風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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去年ぶり……もはや需要は無いだろうが……うん。


ストレス

 癪に触る相手ってのはどうしても存在する。

 嫌な奴だと思われるかも知れないが、俺はそんな奴の近くに好き好んで居ようと思わないし、ソイツを肯定する奴とも友達になりたいとは思わない。

 

 なので姉とやらが、この前偶然出会ったシスターと仲良くやってて、変な事件に巻き込まれたとしても知らんし興味も無い。

 

 その事件の背後に堕天使の存在があったとしても、バラキエルのおっさんとは十中八九無関係なんだから余計にね。

 

 

「よくもまぁ、風紀委員の管轄内で余計な真似をしてくれたね」

 

 

 だというのに、俺は今……その無関係な筈の事件のど真ん中に突撃していた。

 

 

「い、一誠……」

 

「な、何故キミが……来ないって言ってたじゃないか」

 

「………。今更……」

 

 

 同じ様な格好をしたキモいカルト集団。

 それを統率する黒い翼を持つ堕天使数匹。

 そして祭り上げられているの様に教会ホールな祭壇に横たわる例のシスターさん。

 そして、ソイツ等と主の許可無く相対してる例の鬱陶しい自称姉とその取り巻き共。

 

 な、単なる人間の俺には無関係極まりないだろ? だと云うのに俺は此処に居る。

 何故かって? ふん、仕方ねーだろ? だって俺は……

 

 

「風紀委員長の権限により、アンタ等を今から殺戮する。だから黙ってさっさと迅速に殺戮されてくれや」

 

 

 衰退した風紀委員を先代から受け継いだ……現風紀委員長なんだからよ!

 

 

「カラワーナ、ミッテルト、ドーナシーク! あの人間を拘束しなさい!」

 

 

 そんな俺の啖呵に対し、只のバカな人間だとまだ思ってるご様子の堕天使集団の……恐らくリーダー格のスゲー格好の女が、部下っぽい三匹に俺を拘束しろと若干焦りながら指示を飛ばす。

 多分だが、乗り込んできたあの三人が思ってた以上に強く、そこにやって来た俺を人質に使って形勢逆転でも狙おうって魂胆なんだろうが……甘い。

 

 

「俺、そこそこ修羅場潜ってるつもりなんだなこれが」

 

「「「ぐばっ!?」」」

 

「なっ……!?」

 

 

 飛びかかってきた三匹に対し、偶々拾った丁度良いサイズの木の棒を腰辺で持ちながら地を蹴り、見えてない様子の三匹の間を通り過ぎ様にそのがら空きだった胴に叩き込む。

 

 抜刀の真似事……とでも云うべきか、三匹の下級堕天使は血を吐きながらその場に崩れ落ちるのを見たリーダー格の堕天使は大層驚いた顔だった。

 

 

「ば、バカな! た、単なる人間風情が三人を……」

 

「ふん、典型的な見下しタイプか。

残念がら……下級堕天使ごときじゃアチラの三名は当然として、俺は殺れないな」

 

「がっ!?」

 

 

 勝手に驚いて隙だらけのリーダー格に肉薄し、そのまま顔面を躊躇せずにその顎をかち上げるアッパーをぶちかましてやる。

 見切れないのか、まるで格闘ゲームの練習モードの棒立ちしてるキャラみたいに簡単に当たり、リーダー格は派手に真上へと吹っ飛び、天井に頭が突き刺さって首から下がブラブラという間抜けな絵を見せてくれた。

 

 

「……。意識飛ばしたか。笑える動画に投稿したくなる画だぜ」

 

 

 その間約二十秒。

 そこで血をぶちまけながら気絶してる三匹といい、天井に頭突っ込んだまま気絶してるリーダー格といい、まさか人間にここまでしてやられるとは思いもしなかっただろうが……昔朱璃さんと朱乃ねーちゃんを襲ってきたクソ共と比べたら、俺にしてみれば全然弱い。

 あのスーツ着たおっさん以外は皆女だが……基本的に俺はバラキエルのおっさん以外の堕天使はどうでも良いし、今回の事は完全に奴等が悪いんだ。

 遠慮も躊躇もしないでぶちのめすってもんさ。

 

 

「い、一誠……その……」

 

 

 さてと……後は騒ぎを聞き付けたグレモリー先輩と朱乃ねーちゃんが来て始末をする筈だし、俺は風紀委員として街の風紀を守れた事で満足して帰ろうと踵を返したその時だった。

 

 確かはぐれエクソシスト……だったか? このカルト集団みたいな格好をしてる連中をぶちのめし終えていた自称姉が帰ろうとする俺に話し掛けてきた。

 

 

「………。なに?」

 

 

 ぶっちゃけ無視でも良かったが、その横に引っ付いてる二名が返事しないと文句を言いそうなツラしてたので、仕方なく返事だけはしておく。

 ちなにみ……あのシスターは何をされたのか知らないが、昏睡状態ではあるものの息はしてたので放置する。

 

 

「その、あ、ありがとう……来てくれて」

 

「「………」」

 

 

 で、何を言いたくてわざわざ忙しい俺を呼び止めたのかと思ったら、言われても全く嬉しくもない一言をオドオドしながら言っており、その横の取り巻きは無言で『変な事を言ったら怒る』ってツラだった。

 

 ……………。

 

 

「風紀委員の仕事で来たつもりなんでね、アンタに礼を言って貰える必要はありませんな」

 

「ぁ……う、うん」

 

「「……」」

 

 

 当たり障りの無い対応で取り敢えず返したつもりなんだが、この自称姉はそれがお気に召さないのか、引きちぎりたくなるアホ毛をしゅんと垂れさせながらテンションを下げ、案の定それを見た取り巻きの金髪野郎と白髪のガキが責める様な目を向けてきたが、全部無視してやったよ。

 

 相手にするだけ無駄だからな。

 

 

 

 一誠が助けに来てくれた……私はそう思いたいから、あっという間に堕天使達を無力化して帰ろうとした一誠にお礼を言ったんだけど……やっぱり上手く行かないよね。

 

 

「……。やっぱり嫌いですあの人」

 

「そ、そんな事言わないで小猫ちゃん。私の事は良いんだから……」

 

「……。何でそこまで……やっぱり弟だから?」

 

「うん、弟と思える資格は私に無いけど……」

 

 

 本当ならもっと仲良くなる筈の小猫ちゃんと木場君は一誠を嫌ってしまっている。

 私が存在しなければこんな事にはならないのに……二人は知らないで。

 

 

「う……うー……ん……こ、ここは?」

 

「っ!? あ、アーシアちゃん!」

 

「ふぇ……り、リンさん?」

 

 

 そしてアーシアちゃんとの関係も……殆ど関わる事無く終わってしまった。

 

 

「た、助けてくれてありがとうございますリンさん。

あ、あの……それでそちらのお二人は? も、もしかしてそちらも悪魔さん……?」

 

 

 これからどうすれば良いのか……。

 私には解らなかった。

 

 

 

 

 例の下級堕天使の件から数日。

 朱乃ねーちゃんの話に依れば、あのシスターさんはすっかり自称姉に懐いた様で、何と悪魔に転生したらしい。

 何でも身寄りが無く、このまま帰っても何をされるか分かったものじゃないからとか何とからしいが、俺には興味の無い話だ。

 

 自称姉と仲良くしたければすれば良いんだ……俺は無関係の所でな。

 だというのによ……。

 

 

「あ、あの……どうしてリンさんを避けるんですか? 姉弟なのに……」

 

「………………………」

 

 

 どいつもこいつも……うざってぇな。

 

 

「血の繋がった家族なのに……」

 

「………………」

 

 

 グレモリー先輩の計らいか何か知らねーが、自称姉と同じクラスに転校してきて数日経ったある日、急にシスターさんに呼び出されたと思ったら、案の定同じ様な事を言われた俺は、どうでも良いくらいに目の前の金髪女に興味が失せてしまった。

 

 

「それにお一人で暮らすのだって、それじゃあ寂し――」

 

「そんなつまんない理由でわざわざ呼び出したのかキミは?」

 

「え?」

 

 

 くだらねぇ、あーくっだらねぇ。

 どいつもこいつも自称姉が可哀想だなんだと鬱陶しい。

 いい加減キレたくもなってくるぜこれじゃあよ。

 

 

「つ、つまらないって……」

 

「そのままの意味だよ。

アレと仲良くすることが正しいと思ってるのかどうか知らないし、ハッキリ言うけど、一々うぜーんだよクソボケ」

 

「う……!?」

 

 

 やれ仲良くしろ。

 やれ避けてるお前が悪い。

 姉が可哀想だ……。

 もう聞き飽きてんだよ此方は。

 

 

「アレと仲良くなりたいならどうぞキミ達だけでやってろ。俺の関係ないところで一生な」

 

「そ、そんな……」

 

 

 あまりにも頭に血が昇っちまったせいで、あの金髪女がどんなツラをしてたかなんて覚えちゃいないが、少なくとも今後関わりたいとは思わない人種として俺の中で区分けしてやる。

 それでもしつこい様なら、俺の名前を聞いただけでその場でゲロぶちまける程の恐怖を植え付けてやる……。

 

 そう思いながら、俺はさっさと金髪女に背を向け、何処でも良いから去った。

 カッとなった思考を冷ますには、視界に入れるだけで逆効果だからな……クソが。

 つーかなじみの奴が野暮用とやらで学校に来てなくて良かったぜ……ホント。

 

 

「あー……ムカムカする」

 

「ムカムカしたら私を呼び出すんですか?」

 

 

 いっそ校舎の壁でも粉砕してやりたくなるストレスに苛まれた俺がやって来たのは、自分のベストスポットである風紀委員室。

 先々代の委員長が学園長を脅して確保した風紀委員室は、元々応接室だったのを改造したものなので、高いソファーやらクーラーは当然の如く完備されており、ただ一人残った風紀委員である俺の引きこもりスポットして実に重宝している。

 

 しかし、今日は引きこもるだけでは全くムカムカが収まら無かったので、知り合い相手に愚痴でもぶちまけようと朱乃ねーちゃん――――は、部活で忙しそうなので呼ぶのを止め、代わりにといったら失礼だけど、最近結構仲良くなった生徒会副会長の椿姫ちゃんを適当な理由をでっち上げて、生徒会から拐い、こうして風紀委員室に招いてみた。

 

 結果、これがまた結構なストレス緩和になり、ムカムカはまだ収まらないものの禿げそうなストレスが自分の中で消えていったのだ。

 

 

「姫島さんにバレたら怒られるわよ?」

 

「いやー……まあ、覚悟はしてるさ。

それにそのリスクと天秤に掛けてもこうする事に傾いちゃってね」

 

「何があったのよ……?」

 

「…………。ま、簡単に言えば鬱陶しい蝿に苛まれてた……といいますか」

 

「はい?」

 

 

 ひょんな事で出会い、何の縁か最近になって再会した椿姫ちゃんなんだが流石朱乃ねーちゃんと同い年ってのもあるのか、かなり気安く話せて心が癒える。

 勿論、タダで愚痴を聞いて貰うのは悪いので、お茶だの何だのを出しておもてなしも忘れないぜ。

 

 

「ふぅ、だいぶムカムカも取れてきたぜ。

やっぱ信用できる相手と話すだけでも違うもんだな」

 

「それは何よりだけど……。

ただの愚痴に付き合わせたなんて言ったら会長に怒られるわよ?」

 

 

 例の寝起きちゅー事件からは敬語口調が殆ど取れてる椿姫ちゃんにあのつまんない生徒会長に怒られると忠告される。

 

 確かに単なる愚痴に付き合わせるだけで、仕事してた椿姫ちゃんを拐って行ったのはマズかったかもしれないが……まあ、連中に怒られても俺は何も気にしないので問題はない――と言ったら呆れられてしまった。

 

 

「会長相手にアナタらしいというか……。

でも何と無く分かるわ。

血の繋がりがあるからって無条件に仲が良いという訳じゃないもの」

 

 

 そう言ってお茶をゆっくり飲む椿姫ちゃんの目は何処か遠くを見ている様だった。

 

 

「部外者と云えど、アルジェントさんの言い分は間違いでは無いのかもしれない。

けれど、それでも無理な相手と血の繋がりを理由に仲良くしろ……というのは私個人頷けないわね」

 

「………。大人だなぁ椿姫ちゃんは」

 

「あなたよりお姉さん! ですからね……ふふん」

 

 

 この子も聞けば自分の持ってしまった常人とは異なる力のせいで身内から疎んじられた。

 けど俺とは違って椿姫ちゃんはある程度その思い出に区切りを付けている。

 

 ちょっとドヤ顔で年上アピールしてる辺り、アレだけど……俺はそれでも椿姫ちゃんの在り方は凄いと素直に思えてなら無い。

 

 

「お姉さんらしく、膝枕してあげても良いわよ一誠くん?」

 

「朱乃ねーちゃんにバレたらレベルの違うヤバさがあるから……くぅ! 気になるけど遠慮するぜ!」

 

 

 だからこそ俺は椿姫ちゃんを信用している。

 決して寝起きの所をキスされてドギマギしてる訳じゃない。




補足

そういえば椿姫ちゃんがヒロインという珍しきパターンなんですよね。
しかも寝起きとはいえちゅーしてるという……。


元士郎君のヒロインがカテレアさん並みのレアだぜ……多分。


その2
アーシアさんはやはりヒロインにもなりませんでした……ていうか、フラグも立つ前に折れて修復不能。


その3

鳥猫さんの皆の関係を考えると、風紀委員長は真逆の関係を結んでますね。

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