 何か居ないみたいですけど」

 

「あ、うん……あると思うけど、その……凛はともかくとして祐斗と小猫とアーシアは多分凛の為に頑張るんじゃないかしら……」

 

「でしょうね。アレ等はどうもグレモリー先輩の為ってよりは『姉貴様。』の為に動いてる様にしか見えませんしね。

まったく、誰にでも好かれる『素晴らしい』姉様で何よりですわ」

 

「その事でリアスは、最近疎外感を感じるみたいなのよ」

 

「は? おいおい、あの三人は何か勘違いしてねーか? 何時から姉様は王様になったんだ?」

 

 

終わり




補足

マイルドとはいえ、ベリーハードモードのリアスさん的ポジに押し込まれつつあったりするリアスさん。

ただ、朱乃さんが居るのでまだあんな悲惨な事にはなりませんです。


その2
自覚してる上で行動してる一誠。

すべては弱かったらという卑下精神が刺激されてるが故にですね。

ましてや、狂った環境の中、自分の事を一誠として接してくれた人達の内でも長く一緒に居た朱乃ねーちゃんですから、その心境はある意味歪みまくりです。

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