ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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次章に進みたいところですがその前に、ご本人に許可を取ったので早速(と言うか再び)コラボ開始です!

三回目は、MR.ブシドーさんが執筆する「ガンダムビルドファイターズ 勝利の栄光をヅダに!」です。







番外章:速さを求めた史上最高の欠陥機
Collaboration EPISODE-16:新たな出会いは嵐の予感?


 新しく部員を二人迎えた聖蘭学園模型部ではあるが、今日は集まりが悪いようだった。ただでさえ有名人が多い故に、全員が集まれるのも最近では珍しくなってきたのもある。

 そんな中でも集まれたのは、マサキとユウキとカグヤぐらいだ。後は全員仕事である。

 

「三人だけってのもまた珍しいね」

「何だか初期の頃思い出すな」

「ユウキさん、マサキさん、お茶が入りましたよ」

 

 マサキ、ユウキ、カグヤの順で喋るが、今現在進行形で何もしていない。強いて言うなら、カグヤの入れた煎茶を飲んでいるぐらいか。しかも静岡県産の玉露という、中々にお高いものなのは気にしない。

 煎茶にしては甘いお茶を堪能しつつ、マサキは目の前の皿に入った醤油煎餅を一齧りしていた。二人にお茶を出したカグヤはユウキの隣に座り、ふと疑問を口にする。

 

「お三方の用事は分かるのですが、シャロさんは何の用事でしょうか?」

「んー、大方生徒会のじゃね? その内来るら」

 

 気楽に答えたユウキは、マサキに倣って煎餅に齧りつく。「パキンッ」と煎餅が割れる小気味の良い音が静かな部室へ響きつつ、茶を啜る音が立て続けに鳴る。

 しばらく無音の状態が続くと、流石に気不味い空気に嫌気が差したユウキが口を開く。

 

 

 

「なぁ、何か喋んね?」

 

 

 

 そう言われた二人はユウキを挟んで顔を見合わせるも、やはり困り顔をする。

 

「カグヤ、ユウキさんに会話を合わせられる気がしません。お恥ずかしながら、ユウキさんの惚気話でしたらいくらでも話せるのですが……」

「私もユー君に話題を合わせられそうに無いし。なんならゲームの話でもする? そう言えば今度ゆ○ソフトから新しいゲーム出るんだって。今度は独自の発展を遂げた温泉街が舞台の」

「あー、スマン。聞いた……と言うか言った俺が悪かった」

 

 流石のユウキも、誰得な惚気話にエロゲの話は無理だった。そもそもこの歳で聞いてはいけないゲームを普通に語るマサキに、何故か頭が痛くなってきたユウキは気を紛らわすようにお茶を飲み干す。

 そのままカグヤにお代わりを頼んで、ユウキは何か話題がないかと自分の記憶を掘り下げていると、つい先日に母親ことエレナから電話があったのを思い出す。

 

「そういや昨日、母さんから電話があったんだが」

「どしたの急に」

 いきなり始めた何の変哲もない日常会話に、マサキはまるで気味悪そうにユウキを睨んだ。

「話聞けよ。……んで話してたら、こっちへ越してきた時に母さんの友達から電話があったらしくてさ」

 

 ジト目で見つめるマサキに構わず、ユウキは煎餅を再び齧りながら話を続ける。

 するとカグヤも戻ってきて、新しく煎茶を淹れた湯呑みをユウキへ渡し、こちらも再び椅子へ座った。

 

「なんかこっち(日本)に娘が居るから、会ったらよろしくねって言ってたみたいでな」

「こっちってことは、外国から来たの?」

「あぁ、ロシアかららしい」

 

 そのユウキの台詞に彼女達は無言になる。マサキからしたら――とんだ曲解ではあるが――、最近色々とやらかしている頭のイカれた国だと思っている。

 そんな国から来たのなら……と考えると、マサキは嫌な予感しかしなかった。

 

「……で、その子はどうしたの?」

「会いに行ったらしいぜ。実際に。まあ俺も一応面識はあるっちゃああるんだが、どうもアイツは苦手でな……」

「それで?」

「俺も近くに居るって母さんから聞いたら、それなら久々に会いたいって言ってたらしいんだよ。それを母さんから聞いて、今度の土曜にホノカとリリカ連れて行ってこいって言われて、な」

「災難……なのかな?」

「できれば災難で処理したい相手だ」

 

 ユウキは溜め息を吐くようにして窓の外を見上げる。皐月の青い空は澄み渡っており、青と白のコントラストが目に眩しかった。

 そのまま項垂れた本人に対して、マサキは何て返そうかと悩むと、今まで口を噤んでいたカグヤがようやく口を開いた。

 

「ユウキさんのご友人でよろしいのでしょうか?」

「ご友人……とは言いたくないな。顔見知りが正しい筈だ」

「ユー君が嫌がる程の女の子って、逆に見てみたいかも」

「嫌がるっつーか、苦手なんだよ。ああいうタイプは。……あの天才には付いていけん」

 

 テーブルの上に肘枕しつつ、ユウキはその少女を思い浮かべていた。何度思い返しても、彼女はどうも苦手である。

 そんなユウキのみぞ知る少女を、他の二人が知る筈もなく、ますます疑問が募っていくばかりであった。

 

「………こっちへ来たということは………いや、まさか、な」

「私達も流石に話に付いていけないんだけど」

「……ん? あぁスマン、少し考えごとしてたわ。まぁそこまで気になるんだったら、今度の土曜日付いてくるか? 一応、一泊二日で泊まる予定だしな」

「ううん、私は遠慮しとく。ツクモ先輩にでも言ったら?」

「あー、その手もあったか。んじゃ、帰ったら聞いてみますか」

「ほえ? ユウキさん、今日からエレナさんの所では?」

 

 話も纏まったところでユウキはいざ決意した途端、カグヤに釘を刺される。出鼻を挫かれるとはこのことだろう。

 ……忘れていた、確実に。

 フリーズしたユウキは冷や汗を垂らしながらも、妥協案として電話で聞こうと考えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――それで、メールじゃなく直に電話してきたのね』

「す、スマン……」

『良いのよ別に。可愛い弟分達の面倒を見るくらい、雑作もないわよ』

「はぁ、ツクモ姉ぇには敵わねえや」

 

 学校から戻った後、早速ユウキはツクモへ電話していた。内容は模型部で話していたことについてだ。

 勿論、掛けてこられたツクモは断ることなく了承してくれた。理由は少し不純ではあるが。

 

「当日はホノカもリリカも連れてくから」

『分かったわ。それじゃあ楽しみにしてるわね』

「うーっす」

 

 そのままツクモが電話を切ったのを確認して、ユウキも通話終了させて、スマホを枕の片隅に置いておく。

 これで何とかなった訳だが、まさか従姉に頼ることになるとは思わなかった。頼れるから頼るしかないのだが。

 

「アンの奴……まさかその好きなヤツを追ってきたのか……?」

 

 ユウキは自分の知る頃の幼き少女の後ろ姿を思い浮かべつつ、彼女が無邪気に自分の将来の婿(フィアンセ)を自慢気に話していたのを思い出す。

 あれから恋は成就したのかと、顔見知りとしてユウキは気になる訳でもあるのだが、きっと叶ってないからこっちへ来たのだろうと思う。

 

「まぁ、その内分かるか」

 

 そう言ってベッドから身体を起こすと、丁度妹二人が部屋へ突入してきた。

 

「「ユー兄ぃ!!」」

 

 「ぽーん」とでも効果音が付きそうなぐらい勢い付けて飛んできた二人を、ユウキはその身に大ダメージを受けながら耐え切った。

 甘える子猫の如く妹姉妹の姉であるホノカは、ユウキの懐に入っては胸板に頬を付けており、妹であるリリカはユウキの腕を力強く(?)引っ張っていた。

 

「どうしたお前ら……ゲホッゴホッ」

「久しぶりのユー兄ぃだから!」

「また一緒に暮らせるね!」

 

 猫だったらゴロゴロと喉を鳴らしていてもおかしくない二人は、そう言ってユウキにその小さな身体を擦り付けるようにすり寄り、最終的には膝の上にちょこんと座る形で収まった。

 こんなことにやや複雑な感情を抱きつつ、根っこでは甘えてくる妹を可愛いと思っていたユウキは、溜め息混じりに妹のこの態度を嘆いていた。

 

「甘えてくるのは嬉しいんだが、思春期になればきっと蔑んでくるんだろうなぁ」

 

 大体現実はそんなものである。ギャルゲの妹系ヒロインのようにブラコンが昇華して恋人になるとかは論外であり、ラノベの妹系ヒロインのように兄に対して親身にはなってくれないものだ。「昔はあんなに甘えてきてたのに……」とか言うと「それは昔のことでしょっ!」と突っ込まれるのがオチ。つまりはそういうことだ。

 ユウキは、兄としてのそんな心境を今更悟ることになるとは考えてもみなかった。案外現実は非情である。

 

「まあ、それはそれで仕方ないか」

 

 羞恥心というのを余り理解していない曖昧な小学生だからこそ、こうしてベッタリくっ付いてられるのだと、ユウキは納得する。

 まあ妹を持つ兄なら誰でも通る道か、などと考えながら。

(そういや、ツクモ姉ぇんとこはそんなことなかったような……)

 ふと姉貴分であるツクモのその妹を思い出すが、あれは最早変態淑女の域である。「いや、あれはシスコンが行き過ぎただけか」と変に納得させたユウキは、余り深く考えないでおく。その内どこからともなくダーツが飛んできそうだからだ。

 そこへ部屋の戸がノックされる。

 

「ユー君、お夕飯出来たからね~」

「おう、二人共連れてくよ」

 

 母親のエレナの声に、ユウキは膝の左右に座る妹達を抱えながらそう言った。

 そのまま二人を抱っこする形になるのだが、併せて六十六キログラムにもなる十歳の少女二人を同時に抱えることは、ユウキにも中々辛かった。

 そのままリビングへ出ると、ユウキにとって久しぶりの母親お手製料理の匂いが鼻を(くすぐ)る。それと同時にお腹が鳴り、ユウキは羞恥で顔を赤らめた。エレナはそんな息子の様子を見て笑いかける。

 

「それじゃあお夕飯食べましょう!」

「「「いただきまーす!」」」

 

 子供三人が席に着き、早速夕飯を食べ始める。

 つい最近までツクモの家に居たユウキは、なんだか不思議な感覚を覚えていた。

 初めて訪れた新しい家に、母親の手料理とは中々に新鮮な気分だからだろう。

 シチューを掬いながら口に運ぶホノカとリリカを眺めつつ、ユウキはふと先程のツクモとの話を思い出す。

 

「そういや、アンっち行く件だけど、ツクモ姉ぇも連れてくよ」

「あらそう? ……んー、マサキちゃんは?」

「残念だけど遠慮されたよ」

 

 その答えにエレナは、実に分かりやすい不満足そうな顔をする。だが気を取り直して今度はヤヤについて聞いてみる。

 

「ヤヤちゃんは?」

「聞いてない」

 

 スプーンを加えながら答えたユウキは、そう言えばと思い出した。まあヤヤは居ても居なくても良いかと気楽に考えていると、思考がお見通しなエレナがニッコリと笑う。ユウキは嫌な予感がしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕飯後、ユウキはヤヤの家に電話を掛けていた。何故掛けているのかは、母親に迫られたからと言うのが正しいだろう。

 

「……あ、もしもし。夜天嬢雅さんのお宅でしょうか? 芳堂木綿樹と申しますけども。夜分遅くにすみません。ヤヤさんは起きていらっしゃいますか?」

 

 電話が繋がった途端、受話器に話し掛けたユウキは、こんな時間に何をしているのだろうという疑問の中、相手の対応を待っていた。

 どうやら芳堂木綿樹と言う名前が出た時点で相手側にも伝わったのか、即座に「お待ちください」という返事が来た。

 しばらくして受話器からヤヤの声が聞こえた。

 

『こんな遅くに何かしら?』

「オイ、いつもの口調はどうした。いつもの口調は」

『二人の会話の時ぐらい許してよ。周りに誰も居ないんだから』

「まぁそうだけどよ」

 

 珍しく古風な口調が消え去ったヤヤの口調は、いつもと比べて穏やかで優しい声音に聞こえる。

 ユウキもユウキで何も言えず、渋々納得するように口籠った。そんな様子にヤヤは悪戯っぽく笑ってみせる。

 

『アハハッ、ユウキったら面白いね。……それで? 用件は何?』

「今度、顔見知りっちに行くんだけどよ。ヤヤも来るかなあってさ。ツクモね……先輩とか、ホノカとリリカも来るし」

『あの三人が? うーん、ちょっと待ってね、ササネに確認してくる』

 

 そのまま受話器を置いて行ってしまったのだろうか。向こう側からゴトンという音と共に、どこかへ走り去っていく音が聞こえた。

(こういうところはいつも通りなんだよなぁ)

 口調が変わっても普段の行動や仕草までは変えられないか、と染々思っていると、案外早くヤヤが戻ってきた。

 

『一応大丈夫だって。当日は迎えに行こうか?』

「いや、向こうから迎えが来るらしいから、俺の家に来て――あぁいいや、俺がお前を迎えに行くよ」

『………っ! は、恥ずかしいこと言うなバカ!』

「何がだよ」

『とにかく、ちゃんと迎えに来てよ?』

「おう」

 

 話を逸らしたとかそんな余計なことは言わず、ユウキはただ頷いた。そのまま他愛もない話をした後に、「また明日」と互いに告げて受話器を置いた。

 ユウキはまた、何とも不思議な感覚だと、再度思い耽る。

 

 

 

「まあ取り敢えずは、週末まで待つか」

 

 

 

 こうして、また新たな出会いと再開が、ユウキ達に待ち構えることになる。

 

 




今回はここまでとなります。
まだコラボ側のキャラは厳密に言うと出てきてませんが、内一人は誰が出てくるのか、予想がつくのではないでしょうか?
ではまた次回、ノシ

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