ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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Collaboration EPISODE-7:また、どこかで会いましょう!

 アスナがビス子との戦闘を終えるその少し前、月面都市グラナダ内部ではアイカがナノを発見する。

 

「前のようにはやられないわよ!」

「おや? 君が昨日の……。成る程、確かに街に出るときには変装しないとね」

「今はそんな話はいいでしょう!」

 

 レッドデスティニーに向けて放たれたビームは、電磁ナックルにて掻き消される。ナノはそれを確認しつつ、ただひたすらに各所を移動しながらGアンバーを構えては撃っていた。

 流石のローザも苛立ちを隠しきれず、100mmマシンガン改に持ち替えてはジム・イェーガーに発砲する。

 

「ああもう焦れったい! いい加減当たんなさいよっ! このっ!」

「その程度の射撃でこの私に当たる筈がないだろう? ………ん?」

 

 余裕ぶるように言ったナノは次のビルに着地した瞬間、嫌な予感が過る。それも直ぐに確信へと変わった。足下のビルが倒壊し始め、ジム・イェーガーの脚部がもつれ込んだ挙げ句に、抜け出せないと言う状況に陥るという、ナノではあり得ないミスをおかしてしまった。しいて理由を上げるとならば、レッドデスティニーの放った銃弾がジム・イェーガーの降り立った地点に幾らか当たっていたから、だろう。

 ナノも突然の事態に困惑せずにはいられなかった。

 

「なっ!? 足場が崩れて、身動きがっ!」

 

 口をぱくぱくと開きながらナノはジム・イェーガーを起こそうと機体を動かそうとするが、機体が激しく動くと同時にビルの床をどんどんと突き抜けて行く。

 

「ふふ、一階へ参りま~す♪」

「こんな時に、君はっ!」

「勝手に自分から落ちて行ったんじゃない。……このまま真上から蜂の巣にしてあげても良いけど?」

「それはどうかな?」

 

 ビルの穴を覗くレッドデスティニーに対してGアンバーを真上に向けて放つ。寸で躱すことのできたローザは額に冷や汗が滲み出る。

 

「良いじゃない、やってやるわよ」

 

 ローザは形振り構わずコンソールを前に押し出す。機体を穴に落として、シールドを前面に向けて構え、高速で落下する。再びGアンバーから高出力のビームが放たれるものの、シールドが僅かに歪むだけで済む。そのまま一階へと落っこちてきたレッドデスティニーは、シールドを捨ててジム・イェーガーの両肩を掴む。

 

「こっからは我慢比べといきましょうか! さぁ、意地を見せて、EXAM!!」

「なぁっ!?」

 

 レッドデスティニーのセンサーが緑から赤へと変色し、スラスターの出力が倍近く底上げされる。そしてジム・イェーガーを下にローザは機体を前進させた。

 

「Lady GO!!」

 

 無茶苦茶なやり方にナノはとんと狂わされていた。そんな時か、ビス子の撃墜の報せが届いたのは。ナノは「はぁ」とやる気なく溜め息を吐いた後にマップを確認する。

 

「このままだと、エイト君と合流するかな?」

 

 幾つものビルを突き抜けていくレッドデスティニーとジム・イェーガー。そんなシュールな光景はいつまでも続くわけがない。それをナノは承知でほっといているが、もう一つの心配を忘れていた。

 

 すると、レッドデスティニーのスラスターから光が消える。そしてジム・イェーガーも次の壁にぶち当たって止まる。一体何が起こったのか、ローザとナノは困惑する。するとレッドデスティニーから光が消え、力無く横たわってしまった。

 

「ま、まさかとは思うけど………」

「えーっ!? こんな時にガス欠っ!?」

 

 その言葉と同時にビルが倒壊し、ジム・イェーガーはMSとビルの二重下敷きとなったのだった。

 

「案外呆気ないなぁー。……まぁ、そう言うのも良いか、はっはっは」

 

 ナノは素直に納得して機体を放置する。どう足掻いても、こんな状態では動きそうにもなさそうだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナノとローザの呆気ない終わりと同時刻、ハーゼとエイトの接戦は終わりを知らずに競り合っていた。

 

 

 

「スゴい、昨日の今日とは思えない……」

 

 エイト君が舌を巻くようにそう言うと、ビームエストックが飛んでくる。それをエイジスで弾くと、次にビームザンバーの振り下ろしがやって来る。これらを次々といなし、躱し、受け止めるのを続けていると、ワンパターン化しているのに気付いたのか、新しくアクションを振りだす。それは、エイト君が珍しくバスターガンを使って私を狙ってきたことか。

 さも普通にエイジスで逸らし、GNライフルで牽制しつつ近付く。それらを予測していたのか、近付いてきたことを良いことに、ビームエストック二刀流で接敵させてきた。私もこれには驚かざるを得なく、一瞬の隙を作ってしまった。

 

「しまっ――」

「そこだッ!!」

「トランザムッ!」

 

 エストックが突き刺さる前にアテナは深紅に染まり、機体を僅かにずらして致命打を防ぐ。そこで伽藍堂(がらんどう)となった胴に向けて蹴りを加え、V8を突き飛ばした。

 月面を転がり横たわった青と白の機体に、GNソードⅢを突き立てようと飛び掛かるものの、横に転がることで避けたV8はなんとか体勢を立て直す。空を突いて月面へと虚しく突き刺さったGNソードⅢを強引に引き抜き、引き抜いた勢いで更に飛び掛かる。

 

「なんて無茶苦茶な」

「今度は私の番」

「……ッ!?」

 

 叩き斬るかの如く振り下ろされたGNソードⅢを回避したエイト君を、更に追いかける。深紅に染まったアテナの追従が始まった。

 全速力で逃げに徹するエイト君を勝利の女神(アテナ)は決して逃さない。再加速で更に速度を増し、V8にその手を伸ばす……が、

 

「今だ!」

 

 振り向いたV8に顔面を蹴りつけられ、思いっきりバランスを崩した私は地に叩き付けられる。それと同時にトランザムが強制解除され、深紅から元の純白へと戻る。

 残る粒子も後僅か。それをチラリと一瞥して、私は久々に焦りを感じていた。日常生活の時とは違う、別の、何かに詰め寄られる感覚。それをはっきりと感じた時、

 

 

 

 

 

《TIME OUT》

 

 

 

 

 

 私の張りつめられた緊張の糸が解け、私は袖で額の汗を拭った。結果は時間切れによって、機体の残り数によって分けられる形となる。こちらはレッドデスティニーが、向こうはドムゲルグが撃墜された為、両方とも二機ずつ残ったことにより引き分けとされた。

 

「引き分け……か」

 

 コックピットの中で私は、乾いた笑い声と共にそんなことを呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三度(みたび)ラウンジへと戻ってきた私達にあったのは、「楽しかった」や「惜しかった」などの、至って普通のゲームにおける感想だけだった。それが一番だとも私は思う。どんなに悔しくても、惜しくても、楽しかったらそれで良い。「終わり良ければ全て良し」なんて言葉もあるくらいだし。

 

「お疲れー」

「うむ、良き試合になった。感謝するぞナノ」

「それはこっちの台詞だよアスナ。君が“勝利の女神(アテナ)”と友達だったのが幸いだった。エイト君に良い経験を積ませられた」

「ッたく赤姫よォ、テメーはエイトのことしか頭にねーのかァ?」

「ば、ばか言うなビス子! 別に、エイト君のことだけじゃあない!」

「顔真ッ赤にして言う台詞かよォ。全く、青春だなァ」

 

 皆それぞれ「お疲れ」と言い合う中、ビス子さんがかっかっかと豪快に笑う。からかわれて腑に落ちないナノさんはビス子さんをぽかぽかと叩く。そんな光景に苦笑いする私達。

 そんな中で私はエイト君に向き直って、改めてお礼を言った。

 

「今日はありがとうね、エイト君。久々に楽しいゲームができた! また一緒に遊べるかな?」

「こちらこそ、ハーゼちゃんとバトルが出来て良かったよ! きっとまたバトルできる。僕はいつでもここ(GBO)に居るから、ハーゼちゃんが好きな時に僕とバトルしよう!」

 

 互いに笑いあって握手する。例えオンライン上であれ、ポリゴンで出来た仮想体であったとしても、そこに出来上がる絆は本物だ。でもそれが現実で通用するかと言えば、答えは否。紙一重の存在であっても、それは全くの別物でしかないから。

 だからと言って全部が全部、本当にそうなるわけではない訳で、私達の場合はそれにあたるだろう。ゲームでも現実(リアル)でも、そこに絆があるのなら話が別だからだ。だからこうして信用できる、信頼できる。

 

「さて、私達はもうそろそろ落ちなきゃなんないし、エイト君達またね」

「うん、ハーゼちゃんもまたね」

「またァ、ぶつかりに来いよチビ助!」

「私達は、いつでも君の挑戦を待ってる」

 

 彼らの言葉を最後に、私の目の前は真っ暗となった。改めてログアウトした証拠だ。……また、やるゲームが増えちゃったなぁ。でも楽しいならそれでいっか。

 

 

 

 私、七種真幸はヘッドセットを外して現実へと帰ってきた。一時間弱しか経ってないのに、何時間も向こうに居た気がするのは、気のせいだろうか。

 

「気のせいじゃないわよっ」

「うわぁっ!?」

 

 唐突に後ろから抱き付かれて、情けない声を上げてしまう。奇襲してきたのはローザ……アイカちゃんだった。まるで私の心境を読んだ風に言ったアイカちゃんは、私の頭を撫でくりまわす。強引なようで気持ちよく感じるのは慣れてきてしまった証拠か。

 そこへアスナ……ヤヤちゃんの声も重なる。

 

「それ程楽しかったと言うことじゃ。何事も楽しければ時間は長く感じる。走馬灯とはまた別のな」

「嫌な例えだね、それ」

「さて、ゲームをしていたにも関わらず汗を掻いてしもうたな」

 

 その言葉を聞いて、待ってましたと言わんばかりにアイカちゃんが腕を振り上げた。

 

「お風呂ー!」

「あ、アイカちゃんは私の身体が目的でしょ~」

「あら、勿論汗を流すのもあるわよ? ……ついでだけど」

「ついでなの!?」

 

 そう言って私を抱き締めたアイカちゃんに呆れつつ、私はヤヤちゃんに目配せした。するとヤヤちゃんが仕方ないと言わんばかりに、アイカちゃんを引き剥がしてくれる。そのままヤヤちゃんが引き摺る形でアイカちゃんを連れていき、私はそれを追う形で付いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、私達が触れあった不思議な時間の一つ。次はどんな出会いが、私達を待ち構えているんだろうか。





と言うわけで、番外章チーム「ドライヴレッド」編これにて終幕です。コラボしてくださった亀川ダイブさん、この場を借りて改めてお礼申し上げます。後、前話と併せ一週間以上も投稿期間に間が開いた事、誠にお詫び申し上げます。

さて、お次もまたまたコラボ回。やると言ったからにはやらざるおえないのです(使命感
イマイチ読みづらい小説ではありますが、今後ともよろしくお願いいたします!

ではまた、ノシ

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