風紀委員長一誠くんと幼馴染み朱乃ちゃん   作:超人類DX

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安心院さんから自分の初めてを。

朱乃ねーちゃんからは彼女自身の初めてを……

そして椿姫副会長は……


悩むお姉ちゃんと寂しくて思いきった副会長

 最近よく見慣れない連中をよく見る気がする。

 自称姉が連れてた金髪のシスターしかり、神父っぽい格好をした者達然り。

 どう見ても『日本人じゃごしゃりませぬ』な姿をした連中が多く見られる……とガキ共やら近所の人妻様から聞くのだが、その連中が特に変なことをしてるって訳でもないので気にする事も無い。

 

 そう思う筈なのにこの妙な胸騒ぎが止まらないのは何でだろうか? なじみに相談するべきなのか? ……いや、こんなしょうもない事でアイツを頼るのはどうかと思うし、俺もそろそろ師匠離れしないといかん。

 

 思ったこと、感じた違和感くらいテメーで処理できなくて何が男か……ってね。

 

 

「一誠~ なじみちゃんと遊んでくれよぉ~」

 

「遊ぶってなんだ? キャッチボールでもしろってか? それともお人形遊びか? どちらにせよ俺は今暇じゃねぇぜ」

 

「えぇ? 休み時間だってのにグラビア雑誌読んでニヤ付いてるのにかい?」

 

 

 恐らくなじみ自身は俺のこんな気分の何もかもをお見通しであるのは間違いない。

 だが、それについて突っ込んでこないということは『僕が出張る必要はないな』って意味で間違いない。

 だからこそすっかり転校生として定着した安心院なじみとして、嫌だって言ったのに隣の席に座り、休み時間のオアシスタイムを邪魔しておちょくってくるだけだと俺なりに考えつつ……。

 

 

「というより一誠は、昨日も一緒に僕と一緒のお風呂に入って、全身くまなく洗いっこしたのに、まだ満足できないのかよ~」

 

「よくもまぁそんな嘘がペラペラと出るなお前……。

なじみらしくねーっつーか…」

 

「「「「「イッセェェェェヤァ!!!」」」」」

 

「………。ほーらこうなった……」

 

 

 転校初日の挨拶で余計なことをぶちまけたせいで、余計周りから敵意を向けられ、今もまた捏造ぶちまけ・聞き耳立ててた野郎共の面倒極まりねぇ対応に追われるのであった。

 

 

「安心院さんとお風呂でだと!? テメェ、絶対それだけじゃねーだれろぉぉ!?」

 

「おいおい、呂律がおかしくなるまでキレんなよ……コイツの嘘だし今の」

 

「それでも一緒に住んでる時点で有罪じゃぁぁっ!!」

 

「……。チッ、キレる前にテメー等もヘタレてねーで女の子に話しかけりゃあ良いのに、それも出来ねぇくせに僻むなよバカ共が」

 

 

 あー……早く諸々のモヤモヤを解消して俺のおっぱいハーレムについての将来を考えんとなぁ……。

 なんてボンヤリ考えながら、殴りかかってきたクラスメートA君の拳を掴み、そのまま振り回してぶん投げてやるのであった。

 

 

 

 どうしよ……。

 私が先に出会ってしまったせいで、一誠がアーシアちゃんを全く気に止めてない……。

 

 

「うぅ、どうしよう……どうしよう……」

 

 

 私は一誠に嫌われてる。

 どうしようもなく嫌われてる。

 多分改善する事なく嫌われてる。

 でもそれは仕方無いんだ……私が一誠の持つべき全てを奪ってしまったから。

 

 だからせめて、一誠とこれから仲良くなり想いを寄せられる女の子との仲を上手く取り持ち、一誠の夢のハーレム王のお手伝いをする。

 心が引き裂かれるくらい辛いけど、せめてもの私が出来る償い……そう思ってたのに、現実は全て悪い方向に進んでしまってる。

 

 本来一誠と最初に出会う筈だったアーシアちゃんに一誠は『私と親しい』って理由で完全に警戒してて仲良くなる素振りが見えない。

 うぅん、それどころか一誠は朱乃先輩としか親しくしてないし、リアス部長には鼻を伸ばすもののそれ以上の進展は無い。

 しかもその最たるものは……。

 

 

「へぇ、朱乃ちゃんとキスねぇ?」

 

「む……姫島さんと一誠くんが……なんか悔しい」

 

「ふふん、一誠くんとならキスの一つや二つしておかないといけませんしね……ふふふ」

 

「………。頼むからその話を食堂のど真ん中でしないでくれ……。

野郎どころかお姉さまとねーちゃんを信仰してる女の子達からもさっきからエライ殺気をだね……」

 

 

 木場くんに惚れる筈の真羅先輩……そしてジャ◯プ漫画の登場キャラな筈の安心院さんがあぁして一誠と親しそうに……楽しそうにご飯を食べてるのが見える。

 ……。朱乃先輩が朝から妙に機嫌が良かった理由を知らされる形で私は離れた箇所で只見てるだけ。

 

 

「凜先輩、あの人がまた気になるんですか?」

 

「真羅先輩と、転校生の安心院さん……。

兵藤君って意外と隠れた知り合いが多いんだね」

 

「………。そ、そう……だね……うん……」

 

 

 そんな私と仲良くしてくれる後輩の小猫ちゃんと木場くんは、私の表情を察して慰める様に優しくしてくれる。

 この二人だって、本当は私なんかより一誠と仲良くなった方が良いのに……二人は私に優しくしてくれる。

 

 

「ご、ごめんね小猫ちゃんと木場くん。

せっかく私なんかを誘ってくれたのに」

 

「いやいや、弟の彼が気になるのは何時もの兵藤さんだしね、気にしなくても良いよ」

 

「ええ、凛先輩には悪いですけど私個人はあの人が好きませんし……」

 

 

 それどころか、私が一誠に余計なことして裏目に出たせいて一誠が悪役にされてしまっており、小猫ちゃんと木場くんは一誠に余り良い印象を抱いてない。

 

 

「こ、小猫ちゃん……」

 

 

 真ん中の席で男子達から嫉妬されてる一誠を『歓迎できない』表情で見ている小猫ちゃんは、そのまま小さく口を開く。

 

 

「分かってます、凛先輩はあの人が大切なのも、あの人に何を言われても凛先輩は私達に言えない『何か』から来る罪悪感があって何も言い返さないのも……」

 

 

 そう私に如何に私を親ってくれてるか良く分かってしまう言い方をする小猫ちゃんは、そこで一呼吸置き、多分情けない顔をしてるだろう私をジーッと見つめる。

 

 

「だからこそ私はあの人が嫌いなんです……。

お二人に何があったか何も知らない『部外者』かもしれませんが、私は凜先輩が好きです。

だから、どっちが悪いなんて関係無しに凜先輩の肩を持ちますので」

 

「僕もかな。前だって兵藤さんは彼に話し掛けたら無視されるか口汚く罵られてるしね。

聞いてて僕も気分は良くない」

 

「こ、小猫ちゃん……木場くん……」

 

 

 何があっても私の味方とハッキリ言い切る二人に、私は嬉しく思ってしまう反面、やっぱり罪悪感がふつふつと沸いて出てくる。

 私が一誠の持つべき力と、その主人公としての全てを奪って成り代わってしまった…それを正直に話せば二人も一誠を少しはわかってくれると思う事に……。

 それが言えないで、成り代わってしまった力で仲間入りして……。

 

 

「ありがとう。でも一誠はちゃんとお話すれば良いところが沢山あるってわかると思うよ……?」

 

「……。正直、それもまた気に入りませんね。

あれだけ好き勝手凛先輩に言ってるのに、その凛先輩にそこまで庇ってもらってる事が」

 

「同意だな。何故かモヤモヤするよ」

 

「あ、あはは……」

 

 

 私は卑怯だ……。

 二人にそんな事を言って貰える資格なんて本当は無いのに……。

 

 

 

 

 椿姫はちょっぴりだけ焦っていた。

 というのも、彼の師匠(?)のみならず幼馴染みの朱乃までもが一誠とキスを済ませていましたと聞かされたからだ。

 一誠の幼い頃から一緒である朱乃やなじみとは違って、自分はたった一度出会っただけ。

 故に二人と比べても圧倒的に強みがなく、更に言えば一誠的に自分は『セクハラしようとすると妙に尻込みしちゃう人』という認識をされてしまってるせいか、あの『寝ぼけ胸鷲掴まれ事件』以降、特に彼とはそういった事が無かった。

 

 いや、それこそ不謹慎な事なのだがと椿姫は思うが、二人と『そういう事をしました』と聞かされてしまった以上……やはりモヤモヤしてしまう。

 

 

「最近アナタの様子がおかしいなと思ってましたが、その……まさか椿姫は兵藤一誠の事を?」

 

「……。ええ、会長や聞いてる皆さんのご想像通りです」

 

 

 そんな椿姫は、昼休み朱乃から聞かされてからずっと抱えっぱなしのモヤモヤのまま放課後の生徒会活動に突入し、会長でかり主でもあるソーナから物凄い遠慮がちに一誠についてを問われていた。

 が、一誠の根底が昔の一誠のままと再確認してからは心の奥に隠していた気持ちを出すようになっていた椿姫は涼しい表情のまま淡々とソーナな生徒会メンバーが、固唾を飲む前でハッキリと言いきった。

 

 

「ま、まま、マジですか!? ふ、副会長があの兵藤って……」

 

「椿姫副会長の前でこんな事を言うのはアレですけど、な、何で兵藤君……?」

 

「この前から彼と楽しそうにお喋りしてたから、まさかなんて思ってたけど……」

 

「本当にそのまさかだったなんて……」

 

 

 ソーナの問いに即答した椿姫に対し、大袈裟に驚く匙と同意するように頷きながらざわめく他のメンバー

 彼等からすれば『女子生徒にセクハラしまくる超問題児』たる一誠なんてむしろ椿姫が嫌う一番のタイプなはずなのにも関わらず、蓋を開けてみればまさかの……だったのだ。

 

 正直に一誠に対して、普段の行いのせいであまり良い感情が無い生徒会としてはこんな事実にかなり複雑な心境だった。

 

 

「えっと、誰に想いを寄せるのは椿姫の自由だけど……良いの? その……彼って姫島さんや最近じゃあの安心院って女子生徒からも……」

 

「そ、そうっすよ! その時点で色々とアレっすよ!」

 

 

 同じ生徒会として、眷属として純粋にソーナ達は椿姫が心配だった。

 だからこそ余りお薦めできないな言い方で話し、ちょっとは冷静に考え直した方が良いのでは? と口々に先程がちょっと元気の無い椿姫に進言する。

 

 

「……。あのお二人は彼が幼い頃からの付き合いですからね。

私も幼い頃――まだ眷属になるもっと前に一度だけ会い、小さな事ですが助けて貰った事がありました」

 

「え……?」

 

「そ、そんな事が……」

 

「ええ、当時から彼――いえ、一誠くんはちょっとマセてましてね。

助けてくれたお礼をしたいと言った私に――『互いに大きくなっならデートしようぜ』なんて言いまして」

 

 

 そんな仲間達の意図をちゃんと察しながらも、それでも椿姫は『わかりました、忘れます』とは言わず、どうして一誠に拘るのかという理由を話し、その過去の出来事についてソーナ達は少々驚く。

 

 

「まあ、ですから……? 子供っぽいと思われますが、当時『色々と』諦めてた私にとっては安っぽくても嬉しかった――だからですかね?」

 

『…………』

 

 

 ただそれだけ。

 然れど当時の椿姫にとって、持っていた『力』によって疎んじられて心を閉ざしていた時に送られた『ませガキ』の安っぽい言葉は純粋に嬉しく、そして何よりも今までの人生の糧にしてきた、不思議な力を持つ少年の言葉。

 

 そんな少年が成長し、この駒王学園に入学し、壊滅状態の名ばかりの風紀委員長になった時は、驚いたしちょっと落胆もしてしまった。

 けれどひょんな事から彼と真正面に対話し、彼が一人でこの街に対してやってきた事を目の当たりにしてからは再びその気持ちに火が着いてしまった。

 

 

「馬鹿な女と思ってくれても構いませんし、軽蔑してくれても構いません。

私にとって彼は――兵藤一誠は紛れもなく初恋相手で、いくら周りに魅力的な女性に囲まれてようと、諦めたくない……ってだけですから。

大丈夫です……きちんと生徒会や悪魔としてメリハリは付けます」

 

『……………』

 

 

 だからこそ止めたくない。

 幼馴染みが居るからだとか、師匠とやらがいるからだとかの理由で諦めたくない。

 椿姫は緩やかに微笑みながらそれだけを言うと、何も言えずに居るソーナ達に頭を下げながら『各委員会に配布するこの書類を届けに行きますね』と締めてから背筋を伸ばし、妙に堂々と踵を返して生徒会室を出ていくよであった。

 

 

「ほ、ほんと意外ね。あの椿姫があそこまで言い切るなんて……」

 

「男って、ちょっとアウトローの方がモテるのか……? なら俺も――」

 

「そんな事したら生徒会をクビにするわよ匙?」

 

「そうだよ、匙くんはそのままが良いよ」

 

『うん、うん!』

 

「あ……うっす」

 

 

 

 

 

 

 あーぁ……言っちゃった。

 隠すつもりも無かったから別に良いんだけど、皆の前であんな事言うと、やっぱり恥ずかしいわね……。

 けれど言ってしまったものは仕方無いし、訂正するつもりだって無い。

 うん……私はやっぱりあの時の事をよっぽど大事に思ってしまってるみたいね。

 

 

「では3日後にお願いしますね?」

 

「了解しました副会長!」

 

 

 先程会長に言った通り、各委員会の委員長に提出して貰う書類を残り一つを除いて全て配布し終えた私は、無意識に最後にしていた委員会である風紀委員の活動拠点である旧応接室に向かうため、昼間のキスのお話について思い出しながら、ちょっとだけ悶々として歩く。

 

 

「キス……か」

 

 

 ソッと自分の唇を指でなぞり、ちょっとだけ胸の鼓動を早めながら旧応接室目指して足早に歩く。

 安心院なじみさんの時は目の前で見せられたからアレだったけど、姫島さんもした。

 

 幼い頃から互いを知り尽くしてる同士だし、姫島さんに至っては寧ろ今までしてなかった事に驚きだけど……それも今では意味の無い事だ。

 だってしたらしいし……。

 

 

「ハァ……私は単なる知り合いだからなぁ」

 

 

 正直、凄いモヤモヤする。

 安心院さんも姫島さんも魅力的な人で私は単に小うるさいだけの小娘。

 この前は一誠くんと一度のみならず何度でもデートしてもらうなんて言ったけど……それだけじゃあの二人に追い付けないわ。

 

 何のアドバンテージも持たない私には悔しいとしか思えず、ただひたすらに考えながら歩いていた私は遂に旧応接室前に来ており、扉の向こうから感じる人の気配にちょっとだけ緊張する。

 

 

「……ふぅ、失礼します」

 

 

 しかし入らないわけにはいかないし、こんな事で尻込みしてたらどんどんと置いていかれてしまうので、一つ深呼吸をして扉のノックして開ける。

 

 

「Zzz……」

 

「一誠、くん……?」

 

 

 中に入った私の目に映ったのは、ソファをベッド代わりにだらしない寝相で寝ていた一誠くんだった。

 そういえば今日は街のパトロールのシフトに入ってなくて暇だ……と昼休みの時にボソリと言ってたっけ。

 

 

「ハァ……何もないからってだらしない」

 

 

 しかしいくら此処が風紀委員の部屋だからといって、私物化して寝所に使うのはどうかと思う訳で、私は贔屓無しにスヤスヤ寝てる一誠くんを起こそうと持っていた書類をテーブルに置き、その横に腰を下ろす。

 

 

「ほら、起きてください。暇ならこの書類に記入して欲しいこと………が……」

 

 

 そのまま声でも掛けながら揺さぶろうと手を伸ばしたのだが、私の声と手はピタリと止まってしまった。

 

 

「……………寝てる?」

 

「Zzz……ぐふ、ぐふふ……」

 

「も……もしもーし……?」

 

「うひぇひぇ……」

 

 

 寝てる。

 声を掛けるだけなら、変にだらしなくスケベそうに顔を崩してるだけで無反応だ。

 そう……無反応なのだ今の一誠くんは。

 

 

「ね、寝てるのね?」

 

 

 その瞬間、私の中に人の事なぞ言えない『邪な感情』が産声をあげ、悪魔のように囁いた気がした。

 

 お前のスケベな想い人は寝ている。しかも声だけじゃ起きない。

 なら……。

 

 

「……。(ゴクリ)」

 

 

 チャンスだと。

 あれだけスケベな一誠くんに幻滅してたのに、その寝ている姿を見て私は邪な思考に走った。

 しかも、それにまんまと従っている……。

 ふ、ふふふ……私もやっぱり人の子だったようね。

 

 

「……固い」

 

「ん……んぅ……」

 

「昔からずっと強くなるために鍛えてたんだもんね……逞しい……」

 

 

 ほぼ本能のように、無防備に寝ている一誠くんの肩に触れ、よく鍛え・絞り込まれてる腕へと移動させた私はそのまま思ったことを独り言の様に呟きながら、首へ胸へ……お腹へとあの時の以降どれだけ自分を鍛えてきたのか想像できる程に完成されてる身体に触れ続ける。

 

 時折一誠くんは擽ったそうに身体を捩るが、起きることは無かった……一応簡易的ながら催眠魔法を掛けてるので余計に。

 だからこそ私は『このくらいならまだ大丈夫』と誤魔化すように自分に言い聞かせ、ペタペタとはしたなく一誠くんの身体に触れ続けていく内に段々頭がボーッとなっていく。

 

 

「変、ね……。

一誠くんに触れてると頭がボーッとするし、心なしか自分の下腹部が脈打ってるような……」

 

「んー……ん……」

 

 

 恥ずかしいような、でも心地良いような……とにかく前に寝惚けてた一誠くんに胸を思いきり掴まれた時と似たような感覚が身体の中を支配していくのを自覚しながら、私は熱くなった顔を冷ます事なく視線を眠っている一誠くんの顔……それも無防備になっている唇に向けられていた。

 

 

「…………。ちょっとだけ……なら」

 

 

 それは魔が差したと言うべきなのか。

 それとも元からそうしたいと既に思っていたのか……。

 恐らくどちらとも言えるだろう、その考えがボーッとした頭の中に指令され、私は掛けていた眼鏡を外し、スヤスヤと眠り続ける一誠くんの顔に自分の顔を近づかせていく。

 

 

「ちょっとだけ……ちょっとだけ……」

 

 

 普段なら絶対にこんな事は考えなかった。

 けど私は私なりに焦っていた……だから寝ていた一誠くんを見てチャンスだと思った。

 

 私も……一回だけでも良いからキスをと……。

 

 

「んー……」

 

「…………」

 

 

 一誠くんの顔が近付くにつれ、自分の胸の中が煩く騒ぐ。

 寝ている間だけど……でもやってみたい。

 そんな、はしたなく本能的で短絡的な思考に従って私は――

 

 

「…………んぁ?」

 

「…………!?」

 

 

 後数センチの所で、その思惑は台風にでも吹き飛ばされたかの様に消えてしまった。

 そう……パチンと目を開けた一誠くんと至近距離で目が合ってしまった事で。

 

 

「…………。え、なに?」

 

「あ……そ、その……!」

 

 

 まだ寝ぼけているのか、私を目の前にしてもボーッとした表情である一誠くんに私は一気にパニックとなってしまい、離れれば良いということも思考から消び、体勢そのままで言い訳をしようとする。

 けれど、こんな事をしておきながらこのタイミングで起きてしまった一誠くんに対して言い訳なんて思い付かず……そしてこれまた私は何を思ったのか……。

 

 

「え……こ、こういうこと!」

 

「はぇ? なに………んーっ!??!?」

 

 

 また気絶でもして貰おうと至近距離だった唇をそのまま……多分笑えるくらい下手くそに重ねた。

 

 

「な、に!? ちょ……ふみゅ!?」

 

「へ、下手くそでごめんなさい! 下手くそでごめんなさい! でも頑張りますから……んっ!!」

 

「な、なにが!? なんでっ!? 意味がわか……れっ!?」

 

「んっ、はっ……! お、お願いだから何も言わないで……! あ、後5分……!」

 

「ごっ!? ちょ、ちょっと副会長さん!? アンタ急に……れれ!? し、舌が……ほらへてひゃへれれれ!?」

 

「ん、ちゅ……は……ぁ……っん……!(た、確か漫画だとこうして舌をこうして……あ……い、一誠くんの舌……え、えへ……)」

 

 

 兵藤一誠……初めて寝込みを思いきり襲われた。

 しかもそれなりに知り合いの女の子に……しかも5分どころか20分も。

 

 

終わり




補足

凛さん介入によって、原作とは真逆にアーシアさんを『可愛い金髪シスターひゃほーい!』と思うことはあれど……『あぁ、お姉様と知り合いなら何とかすんだろ? 完璧お姉様が~』と、これから起こるだろう事件を知っても微妙にドライな態度だと思います。


その2
副会長……焦りの余りある意味安心院クラスのそれをやらかした。

寝込み襲い+密かに読んでたレディコミの知識鵜呑みでガチverですからね。
よかったな、ハーレムじゃないか一誠よ。

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