ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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前回、三人出ると言ったな……あれは嘘だ(←もう一人出ること忘れてたヤツ





Collaboration EPISODE-18:個性的な少女達

 談笑が続く最中、俺はふと見知らぬ少女が三人居ることに気が付く。一人はやけにツクモ姉ぇと話す少女、もう一人はただひたすらに出されているお菓子を貪るように食べる少女、残る最後の一人は周りに中々溶け込めずにおろおろとしている少女。

 気になった俺はそっとツクモ姉ぇに近付いて、耳許(みみもと)で尋ねる。

 

「なぁ、あの三人は誰だよ」

「……え? あぁ、蒼城学園模型部の人達よ。ここには合宿みたいな感じで来たみたい。二人程今日は来れないみたいだけど」

「はぁ……」

 

 気のない返事で返した俺に気付いたのか、さっきツクモ姉ぇと話していた少女が、俺を見て途端にキョトンとする。

 

「あら……そちらの人は?」

「私の弟分よ。今日ここへ来たのはこの子の面倒を見る為なの」

 

 ()()()というツクモ姉ぇの扱い方にやや不服を感じるが、俺は渋々見知らぬ少女に頭を下げる。

 見ると明るい緑色の髪をヤヤのようにアップで纏め、同じ緑色をした目はなんとも活発的な印象を与えてくる。ツクモ姉ぇとはまた違った明るさを持つ人かな、と俺は思った。

 

「えっと、アーニャの知り合いの芳堂木綿樹です。聖蘭学園模型部の副部長してます」

「へぇー、貴方が。……私は獅子骨桜(シシボネ サクラ)よ、蒼城学園模型部の副部長をしているわ。部員共々よろしくね!」

 

 印象と違わず明るく人懐っこい笑みを浮かばせ、俺はこの人なら安心できるか……と、思った矢先に、サクラさんからとんでもない発言が出てきた。

 

「ねぇ、ユウキ君。貴方の妹、少し借りても良いかしら」

「………え?」

 

 前言撤回。全然安心できない。挨拶して数秒で「人の妹借りて良い?」だと?

 俺はツクモ姉ぇを見ると、即行でそっぽを向いたツクモ姉ぇ。オイ、何で目を背けるんだよ。

 俺は微妙な面持ちでサクラさんに答えを出した。

 

「すみません、ダメです」

「ええー」

「ええー!?」

 

 却下されて残念がる彼女に、同じ台詞で驚いた俺は自分の妹達を見やる。お菓子を食べているホノカはともかく、リリカは俺の傍にくっ付いていた。……うん、いつも通りだ。

 取り敢えずサクラさんには妹達を近付けないようにしよう。

 

「ダメに決まってるじゃないですか! 初めて会った人にいきなり『妹借りさせて?』なんてお願いされたら誰だって拒否りますよ!」

「可愛いのに……」

 

 新手のロリコンか……? あ、でもあのおろおろしてる女の子を襲い始めた。別にロリコンって訳でもないらしい。だが気を付けるに越したことはないか。

 次に俺はサクラさんに、そのおろおろしてる少女のことを尋ねた。

 

「その子は?」

「うちの部員の一人よ!」

 

 誇らしく語るサクラさんに、抱き付かれた少女は俺を目の前にして緊張してるのか何なのか、顔を真っ赤にして頭から湯気を出していた。……もしかして男性恐怖症か?

 

「あ、男が苦手なら離れるけど――」

「そ、そうじゃないんですっ!!」

 

 俺がそっとその場を立とうとすると、少女は俺の倍以上の声で叫ぶ。当然俺や傍に居たサクラさん、その場の皆が驚いている。……だがこの中で一番驚いたのは本人らしく、静かになったこの空気にあわあわと慌てふためいていた。

 

「あ……あの……すみませんっ!」

「い、いや、謝らなくても大丈夫だよ。少し驚いただけだから」

 

 俺がそう宥めると、少女はさっきよりも一層顔を真っ赤にさせる。もうこれ真っ赤と言うか深紅だろう。

 何で顔を赤らめるのか分からないでいると、ツクモ姉ぇが理由を理解したのか、閃くように顔を上げて俺に言ってきた。

 

「アンタ、自分の顔を鏡で見てきたら?」

「……ああ、成る程」

 

 それだけで納得していた俺に、ツクモ姉ぇ以外の皆が疑問符を浮かべるが、俺はお構いなしにその場へ座り直す。

 改めて何で恥ずかしがっているのかを少女に問いただしてみた。

 

「えっと、何で俺を見て赤らめるのかな?」

「ふぇっ!? え……そ、それは……その……」

 

 どんどんと声が萎んでいき、やがて声すら聞こえない程に俯いてしまったのを見て、理由が改めてよく分かった。

 

「うんまあ……俺のような奴を見れば、これが普通の反応か」

 ……寧ろこの反応をしない方がおかしい。

「まあ取り敢えず、俺は芳堂木綿樹。よろしくな」

「あ、その……じ、神通志織(ジンツウ シオリ)です」

 

 手を伸ばして握手を求めると、シオリちゃんもまた小刻みに震わせながらも俺の手を握った。だけども直ぐに指先から赤く、熱くなっていくのを感じて、流石の俺でもこれはマズイと思って速急に手を離す。

 するとシオリちゃんは「す、すみません……」と気を落としながら謝った。謝る必要はない気がするんだがな。

 ……しかしシオリちゃん、改めて見ると大人しい小動物に見えてきてしまう。少佐カットの茶色いセミショートに気弱そうな茶色い瞳が、それに拍車を掛けている。俺の知っているシオリとは大違いだ。

 そっとシオリちゃんから離れて、俺は別の方へと視線を向ける。

 

「んで、残るのはそこの子か」

 

 今度は、先程からホノカが膝の上に乗りつつ、一緒になってお菓子を食べている少女だ。……って言うかいつの間に仲良くなったんだよ、ホノカ。

 俺の言葉にでも反応したのか、少女はボーッとした様子から俺の顔を見上げる。

 

「………誰?」

「それは俺が聞きたいんだが……」

 どことなく噛み合わない会話に、俺は気を取り直して本日四度目の自己紹介をする。

「俺は芳堂木綿樹。その膝の上に乗っかってるホノカの兄だ」

「貴方がこの子のお兄さんで、アーニャに呼ばれた本人ね」

 

 チョコレートを片手に余り抑揚を感じさせない声で喋った彼女は、俺と話しながらもチョコレートをハムスターのように食べていた。……いや、話すか食べるかどっちかにしろよ。

 すると食べるのを一段落させた彼女は、依然と俺の方を向きながら話し始めた。

 

「私は御影愛(ミカゲ アイ)。暇だからリョウ君に付いてきたの」

 

 暇だったのかよ。

 内心そう突っ込むと、そのままチョコレートへと目を落として再び食べ始めた。桃色をした緩めのツインテに垂れた赤眼からしてマイペースだとは思っていたが、こうもマイペースだと逆にやりづらいな。ミナツさんとはまた違うタイプってわけか。

 

 

 

 一通り回り終えたところでリョウ君の隣へ戻ってくると、やはりと言うかなんと言うか、少女二人に囲まれて困っていた。

 

「ミオちゃんにレイカちゃん、そろそろ離れてあげたらどうだ?」

「ユーお兄さん、もう戻ってきたのかい?」

「あ、この前の。ツクモお姉ちゃんから聞いたけど、アンタも中々災難ね」

 

 この前の大会以来の光景だろうか。リョウ君の両サイドにはミオちゃんとレイカちゃん――九音霊香ちゃんが居座っており、俺の方を見ては二人して余り歓迎していないようだった。

 まあ彼女らから見たら俺は、単に邪魔しに来た馬鹿野郎なんだろう。

 

「別にお前達の兄貴を奪ったりはしねぇさ。それより、ここに居る……ってことはガンプラバトルか?」

「――え? 何でそれを知って……ってアーニャに呼ばれたんだからそうか」

「それもあるんだろうけどよ」

「……?」

 

 俺の含みのある言い方に疑問符を浮かばせるリョウ君を余所目に、未だ腰に引っ付くリリカを見下ろす。

 俺から離れないように服の裾を掴んでいて、慣れない場所故に周りに怯えているみたいだった。

 

「心配しなくても大丈夫だって。ツクモ姉ぇだって居るし」

「で、でもね! リリカ、ユー兄ぃの傍が良い!」

 

 必死に俺から離れたくないが為に言う言葉は、非常に可愛らしく思う反面、これが全世界のお兄ちゃんを駄目にするんじゃないだろうかと疑問を抱く。

 そんなリリカを抱き上げると、それを見ていたミオちゃんがリョウ君を見上げていた。

 

「俺はやらないぞ」

「連れないなぁ、兄さんは」

「あんなのは恥ずかしいだろう。周りの目もあるし」

「けれども私は周りの目すら気にしないよ? Давай, пытаясь обнять(さぁ、私とハグしよう)!」

 

 両腕を伸ばして、目をキラキラと輝かせてリョウ君の反応を窺うも、リョウ君は全力で目を逸らしていた。……うん、まぁ、気持ちは分からなくもないよ?

 そんな時だろうか、アンの感情が振り切ったのは。

 

「うがーっ!! リョウは私とハグするんだお! ミオはあっち行ってると良いお!」

 

 そう言ってアンはレイカちゃんを押し退けて、リョウ君の左腕を占領する。レイカちゃんも憤慨しているがアンは何のそのである。

 俺は溜め息を吐きながらリリカを降ろし、突然のことで目を瞬かせているリョウ君を差し置いてアンを引き離す。

 

「ヴィー!」

「落ち着けよ。リョウ君が困ってんだろうが。……それにここへ呼んだ理由はこんなんじゃないだろう」

 

 振り払おうとするアンを宥めて、俺はこの部屋中に聞こえる声でそう言った。その言葉にアンも、談笑していた皆も押し黙る。

 これ以上やるとセクハラになりそうな俺は、アンを離してから場の空気を入れ替えるようにして両手を叩いた。

 

「恐らく俺が呼ばれた理由は……アンとリョウ君のガンプラを見て欲しかったからだろう? つい最近ガンプラバトルを始めたって聞いてたから予想は付いてたが」

「流石はヴィー、превосходный(素晴らしいお)!」

Пожалуйста(どういたしまして)

 流暢なロシア語で返した後、俺はそのままアンに尋ねる。

「あるんだろう? バトルシステム」

「当然だお」

 

 口角を吊り上げて答えたアンは「パチンッ!」と指を鳴らす。するとどこからともなく黒服の男性達が現れ、いつの間にかバトルシステムが用意されていた。しかも六基構成の大規模タイプ。

 皆(お菓子を食べているアイちゃんは除いて)も、この唐突なバトルシステムの出現には驚いていた。

 

 

 

「だからヴィー、リョウと戦って欲しいお!」

 

 

 

 ビシリと指差された俺は「やっぱりか」と肩を竦めつつ、GPベースとガンプラを取り出す。

 

「リョウ君、気は乗らないがバトルしてもらうぜ」

「売られたバトルは買うのが道理。……そのバトル、受けたぜ」

 

 リョウ君の手にもGPベースが握られ、もう片方の手には、昨今珍しい上級者又はマニア向けとも言える機体「ヅダ」が握られていた。……なんとも趣味が良いこった。そのセンス、嫌いじゃあないぜ。

 俺とリョウ君がバトルシステムの前で立つと、互いの左右に小学生組が並ぶ。

 

「兄さんがやるなら私も」

「キャハハッ! お兄ちゃんだけ楽しい思いをするなんてズルいわ!」

「ユー兄ぃ、ボクも一緒に遊んで良い?」

「ユー兄ぃ、リリカも一緒に楽しんで良い?」

 

 そんな彼女達の言葉に俺とリョウ君は顔を見合わせ、仕方がないかと頷く。

 

 

 

《GUNPLA BATTLE Combatmode Start up. Mode damage level set to“B”》

 

 早速バトルシステムを起動させると、途端に周囲が暗くなる。

 

《Press set your GP-Base》

 

 音声の指示通りにGPベースをセットし、PPSE社のロゴと共に各自の名前と機体名が表示された。

 

《Beginning [Plavsky Particle] dispersal. Field1, Space》

 

 プラフスキー粒子が散布され、俺達の周りをホログラムが囲む。それと同時にバトルフィールド上にマップが再現される。今回選ばれたのは宇宙。――それも宇宙世紀始まりの場所、地球低軌道上に設置されていた地球連邦首相官邸「ラプラス」の跡地。ユニコーン始まりの地であった。

 

《Press set your GUNPLA》

 

 俺達六人は揃ってガンプラをセットする。(あらかじ)め事前にホノカとリリカには代わりのガンプラを手渡してある為に問題ない。

 ……さぁ、バトルを始めよう。

 

《BATTLE START》

 

 

 

「芳堂木綿樹、デルタガンダム改弐号機! 行くぜッ!」

「芳堂火乃果、フルアーマーデルタプラス! 出撃するよっ!」

「芳堂梨々香、ホワイトデルタカイ! 出るのっ!」

「矢倉亮、ヅダVD、出撃する!」

「矢倉美桜、ブレイヴ、出撃する」

「九音霊香、行くよ! カースロードッ!」

 

 




どうも、出そうとしていたキャラの中に霊香ちゃんが居たことをすっかり忘れていたカミツです(´・ω・`)
正確には四人でしたね、すみません。

次回はようやくバトル回。芳堂兄妹VS矢倉兄妹&霊香ちゃん!
はてさて結果はどうなることやら。
ではまた次回、ノシ

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