ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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Collaboration EPISODE-13:エクストリーム!

「くっ、あんなフェース見たことねーぞ!」

「そりゃあな! 俺だって逆に聞きてえさ!」

 

 ソースケのフォースバレットとキョウヤのエクストリーム:Rfが、漆黒のエクストリームを前にそんなことをボヤく。それで戦況が変わるなら是非とも変わってもらいたいものだが、お生憎様そう簡単に変わるものでもない。

 

「ソースケ、俺が行く。お前はさっきお前を撃ち落としたヤツを探して叩いてくれ」

「なっ、そんなわけには行かねーだろ! お前にだけカッコいい思いはさせるかよ!」

 

 キョウヤの提案を一蹴したソースケは、フォースバレットを動かしてエクストリーム/ナハトに対し四門一斉射をお見舞いしてやる。すると十二枚中四枚のシールドがファンネルのように動き、放たれたビームを軽々と防ぐ。その隙にエクストリーム/ナハトが動き、即座にフォースバレットへと張り付いた。

 

「うおっ、速ぇ!?」

「ヘッ、灼熱のマーズブレードの錆びにしてくれる!」

「させるかよぉぉぉっ!!」

 

 刀身が燃えたマーズブレードがフォースバレットに迫るものの、それをエクストリーム:Rfの飛び蹴りによって軌道を阻害されてしまった。しかしそれで黙るユウキではなく、エクストリーム:Rfに一番近いシールドからマーズブレードが飛び出して、今度はエクストリーム:Rfへと攻撃が迫る。

 

「マジかよ! シールドん中にも剣が――んがっ!」

「セーフ! 攻撃の隙もあったもんじゃねえな……」

 

 そこでフォースバレットがエクストリーム:Rfを後ろへ引っ張ることでギリギリ躱すことが出来た。まさか死角となった場所へ、思いがけない攻撃が来るとは用心深い。今の二人の心境はそんな所だろう。

 対するユウキはあと少しで仕止められそうだったエクストリームを逃したことで、内心焦燥感に駆られる。本来ビルダーである自分は一体何をしているのかと、ふと疑問に思うものの振り払う。その間にも、相手は体勢を整えかけており、ユウキも次の手を考えながらもコンソールを使って両手のマーズブレードを構え直す。

 

「あんなんがマキブに居たらどう思うよ、キョウヤ」

 ふとソースケがキョウヤに問う。それに対してキョウヤは面白半分に答えてみる。

「射撃が無い分、大体エピオンと同じだな。……だが脅威なのはそのシールドビットみたいな物と、その中に格納されてるブレードだ。キュベレイみたいな打ち上げとかありそうだぜ」

「射撃がガードか格闘に振られたエクストリームねぇ。あんなんがもし実際に居たら勝てんのかよ」

「んなもん、俺がゼノンでぶっ飛ばしてやるよ」

 

 意気揚々と語らうキョウヤにソースケは苦笑いする。そりゃそうだな、と陽気に返しつつソースケは、目の前を見つめ直してからコンソールを握り直す。相手が近距離しか使えないのなら、遠距離から攻めればいい。

 

「そんじゃ、一斉射行くぜッ!」

 

 フォースバレットの名の通り、両肩に積まれたその四門のドッズキャノンからビームが放たれ、一斉にエクストリーム/ナハトへと直進する。しかしそれを見越したかのように四本の剣を投擲、それらは全てフォースバレットが放ったビームへと当たる。

 

「なっ、当たった!?」

 

 あり得ないと思った途端にビームが掻き消され、ソースケは更に驚愕した。それに続いて、別角度から今度はキョウヤが攻め込む。

 

「ソースケだけじゃ、ないんだぜ!」

「ハッ! そんなこと分かってんだよ!」

 

 浮遊するシールドでその拳を防ぎつつ、ユウキはまたしてもシールド裏から剣を取り出しては、エクストリーム:Rfに向けて一閃する。しかし負けじと腕で受けたキョウヤは、待ってたと言わんばかりに口角を吊り上げた。

 

「この瞬間を待ってたんだよ! ――ソースケ!」

「えっ? ……あ、あぁ! もう一回喰らえよ! 今度こそは当ててやる!」

「オイオイ、この角度じゃ味方も巻き込むじゃねぇかよ!」

「俺の心配をしてるならお門違いだぜ!」

 

 ユウキは直ぐ様マーズブレードを引き抜こうとするが、上手いこと腕に食い込んでいて中々抜けない。その間にも背後からフォースバレットの砲撃が開始される。強く歯を噛み締めたユウキは剣を手放して躱し、キョウヤもそれに合わせてユウキを追った。

 

「待ちやがれっ!」

 

 キョウヤが上昇するエクストリーム/ナハトの足を掴もうとすると、どこからともなく爆発が起こる。

 

「ぐあっ!? ――何だ!」

 

 当たった方向を探すと、その先には右肩の360mmキャノン砲から煙を吐くガンダムが居た。地上戦に特化したガンダムを重装化させた砲撃機。重装型ガンダムがそこに居た。

 

「陸ガンか! ……ソースケ!」

「ったく、人使いが洗いっての。帰り何か奢ってもらうぜ!」

 

 軽口を叩きつつもソースケはシグマ・ロングブレードライフルを腰裏から取り出し、重装型ガンダムへと向ける。

 ミナツも当然それを察知して肩部キャノン砲の弾種を切り替えると同時に、降ろしたウェポンコンテナから180mmキャノン砲を構え、肩部キャノン砲と180mmキャノン砲を交互に放った。

 ソースケは無駄だとばかりにロングブレードライフルを再び撃とうとすると、先に飛び出してきた砲弾が空中にて破裂し、重装型ガンダムに当たる筈だったビームが()()()()()()

 

「ビームが消えた?!」

「あらあら、驚くにはまだ早いわよ?」

 

 舌打ちしたくなる衝動を抑え、ソースケは三度撃とうとするがやはりビームが出ない。それを不思議に思ったソースケは背後のキョウヤを見てみると、獅子咆哮を使えずに戸惑っているエクストリーム:Rfが見えた。

 

「まさかここら一帯の粒子が――ヤバい!」

 

 ソースケが気付いた時には遅く、180mmキャノン砲から放たれた砲弾が左腕へと直撃し、肘から下を持っていかれる。 左前腕だけで済んだのは奇跡だったが、もしそれが胴体に当たっていたら……そう考えるとゾッとした。

 

「ビームに頼りすぎるのもお困りものね。ふふふ、私をどこまで楽しませてくれるのかしら?」

「ぐっ……」

 

 苦戦を強いられる羽目となったソースケは思わず歯を噛み締めてしまう。

 時を同じくしてキョウヤもまた、一部の技が使用不能となって困惑していた。しかしエクストリーム:Rfはここぞとばかりに拳を突き出す。

 

「この動き、お前に見切れるかぁー!? ハイパァァァッ! 俺様ナッコォゥ!!」

「なっ、百烈拳!?」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ! オラァッ!!」

 

 エクストリーム:Rfから強烈な百烈拳を見舞われ、対するエクストリーム/ナハトが押され始める。ユウキは先程ミナツが発射したビームが消える原因のお陰で覚醒が使えない。それは相手も同じだが、押されていては攻めに転ずることもできない。まさに手詰まりと言ったところだった。

 

「マジかよ……。あれの効果時間は十分、その前に決着を着けなきゃ――」

「続けてこれだァッ!」

 

 ユウキの機体が大きな隙を作ると同時にキョウヤは立て続けに攻勢へと入るが……。

 

「――覚醒が、使えない!?」

「油断したな!」

 

 装甲が開かず、クリアパーツも輝かないエクストリーム:Rfにキョウヤは驚愕した。その予想外とも言える隙にユウキはマーズブレードを振り翳す。既に次の技の為に構えていたキョウヤだが、それが仇となって防御へ移行できずに斬撃を受けてしまった。

 

「ぐあぁっ!!」

「お返ししてやんなきゃな! ――神椎流抜刀術“速水・矛槍突(むそうとつ)”!!」

 

 マーズブレードを一本だけ仕舞い、上段で構えてはエンジン音の如き轟音を響かせて、エクストリーム:Rfへと襲いかかる。先程の反動が大きいが為に上手く動けないキョウヤは怯んだ機体を強引に動かし、横へと無重力ダッシュする。

 

「躱された?」

「躱したぜ!」

 

 未だ覚醒が出来ない謎を考えるキョウヤは、背後のソースケを見てみると、攻撃するどころか避けることに集中しているようだった。更に困惑していると、間髪入れず再び相手が斬りかかってくる。

 

「くっ! 覚醒さえ使えれば!」

「教えてやんよ、覚醒が使えない理由」

「な、何?!」

()()()攪乱(かくらん)幕ならぬ、()()攪乱幕さ」

 

 ユウキは得意気にそう言ってみせる。キョウヤは思わずポカンと呆けてしまうが、ユウキはそれを無視して話し続けた。

 

「これはビームだけでなくプラフスキー粒子自体に作用する。つまり粒子を用いた機能及び攻撃全てが無効となるわけだ。あのAGE-2には可哀想だが、ビーム以外の武器も持たせるべきだったな。生憎俺は実体剣しか持ってないし、あのAGE-2と対峙してるガンプラもビームサーベルを除いて実弾しか積んでないから問題ないんだよ。

 次に覚醒についてだが、さっき言った“プラフスキー粒子自体に作用する”って言葉、そのままの意味だ。覚醒には出力上、周囲の粒子と内包している粒子を併用する必要がある。だが、周囲の粒子の補給も無しでは、内包している粒子のみでの覚醒ってのは正直言って無理だ」

「そうなると、お前のエクストリームも覚醒出来ないじゃんか」

「だからその前に片を着けるの、さッ!」

 

 容赦なく振り切ったマーズブレードを寸で避け、キョウヤは納得した様子で再び振られたマーズブレードをいなしながらローキックを加えた。受け流されたユウキはなし崩しにローキックを喰らい、その反動で後ろへよろめく。

 

「ぐはっ、なんて蹴りだよ。空手でもやってたのかよ」

「ご生憎様、俺は昔にサッカーもやってたのさ」

「成る程、ならこれはどうだかな?」

 

 ユウキの台詞にキョウヤは直感的に距離を取る。――これはマズイ、と。気付けばエクストリーム/ナハトの周囲には炎が剣先に向けて渦巻くが如く集まっていた。やがて炎は剣を覆い、切っ先はこちらへ傾く。

 深く腰を入れては左手でマーズブレードを構え、その刀身に右手を添える。ユウキは息を噛み殺し――

 

「神椎流抜刀術“速水・牙突”!」

 

 ――突き放つ。

 一瞬で間合いを詰め、エクストリーム:Rfの胴に炎の螺旋が突き抜けるかと思いきや、左腕を掠めるのみに止まった。いや、その()()では済まないだろう。

 

 

 

「掠めただけだってのによぉ……何なんだよこの威力……」

 

 

 

 加速力と回転力が足され、剣の質量を以て捩じ込まれる。運動エネルギーと回転力を足せばそうはなるだろう。ましてや速度が速ければ速いほど。

 

「案外ガンプラバトルでも科学の実験はできるんだぜ?」

「だからってどうやったらこんな威力出せるんだよ、掠めたのに()()()()()()()()なんてよ」

 ユウキはその言葉に微笑しながら言い返した。

「ご生憎様、俺は昔に剣術をやってたのさ」

 

 ニヒルに微笑んだユウキに対して、キョウヤはしてやられたように笑うしかなかった。

 

 

 

 

 

「良いぜ。そのエクストリームの力、学ばせてもらう!!」

 

 

 

 

 

 空中を蹴り瞬時に間合いを詰めたエクストリーム:Rfは、その腰から二本の大剣を引き抜いてX状に切り上げる。それをマーズブレード一本で逸らし、距離を取って二本へと持ち替えたエクストリーム/ナハト。その間にユウキは残りの効果時間が振り切ったのを見て、仕方がなしに覚醒を発動させるしかないと踏み切った。

 

「やるなら今だ! ……業火の(つるぎ)で燃やし尽くせ! マルス・フェースゥッ!」

 

 全身のクリアパーツが紫へと怪しく輝き、燃え盛る炎も灼熱から紫炎へと変化する。轟々と機体の周囲を駆け巡る火柱は、やがて再びマーズブレードを覆っては再び燃え盛っていた。各部に追加された一部の装甲もスライドされて内部のクリアパーツが露出し、宙に浮くシールドもインパルスの機動防盾の如く展開されていた。

 その本気を見てキョウヤも口角を釣り上げ、自分も本気を出さないとならないかと結論付けた。その為か、既にコンソールを操り極限覚醒を選択する。

 

「その本気、受け取った!」

 

 エクストリーム:Rfもまた極限覚醒し、全身のクリアパーツが青い光を伴って各部の増加装甲が展開する。内側から露出したフィン状のパーツもまた青く光り、時限式の極限覚醒が完成する。

 そのまま両の手に持った大剣――デュアル・タキオンスライサーを繋ぎ、回転させながら振り回す。そして躱されつつ様子を窺っていたキョウヤは、ほんの一瞬の隙を見付け、デュアル・タキオンスライサーを左手に持ち替えては右手を突き出した。

 

「極・限・全・力!! ラァァイジングゥゥ!! バンッカァァァァァァッ!!!」

 

 本気の一撃が、エクストリーム/ナハトを容赦なく襲う。それを避けることすらせず、真正面から受け止めたエクストリーム/ナハトは、顔面を捕まれ、そのまま掲げられる。

 

「ラァァイズゥ、エンドッ!!」

 

 掛け声&爆発音と共に更に上空へと突き上げられたエクストリーム/ナハトは、そのまま自由落下の法則にしたがって落ちていった。

 

「………勝った……俺が勝ったのか?」

 

 河へと落ちていったのを確認して、キョウヤは覚醒を止める。それと同時にエクストリームから輝きは失われ、装甲も閉じ始めた。

 

「もうあんなエクストリームと戦うのは御免だな」

 

 戦って心の中から感じたことはたったそれだけ。嬉しさが沸いてこないのは不思議だが、キョウヤはそれを振り払って、直ぐ様ソースケの下へと駆けていくのだった。




こうもやらせたいことがあると長続きしますね……。あ、どうもカミツです。

もう少し短くするべきなんでしょうけれど、絶対これ次回も丸々一話バトルで費やしそう。そして受験のことで(精神的に)死にそう。

恐らく六月も生きてたら投稿すると思います、多分。
ではまた、ノシ

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