風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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巡回という訳で更新。

今回は色々と始まります。


参加資格の無い戦闘校舎
激怒


 職権濫用してセクハラしようとすれば失敗するという、概ね普通な日常を送る兵藤一誠は、相変わらず姉である凛との関係を改善するつもりは無いままだった。

 

 それに対して凛の味方側から目の敵にされる事も多々あるけど、一誠はそんな連中に対して無視を決め込む事でスルーし、しつこいようなら言葉遣いを悪くあしらったりしていた。

 故にソイツ等がどうなろうと関係ないと割りきっていたし、正直な所……若干ショックだけどリアスに婚約者が居たとしても行き着く先は『残念だな』で終わらせるつもりだった。

 

 

「グレモリー先輩に婚約者が居たってのにはビックリだし、その婚約に不服で、破棄する為に何かをしようとしている事にもファンとしては安心しました……」

 

 

 しかるに、只今一誠君は来ることの無いオカルト研究部の部室に赴き、半分が凛関連で歓迎しませんな目をしているのも無視で、笑顔を浮かべながら、ファンであると公言する紅髪の美少女に向かって……普通ならありえない言葉をダンプカー衝突事故の如くぶつけていた。

 

 

「悪魔のゲームに負けたら大人しく結婚なのは別にどうでも良いのですよ。

が、何でその中に朱乃ねーちゃんまで巻き込まれてるんですかね……その相手の男のお相手的な意味でよ」

 

「そ、それは向こうが提示した条件で――」

 

「テメー嘗めてんのか? あ?

有り体に云えば、相手の悪魔男の性処理係に何で朱乃ねーちゃんが含まれてんだだボケ。しかも勝てるかわかりません? そのゲームの前にテメーを殺してやろうか? あーゴラ!?」

 

 

 何時もなら鼻伸ばして『でへへ、グレモリー先輩!』とバカ丸出し態度を示す筈の一誠が、縮こまるリアス・グレモリーに対して、笑顔から一変させた、割りと本気の殺意と輩丸出しの形相口調を向けている件は、恐らく一誠に何があったからこんな事になってるんだと大半は思うだろう。

 

 

「い、一誠君駄目よ、そんな言葉遣いは――」

 

「ねーちゃんは黙っててくれ。寧ろキレそうな線を何とか繋げられてるだけまだ俺は冷静だからよ」

 

 

 そう、朱乃の貞操が危ないという話を聞いたからこそこんな事になっていると知らなければ……だ。

 

 

「勝ったら婚約破棄で、負けたらアンタ含めた下僕の女全員が相手の情婦宜しくだと? それを出されて勝てる見込みも無い癖に飲んだ? 流石に俺暴れたくなるんですけど? つーか一発殺して良いんですか? あ、良いんですね?」

 

「ちょ、ちょ……そ、それはやめて」

 

「やめてじゃねーんだよクソボケが! テメーの一族は慈愛のグレモリーって自称してたから下僕になっても問題ねーとバラキエルのおっさんと話し合って反対しなかったんだぞ!? それが、勝てる見込みも皆無なのを知ってて、部下を巻き込んで婚約破棄の為のゲームをやるだぁ? ぶち殺すぞゴラ! つーか、バラキエルのおっさんが知ったらサーゼクス・ルシファーに直談判する事ぐらい察しろや!」

 

 

 リアス・グレモリーの抱える家同士の勝手な婚約騒動について、相手方のライザーという悪魔が来て散々揉めに揉めた挙げ句決まったのが『婚約破棄か結婚かを決めるレーティングゲーム』だった。

 一誠にしてみればそこまではまだ許容範囲内であり、精々頑張ってくれと他人事の様にまだ流せた話だった。

 

 しかし蓋を開けてみれば相手のライザーなる男は下僕を全部女で固める程の筋金入り且つ、もしリアスが負けたらリアスだけでは無く、男である木場祐斗以外の下僕達までその男のモノになるという条件を知った上で受けたことが何よりも我慢できなかった。

 

 何せそれは、もし負けたら朱乃が何処の馬の骨とも知らん男に色々されてしまうからに他ならないのだから。

 

 

「やべぇよ、頭やら何やら沸騰しそうで、今すぐこの邪魔な旧校舎を更地にでもしてやりてぇよ……!」

 

「あ、う……」

 

「あ、あの一誠? 私達は負けるつもりなんて……」

 

「は? はぁ? 百パーセント勝てるのか? 確実にその何たらってのをぶちのめせるのかよ?」

 

「だ、だからその為に明日からしゅぎょーを……」

 

「リミット10日でか? は、何かい、1日で1年分の修行が出来る謎部屋にでも籠るのか? なら納得してやるぜ?」

 

「い、いや……そんなお部屋無いけど……」

 

「ほほぅ、じゃあ10日で確実に勝てるんだな? 言ったなテメー?」

 

「う……」

 

 

 リアスも凛もかなり予想外というか、徹底的に朱乃に降りかかる良からぬ事に対して敏感過ぎて既に鬼みたいな形相の一誠の言葉に言葉を詰まらせてしまう。

 

 

「そ、それは……わからないけど――」

 

「わかりません。自信はございません。………………何でそんな状況の癖しやがってそんな条件を飲んでくれたの?」

 

「そ、それはどうしてもライザーとは結婚したくなくて……つい」

 

「つい……ほう、ついって言葉は便利だなぁ? ついそうしてしまったとほざけば流せるんだもんなぁ?」

 

 

 オロオロしつつも心なしか嬉しそうだったりする朱乃を隣にソファにふてぶてしく腰かけてテーブルに両足を乗せての一誠の言葉に、凛とリアスは言葉を返せずに居た。

 

 特にリアスに至っては、あのちゃらんぽらんの一誠がまさか此処まで激怒するとは思わなかった事もあって、そこまで大事にされてる朱乃がほんの少し自分の求めるものと重なって羨ましくも思ってしまい、凛に至っては最早涙目だった。

 

 

「都合の良いときだけ朱乃先輩が大事ですと言われましてもね……」

 

「そうだね、普段は他の女性にセクハラしておきながら虫の良い……」

 

「リンさんの事は無視なのに……」

 

「あ?」

 

 

 しかし、そんな一誠の態度が物凄く気に食わない、もしくは納得できないと思う凛側の三人が、我慢できずにといった様子でボソリと呟いた瞬間、リアスと凛はギョッとし、一誠は血走ったその目を部室の端に居た三人へと向けられる。

 

 

「あ? 今何て言った?」

 

 

 正直此処で凛関連の戯れ言を言われたら、その時点で誰だろうと病院送りにしてしまう程に線がキレかかってた一誠は、敢えて聞こえなかったフリをして三人を睨み付ける。

 するとアーシア、祐斗、小猫の三人も負けじと行儀悪く座る一誠を睨むと、口々に言い返した。

 

 

「聞こえなかったならもう一度言います。これは私達の問題であって、部外者のアナタには何の関係もありません」

 

「勿論僕達は負けるつもりも無いよ」

 

「……。戦えない私と違って、兵藤さんの思っている以上に皆さんはお強いんです」

 

 

 気に食わないからこその三人のハッキリした意見に、凛とリアスがあわあわとし、朱乃も朱乃で『あ、まずい』といった表情で隣の一誠を見つめる。

 すると案の定……いや――

 

 

「はっはっはっはっはっはっ……! じゃあ部外者ごときの俺が今からテメー等を半殺しにしようとしても余裕で返り討ちにしてくれるんだな?」

 

 

 線が完全にぶちギレ、その精神のあり方を示すかの様に髪を真っ赤に染め上げながら、一誠は指をボキボキと鳴らしながら立ち上がった。

 

 

「やめて一誠君!」

 

「わ、私が浅はかだったのは謝るから!」

 

「む、無責任な事を言ったのも謝る!」

 

 

 それに対して本気で殺りかねないと朱乃とリアスと凛が、慌てて一誠を取り押さえようと躍起になる。

 

 

「やってみれるものならやってみてください。どれほどアナタが強いか知りませんけど、私達は負けませんから」

 

「一度君とは戦ってみたかったしね……ちょうど良い」

 

「どんなに暴力をふるわれても、私だって負けませんから……!」

 

 

 売り言葉に買い言葉。

 一誠の言葉に対してムッとした三人も啖呵をきってしまいつつ、目が完全にヤバイ一誠に身構える。

 

 

「やめなさい三人とも!」

 

「そ、そうだよ! 一誠と戦っても何にもならないよ!」

 

「一誠君も言い過ぎよ!」

 

 

 怒りを糧に全身のリミッターを完全に外す技術、乱神モードとなる一誠の圧力が洒落になってないとリアスも凛も朱乃も全力で双方に訴えかけまくる。

 特に凛は内心、自分という異物のせいで本来は信頼し合える仲間となる三人と一誠がここまで仲違いしてしまった事に罪悪感で泣きたくなってしまっていた。

 

 

「怒ってくれたのは嬉しいけど、私だって負けるつもりは無いのよ? それでも信じられない?」

 

「そ、そうじゃなくて、勝てる見込みも無いのに勢い任せでやると言ったのが……」

 

「私がリアスの立場だったら同じ事を言ってたわ。だから落ち着いて……ね?」

 

「ぅ……お、おう……」

 

 

 そして極めつけは、朱乃の説得だけは聞き入れるというこの状況。

 リアスと自分に離れるように促した朱乃が、怒り狂う一誠を後ろから抱き締めながら優しく言葉を紡げば、それまで感情に呼応するかの様に染め上がっていた真っ赤な髪が元の茶髪へと戻り、バツの悪そうな顔をする一誠を見せられただけで凛は死にたくもなってしまう訳で……。

 

 

「………………。勝手な事言ってすいません……出て行きます」

 

「え、あ、い、いえいえ……」

 

「「「………」」」

 

 

 気まずそうにリアスへと頭を下げてからトボトボとお腹を空かせた野良犬の様な哀愁漂う背を見せながら部室を出て行くのをただただ見送るだけしか出来なかった凛は、はぁ……とため息を吐いた朱乃に対し、モヤモヤとした気持ちを抱くのだった。

 

 

「部長、一足早く帰っても宜しいでしょうか?」

 

「え、えぇ……是非とも彼に付いてあげて」

 

 

 部室を出ていった一誠の後を追うつもりか、リアスに許可を貰った朱乃が一足早く部室を後にし、やっと一触即発の空気が緩和した事にリアスは大袈裟にも思えるため息を吐きながら疲れたようにソファに座り直す。

 

 

「あそこまで激怒する彼を見るのは初めてだったわ……」

 

「部長……」

 

「そうよね。いくら結婚したくないからってアナタ達を巻き込んだ条件を飲むなんてどうかしてたわ……」

 

 

 今になって浅はかだったと反省するリアスに凛が何とも言えない表情をしながら、微妙に納得できない顔の三人へと視線を向ける。

 

 

「駄目だよ三人とも……。一誠と戦おうなんて……」

 

「……。分かってますけど、自分の言った事に間違いがあるなんて思ってません」

 

「塔城さんの言った通り、普段の彼は他の女性に対して不誠実な事ばかりするし、それが都合悪くなると一方的に部長を責め立てるなんて、道理が通ってないと僕も思う」

 

「リンさんに暴言も仰ってましたし……」

 

 

 注意をする凛に対して、三人は納得出来ない表情のまま自分は間違ってないと言い張ると、凛はこれ以上責められずに押し黙ってしまう。

 

 

「私が一誠も認めるくらいに強いところを見せてればこんな事にはならなかったんだよね……」

 

「ち、違います! 凛先輩は悪くないです!」

 

「そうさ! 僕達だって強いって認められてないし、そもそも知ろうともしない彼にだって問題が……!」

 

「……」

 

 

 塞ぎ込む凛に小猫が胸元に顔を埋めて抱きつきながら首を横に振り、それを若干恨めしそうに見つめながら小猫に続く祐斗と、そもそも戦闘員でない事に劣等感を抱くアーシアは凛のせいじゃないと頑なに否定する。

 どこまでも三人は凛が大好き……だからこそ、凛を蔑ろにする者が許せないのだ。

 

 

「絶対に勝ちます。凛先輩をライザー・フェニックスなんかに渡したくない」

 

「当たり前さ。何をしてでも絶対に勝つよ……部長の為にも」

 

「………。私も戦えるようになります……!」

 

「……………。あ、うん」

 

 

 抱き付いてきた小猫の頭を撫で撫でとしながら複雑そうにする凛は、確かに嘘偽りやズルも無しに三人から好意を向けられていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 お門違いなのはわかってるし、あのウザい三人組に言われた通りに虫の良い話だってのも自覚してる。

 しかしそれでも、朱乃ねーちゃんがゲームの景品扱いされてるのがどうしても許せないと思ったんだ。

 

 

「………。部活は良いのかよ?」

 

「先に上がらせて貰ったから平気よ」

 

 

 旧校舎を出て、風紀委員室に戻った俺は、机の上に置いてあった『先に帰ってるから精々頑張りたまえ』というなじみからのメモに目を通してからボーッと椅子に座って天井を眺めていた。

 

 それは、一足早く帰る事になった朱乃ねーちゃんが風紀委員室に来てからも変わらずにだ。

 

 

「普段は鼻の下を伸ばしてるリアスにまであそこまで食って掛かったのには驚いたわ」

 

「……。自分でもそれについて今更に驚いてる所さ。

普段は女子のスカートの丈のチェックに下心を感じてるようなバカなのに、都合の悪い時になって吠える……奴等に指摘されたのは癪だが、まんまその通りで笑えねぇぜ」

 

 

 だからこそ一瞬でもマジでぶっ飛ばしてやろうと思ってしまった姉貴様のシンパ共の言葉が頭から離れず、自分のさっきまでやってた事に矛盾を感じてイライラする。

 

 

「でも約束したんだ。ねーちゃんに降りかかる全ての理不尽を吹き飛ばすってよ……それが例え矛盾してようが、これだけは忘れたことないんだよ俺は……」

 

「…………」

 

 

 ねーちゃんが今どんな顔をしてるのかは、天井の模様を一点見してる俺には窺い知れない――いや、顔を合わせられないけど、約束だけは一度も忘れたことは無い事だけはねーちゃんに解って欲しいと俺は独り言の様に呟いてしまうのは、多分卑怯なんだろう。

 

 

「ん、天井なんか見てないで、こっちに来なさいな」

 

「…………」

 

 

 来もしないのに設置してる、学園長室や生徒会室以上に良いソファに腰かけたねーちゃんの呼び声を期待してたのはやはり卑怯なんだろう。

 

 

「ん、ほらおいで?」

 

「………」

 

 

 ノロノロとその言葉を待ってたとばかりにねーちゃんの隣に座るのは卑怯で間違いないんだろう。

 ポンポンと膝を叩くねーちゃんの笑顔を期待してたのは絶対に卑怯であるだろう。

 

 

「あらあら、今日の一誠君は素直ね?」

 

「別に……して貰わなくて誰かに頼めば――」

 

「嘘嘘、うふふ……私がやりたくて一誠君に頼んだだけだからね?」

 

「………」

 

 

 膝枕して貰い、不貞腐れた態度にも拘わらず頭を撫でて貰う事を期待したのは只の卑怯者でしかない。

 

 

「私が違う男の人のモノになるかもしれないという話に怒ってくれてありがとう……。嬉しかったわ……」

 

「ん……」

 

「浮気者なのに……だから嫌いになれずに、ずっと大好きで居られる。

ズルいけど……それでも一誠君の事が好き……」

 

 

 根は変わらない、本来の子供っぽい笑顔を見せて貰ってる事自体が虫の良い話なんだろし、やはり卑怯なのかもしれない。

 

 

「ん……また、口でのちゅーしちゃったね? えへへ……♪」

 

「……。おっさんにぶち殺されるのは俺だな……」

 

 

 けど、いくら卑怯だ虫の良い野郎だと言われても、この約束だけは絶対に破らない。

 破りたくないんだ……。

 




補足

虫の良い野郎だという自覚はしてるけど、それでも人身御供みたいな話を受けた事だけはどうしても納得した無かったが故にこうなりました。

まあ、マジな話……もしそうなったら殺戮上等の文字を背に刺繍された長ラン装備の一誠&バラキエルさんがマジでマジしちゃうからなー……仕方ないね。


その2
朱乃ねーちゃんはかわゆい……だろ?

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