まずは亀川ダイブさんが執筆する「ガンダムビルドファイターズ ドライヴレッド」!
それではどうぞっ!
Collaboration EPISODE-1:邂逅、ドライヴレッド
――喫茶店「White Lily」
ある休日の昼下がり。聖蘭学園模型部一年生三人組こと、マサキ、ヤヤ、アイカは喫茶店に来ていた。
因みにヤヤは珍しく髪を下ろしており、先日マサキに買わされたワンピース(EPISODE-16.5参照)を着ていて、普段とは別人と思えるほど可憐に変貌していた。アイカもまた、アイドル故にトレードマークのカチューシャすら外して茶髪のロングヘアーのウィッグを被り、服も普段のラフな格好とは別なフリルがついたブラウスにロングスカートを穿いていて、こちらも落ち着いた雰囲気に纏まっている。
そんな二人を前にして、マサキは眼鏡を拭きながら苦笑いで話し出した。
「二人共
そう冗談半分にマサキが言うと、二人とも顔を真っ赤にして反論する。
「別に、好きでこういう格好してるわけじゃないわよ」
「そうじゃ、儂らとて正体が割れると困ることだってあるんじゃぞ」
マサキもそう言われて「うーん」と唸る。流石に二人が何を言わんとしているかは分かる。アイカはアイドルだ。ヤヤも大財閥のお嬢様だ(そうは見えないけれど)。
……それよりもマサキは、ヤヤがそのワンピースを着てくるのが予想外でそれどころでもなかった。
何であれ、二人には困ることがあるのだろうが、マサキにはいまいちピンとは来なかった。
「二人共、普段から普段の見た目で外に出てるんだから、その時点でもう遅いと思うけど」
「「ぐはっ!」」
大ダメージを負ったように胸を抑えては、盛大に机へ突っ伏す二人をマサキが起こす。
起き上がった二人は、特に何事もなかったかのように優雅にコーヒーを飲んで、「ふぅ」と嘆息する。
「まぁ、私は何がなんでもこのままで行くわよ」
「アイカちゃんがそう言うならそれで良いけど」
「髪を纏めた所で然程変わりもせぬから、儂は元に戻そう」
「いや、ヤヤちゃんは十分変わるから!」
マサキが咄嗟に突っ込むと、ヤヤはマサキを見て「儂も髪を切ろうかのう……」と呟いていた。
一拍間を置いた所で「そんなことよりも」と言ったアイカは、空気を切り替えると同時に話題も切り替えた。
「取・り・敢・え・ず! 今日こうして出掛けてきたのには訳があるわ!」
「「……わけ?」」
マサキとヤヤの疑問の色が浮かぶ顔に、アイカは自信満々に頷いた。
「ズバリ! 特訓よ!」
「「……はぁ、特訓ねぇ」」
気のない返事と共にマサキとヤヤは同じように答える。そんな二人もお構いなしに、アイカも再び頷いてコーヒーを飲み干す。すると椅子から立ち上がって、トートバッグを抱えた。
「もう出るのか?」
「当たり前よ、場所を変えるわ」
「……何か不安しかないんだけれど……」
「大丈夫じゃマサキ。儂も同じよ」
「それじゃあ早速、向かうわよー!」
溜め息を同時に吐いた二人を差し置いて、アイカは元気よく腕を振り上げる。
こうしてアイカの乗り気な声と共に、一年生三人組一行は目的の場所へと向かった。
■
中心街・中央区 大型ホビーショップ「フリーデン」
「こ、ここは……」
「あら、ここへ来るのは初めてなの?」
「私はゲーセンぐらいしかあまり行かないから」
苦笑いに返すマサキに、アイカは少々不服気味に頬を膨らます。
「マサキちゃんはもっと外に出るべきよ! ……そうよ! 今度から私が休みの日は一緒に出掛けるわよ!」
「えー」
「嫌そうな顔しない! 勿論ヤヤちゃんも一緒だからね!」
「儂もかっ!?」
外野にいるつもりだったヤヤも巻き込み、アイカは満足そうに微笑む。あまり休みの取れないアイドルだからか、余り友人と呼べる人物が少ない彼女は暇を持て余すことが多い為にこう言ったのだった。
マサキも、口ではああ言いつつも、内心ではこれっぽっちも嫌には思っていない。
しかしその強引さが残念だと、マサキとヤヤは同時に溜め息を吐くも、アイカに手を引かれてそのまま店内へと引き摺られたのだった。
さて、いざ中へ入ってみると広い店内にマサキは驚いていた。その様子に、何故知っているのかはさておいて、ヤヤが苦笑しながらこの店の説明を始めた。
「まぁ驚くのも無理はなかろうな。この店はPPSE社の後援、ヤジマ商事と言う会社が経営する大型店じゃ。
全国で十店舗しか存在せん。その代わり店舗内は見ての通り大型なのじゃ。――その中でもこの東京本店は一際広い。理由は言わずもがな、外国からの客足も多いからのう。また店舗内には模型販売だけでなく、バトルスペースや飲食可能なスペース、製作も可能なスペースも確保されておる。気軽にビルダーやファイター達と交流できるように工夫されてるから、初心者や熟練者問わず交流を持てるぞ。……とまぁ、ざっと見、アイカの目的はその交流にあるのじゃろう」
長々とヤヤの解説をボーッと聞いていたマサキは、感心しつつもアイカに視線を向ける。
「そうなの?」
「大正解よ。まさかヤヤちゃんに見破られるとは恐れ入るわね~」
テヘヘと笑うアイカは、アイドルらしく眩しい笑顔を振り撒き、周りの男を無自覚にノックアウトさせつつバトルコーナーへと向かう。
マサキ達も遅れぬように付いていくが、周りからの視線にマサキは震えて動けなくなりかけていた。それを支えながらヤヤは、この後が更に心配になってきた。
(……嫌な予感がするのう……胸騒ぎが収まらんわ)
時を同じくして大型模型店「フリーデン」店内
「さて、
「そうですね。……でもナツキさんまで来て大丈夫なんですか? 大学もあるでしょうし」
「心配するこたねェぜ、エイト。一日休んだところで、一日余分に頑張りャ良い話だッからよォ!」
黒髪長身の美人に、眼鏡を掛けた少年、赤茶けた髪を荒く纏めた女性。どちらも美女に変わりない二人の間にいる地味な少年――
そんな中、黒髪の少女の感嘆する台詞に、エイトは同調すると同じくして赤茶髪の女性――ナツキと呼んだ女性に質問した。見た目に違わぬ口調でガツンと返され、エイトは本当に大丈夫なのかと疑問に思う。
「それはさておき」と、黒髪の少女は話を区切る。
「今日ここへ来た理由は理解しているかい?」
「ええっと、ここら辺のファイターと交流を図る為、でしたっけ?」
エイトの答えに少女は惜しいと返す。
「確かに交流を図るのも大切だけれど、
「でも連携なら、今までのままでも十分なんじゃないですか?」
エイトの質問に少女は嘆息する。
「……そうじゃないんだよエイト君。十分だから、と言う理由だけで
「す、すみません」
素直に謝るエイトに少女はにっこりと微笑んだ。そんな中、ナツキは「ケッ」と言いつつ、ぶっきらぼうに少女へ訊ねた。
「どうせ腹ん中ァ、何か隠してんだろォ? 赤姫」
赤姫――そう呼ばれた少女はクスリと口許を歪めつつ、ナツキに食えない顔で言い放った。
「中々に鋭いねビス子。でもそれは
その表情にナツキは地味なムカつきを覚えつつも、その感情を何処へ向けようかと、後頭部を掻きつつそっぽを向いた。
そして会話に付いていけないエイトは、どうしたものかと思いながら、複雑な心境のままバトルコーナーへと辿り着いたのだった。
■
エイト達がバトルコーナーへと辿り着いたのと同時に、マサキ達もまたバトルコーナーに着いていた。
「ふむ、今日は少ないようじゃのう」
「珍しいこともあるのね。取り敢えずバトルしましょう! バトル!」
(キャラが見た目と合ってないよ、アイカちゃん……)
無邪気に燥ぐアイカにマサキは内心突っ込むが、声に出さないだけマシかと納得しておく。そしてふと頭の中に、自称「清楚で乙女なキュートガール」を思い出したが気にしない。
シンプルなバトルコーナーの中で、最も奥のバトルシステムの前に着くと、三人はそれぞれのガンプラを確認することにした。
「そういやアイカちゃん、エクシアはどうしたの?」
マサキのふとした疑問に、アイカはさらりと答える。
「今頃ユーのジャンク箱の中よ。今回は新しく作ってきたんだから!」
「それじゃ、早速始めるか。丁度お相手も来おったし………の…………」
「………どうしたのヤヤちゃん?」
言葉の途中で歯切れが悪くなったヤヤは、その相手を見て驚いていた。マサキもその方を見ると、女性二人と男子一人の三人だった。
すると一人の女性が、やけに馴れ馴れしくヤヤへと話し掛ける。
「ヤヤ、まさかここで君に会えるとは予想外だったよ」
「本当じゃな、儂も予想外じゃよ。いつ以来か」
「この前のパーティー以来だよ。まぁ、こうして会ったのも何かの縁だ、バトルをしようじゃないか」
「ふむ、臨むところじゃな」
勝手に話が進行していく中、取り残される四人は話に割り込めない状態だった。その中で少年の隣に立っていたもう一人の女性――ナツキがバッと割り込む。
「ちょッと待ちなァ赤姫ェ。こんな初心者丸出しな女子高生どもとバトルしろだなンて、オレはヤらねェぞ」
「まぁまぁ落ち着きなよビス子。初心者かどうかは戦ってみれば分かるさ。……さて互いに自己紹介といこうじゃないか」
「オイ! オレを無視すんじゃねェ赤姫ェ!」
隣でギャーギャーと文句を
「私は
落ち着いた雰囲気に微笑んだ顔が何とも大和撫子っぽく、そのモデル然とした端麗な容姿と併せて、立ち振舞いが育ちの良さをみせる。
「えっと僕は、暁衛斗。……ナノさん、人の話を聞こうとしないから、強引なのには目を瞑ってあげてね」
「それはどう言うことかなエイト君」
「あだっ、あだだだだっ! ナノさん、耳が千切れちゃいますって!」
少し背が低いものの、平均的な見た目のエイトはまさに「ザ・普通の男子高校生」だった。モノクロの服装と眼鏡も相まって、とある魔眼持ちの少年に見えなくもない。ふとそんな感想を抱いたマサキだが、敢えて口にはしないでおく。
次にと言わんばかりに、面倒そうにもナツキがマサキ達に向き直る。
「あー、オレの名は
その粗い言動にマサキとアイカは少したじろいでしまうが、ヤヤは堂々としていた。ラフなTシャツにライダージャケット、ラインがハッキリしているジーパンがその性格を表してるんじゃないかと思えてしまう。
相手側が自己紹介をし終えたのもあって、こちら側からはヤヤから自己紹介を始める。
「儂の名は夜天嬢雅八々。夜天嬢雅の名で大体分かるじゃろうて。さて今回は予備機で戦うことになるが、出し惜しみはせん。本気で行く故、
腕を組み、仁王立ちで構え、ゆらりと揺らぐオレンジ髪が威厳さを放つ。おしとやかな見た目に違ってその言動と立ち振舞いから、上に立つものとしての威厳が
そんなヤヤの態度に、ナツキも思わずニィと口角をつり上げる。
「私は星河藍花よ! 初心者だなんて撤回させてあげる!」
こちらもまた見た目に違った性格をしているが、エイト以外は驚くこともなかった。しかし声で分かりそうなものだろうと踏んでいたマサキだが、案外そうでもないということを知った。
様子を見るに、先程のナツキの台詞にスイッチが入ったのか、アイカはいざ言った途端に燃え上がり始めていた。それを傍目にマサキは自分の番かと肩を落としつつ、三人と向き合った。
「私、七種真幸って言います。バトルするからには私達が勝ちますから。覚悟してくださいね」
可愛らしい笑顔で言い放ったマサキに、相対する三人も覚悟する。人は見た目に寄らず……その言葉の通り、マサキは華奢な見た目に反して圧を掛けていた。だから、本気でかかると覚悟する。
「それじゃあ早速バトルを始めようか」
《GUNPLA BATTLE Combatmode Start up. Mode damage level set to“B”》
ナノカの一言に呼応するかのようにして、バトルシステムが起動し始める。ダメージレベルはパーツが外れるのみの“B”。
余談だが、レディース大会終了後にPPSE社が大型アップデートを行い、導入したダメージレベル制度は全世界のファイターやビルダーを歓喜させたらしい。
《Press set your GP-Base》
機械音声に従い、各々がGPベースをシステムにセットして、その手にガンプラを構える。
《Beginning [Plavsky Particle] dispersal. field10, city》
プラフスキー粒子の散布が開始され、ホログラムがファイター達を包み込んだ。フィールドも生成され、ビルが立ち並ぶ大都会が再現される。
《Press set your GUNPLA》
手に握られたガンプラを台座に置き、コントロールスフィアを握り締める。
そして――
《BATTLE START》
「菱丸夏生、ドムゲルグ・ドレッドノート! ブチ撒けるぜェッ!」
「ジム・イェーガーR7。赤坂七灯、始めようか」
「V8ガンダム! 暁衛人、出ます!」
「夜天嬢雅八々、ガンダムゼロ! 推して参る!」
「星河藍花、レッドデスティニー! 出撃よ!」
「ガンダムアテナ! 七種真幸、勝利を切り拓く!」
六人と言う大人数で、ビル群へと機体達が降り立ってゆく。
個性溢れるその機体達に、マサキは胸を踊らせながら眼鏡を外す。さっき言った言葉に嘘偽りはない。だから本気になる。
マサキの目はややつり上がり、先程の優しげな表情とは別人の様相で目前の三機を見つめた。
「行くよ、アテナ。今日はとことん楽しもう!」
はい、と言うわけでコラボ第一弾第一話でした!
因みに数話ぐらい続くのでお楽しみに。
そしてコラボした際に付き纏う不安の一つである、コラボキャラの口調。三人とも今まで扱ったことのない口調なので少し心配ですが、亀川さん、違っていたらすみません。
さて、GBOに名を馳せる三人を相手に、マサキ達はどう立ち向かうのか。私でも予想がつかない戦いは次回に!
ではまた次回、ノシ