友を訪ねに行きましょう。   作:HIGU.V

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結―2

「貴方が話を聞いた弟子ですが、後期の方の弟子ですね。なにせ、私はMP回復の歌があるけど使えないとしか言っていませんから。かってに使えると思い込んでしまったんだと思いますよ」

 

アインズは冷静に目の前の若者が話す内容を吟味しようと、見詰めてみる。変わった様子はない。その気になれば自分ならば200通りの方法で1秒と時間をかけずに殺すことができるほどに弱い。この世界の人間にしてはどうやら少し強い部類に入るそうだが、いたって普通の人間種だ。

 

 

「そうですか。でも重要なのはそこではありません。貴方の言動や行動には謎が多すぎるんです」

 

「否定はしませんよ。自分が……いえ私がそれを自覚したのも時が経ってからでしたから。ねぇ、モモンガさんくけこさしすの良く用いてた一人称ってなんでした?」

 

「私ですね。基本的に敬語で話していました」

 

「やはりそうでしたか。ではどこからお話ししますかね……自分でも整理がついてない部分がありますから」

 

 

そう若者は言いつつもようやっと抱え込んできた秘密を外に出せる事を安堵した様子で語り出した。

 

 

「まず、モモンガさん……ではもうないのでしたか? アインズさん」

 

「モモンガで良いですよ」

 

「改めてモモンガさん。貴方の間違いはもう少しあります。まずMP回復の方法……というか状況は存在します。思い出してください、貴方も受けたことがあると思いますよ」

 

 

アインズは、その言葉を冷静に吟味する。自分は自慢ではないがユグドラシルの中において魔法の知識については、少々古いがそれでもその時代においてはかなりの見識を持ったプレイヤーだったと自負している。魔法職として最強のワールド・ディザスターなんて公式チートも仲間にいた為でもあるが、彼がロールプレイをするために徹底的に自分に合う魔法を探したというのが何よりも大きい。

 

目の前のくけこさしすを騙る若者の言葉を信じるのならば、MPの回復の魔法が存在するそうだが、アインズの知る限りそんなものはなく、基本的に時間回復しかない為に、半分ほどの威力になってしまうスクロールなどに魔法を封じ込めて戦うのが基本であった。

 

いや、待て。そこまで考えて彼は思い当たる。言い回しとして『状況』と言っている。つまり特殊な条件下のみでしか行えないものなのであろうか? 例えば一度死んで蘇生されて自分のホームに戻るとMPは全回復状態だ。これはMP回復の状況や方法ではあるが、魔法やスキルではない。しかし流石にそれではないであろう。だがそこからふと懐かしい記憶がよみがえってくる。

 

 

「まさか……いや、それならば……そしてつまりそれを知っている貴方は」

 

「さすがモモンガさん。どうやら思い当たったようですね」

 

 

モモンガはここ最近自分よりも優秀過ぎる配下の知略について行くのがやっとであったが、それでも営業マンを現実でやっていたころより頭を酷使していた。ナザリックの為の努力を怠っていなかったのだ。そして普段から推測や推論、思考を止める事なくつ受ける癖がついた結果、1つの仮説がまるで光属性の魔法を受けたかのように思い浮かんできた。

 

 

「未知への探索や探求や冒険をしてください。って作りのユグドラシルでしたけど、まぁ流石に初心者に何も言わず何も持たさないで始めさせては、ライトユーザーがそっぽ向いてしまいますよ。特に自由度の高さからクリエーターとしての目的を持った層なんかは、特に。だからこのゲームにもきちんとありましたよね」

 

「チュートリアル中のシステムによる回復……ですよね」

 

「はい、正解です」

 

 

そう、モモンガも初心者であった時期はあった。始めたその日によくシステム周りを理解せずにきちんと学び取ろうとチュートリアルイベントをこなした。その際には視界のアイコンに説明文が浮かんだり、あからさまに説明口調なNPCとのやり取りもした。今では息をするように刈り取れるであろう雑魚モンスターとの戦闘をして初めて魔法を使った感動は覚えている。

当然初期レベルだ、MPも直ぐに尽きる。その際に回復させてくれたNPC、確か旅の吟遊詩人だったか、プレイヤーは偶然出会った彼を守る、この世界に降り立ったばかりのナニモノかみたいな設定だったはず。ともかく彼によってMPを回復してもらい、最後に自分の判断だけで敵を倒してクエストクリアだったはずだ。

 

 

「それじゃあ、くけこさしすさんは」

 

「はい、この体はNPCと同じです。こっちに来る際にユグドラシル時代の知識が違和感ないように最適化されてました。見た感じ守護者たちもそんなところはありますよね?」

 

 

くけこさしすがログインしたのは、公式が作った没キャラの1つだった。チュートリアルで出てくるキャラクターの弟子とかいう設定で用意したものの、別段必要ないとお蔵入りされていたデータだ。顔すら設定されていない。

もっとも多かれ少なかれ多くのイベントで彼の様なキャラは存在しており、公式も使用してない無名NPCのデータなんて無数に持っていたのでその中の1つでしかない。利用されたのもくけこさしすに渡される際に、プレイヤーが動かせる用に少しばかりデータをいじっただけのそれだった。

 

 

「朧げにある記憶だとこのキャラクターは『未知への探求とまだ見ぬ英雄の歌を求める、駆け出しの吟遊詩人。その遠くまで響く声という才能を見出されて弟子入りした。』と言った感じのフレーバーテキストだったと思います」

 

 

アインズはその言葉に想起する思い出が有った。守護者やナザリックに住まう者が、確かにプレイヤー達が過去侵入してきたという記憶を持っている。そしてその際にわざわざギルドメンバー達が出張っていって刈り取った記憶ももっている。

加えて言うならばモンスターを倒してドロップすることも武器の性能がゲーム的なものである意識もある。しかしそれと同時にこの世界の生き物の様な独特な価値観を持ち、加えてナザリックに忠誠まで誓っているというのだ。デミウルゴスはなぜ自身の配下の悪魔が全員いないのか疑問をもっているし、コキュートスは武人設定だが、彼が戦闘をした回数などそう多くないのを自覚していない。シャルティアの特殊性癖を彼女は生まれついての者だと思っているが、自身の信仰する邪神系統の神が雑魚だったという記憶も持っている。

ギルドメンバーに直接作られた守護者たちは特に設定が凝っている。そのためその設定どおりのキャラクターを持ち、補完として作ったプレイヤーの性格や癖、対人関係を受け継いでいるのだ。

もし、ナザリックとは関係なくNPCやユグドラシルのモンスターが転移してきていたのならば、設定どおりのロールを演じつつ、生物として足りないものを何かしらから補完するのであろう。

 

 

「なるほど、だがそれだけでは説明付かないことがまだある、パンドラズ・アクターの事やあなた自身がどういう存在なのかです」

 

 

アインズは一先ず納得したが、疑問点は多い。目の前の存在がただ単純に転移したNPCならばくけこさしすの顔と記憶を持っている理由がわからない。そうでなくとも彼ですら知り得ない情報を知っているのはおかしい。

 

 

「ああ、伝え忘れていましたね。何分この世界に来て凡そ100年経っていますので。この体というかNPCなのだからなのでしょうか? 経年での外見に変化はないのですがね。まぁゲーム内時間は現実より早い設定でしたし。ともかく自分は最終日にログインしてたんです」

 

「え? でもくけこさんは、最終日にナザリックには来ていませんよ。来てくれたのはヘロヘロさんたちだけでした」

 

 

アインズは知らず知らずのうちに口調が柔らかく、ほとんどモモンガの頃と同じ様なそれになっていたが、彼はまだ気づいていなかった。それほど彼にとって気を取られる程の問題であったからだともいえる。

 

 

「ええ、招待してくださっていましたよね。合わせる顔が無かったので……あとは何よりも、その少し前に公式から仕事の依頼がありまして、私のメインテーマアレンジをライブで歌ってほしいって話がきていた筈だったので」

 

「そうだったんですか……なんだ、そうなら言ってくれればみんなで見に行ったのに」

 

 

アインズはサービス終了時に、最後位全てを捨ててでも攻略してやるという気概を持った侵入者が来ることを本当に少しばかりでも期待して、未踏のギルドダンジョンナザリックの地下深くで待っていた。それは勿論最後だから来てくれる仲間を待つためでもあったが。

だが、もしその話を知っていたならば、くけこさんがライブするそうですからそれを見に行きませんか? という文句に代わっていたかもしれない。

アインズにとって、みんなで作り上げたナザリックは何よりも価値がある大事なものであるが、それをともに成し遂げた友こそが本当に大事な思い出なのであることを知っているからだ。

 

 

「少しあやふやなのですが、自分のキャラクターを使えないだか、使わないだかで公式からキャラクターとパスを貰ってそれでインしていました」

 

「くけこさしすは、最初に引退しますって言って装備全部を渡してきましたよ。受け取る代わりにキャラクターの削除をしないという約束もしてもらいました。フレンドにはずっと残っていたので、残してくれていたのだと思います」

 

 

100年も前なんだもんな、あやふやになるよ。とフォローを入れながらも見えてきた話に納得する。月額1500円かかるゲームをずっと維持してくれたことを当時は何とも思わなかったが、良く考えると凄い事だ。

だが、新たな疑問も出てくる。彼の覚えている情報は何処かアンバランスであり、そしてくけこさしすをどこか他人事のように語っている。

 

 

「そうですか。さて、そろそろ話の核心ですね。モモンガさん、約束してほしい事があります」

 

「……なんでしょう?」

 

 

それがこの骨しかない顔の表情に出たのか、彼の方もその答えを出してくれるそうだ。アインズは一先ずその約束とやらを聞くことにした。

 

 

「最後まで聞いてほしいんです。途中で自分に殺意を持ったり、疑いたくなったり聞きたくなくなっても、殺さず、立ち去らずにここで」

 

「……いいでしょう。ただしこちらに危害を加えようとするのならば別ですが」

 

「当然です。ただ自分は話すだけです。忌々しい話をね」

 

 

煌びやかな装飾で飾られたこの部屋に、少しばかり灯って来た暖かな雰囲気が冷却されていく。空気が変わった、それを二人とも感じていた。

 

 

「この世界に来たばかりの頃、自分はどんな存在かなんて悩む余裕はありませんでした。なにせLv1の吟遊詩人のヒューマンです。ユグドラシルよりも格段に敵が弱くても村落から出るのに護衛を欠かしたことはありませんでした。幸い金策は直ぐに見つかり、やりたいこともできました。何をやってきたのかはご存知でしょう?」

 

「ええ、貴方たちの一座の音楽と、その功績に関しては人間の上流階級では語り草だそうですね」

 

 

遠く思い出を語るように、それこそアインズが許可をすれば、そのまま弾き語りでもしそうなほどに、彼の言葉の紡ぎ方は手探りかつ情感の籠ったそれであった。

 

 

「目的が見つかってからは、只管に熱中していました。楽しい日々でしたよ。ある意味この自分が成し遂げた唯一の事だったと思います。ですが、徐々に小さい違和感の芽が育っていたんです。自分の記憶がちぐはぐでところどころダブっているものだとね」

 

 

そこで彼はいったん言葉を止めた。そしてアインズはなんとなく彼が何を求めているのかを理解して、ストレージから水の入ったピッチャーを取り出して、コップに注いで彼に手渡す。微笑と共に受け取って唇を濡らすと、彼は再び語り始めた。

 

 

「数年ほど悩んで、ようやっと気づきました。きっかけは何時までも変わらない自分の見た目です。どうやら自分にはこの『身体(キャラクター)』の『記憶(せってい)』があるのだと。ゲームの頃に最後に使っていた『からだ』そのものでこちらに来てしまったのであろう。それでしばらくは納得していたのです」

 

「なるほど」

 

 

たしかに流石に人間が何年間も老けなければおかしいと気付くであろう。そこで彼は先ほど言った仮説に思い当たったのであろう。肉体は精神の枷という奴であろうか?

 

 

「ですが、それでも違和感はなくなりませんでした。それに気が付いたのは一大サーガ『ギルドAOG』を書き終えて、次は何を題材にするかと思い立ってユグドラシルの事を深く思い出そうと書きおこしを始めた時です」

 

「何があったのですか?」

 

 

先ほどアインズの口調に少し戻っていたモモンガの顔がまたモモンガのそれになる。

 

 

「くけこさしすからしてみれば有り得ないような情報を思い出して来たんですよ。モモンガさん、自分はあなたと違ってキャラビルドが割と適当で、それでいて自分のキャラとその系統位しか成長分岐とかスキルや使用魔法を知らない若干のにわか臭がしてましたよね?」

 

「えぇ……そうですね、言い方は悪いですが。でも私みたいに魔法を片っ端から暗記している方がおかしいですって」

 

「フォローありがとうございます。でもそうなのは事実でした。ギルメンの使う魔法とスキルは頑張って覚えましたけど、まぁそこまででした。なにせ本人が知らないほうが、未知の事が有った時面白いとか、PKギルドにあるまじき考えでしたし、もちろん必要なことは頭にいれましたが。まぁそんな自分ですが、ユグドラシルの事を思い出そうとしたら、酷い事に全く知らないことまで全部思い出してしまいまして」

 

「どういうことですか?」

 

「やろうとしたら一度発狂してしまったのですが、全部です。厳密にはこの身体の置かれていた仮想サーバに保存してあったデータ全てですが、まぁ膨大過ぎて自分でも把握しきれていません」

 

「それは……」

 

 

この人間吟遊詩人の体が置かれていた場所はゲームを動かしているサーバとは別のものであった。プレイヤー側が自分で設定したものが公序良俗に反していないかを確認するための一時保管の場所であり、没になったデータをとりあえず取っておくための場所でありという形の、ゲームを動かしているサーバとは別なもので、どちらかと言うとただのデータのストレージであった。

膨大な数のユーザーの設定したSEや音楽キャラクターの外装や、製作途中のアプデの内容や、導入前の隠し要素などもたくさん存在していた。そしてまるで匂いが染みついたかのように、その体には情報が残っていたのだ。

 

 

「仮説にすぎませんが、こういった没NPCキャラを使って、ゲーム内の適度な管理をゲーム運営側がしていたのではないでしょうか? テストプレイとかする際に適当に配置したりなどでね。特別な権限などは全くないのですが、入っていた情報が桁違いなので。または単純にユーザーのニーズ調査の一環でランダムに保存していたのか、将又公序良俗に反していないかのフィルター漏れが無いようにチェックするための保管場所か。まぁどうでも良いですね。要するに『身体(データ)』に『情報(けいけん)』が染みついていたという風に、この世界で最適化されてしまったんですよ」

 

 

例えば、設定した外装や情報などに不具合があったとしたら問題だ。仮想的な環境に有るものをぶち込んで正常に動くかどうかのテストをする場所が有ったのかもしれない。はたまた、単純にそう言った膨大な情報を精査するための一時保管場所でしかなかったのかもしれない。

 

 

「そんなことが……」

 

 

真偽は結局わからないが、事実として彼の体にはそれだけの経験や情報が存在していた。といってもあっただけであって、思い出そうとするまでは自覚すらなかったのだが。

 

 

「軽く流しましたが、その際に壊れましてね。人格と言いますか。自身の記憶から推測されたことやそこの情報を使って再構築したのが今の自分です」

 

「記憶から……推測? ちょっと待ってください」

 

 

何モノでもない青年はくけこさしすの顔でモモンガに向けてにっこりとほほ笑んだ。

 

 

「狂った時にもう1つ思い出しました。ライブが終わった後、カウントダウンが始まる位で、もういいだろうとくけこさしす、まぁ木下太陽ですか、彼はログアウトしてます。では、質問です、この身体を動かしているのは誰でしょう?」

 

 

それが、話を聞いていくうちに、アインズが少しづつ推論していていた可能性だ。

 

 

 

「アカウント側にくけこさしすの記憶も残っていて、設定として最適化された……ってことですか?」

 

 

NPC達が持っている情報、作り手の情報を読み込んで最適化されてある種『生まれる』のならば、くけこさしすが目の前の人間の中身でなくとも、その情報が読み込まれていれば、設定されている情報が少ない分、非常に多くくけこさしすをベースとして作られていたのならば、説明はついてしまうからだ。

 

 

「はい、そうです。だから、自分の持っているくけこさしすの記憶は印象的なものほど大きく、日常の些細なものは情報から推測した考察にしかすぎません。あ、ちなみにパンドラズ・アクターは公式からこれはねーよって言われて面白がって保存されてましたよ」

 

「ふざけないでください!」

 

 

事も無げに笑って言うくけこさしすらしきナニカを前にアインズは激昂する。すぐさま怒りは沈静化されて元に戻る。冷え切った思考を浮かべながら見つめるのくけこさしすを名乗る存在の話を聞いている。

 

 

「自分の中でけりはついてます、自分の事をくけこさしすだと自分は思ってます。紛い物という自覚もありますがね。だから、自分があの輝かしい栄光のギルドの一員だと語った事は歌の中でもないんです。自分は主人公じゃなくて語り手。くけこさしすという一際醜い存在は出てきましたが、それは自分ではありませんでした」

 

 

それはアインズも聞いていた。人間様にアレンジされていたとはいえ、群像劇で様々なギルメンらしき存在が主役とする話で構成された歌の中、くけこさしすらしき存在が主役として出てくることは一切なかった。結成の前日譚こそそれらしき存在の視点であったが、それだけだ。

曲を作っていた時期と正体を自覚した時期が違うと先ほど彼が言っていたのにである。恐らく自覚した後に削除したのであろうか。アインズはそのことに思い至って亡くなった胸が痛むような、過去の日々を思い出した。

 

 

「だから自分のお願いは1つ、自分をくけこさしすと認めてほしいのです。ここに来れば友の誰かが、いえ居るとしたらギルド長が居ると思っていました。セカンドキャラでも転生体でもいいんです。自分の存在を認めて肯定するか、紛い物と断罪してこの世から消すか。そのどちらかをあなたにしてほしいのです」

 

「それを俺に、いや私に頼むわけですか……」

 

「誰よりもアインズ・ウール・ゴウンを大切に思っているアインズさんだからこそです。覚えてますか? このギルドは多数決ですよ? 割れたならアインズさんの決定で動きます。私は無回答に票を入れます。ああ、すみません。もう違うのについ癖で」

 

 

くけこさしすがこのナザリックに来た。それは友に会いに来たのだ。帰る場所かどうか知らない、いやわからない場所だからこそ、彼はあくまで訪ねるということで、帰るとは言わなかったのだ。

彼がユグドラシルの残滓を探していたことも、全てはこの為である。最初は自身の存在の確証を得る為であったのだが、いつの間にかこの為に変わっていた。

 

 

「もしかしたら、私がくけこさしすと名乗っても、誰もそう呼んでくれなかったのは、魂がくけこさしすでは無いからかもしれません。魂なんてものが存在するのかを自分は知りませんが」

 

「貴方は……」

 

「無回答はずるいですか? ならばこういうのはどうでしょう? 今後のアインズ・ウール・ゴウンの目的として、こんなことを起こした、いるかどうかも分からない神様をぶっ殺したいことを提案します。その為にまずはこの世界を支配下に置いて、その『未知の存在』を探しに行きませんか?」

 

 

アインズもこの世界の魔法がなに基づいているかを研究しようとしていた。まだ実行に移していないが、それは信仰形の魔法ならばその信仰を洗脳で架空の神に変えても発動するのか? そもそもMPや魔力とは何なのか。そう言った事を設定した創造主がいるとするのならば、帰還の方法やこの世界の秘密がわかるかもしれないと考えていたからだ。

確かにそんな存在を探すのならば、この世界の掌握は必要であろう、今の非合法な基盤では非常に弱い。戦力的には若干の懸念はあるが、それ以外は問題などないのだ。

 

言いたいことは全て言い切ったとばかりに、再びコップに手を伸ばす。アインズはその様子を見詰めてふと、くけこさしすとの会話がよみがえってくる。

 

 

 

────くけこさんは、なんで人間種に対してそんなに殺意が高いんですか?

 

────唐突にどうしましたか? モモンガさん

 

────いえ、何かしらあったのかと思いまして

 

────大したことじゃなくて、ただ招待してきたのに自分から辞めた奴が人間だったので、恨みを呟きながら惰性で続けていたらこうなってしまいました。

 

────そ、そうでしたか。

 

────まぁ今は気に入ってますので良いんですけれどね。それに────

 

 

 

「その、人間に対する無慈悲なところは、まんまですよ。というか今あなた人間じゃないんですか?」

 

「あはは、おかしいこと言いますね。現実の人間とこの世界の人間は別種族でしょ?」

 

「違いないですね……くけこさん、ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』のリーダーとして告げます」

 

 

 

 

 

 

モモンガは両手を広げて、支配者たる威厳に溢れたポーズを取りながら宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「復帰、おめでとうございます。歓迎しますよくけこさしすさん」

 

「ありがとうございます。モモンガさん」

 

モモンガにとっても他人事ではない。今自分が動かしているこの身体と意識でさえ、実は普通にログアウトした鈴木悟から『枝分かれした模造品』でないなんて、悪魔の証明でしかないからだ。

一つだけわかることは、人類にとって絶望の鐘と、一人のニンゲンにとっての祝福の歌が響き渡ったということである。

 

 

 




こんな感じの考察がしたかった。
後は エピローグ&守護者視点です。

それと同時に活動報告で裏話書くかもです

批判とご意見お待ちしてます。

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