風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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事後……冷静になった椿姫さんは、色々と困惑する一誠と対談する。

まあ、前回の続きです。
※加筆と目につく箇所の修正をしました。
……ちょっとシリアスになったかも。



可愛いは正義さ……だから許すby一誠

 一体何をされたのか、最初は分からなかった。

 風紀委員の仕事が今日はなくて、だからと言ってなじみと帰るとねーちゃんが不機嫌になっちまうかもだから、ねーちゃんの部活が終わるまで風紀室でスヤスヤとおっぱいハーレムでうひょひょの夢を見てたのに……。

 

 覚えてる限りじゃ色々な美少女や美女と芸者遊びで『よいではないか~ げへへ』と召し物の帯を引っ張ろうと追いかけ回して、さぁ捕まえた! ……って所で意識が現実に戻ったんだが……。

 

 

「………………」

 

「ぅ……ご、ごめんなさい」

 

「………。いや」

 

 

 待っていたのは、昔一度会ったっきりな女の子の顔のアップからの……へっ、まさかの凄いアレなアレだった。

 アレってのはアレなんだけど……まさかこの副会長さんにそんな事をされるとは思ってなかったってか……一体何処であんなの覚えてたんだっつーか。

 

 

「副会長さんは、一体何処であんなやり方を覚えてたんすか? あれじゃエロ本の――」

 

「い、言わないでください! よくよく考えたら私が前に呼んだ本は色々と段階が越えてた気がしましたし、完全に間違えてたって今になって気付いたんですから!」

 

「あ……はい」

 

 

 30分近くマウント取られたのと、思考がバーストしてたせいでロクな抵抗もせず、まるで犯されるがごとくされていた俺の物凄い気になる質問に副会長さんは恐らく真っ赤な顔で、それを隠すために俺から背を向けながら恥ずかしそうに小さくなっていた。

 

 

「しょ、少女漫画だと今まで思ってて、それを実証しようとしただけなんです。

た、確かに内容がアッチ向きで変だなと思いましたけど……」

 

「少女漫画っぽい……? あぁ、それ多分レディコミじゃないすか?

確かにアレって一見すれば単なる少女漫画っぽいけど、エロい描写が多いというか、それしかありませんからねアレ」

 

 

 つまり、副会長さんは普通の少女漫画だと思って購読したレディコミの内容を鵜呑みにしてしまったと……簡単に言えばそういう事らしく、うー、うー……と唸りながらソファに体育座りしてる副会長さんに……俺は同情すべきなのか、茶化して空気を濁してあげるべきか非常に迷ってしまう。

 というかここ数日で立て続けに二人の女の子とやらかした自分は果たしてマジなモテ期なのか? とすらちょっと想像と色々と違うモテ期に悩みそうである。

 

 

「取り敢えずこれ書いたんで……」

 

「は、はい……お手数掛けました」

 

 

 人間……いやこの人は元・人間か? まあ、どっちにしろ人間ってのは思い切ると中々に後先考えない事があるとはよく聞くもんだが、まさかこんな……えっと真面目さんがあぁもアレっつーかなぁ?

 ……。じゃなくて、取り敢えず副会長さんが来ただろう理由の――んーと、各委員会の人数と名前を書く欄に委員長である俺のみの名前と、生徒会に対しての要望と意見を書き、まだ顔まで隠して体育座りしてる副会長さんに伝えるも、やっぱり自分の行いに今更ながら恥ずかしくなったのか、その場から全く動こうとしてくれない。

 

 

「……。戻んないとヤバいんじゃないですか? これって生徒会の仕事として回ってたんでしょ?

たかが各委員会に書類渡すのに、もうかれこれ一時間は使ってそうというか、確実に使ってるというか……」

 

「…………」

 

 

 夕日の日差しがソファ座る俺と副会長さんの背中を射し……何とも言えない気分をより引き立たせる中、俺は早く戻った方がと促してみるも副会長さんは動かない。

 別に今更あの連中に何を思われようともどうとも思わんからそれでも良いんだが、俺のせいで副会長さん――椿姫ちゃんが不真面目のレッテルを貼られてしまうのは嫌だ。

 

 なので、取り敢えずさっきについては後でゆっくり話し合うとして、今は小さく体育座りしてる彼女を無理にでも連れていこうと、乱れたワイシャツや制服を着直し、俯くその腕を掴んで立たせようとする。

 

 

「ほら、せめて生徒会室まで適当な理由つけて送りますから……」

 

「は、はい……っ……あ、あれ?」

 

 

 椿姫ちゃんも流石にこのままじゃいけないと思ってたらしく、俺の言葉に弱々しく頷きながら立とうとするも、自分でも分かってない顔をしながらブルブルと身体を震わせて立てないでいる。

 

 

「あ、あれ……お、おかしいな……? た、立てません……」

 

「足でも痺れんすか?」

 

「い、いえそんなことは……うっ……力が入らないです……」

 

「………っと」

 

 

 自分の身体の変調に気付いてない様子で、何と無か立ち上がろうとしても駄目で、フラフラと力なく倒れそうになるのを見て、こりゃ危ないと判断した俺は力が抜けてる椿姫ちゃんの身体を支えると、そのままおんぶの要領で彼女を背負う事にしたのと同時に、ひょっとして身体に力が入らんのってさっきのアレのせいじゃないのかと予想してしまう。

 

 いやだって……何度か不自然にビクンビクンしてたしこの人。

 

 

「え、ぁ……」

 

「大人しくしててくださいね。

『副会長さんが貧血でぶっ倒れそうになってたからこうして連れてきました』なんて、別に行きたくも無いし好き好んで顔を合わせたくも無い、真面目でクソつまんねー連中に言い訳するんだから」

 

「ぅ……ご迷惑掛けます」

 

 

 俺の言いたいことが分かったのか、いきなりおんぶされてアタフタしていた椿姫ちゃんは大人しく、消え入りそうな声で謝る。

 まあ、確かに今回のこれって正直俺が被害者と言って訴えても勝てそうだが、俺は別に被害者とは思わない。

 なぜか? そんなもん決まってる。

 

 

「可愛い女の子に迷惑掛けられても、男ってのは迷惑とは全く思わんアホな性質持ちなんすよ。

だから別に謝る必要はねーっすぜ」

 

「っ……はい……」

 

「ん……それで結構。んじゃ行きまっせ椿姫ちゃんよ、一誠タクシーの料金制は『可愛い女の子は一律0円』でございまーす!」

 

 

 俺は結局、何処までカッコつけても現金な馬鹿ってことさ。

 

 

「にしても椿姫ちゃんておっぱい結構大きいよね。

背中に朱乃ねーちゃんくらいの主張が――」

 

「お、降ります!」

 

「あーウソウソ! ちょっと思っただけだから!」

 

「うー……ばか……」

 

 

 

 やらかしてしまった。

 人生で一番というべき大失敗だ。

 よくよく考えてみれば、あの漫画はおかしかったのにそれを鵜呑みにしてしまい、あまつさえ実践してしまった。

 寝惚けてる一誠くんの隙を突き、組伏せて何度も何度も私は――

 

 

「あ、あの……怒ってないんですか?」

 

「何が?」

 

「その、さっき寝ている一誠くんに私がしたことに……」

 

「いや別に? まあ、ビックリはしたけど……いろんな意味で」

 

 

 それなのに一誠くんはあっけらかんとしながらアッサリ私のやった事を許してくれる。

 普通なら疎遠確実な事を了承もしないでやったのに、一誠くんは只ヘラヘラ笑いながら『いいよ』と許してくれる。

 

 

「寧ろ可愛い女の子にあんなヤベェのされたんだぜ? 怒る理由が無さすぎるぜ?」

 

「う、で、でも……」

 

「何だよ、自分でしたことに自信が無いのかい? それじゃあして貰った俺は実に残念なんだけど」

 

「そ、そんなことは……!」

 

「だろ? だったら気にすんなよ。……。まあ、確かに朱乃ねーちゃんにバレたら怖いけど」

 

 

 気にするな。

 ただそれだけを私に笑いながらいってくれる。

 背負って貰ってる為、互いの表情は見えないが……私は不謹慎にもそれが嬉しかった。

 だからなのか、何時もなら絶対に言わないだろう台詞をその背中に身体を預け、首に周りに回していた腕にほんの少しだけ力を込めながら言った。

 

 

「ありがとう……。正直、あんな形だけどやって良かったと思う。

安心院さんと姫島さんに追い付けた気がするし……」

 

「ハッ……ねーちゃんの時も似たような事言ってたな。

うーん、なじみに関しては単にアイツのおふざけだと思うが、こうしてハーレムっぽくなってみると色々と大変だな……」

 

「ん……そうね。でも多分、私は諦めないと思うわ。

例えアナタがどちらかと添い遂げても……絶対に」

 

「お、おぅ……」

 

 

 やっぱりどう考えても私にとってはあの時の思い出が強すぎた。

 それだけに、彼が例え姫島さんか安心院さんのどちらか一人と……となっても多分諦めないと思う。

 

 

「デートより前に……しちゃったね?」

 

「あー……確かに、段階という名の階段を5段抜かししたかもね」

 

 

 ホント……軽い女よね私って。

 でもそれで良いの……少しでも良いから一緒にずっと居れればそれで。

 

 

「……。失礼しまーす、おたくの所の副会長さん急患でーす」

 

「む、兵藤君……に椿姫?」

 

「な、おい! 何で副会長がお前におんぶなんてされてんだよ!」

 

「だから言ったろ、聞こえなかったのか? 副会長さんが具合悪そうにしてたからわざわざ運んでやったんだよ。

だからテメー等は『ありがとうございます風紀委員長様!』と俺を崇めろ馬鹿野郎」

 

 

 でも、ちょっとだけ私の仲間と仲良くして欲しいかも。

 来るや否やニヤニヤと半笑いの煽り口調で悪役じみた事を言う一誠くんに背負われながら、私はポツンと思う。

 

 

「具合が悪い? 椿姫がですか?」

 

「そーっすわ、立つことも出来なそうでしたんで連れてきたんですわ」

 

「そ、そんなこと言ってお前、副会長をおんぶして……背中に感じる…………………くっ!」

 

「あぁん? 副会長さんをおんぶすることによって背中におっぱいの感触がするのを楽しんでるかとでも聞きてぇのか? んなもん勿論yesだが? それがどうした? 文句あんのかい色男? ひっひっひっ!」

 

「テ、テメェ……!」

 

 

 ……。言われた通り具合の悪そうなフリと寝ているフリで顔を伏せてる状態で聞き耳を立ててると、匙くん達と言い合いしてるのが聞こえてしまい、本当は私のせいなのにと罪悪感が沸いてしまう。

 

 

「だ、だったら早く下ろしてやれよ! 副会長が可哀想じゃねーか! いくらオメーみてーなのを副会長が――」

 

「匙! ……。副会長がご迷惑を掛けましたね兵藤君……。

椿姫は此処に寝かせてあげてください」

 

「か、会長ぉ……」

 

「ういーっす」

 

 

 でも一誠くんが『そうした方があと腐れなく終われる。どうせ俺はアンタ以外の生徒会は真面目こいたつまんねー集団としか見てねーし、連中も俺の行動に顔をしかめてるんだろ? だったら『俺らしい』やり口で誤魔化した方が早い』と言ってたので、私はただ従うままに寝ているフリをしている私を簡易的ソファに寝かせる。

 

 

「確かに顔が若干赤いし、それに熱っぽいですね」

 

 

 寝てるフリをしている私を仲間が心配そうに見ていると思うと、やっぱり悪い気がしてしまうし、会長の手が私の……熱じゃない理由で色々と熱くなってる顔に触れてくる。

 

 

「んじゃ俺はこの辺で。後はアンタ等に任せますわ」

 

「はい……わざわざありがとうございます」

 

「……。ちっ、早く帰れ」

 

 

 やっぱり会長達は私が彼に好意を寄せている事に良い思いはしていないのか。

 同性の匙くんは特に一誠くんに敵意があるように見えるし、他の皆も良い顔はしていない。

 

 一誠くんは『俺の行動が原因ですからねぇ。まあ、俺も俺でセクハラの甲斐が無さそうな真面目軍団なんか眼中にありませんが……ケケッ』なんて言ってたしお互い様といえばそれまでだが。

 

 

「はーいはい、今をトキメク生徒会様には逆らいませんっての。

副会長さんにお大事にと伝えといてください、んじゃ『また今度とか。』」

 

 

 こういう会話を聞くと、ちょっぴり複雑だなと私は思う。

 それに――――

 

 

「去りましたか……。

で、どういう事かしら椿姫? 具合なんて悪くないんでしょう?」

 

「う……」

 

 

 仮病なんて使っても……会長達にはお見通しだった。

 一誠くんが去った後、寝ているフリをしてる私に低い声と鋭い視線を向けた会長の声に私は咄嗟に起き上がり、そして皆に謝る。

 

 

「す、すいません……! それが、その……」

 

 

 主や仲間の目は誤魔化せない。

 それを今更ながら再認識させられた私は、呆れた表情になる会長や、複雑そうにしてる他の皆にただ謝る。

 

 

「まったく、一時間も帰ってこないからもしやとは思ってたけど……」

 

「も、申し訳ありません……あれだけ偉そうに言っておきながら私は――」

 

「いいえ良いわ。私にはまだ分からないけど、想い人の方を目の前にした気持ちくらい少しはわかるつもりだし、多少はと大目に見てあげる」

 

 

 少しだけ表情を和らげながら言ってくれた会長に私はホッとする。

 

 

「庇って貰うなんてやるじゃないの椿姫? 姫島さんやら安心院さんとライバルは多いけど、脈が無いわけじゃないわね?」

 

「え……えぇ……ま、まぁ……」

 

 

 そしてそこからは意外な事に、会長も女の子なのか妙に茶化すような口調でからかってくる。

 よく見れば他の皆もだ……いや、匙くんは複雑そうだが。

 

 

「何をしてたのか、主として是非聞きたいわね? 他の皆もそうは思わないかしら?」

 

『聞きたいです!』

 

「い、いや……別に大した事は……」

 

 

 大した処か凄いことをしてました――とは流石に言えないので、二人きりでお話してました……とだけ言って誤魔化そうとする。

 けど……。

 

 

「副会長。ちょっと聞きたいんですけど」

 

「は、はい、何ですか匙くん?」

 

 

 取り敢えず今日の事は後でゆっくり話し合うことにして今は秘密に――という一誠くんとの共有した二人だけの秘密は……。

 

 

「ひょっとして兵藤と何かしました?

その……副会長の口の右横? に痣みたいな……」

 

「っ!?」

 

「む、確かにそうね……」

 

「まるで……物凄い激しいキスでもした痕みたいな……って、まさかねー!」

 

「そうですよ! それはいくらなんでも早すぎますもん!」

 

 

 その何気ない一言が私の心臓をこれでもかと鷲掴みにしてくる。

 

 

「…………ぅ」

 

『え、その反応ってまさか……』

 

「うー……」

 

『………』

 

 

 態度に出すな――そう思っても表情に出て言葉に詰まってしまった時点で遅いこんなに早くバレるなんて……もしかしたら一誠くんも危ないかもしれない。

 私の反応に色々と信じれないものを見るような、唖然とした顔をする仲間達にどう言い訳するべきか……私は脳細胞を焼き切る勢いで考えるも……そんなもの簡単に浮かばない非情な現実を嫌でも思い知ってしまう。

 

 

 

 そして……。

 

 

「ねぇ一誠くん、私怒らないから正直に言ってくれない? その口周りからして誰かと激しくよろしくやってたわよね? …………………だれと?」

 

「さ、さぁ? 今日はねーちゃんの部活が終わるまで風紀室で爆睡してハーレム王になってる夢を見てたからなぁ?

もしかして、持参してた『魔王少女☆レヴィタたん』の特製原寸大抱き枕に寝惚けてチュッチュしてたのかもね。

いやいや、だとしたらお恥ずかし――いいんっ!? 電気ビリビリー!?!?!?」

 

 

 朱乃が気付かない訳がなく、キッチリと付いていた口周りの痣についての尋問をされていた。

 

 

「誰とやったの……? ま、まさか真羅さんとっ!?」

 

「ちゃ、ちゃうわい!

魔王少女☆レヴィタたんと悪役ぶっ倒し、その後のご褒美の魔法でエロチックに誘惑してくるグレモリー先輩とか朱璃さんに優しく筆下ろしされる夢を見てただけだっつー――のほぉぉぉん!?!?」

 

「何で私がその中に入ってないのよ!」

 

「し、知るか! 文句言うなら夢の中の魔王少女に……あひぃぃぃ!?!?」

 

 

 一誠は朱乃と顔を合わせたその瞬間、刹那でバレた。

 一誠の近くに誰かが居たとまず匂いで判別し、更には口周りに若干の痣がある。

 本来なら幻実逃否(リアリティーエスケープ)というスキルでさっさと消してたのだが、鏡を見てなかったせいで間抜けにも一誠の周りに女性が居ると敏感に察知できる朱乃は大激怒だ。

 

 

「この前あんなにカッコつけてたのにもう浮気なんて信じられないわ! このっ、このぉっ!!」

 

 

 この前やっとキスをしたのに、一誠に膝枕して貰って寝て起きた後も安心院なじみに負けたくないからと、口処か嫌がる一誠の筋肉を麻痺させて動けなくなった所を全身くまなく痣だらけにしたのに……と、朱乃はドン引きしながら近くで見ていたリアス達の視線を物ともせず一誠に雷の巫女たる所以の力を存分にぶつけていた。

 

 

「ひぎぃぃっ!?」

 

 

 本当なら逃げるなり避けるなり反撃するなりしようと思えば出来る一誠だが、彼は決して逃げようとはせず、ただただ朱乃のごもっともな怒りを物理的に受け止めている。

 どちらにせよ一誠自身にやましいことは無い……とは言い難い事をしでかしたのは事実なのと、それが誰ととは本人の名誉と自分から提示した秘密にしようという約束の為に口は割れない。

 故に一誠は最早無駄だと分かってても最後まで全力で誤魔化しの言葉をやめない。

 

 

「だ、だから俺は……グレモリー先輩と……朱璃さんがダボダボ裸Yシャツ姿でご奉仕してくれる素敵な夢に寝惚けただけ……げふ」

 

「くっ……ま、まだそんな……」

 

「だ、だって事実だもの……く、くひぇひぇ……! 最高だったぜ? 何てったってグレモリーと朱璃さんのおっぱいを好きにし放題なんだぜ? 男のロマンスだらけの最高の夢――メェェェェン!?」

 

 

 庇う義理なんて無いが、他ならぬ数少ない友人……と一誠は思ってる椿姫との約束だ。

 言っても地獄、黙ってても地獄なら黙ってるほうが被害が自分だけで済む。

 フラフラになりながらもヘラヘラ笑ってわざと朱乃が怒りそうな見てもない夢を捏造しては、ちょっと半べそ――つまり『素』になりかけて朱乃から電撃を受け続ける一誠は……無駄に強情だった。

 

 

「あ、朱乃?

もうそろそろ止めてあげたら? その……いくら『頑丈』な兵藤君でも死んじゃうわよ……?」

 

「くっ……!」

 

 

 そんな二人の一方的な喧嘩を暫く眺めていたリアスは、そろそろ本気で一誠が危ないと泣きそうな顔の朱乃に物凄い遠慮がちに声を掛ける。

 痴話喧嘩の最中、然り気無く魔王少女だレヴィタアンだと言ってた事も地味に気になるし、何より見てて痛々しいことこの上ない。

 主であるリアスの制止声と、地面に転がってプスプスと煙を出してる一誠とを見てぐっと下唇を噛む朱乃は、渋々……そして抑えられない嫉妬の気持ちに嫌になりながら矛を納めて一応騒動の収束となった筈だった。

 

 

「う、うへへーい……。

グレモリー先輩あざっす――と言いたいんですけど、この状態になってる俺の目には先輩のすんばらしいおパンツが見え――おごぉ!?」

 

「こ、この期に及んで……な、何で……どうして私じゃなくリアスなのよ!!」

 

「だ、だってねーちゃんのなんて見たってしょうが――ぬふぇ!?」

 

「………」

 

 

 仰向けにひっくり返った一誠が近付いてたリアスのスカートの中を見て余計なコメントをしたせいで、また話が元に戻ってしまう。

 正直、元気があってよろしいと一誠に対して一定の評価をしていたリアスも庇い立てる気が一気に失せてしまったのは仕方無いとさえあった。

 

 

「兵藤君の夢の中の私って物凄い事してるのね……というか、朱乃が怒るのも無理無いわよこれじゃあ。

何でわざわざ本人の前で言うのかしら? マゾ?」

 

「……。副部長もそうですが、何で凛先輩もこの人が好きなんでしょうか……? 私にはわかりません……スケベだし」

 

「ちょっとスケベな方が兵藤さんは良いのかな……?

だったら僕も――あれ? そういえば兵藤さんは何処に……?」

 

 

 泣きながら一誠にビンタする朱乃を見ながら、彼女の怒りに同意してしまうリアス。

 何であんなチャランポランを朱乃や凛は好きなのかと理解できない小猫。

 

 そして自分もああなれば凛ともう少し仲良くなれるのでは無いのかと、キャラ転換を密かに悩む祐斗。

 

 同時刻、その凛がこの前知り合った金髪シスターであるアーシアという少女と再会し、密かに親睦を深めていた事なぞ一誠は知ろうともせず……ただただ幼馴染みと痴話喧嘩を続けるのであった。

 

 

「う……ぐ……う、うぇ……! い、いっせーくんのうわきものぉ……!」

 

「や、やば、やりすぎた……!」

 

「……。兵藤くん? アナタが朱乃と私以上に親しいのは理解してるけど、それを抜かしても女の子を泣かせるのはよくないわよ?」

 

「う……い、いや……すんません」

 

 

 それが朱乃を泣かせるのには十二分であるのは明白であり、とうとう完全に素に戻って泣き出してしまった朱乃を見て、今になって本気で焦る一誠にリアスが冷たい視線と共に非難する。

 まあ、端から見てれば朱乃という幼馴染みに好意を寄せられてるのに一誠は常に『おっぱいハーレムじゃーい!』と誰彼構わずセクハラ行動をしてるのだ……しかも今回に限ってはどうやら他の女とキス疑惑まで持たれてる。

 これじゃあ只の最低男と言われても何にも言い返せないし、一誠もうっと言葉に詰まらせていた。

 だが、リアスに続いてボソッと声に出した小猫に対しては――

 

 

「最低……」

 

「あ?」

 

「副部長も泣かせるし、凛先輩も悩ませるし……私から見たアナタは最低ですね」

 

「……………。……………………………。チッ、寸胴のクソガキが」

 

「は?」

 

 

 趣味じゃない相手には例え美少女でも割りと辛辣に返す。

 凛という姉を敬遠してるせいで、小猫はどうにも一誠が好かない。

 そして一誠はそれ含めて趣味じゃないので、言われるとイラッとしてつい返してしまう。

 

 

「ねーちゃんについては俺の落ち度だし認めるが、一々今この場に居もしねぇ姉貴を出すなよってか、そんなにあれが好きなら勝手にすりゃ良いだろ? 俺がアレと仲良しこよししないと気でも済まねぇのかお前は?」

 

 

 そしてこの時だけ見せる一誠の表情は何処までも冷徹で無関心と主張する感情を感じない目だった。

 

 

「………………。凛先輩は――」

 

「それがうぜぇってんだよクソガキ……と、ついでにそこの金髪色男。

テメーらがアレをどう思ってようが興味も関心も無いし、俺を巻き込むなよクソボケが」

 

「……っ!」

 

 

 普段はおちゃらけてふざけてるとしか思えない態度の一誠は、凛という姉の話となるとそれが一気にナリを潜め……ただただ冷徹で姉弟の感情すら皆無と主張する無表情となる。

 小猫と祐斗からすれば、何故そこまで凛を拒絶するのか理由を知ろうにも凛自身が濁していて分からないので、悔しそうに唇を噛み締めながら、抑えきれない怒りの目付きで一誠を睨むしかできない。

 

 

「……。はいはい、そこまでにしておきなさい。

祐斗も小猫も凛が大事なのはわかるけど、今は凛の話じゃないでしょう?」

 

「「っ……」」

 

「それに兵藤くんもよ。凛の事は別にして、朱乃をそうやって泣かせた事を小猫に指摘されて逆ギレしないの……わかる?」

 

「ぬ……はーい、グレモリー先輩に言われたら従うっきゃありませんね、すんません」

 

 

 姉弟間の仲違いっぷりは凛を見てて痛々しくすら思うほど分かってるリアスは、双方に注意して話をそこで中断させようと手を叩くと、小猫と祐斗はぐっと堪えるように俯き、一誠は再びヘラヘラ笑って平謝りをする。

 

 

「くすん……いっせーくんのうわきもの……すけべ、女好き……」

 

「……。ほら、責任持って朱乃を送りなさい。この二人には私から言っておくから」

 

「へい……わかりやした」

 

 

 凛と一誠……。リアス達にその理由は分からないが、凛を毛嫌い処か肉親感情すら持ってないような態度を示し、凛はそんな一誠とどうしても仲良くなりたいと健気に……そして見てて辛くなる程に色々と頑張ってる。

 

 一体何故こうまで二人は噛み合ってないのか……今はこの場に居ない凛を想いながら、朱乃を背負って帰っていく一誠の背中を眺めつつ小さくため息を吐くリアスなのであった。




補足

結局バレましたの巻。
一誠はそれでも誤魔化そうと必死こいてますが、もはやそれも意味がない領域ですね。

その2

凛さんは原作一誠みたいに補正が掛かってアーシアさんと親睦がどんどん深まってます。

ゆえにあの場に居ませんでした。


その3

魔王少女☆レヴィタたん原寸大抱き枕。

限定1点限りの超非売品……とは一誠は知らず、『ファンレターも沢山くれるし、人間で此処まで肯定してくれるのはキミだけだから特別にあげる☆』というファンレター返しと共に送られた抱き枕なのだが、一誠曰く


『割りと恥ずかしいけど、使ってみると物凄いしっくり来るんだよねこれ……』


と、愛用しちゃっており、安心院さんはそれを見てケタケタ笑ってます。


その4

一誠は過去の出来事はもうどうでも良いと思ってます。
ですが、周りに自然と味方を増やし、そしてその味方から凛さんについて非難されると割りとイラッとしてしまいます。

それが今一番なのが、小猫さんと祐斗きゅんであり二人を見てると『何もかも見限って出ていく前の両親や、それまで友達と思ってた、当時男の子みたいな格好してた元幼馴染み』を思い出して余計イライラする。

だから二人には辛辣な対応をしてしまう……って訳ですね。

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