タイトル変わってますけど気にしないでください。前回は遊び過ぎました、スイマセン。
では今回もどうぞ。
聖蘭学園模型部一同が来て約四時間程経った頃、談笑も程々に、ヤヤがふと話を切り出し始めた。
「そう言えばユウキ。明日は帰らねばならぬ故、帰り支度はしておけよ」
「ゲッ、すっかり忘れてた。後でしとくよ」
「ふむ、自分で計画しておいて忘れるとは何事ぞ。全く、ユウキは昔から忘れっぽいのう……それじゃから鈍感だの言われるのじゃ」
「いや、鈍感は関係ないと思うぞ」
ユウキの突っ込みに皆が苦笑すると、少し拗ねた顔をするヤヤだった。やっぱり子供だな、と内心思っているユウキなど誰も知る由はない。
そんなやり取りの後、マサキが唐突な質問をかましてきた。
「そう言えばユー君とヤヤちゃんって、元々仲良さげだってことはカグヤさんは知ってたの?」
「さん付けしなくても大丈夫ですよ。……でも、私はユウキさんが他の女ぎ……女の子と仲良くしているとは知りませんでした。知っていると言えば、少なくともツクモさんがユウキさんと遊びに来た時でしょうか」
丁寧に答えてくれたカグヤにマサキは相槌を打ってから、続いてツクモに質問をしてみる。
「ツクモ先輩はユー君とヤヤちゃんが知り合いって知ってたんですか?」
「いいえ、私が知ったのはヤヤちゃんが転校してきてからよ?」
「そうですかー。ホノカちゃんとリリカちゃんは?」
「ボクは知らないよ」
「リリカも知らない」
ツクモの答えにマサキは少しがっかりするも、その隣に居たユウキの妹達にも問いかけてみる。しかしこちらも揃って首を横に振った。
最後となるエレナの方を向くと、ニッコリと微笑みながら答えてくれた。
「ユー君がヤヤちゃんとお友達だってことは知ってたけれど、ユー君が話してくれなかったから余りよくは知らないわねぇ。でも、ヤヤちゃんのお母さんからは色々なお話を聞かせてもらってたわ」
「は、母上がっ!?」
「いつ聞いたんだよ!?」
マサキは思った以上の回答を得られて満足するも、そこへ隠してたらしい二人が食い付いた。
「確か、一昨年辺りに久し振りに出会してね。お話ししてたら、ユー君とヤヤちゃんが昔よく遊んでたって話を聞いたのよ」
依然ニコニコとしながら答えたエレナに二人はガックリと項垂れるも、マサキは少々気になっていたことなのでご満悦だった。
まさしく真反対な心境の三人にアイドル&歌手である三人は微妙な面持ちをしていた。……要らぬことを知ってしまったな、と内心思いながら。
そこでカグヤが冷たい笑顔で笑いながら、ユウキの腕をがっちりとホールドした。
「ユウキさん、このカグヤに
「えっ? そ、それは……スマン、荷物の整理してくる」
「行かせません! カグヤに、カグヤに真実を明かしてくれなければ離しません!」
「やーめーろー!」
逃げようとするユウキに、それを軽々と止めているカグヤというある意味シュールな光景を目にしつつも、ヤヤは諦め半分に嘆息した。
知らなかったとは言え、自分に隠しことをしていたことに正直驚いていたツクモは、同じように隠していた
「んで、当のヤヤちゃんに聞くわ」
「……う、うむ、致し方あるまい。答えられることだけ答えよう」
「その意気や潔し。そんじゃまず一つ目ね。何で隠してたの?」
「えと、その……儂はただ恥ずかしかったのじゃよ。儂とて乙女じゃ、羞恥ぐらいある。親族や知り合いに知られたくない、笑われたくないと思うての……」
「まぁ、分からなくもないわね。男の子が友達って、正直その時の年だと周りに心配されるだけだし。――まぁお母さんにはお見通しだったみたいらしいけど」
ツクモも頷きつつ次の質問へと移る。
「続いて二つ目よ。ユーとはどんなことして遊んでたの?」
「ふむ、そんなことか。そうじゃな、こっそり二刀流の使い方を教えていたり、木登りしたり、ガンプラを見してもらったこともある」
「あら、案外アグレッシブなことをしてたのね」
「ユウキが勝手に行動して、その度に服が傷んだりしたがの」
ヤヤの小言に、当のユウキは苦虫を噛み潰したように唸るも、その後大人しく謝っていた。
ツクモもそんな様子を見て、微笑ましく思いながらも次の質問をする。
「じゃあ最後、三つ目。ユーとの出会いってどんなんだったの?」
「…………」
「……ヤヤちゃん?」
最後の質問に無言で答えたヤヤに、ツクモは怪訝そうな顔で覗きこんだ。すると、ヤヤは顔を真っ赤にした状態で目を回していた。しかも膝の上に置かれた拳は、かなり強く握り締められていて赤くなっていた。
そんな様子に怪訝どころか、逆に心配になってきた顔をして、ツクモは慌ててヤヤを宥める。
「ご、ごめんなさい。私、何か余計なことを聞いたみたいで……」
「い、いや、先輩は悪くない。儂が思い出してはいけないことを思い出してしまったからじゃ。気にしないでよい」
二人とも顔を暗くしてそう言っている間、ユウキとカグヤの方は更にエスカレートしていた。
何故かユウキの上にカグヤが股がる体勢になっており、そのカグヤは瞳から光を失っていた。更にユウキは真っ青な顔をしながら、なんとか抜け出そうと試みていた。……当然、抜け出せる筈もないのだが。
「ユウキさん、どうして教えてくれないんですか? カグヤに隠しことは許しませんよ? 神が許しても私が許しません。素直に教えてくれれば、カグヤはだって鬼ではありません、見逃してあげます。流石に最愛の人の血で愛刀を濡らしたくはありませんからね……ですから教えてください、今、すぐに!」
「分かった! 分かったから! お願いだからマウントポジションだけは止めてくれって! ……あれ、お前こんなキャラだったっけ!?」
必死にカグヤを止めてようやく解放させてもらったユウキは、「死ぬかと思った」などと小声で言って安堵していた。
そのままカグヤの方を振り向いたユウキは、叱られた子猫のように萎縮していた。そんなユウキを見つめるカグヤの瞳には依然として光が無く、そんな目で笑う様は畏怖そのものだった。
「……さてユウキさん、カグヤに教えてください。ヤヤさんとはどんな関係だったんですか? 私以上に親密なわけがないですよね?」
「まずそこ!?」
ユウキの突っ込みに、大して反応も見せずカグヤは続ける。
「関係というのはとてもとても大事ですよ。目の前の相手が彼氏かそうでないかでは対応も大分変わってきます」
「いや、その例えはおかしい。……取り敢えず、ヤヤとの関係だよな? さっきヤヤが話してた通りの仲だから、親友……ってところか」
「成る程、親友ですか。それは良かったです。それで、ヤヤさんとはどうして出会ったのですか?」
カグヤは全く変わらぬ態度で、変わらぬ口調で淡々と聞いてくる。
そこでユウキは周りの気不味い雰囲気に気が付く。ヤヤとツクモは暗い顔、アイカとマサキとミナツは微妙な心境、ホノカとリリカはカグヤの圧力に堪えかねてエレナの影に隠れている。――エレナだけ、自ら蚊帳の外と言わんばかりの雰囲気だったが。
そんな雰囲気で出会い話を語らうのは、いくらなんでも非常識ではないだろうか。ふと頭から出た答えに、ユウキは答えるのを躊躇ってしまう。
「その、この雰囲気だと非常に言いづらいんだが……」
ユウキの言葉にふとカグヤは辺りを見回して頷いた。
「確かにそうですね。
嘆息しつつもカグヤは、そのまま言葉を繋げる。
「さて、ユウキさん。私は昨日からずっと常々考えていたことなのですが……」
「な、なんだよ」
安堵する最中、怯えるりうに聞き返すと、カグヤは瞳に光を戻して答えた。
「カグヤもユウキさんに付いていってよろしいでしょうか?」
その一言でふと周囲が固まりかける。ユウキだけではなく、その場の皆が、だ。
それでもお構いなしにカグヤは話を続ける。
「私がユウキさんに付いていけば、離れ離れになることはないと思い至ったわけです。……これなら大丈夫ですよね? 毎日お弁当を作ってあげられますし、毎日起こしてあげられます。ご迷惑はお掛けしません」
「いや、弁当作ってくれるのは嬉しいんだが……どこに住むんだよ。まずそこからだ。俺は先輩の家に居候しているようなもんだし……」
いきなりの申し出にも関わらず、ユウキはやや冷静に答える。だが懸念も口にした。流石に、ツクモの家にこれ以上負担は掛けられない。そうなると、カグヤには別の住居が必要になってくる。……あくまでも、
しかし予想外にもカグヤは直ぐに首を振った。縦ではなく、当然、横にだ。
「心配はありません。カグヤにも案があります。それを実行させてもらいますから、安心してください」
眩しい笑顔に不安が残る気がしなくもないユウキは、どうしたものかと額に手を当てる。
「大体、神主さんには何て説明するんだよ。出ていくつったって、許してくれる筈がないだろう」
「だから言ったじゃないですか、
笑顔なのに真剣さが垣間見えるカグヤの様子に、ユウキは唖然として何も言えなくなる。――こりゃ嫌な予感しかしない、と。何が、と聞かれれば、何もかも、と答えるしかない。
はてさてとユウキが思い悩んでいると、今度はエレナが何か閃いたように目を開いた。
「……これまた
「そうだ! ユー君に着いていけば良いのよ!」
「――的中したぁ……」
がっくしと項垂れるユウキは、悩みの種がまた増えたと深く深く落ち込んでいた。
そのことにはまさかツクモ達まで賛同したので、ユウキは何も言えず仕舞いだ。結果、ユウキが何を言うまでもなく、芳堂家の引っ越しが決定した。
「でも会社には何て言うのさ」
しかし足を引っ張るが如くユウキは杭を打っておく。
「辞職します♪」
「ド
しかし直ぐに引っこ抜かれたのだった。
「ホノちゃんとリリちゃんは別に構わないだろうから大丈夫よ?」
「…………」
引き留める術を失った為に、無言となったユウキは真っ白となった。一体どれだけフリーダムなんだこの
別に引っ越し自体に反対と言いたいわけではないが、高校生にもなって、親と過ごすのはどうかと思っただけだった。そんな羞恥も親にはお見通しであり、エレナもそれを重々承知していた。だからこそ、柔らかく微笑んでユウキを見つめる。
「あー、はいはい、分かったよ。もう好きにしてくれ」
こうなると、どうしても自分から折れるしか方法がなかったのだった。
■
時間とは案外早く過ぎるものだ。……俺はそう思う。だから一分、一秒を大事にしろと言うのだろう。一期一会という言葉もあることだしな。
さてそんなことはさて置いて、俺達はゲーセンに来ていた。先日行った場所とは別のゲーセンだ。あまり人が少ないので、ガンプラバトルするにはうってつけだろう。
そう言ってる間に、早速バトルシステムの前で、ヤヤとカグヤが睨みあっていた。
「例えユウキさんの親友となれど、このカグヤ、容赦いたしません!」
「神椎の者と手合わせできるとは思わなんだが、これも何かの縁。儂も本気で行かせてもらおうぞ!」
《BATTLE START》
「神椎輝夜! ガンダム・バルバトス、参ります!」
「夜天嬢雅八々、ウイングガンダム! 推して参る!」
出撃した二機が飛び出したのは宇宙空間。メサイア攻防戦が起こった宙域だ。
だが宙域はまだ良い――ネオ・ジェネシスが発射されなければの話だが――、今回のバトルは少々偏ったかと思ってしまう。
ウイングガンダムは高威力のバスターライフルを持つが、その代わり、カグヤの操るバルバトス――「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の主人公機であるガンダムバルバトスは、ある意味ウイングよりも扱いづらい。ビーム兵器を持たない所為で実弾しか装備できず、今回カグヤが使うのはその手に握られた太刀のみだ。しかも即席な関係上素組み。
つまりは圧倒的にカグヤが不利なのだ。経験的にも、装備的にも、現実的に。
「では早速、――神椎流抜刀術“
「ぬうっ!」
太刀よる恐ろしき速さの一閃が、ヤヤのウイングを襲う。その一閃を僅かな間で感付き、直ぐ様シールドで受け止めるも、その反動はあまりに大きく、後ろへ吹き飛ばされてしまう。
しかしそこで終わるわけがない。
月花・吹雪は、まだ終わっていない。
「はあぁっ!」
「なっ、シールドが……ッ!?」
瞬く間にしてシールドを切り裂かれ、ヤヤは仕方なく二本のビームサーベルで切り結ぶ。火花を散らしつつ、ヤヤは舌舐めずりする。
「少しは骨がありそうなヤツじゃ。いくらガンプラバトルとは言えど、こうもなっては昂らずにはおられんものよのぉ!」
バルバトスの太刀を押しきって、そのままバルバトスごと吹き飛ばす。パワーと強度の高さが、ヤヤのウイングが数段上なだけはある。カグヤのバルバトスも、近くのMSの残骸を蹴って体勢を立て直すのがやっとのよつだった。
太刀を腰に当てて構え直すカグヤは、その瞳に
「来ないのであらば、私から行きます!」
「その抜刀術とやら、この儂に存分に見せてみよ!」
しかしまぁ、リアルに戦える少女二人がぶつかるとこうなるんだなぁ、と染々思う俺なのであった。
雑談回って難しいね。カミツです。
結局はバトルを書く方が楽しく感じてしまうっていうね。後期試験の所為で頭がおかしくなってるんだ、きっと(白目
さて次回でようやく第二章も終わりかな。短かったけど。……まぁそれは良しとして、コラボ回、どんな話にしようかなぁ(明後日の方角を見ながら
ではまた、ノシ