――これは、ガンプラが好きな少女が、ガンプラバトルを通して繋がる恋の物語。
私は
私達が通うこの学校、聖蘭学園は日本でも有数の名門校としても知られていて――事実私も入試はギリギリだった――、特に部活動に対しては強く力を入れている珍しい学校でもあります。
ここでは入って間もない入学初日から数日間だけ、部活動の新入生引き込みがあるらしくって、私は趣味を隠しながらも友達と回っていました。
「女の子らしく料理部とか、吹奏楽部にしない?」
「えー、軽音部でロックしようよ~! ジャーンって♪」
「アンタはボーカルとギターやりたいだけでしょ。……ユーちゃんは?」
「ふぇっ!? わ、私?」
「うん、どんな部活が良かった?」
唐突に友達二人からそんなことを言われた私は、少し言葉に詰まる。確かに二人とならばどれも楽しかったけれど、私は手先が器用でもおっちょこちょいだからなぁ。
悩みながらも歩いていたその時――。
「オイ! 向こうでガンプラバトルやるってよ!」
「マジかよ! 見に行ってみようぜ!」
「早くしねぇと終わっちまうぞ!」
男子達がそう叫びながら駆けていくのを見た。何故か私の胸に込み上げてくるものがあって、私はそれが何なのか、余り理解できていなかった。
「こらー! 男子走るなー! ……ったく、ガンプラバトルなんて今のご時世どこでも見れんじゃない。ねぇ? ユーちゃん」
「ガンプラ……バトル……ッ!」
「あっ、ちょっ、ユーちゃん!?」
でもそれを抑えきれなくて、私はついぞ走り出してしまった。彼らが向かった方向からして体育館だろうか。私は覚えたばかりの地図を頭の中で描きながら、息が切れるのもいとわずに走り続けた。
体育館までやって来たところで私は、その大きな戸をこっそり開ける。中は暗く、天井の照明も点いておらずカーテンも締め切っている。そして体育館中央から漏れる青い光――間違いない、ガンプラバトルだ。
私は自分で見えそうなところまで走っていって、その光景をようやく目にした。
赤い重武装なガナーザクウォーリアが、青いガンダムデュナメスの改造機と撃ち合いをしているのが見える。
機体自体のポテンシャルには差が歴然だというのに、まるで元から互角だったと言いたくなるようなバトル。デブリ帯の宇宙空間の中を縦横無尽に駆け回りながらも、ザクはプロヴィデンスの複合兵装防盾のような装備とビームライフルで牽制し、デュナメスはGNスナイパーライフルⅡを手放してGNピストルに切り替えては正確に狙っている。
そこで動かなかったデュナメスが近くのデブリを蹴り飛ばし、その反動で一気に距離を詰める。その行動に相手も驚いたのか、咄嗟ながら複合兵装防盾からビームサーベルを形成して斬り掛かる。しかし寸で躱され、デュナメスは左前腕に付与された増加装甲から小型のGNミサイルを二発、至近距離で当てたついでにGNピストルで撃ち抜いた。
《BATTLE END》
機械音声の後にしばしの間が空き、直ぐ様歓声の中に沈む。照明が点いた後も、観客にいた生徒達は口々に先程のガンプラバトルを話しており、その場を立ち去っていったのはもう少し後のことだった。
そんな中で私は目の前で巻き起こった光景に、未だ微動だにできずにいた。震えて、足の一歩も踏み出せない。体が、手が、足が、心臓が震え、私は体育館中央で会話する二人の男性に見入っていた。
久々に見た、あの時と同じ躍動感。今私は、すごく興奮しているのかもしれない。
ここにも、模型部があるんだって。
■
その後私は、急いで教室へ戻って、机の中に置いときっぱなしだった部活動の入部希望届けを引っ張り出す。早速お気に入りのボールペンを手に、入部希望の欄には母親譲りの綺麗な字で「模型部」と書き綴った。その下の希望理由は……。
「希望理由は……好きなガンプラを、誰かの大切なガンプラを作りたい……から、かな」
えへへ、と一人笑いながら入部希望届けを抱いた私は、ふと辺りを見回してからその場を立ち上がって、下校時刻になる前に先程の体育館へと駆け出した。
また息が切れてるのを気にせずに体育館へ辿り着くと、私は得体の知れない何かに衝突してしまって、突き飛ばされた。
「きゃあっ!?」
「おわっ!?」
思わず尻餅をついてしまった私は、ハッと気付いて目の前のぶつかった何かを把握してしまう。
目の前で大の字になって倒れていた男性に、思わず私は慌てふためいてしまった。
「あわ、あわわわわ……」
「だからあれだけ走るなって言ったんだよ、ツッキー」
「んなこと言われてもなぁー」
しかし私の動揺も余所に、現れた二人の男性に私は更なる驚きを得る。何せさっき中でガンプラバトルをしていたその人なのだから。
驚きに驚きが重なって、更に慌てていたのが災いしたのか、もう頭の中はパニックと言うレベルを超越しかけていた。
そんな端から見たら呆然と座り尽くしている私に気付いたのか、片方――ぶつかってない方の男性が私に手を差し伸べてくれた。
「君、大丈夫? ごめんねぇ、ツッキー周りを見ないから」
「ナツキには言われたかねぇよ!」
その言葉でようやく正気に戻れた私は、ふと我に返ってその手を取って立ち上がる。
いきなりのことで感謝の言葉を言った直後、押し黙ってしまう。そんな様子を見て「ツッキー」と呼ばれていた男性が、恐る恐ると呟いた。
「もしかしてナツキ、怖がられてんじゃね?」
「ツッキーの方が顔付き怖いと思うけど」
「お前はその得体の知れねぇ笑みが怖えんだよ!」
キレて突っ込みを入れるツッキーと呼ばれた男性を放置して、まだ押し黙る私にナツキさんが優しく声を掛けてくれました。
「まあツッキーは剣幕がすごいから驚くのも無理ないけど、どうして体育館に来たんだい? もうこの後ここを使う部活はなかったと思うけど……」
「あっ、その私はっ」
「この見た目だったらマネージャーとしてやってけそうだもんな。ジャージ着てスポドリ持って『お疲れ様です♪』とか最高――って何だよナツキ、その目は」
「いやぁ、今日のツッキーは凄くお喋りだなぁ、と。それで、君は一体何の用かな?」
「えあっ、そのっ、模型部の入部届けを出したくてっ」
言葉に詰まった私の台詞に、しばし沈黙が流れる。二人の顔は明らかに面食らった顔で立ち尽くしていて、私もどう反応したら良いのか分かんなくて……心臓が破裂しそうで、どうにかなりそうだった。
そんな時、思考が復活したツッキーさんが再び恐る恐ると尋ねてきた。
「え、なに? 俺らの部活入るの?」
「は、はい……」
「ナツキさ~ん、この子、俺らの部活入りたいってよ~」
「あのっ、耳元で叫ばなくても」
言った側からツッキーさんは直後に宙を飛んでいて、ナツキさんは笑顔で私の入部届けを受け取ってくれた。
そこでようやく安堵できた私は、ふと胸を撫で下ろす。入部届けをまじまじと見ていたナツキさんは、直ぐにクスリと吹き出して「そっかそっか」と笑いだした。私は変なことでも書いたのだろうかと慌ててしまって、また呆然としかけているとそうじゃないとナツキさんが制してくれた。
「大切なガンプラを、か。読んだ感じ君はビルダーかな?」
「はい! バトルはちょっと苦手ですが、製作や改造でしたら得意です」
「それなら丁度良かった。僕達はファイターだから、ビルダーが居てくれるのは心強い」
そう言って笑顔を見せてくれたナツキさん。自然と私も笑顔が溢れ、私は自分がまだ自己紹介していないことに気付く。
「あ、そう言えば私、まだ名前言ってませんでしたね。……私、芳堂木綿菜って言います! 好きなMSはデルタプラスです」
「僕は副部長の
「は、はい! 私、頑張ります!」
「それじゃあこれは僕から顧問に渡しておくから、君はもう帰ると良い」
終始笑顔のままそう言われて、私は先輩の厚意に甘えてお
教室へ戻ってから鞄を抱えて、そそくさと正門まで走ってくると、そこにゲーム機を片手に暇そうに空を見上げている少年がいた。
「………あ」
「んぁ………アンタ、誰?」
私は声が漏れていたことに気付いて顔が赤くなる。
(ヤバイ、思わず見とれてた! どうしよう……変な人だと思われちゃう……)
内心慌てる心を制して、私は高鳴る心臓を抑えようとする。けれど私を射貫く翡翠色の瞳が、私を再び金縛りに掛けようとしていた。
「わ、私は……一年の、芳堂木綿菜、です」
「へぇ、そっか。俺も一年なんだ。
「あ、よろしくです」
素っ気なくも、何処か惹かれてしまう雰囲気に、私は飲まれそうになる。
これが私と彼の、運命の出会いだったのかもしれない。
続きません。続かせません。
どうもカミツレです。嘘です、カミツです。
今日はエイプリルフールなので、折角だから気分転換にやってみました。突貫工事なのでクオリティは前書きの通りご容赦ください。
性別をトランスフォームさせたら、見事に少女漫画風になったゼ☆ 後悔もしてないし反省もしていない。
さて、明日で鉄血も終わって、次期のガンダム作品を全裸待機する所存ですが、何やら妹からUCのその後の時系列やるとか聞いたんでwktkしてます。情報とか集めないんでどうなのか知らないんですが(笑)。
次回は普通に本編……かなぁ? 何か面白いネタでも思い付けば多分上げます。
ではまた、See you next time. good by!