取り敢えずキャラ忘れがちなんでリハビリでやりました。
ねーちゃんと仲直り出来てから数日後。
ダミーファイルとパスの二重防壁を張ってた筈のお宝ファイルは全部破壊された。
そしてやんなくても良いと泣きながらお願いしたのに、俺の携帯はフィルターを掛けられ、健全なサイトしか閲覧が出来なくなってしまった。
これによってサイト限定配信の魔王少女☆レヴィアタンの更新がチェックできなくなっちまった――のだけは何とか回避出来たんだが、それでも人生に潤いが無くなってカッサカサになっちまった事には変わりなく、ほんのちょっぴり気分の重い毎日だった。
いっそ、フィルターが掛けられてないPC経由でやったろうかと思うが、家にはなじみが居るし……中々自分好みのライフワークを確立できねーし、更に朱乃ねーちゃんは……。
「お母さんも出掛けてるし、今日はとことんゆっくりできるね?」
「あー……だな」
よく分からんが、取り敢えずデートしろとエロコンテンツ祭りを全消去してからニコやかに命じてきた。
当然そんな朱乃ねーちゃんに逆らえるわけもなく、更に言えばガキの頃からデートと言う名前の単なるお出掛けに付き合ってきたし、抵抗感というものはなかった。
が、それでも俺はちょっとだけ疲れていた。
「彼女は何て言ってた?」
「え、あぁ……なじみなら俺のベッドを占拠して雑誌なんて読みながら『あ、そう。精々振り回させない事を祈っておくぜ』と無関心に言ってただけ」
「ふーん……?」
それは、俺の師匠である安心院なじみが表に出始め、そして俺の家に住み始めてから、あからさまに朱乃ねーちゃんが対抗意識を燃やしてるというか、前よりくっついてくる頻度が多くなったっていうか……。
取り敢えずねーちゃん自身が素に戻るのが多くなった。
「あ、ここ間違えてるわよ一誠くん」
「ん? おっと、スペルをミスってたわ。サンキュー」
だからこそのデートなんだろうが、根が出不精のめんどくさがりやの、引きこもり体質だってのも朱乃ねーちゃんはちゃんと把握してくれてる事が唯一の救いか……。
本日のデートは所謂『お家デート』という奴であった。
「……。と、こんなもんか?」
「どれどれ…………うん、これで正解だよ」
「よっしゃ終わったぁ!
ったく、連休だか知らんが、先公どもは余計な課題ばっか出しやがって」
無駄金は使わない、しかし二人きりで長い時間過ごせるからってのがねーちゃんの弁であり、付き合いの長さで俺が学校から出された課題をやんないこともちゃんと見抜いている朱乃ねーちゃんに命じられるがままにこうして朝っぱらから中々に多かった課題をやり終えた俺は、大きく身体を伸ばしながら畳の上に大の字で倒れる。
姫島家・朱乃ねーちゃんの部屋。
神社だったりするねーちゃん家は、純和風ってのが似合うくらいに和であり、そこに何だかんだで10年以上も入り浸って世話になってた俺としては、新鮮味なんてものは感じないものの、実家に居るような安心感があった。
故にねーちゃんの部屋も見慣れてるし、相変わらず女っ気がそんなに無い部屋だなというのが正直な感想だ。
まあ、言ったら何されるかわかんねーし言わんが。
「何か飲む?」
「んー……飲む」
課題も終わり、凝り固まった身体を伸ばしつつだらしなく寝っころがる俺の顔を覗きながら聞いてくるねーちゃんに飲むと頷く。
何だかんだで数時間使って朝からねーちゃんの監視付きで宿題やってたからな……ちと腹が減ってたりする訳で、ねーちゃんもそれを察してたのか頷く俺に微笑むと、お茶を用意するために部屋を出て行った後をボーッとしながら待機する。
部屋主がいないからなんて理由で物色は当然のことながら絶対にしない。
まず失礼に当たるし、それをやってもし変なもんでも発見しちゃったら、これからお茶とお茶菓子持って戻ってくるだろうねーちゃんにどんな顔すれば良いか分かんないしな。
だから俺はねーちゃんの部屋は絶対に物色しない。
決して昔出来心と悪戯心でこの部屋の隅に今も鎮座してる机の二番目の引き出しを開けたら、大量の写真――それも俺だけしか写ってない写真がありましたからとか、押し入れの中に俺を模した大量の……多分朱乃ねーちゃんお手製の人形がありましたからとかそんなんじゃない。
親しき仲にも礼儀あり――つまり至極正論な理由で俺は何もしないまま待ってるのさ。
そもそも、何の下着がお気に入りで見せてくるようなねーちゃんの箪笥なんて漁っても虚しいだけだからな……。
「お待たせ一誠くん」
「おーぅ、サンキュー……って、何でそんな格好してんだよ」
「えへ、一誠くんが来てくれてるし、折角だからと思って……似合ってない?」
そうこうしてる内に、何故か巫女服に着替えてたねーちゃんがニコニコしながら戻り、飲み慣れすぎて他のを飲むと味気なくすら感じるようなった好みの緑茶と、俺の胃袋に合わせて持ってきた多数のお茶菓子を楽しみつつ、俺の突っ込みに対して不安そうな眼差しを送るねーちゃんを眺める。
清潔感を感じる紅白装束……所謂巫女さん的それをねーちゃんはこの家柄の関係で政が何かがあれば袖を通しており、今日は俺が来たからとかよく分からん理由でわざわざ着替えて来たらしいのだが……。
「ガキの頃から見慣れてるからな……今更似合う似合わないとか無いだろ」
「むー……もう少し気の効いたコメントが欲しかったのに……」
似合う似合わないとだけ言われりゃあ、そりゃあ似合うと思ってる。だってガキの頃から見てたし。
が、今更『うおぉぉっ! 巫女服サイコー!』なんて大騒ぎ出来るかと言われたら微妙だ。
そのせいで巫女服もののエロDVDを勧められても微妙にしか感じられなくなっちまったしな……。
しかし朱乃ねーちゃんからすればそういう反応をすると不満そうだ。
「……。まあ、朱璃さんに似て板にはついたんじゃねーの?」
だから俺は取り敢えず当たり障りないコメントだけしておく。
似合ってないとは思ってないし、だからといって誉めちぎるのも気恥ずかしいしな。
するとねーちゃんは満足でもしてくれたのか、腹拵えを終えたそのタイミングでススス……と絹が擦れる音と共に俺の傍らに座ると、『あ』っと言う暇も無く腕を組ませてベタベタと引っ付き始める。
「お母さんに似てきた……か。
それじゃあ、あと少しで一誠くんの好みになれる?」
妙に甘えた声……そして口調。
課題をしてた時からその兆候はあったが、どうやら完全に『素』の性格になってるようなのが分かった。
ニコニコとただひたすらに笑顔を見せ、スリスリとすり寄る。
これでグレモリー先輩と並ぶ学園二大お姉様なんだから、学園の連中は全く人を見る目が無い。
「好みか……。いや、うーん……」
「むー……またそうやって曖昧に物を言おうとする!」
「い、いやだって……毎度毎度の事だけど、ねーちゃんのソレってやっぱ間違えてるとしか思えねぇし」
本来は寂しがりやで、人に……厳密に俺がそうさせたてしまった『依存心』があり、デリケートな性格だってのを誰も見抜けやしねぇ。
それが隠し通せてるねーちゃんが凄いのか、それとも単に騒いでる連中が上辺しか見てねーのか……。
どちらにせよ、今のところねーちゃんには浮いた話しは無く、間違えた解釈のままその全てを俺に向けてくる。
「間違ってないもん……。私は一誠くんのお嫁さんになりたいもん……」
「おおぅ……複雑ぅ」
俺を俺としてちゃんと見てくれた初めての人がねーちゃんとその家族であり、年が一番近いねーちゃんとはずっと一緒だった。
そりゃあよ、ねーちゃんが俺の為だけに『好みの女の子』になろうと色々努力してたのも知ってるし、こんなこと言ってもしょうがないが、嬉しいというのもちゃんとある。
けれど、こんな半端もんな俺なんかよりねーちゃんはもっと良い人が居る筈なんだ。
だから朱乃ねーちゃんや、頼むからその――
「胸だってちゃんと大きくしたよ? ほら……」
「ちょ……!?」
複雑な気分の隙を突いて、俺の手を自分の胸に押し付けんといてーな。
それと何でそんな切なそうな顔なのよ……。
「まだ……駄目?」
「だ、駄目どころか、割りとそこら辺はパーフェクトだったりすると俺は思うが……お、おい!?」
位置が位置な為、瞳を潤ませ頬を朱色に染めてるねーちゃんの顔が至近距離で色々と困る俺を他所に、ねーちゃんが掴んでいた俺の手は巫女服越しから移動して、服の中に入っていた。
そして今になって気付く……。
「お、おいねーちゃん……なんでノーブラなんだよ……?」
「こういう衣装に下着は着けないのよ? だから下も……」
「セイセイセイ! それは言わんで良いよ……くぅ……!」
何処の時代の人間なんだよ……と突っ込む暇も無く、ねーちゃんに占領された手は思い切り服の間を縫い、直接大成長を遂げて俺もびっくりな双山にあった。
しかもさっきの通りマジなノーブラであり、証拠だと言わんばかりにさっきからポッチに触れてる。
「んっ……。
い、一誠くんの手……冷たくて気持ちいいな……」
その上、変に抵抗しようともがくと、変な声だして変に悶えるねーちゃんに軽くパニックになる。
こんな光景……朱璃さんならともかくバラキエルのおっさんに見られたらぶっ殺されちまうのだ。
「ぁ……は……♪ どんなに逃げようとしても、どんなに浮気されてもやっぱり私は一誠くんが好き……大好き……!」
が、そんな事なぞお構いなしなねーちゃんは、惚けた表情で何度聞いたか分からんが言葉を聞かせながらスッと顔を近付かせて……。
「あ……ぅ!?」
こう……なじみとはまた違うと感じるキスをされた――――って、あ、あれ? これってねーちゃんと初めて……。
「え、う、嘘だろ……?
これだけはずっとねーちゃんの為に阻止してきたのに、こんな……」
「彼女の次ってのが気に食わないけど……えへ、これでやっと一誠くんとちゅーできたね?」
「そ、そんな子供みたいな笑顔で言うなよ……! 自分が何をしたか分かってのかよ……どうして俺なんかと……」
「? もちろん、大好きだから。
一誠くん以外の男の人なんてみんな……ふふ、案山子さんにしか見えないの♪」
色々とショック……ってのはねーちゃんに失礼だけど呆然と固まる俺を寝かせ、その上に覆い被さる様に乗っかかるねーちゃんは、ただ嬉しそうに微笑みながら昔と変わらない台詞を聞かせてくる。
少女の頃から――
「私、他の事なら何でも……全てがあの人に劣ってても良い。
でも、これだけは……一誠くんと永遠に一緒になりたい事だけは負けたくない」
そう言いながらねーちゃんは白衣をはだけさせ、肩を露出させる。
「何でもする……一誠くんが気持ち良くなってくれる為に何でもする。
だから……私を受け取ってよ一誠くん……」
「ぅ……ね、ねーちゃん、それだけは駄目だよ。後戻りが出来ないし、もしそのつもりなら俺は全力で逃げないと――」
白い肩が見え、大きく成長した胸元も見える状態で『そのつもり』な台詞を口にするねーちゃんに俺は首を横に振ってダメだと言う。
こんな状況で――何やっても中途半端な今の俺にねーちゃんみたいな人とだなんて贅沢過ぎるし、何より間違えてる。
俺には、ねーちゃんを受け入れられるほど出来すぎた人間にはまだなれてないんだ……だから――
「ねーちゃんがそこまで俺なんかを想ってくれるのは分かったし、それを間違えてるだなんて否定もしない。
けど……それなら尚更駄目だ……俺もねーちゃんもまだ餓鬼なんだからさ」
「ぁ……」
これだけは駄目だ。
はだけたねーちゃんの服を元に戻すように着させ、俺の言葉に寂しそうな表情を見せるねーちゃんの肩を抑えながらゴロンと転がって体勢を変えて起き上がる。
「ねーちゃんらしくねーよ。
俺がナンパしてるのを後ろから雷撃を喰らわせる……そっちの方がねーちゃんらしいさ、こんなアダルティな空気放つよりさ」
「………」
「……。そんな顔すんなよ。キスは下手じゃなかったぜ?」
「………。一誠くんの写真で練習したから……」
「あ……あ、そうなんだ……」
仰向けになりながら俺を切なそうに見つめるねーちゃんに複雑きわまりない気持ちで声を掛け、膝枕をしてあげながらポンポンとその頭を撫でる。
今の俺がねーちゃんに出来るのはこれが限界だった。
「……。いくじなし」
「俺等の年でやらかすよりずっとマシだろ……」
「……。ふんだ、罰としてこのままだからね?」
「へーいへい、仰せのままにお嬢様?」
そんな俺の中途半端さに、ねーちゃんは不満だという言葉とは裏腹に、ちょっとだけ微笑んでくれた。
……。ハァ、おっぱいハーレムとか言ってる場合じゃ無くなってきたな……。
終わり
補足
一誠も一誠で朱乃ねーちゃんに、中々の依存心があると浮きぼらせた回……と何やかんやでイチャコラ回ですかね。
朱乃さんに罪悪感があればさっさと遠ざけるか遠ざかるかすれば良いのにそれもしない。
好意を寄せられてる……頼りにされてる……そして何よりも兵藤一誠個人として接してくれる。
それが一誠にとって何よりも心地よく、何だかんだで離れたくないと思ってるのを、『自分が余計な事を言ってねーちゃんを縛り付けてる』と誤魔化してるって訳ですね。
この認識を改めれば、風紀委員一誠くんも新・生徒会一誠の様に覚醒できる……かもね。
補足2
クソどうでも良いし関係ないですが、もしこの風紀委員一誠が新・生徒会長一誠の……特に兄貴を見たら……。
『な、なんて羨ましい……!? 笑うだけでおんにゃのことにゃんにゃんとかクソズルいぞその能力! 俺にも寄越せ! そうすれば俺もグレモリー先輩とうひょひょ………………………
……と、言うとでも思ったかこの野郎……! よく見ればそっちの朱乃ねーちゃんはめちゃくちゃ蔑ろじゃねーかゴラ』
とまあ、平行世界の幼馴染みや知り合いが洗脳されてるのに思っくそ嫌悪感抱きます。
んで、平行世界の朱乃さんに
『だれ? 私に幼馴染みなんて居ない』と言われて凹むでしょうね。