ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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EPISODE-30:さて、いっちょド派手に暴れてやりますか!

 巫女様と携帯買ったその帰り、偶々近くにゲーセンを見付ける。そこは昔によく通ったゲーセンだった。

 

「お、ここまだ潰れてなかったのか!」

 

 言っていることは結構失礼だが、それもお構いなしに俺は目を輝かせた。

 東京などに比べて小規模ともとれるゲーセンではあるが、中にあるゲームの種類は多岐に渡る。昔はよくここで遊びまくったものだ。

 

「ここは……げーむせんたーというものですか?」

 舌足らずに首を傾げたカグヤに俺は頷く。

「あぁ、昔ここでよく遊んだんだよ。カグヤは……知らないのも当然か」

「お、お恥ずかしながら……」

 

 もじもじと俯くカグヤの頭に、ぽんと手を置いた。

 カグヤは神社の娘で巫女見習いだった為か、外出に関してはこと厳しかった。

 ふと記憶を手繰ると、案外懐かしい思い出もポロポロ出てくるものだ。

 

「この際だ、カグヤにもガンプラバトル、見せてやるよ」

「ほ、本当ですかっ!?」

 

 俯いたままだったカグヤは、若干頬を赤らめながらも、嬉しそうに顔を上げた。前々から興味はあったのか。

 早速俺達は嬉々としてゲーセンに入る。

 内装は若干狭く感じるが、昼過ぎとあって昼休みなどの合間を使った大人や学生がかなり見受けられた。

 そんな中、空いていたバトルシステムを見付けて、俺はポーチからGPベースとガンプラを取り出す。

 

「な、何ですか? それ」

「うん? ……あぁこれか」

 

 俺が手に持ったGPベースが気になったのか、カグヤは恐る恐る聞いてきた。

 

「これはGPベース。ガンプラやファイターのデータを書き込んだ機械だよ。これをバトルシステムにセットすれば、機体のデータがガンプラに反映(ロード)されて機体の特殊なシステムとかが使えるってわけだ」

 今までの説明をポカンとした様子で聞いていたカグヤに少し吹き出すが、それに気が付いたカグヤは取り繕う様に慌て出す。

「な、何が何だかよく分かりませんが、とにかく凄いものってのは伝わってきましたよ!!」

 

 慌てて言ったカグヤを笑って、またしても頭の天辺に手を乗っけては、今度は撫で回した。

 カグヤも急に撫でられて体がビクンと震えるが、直ぐに甘えるように大人しくなる。

 そんな幼馴染みに俺はふと思ったことを言ってしまう。

 

「本当に変わらない奴だなお前は。一番安心するよ、お前がずっと変わらないでいてくれることが――何よりも」

「えへへ、ユウキさんがそう仰るなら、私はいつまでも変わらずに待ってますよ!」

 

 満面の笑みでそう言われると少し照れ臭いな。

 俺は内心で照れつつも、バトルシステムに向き直る。

 いつの間にやらギャラリーが湧いており、彼氏彼女でイチャついてるとでも勘違いしたのか、こちらもいつの間にか居た相手の方を応援していた。何て誤解だよ。

 

「さて、いっちょド派手に暴れてやりますか!」

 

《GUNPLA BATTLE Combatmode startup. Mode damage level set to“B”》

 

 聞き慣れない音声に、俺は思わず驚いてしまう。

 いつの間にアップデートしたんだよPPSE社!

 

《Press set your GP-Base》

 

 明るい機械音声に少々気の狂いを感じつつ、指示通りにGPベースを乗せる。

 

《Beginning [Plavsky Particle] dispersal. field5, sea》

 

 プラフスキー粒子散布の合図と共にフィールドが選ばれる。今回は海だ。この機体を使うには打って付けだな。

 

《Press set your GUNPLA》

 

 俺は新作のガンプラを乗せる。相手もガンプラを乗せて、準備は完了。

 

《BATTLE START》

 

 

 

「芳堂 木綿樹、エクストリームガンダム/ナハト メルクリウス・フェース! 行くぜッ!」

 

 

 

 互いに機体が飛び出し、相手は水面に水柱を立てて思いっきり水中へと落ちる。

 一瞬だったが、見た感じどうやら蟹さん(ズゴック)らしい。

 

「その堅い甲殻を槍で一突きにしてやるよ」

 

 俺も水中へと潜り、ランス・ドラグーンを手に海の中を突っ切った。

 レーダーを凝視しつつ虎視眈々と敵を探すが、案外早く見つかった。

 その姿は赤く、ヒート・ラムを装備したズゴックEに見えるが、バックパックは大型化、両手もモノホンの蟹のようなハサミになっていた。

 

「うっへ、本当に蟹だよコイツ。……まぁ美味しく頂きますかね!」

 

 そう言うと同時に右手のランスを振り回し、俺は両腕に取り付けられたアクア・ドラグーンをランスに合体させる。

 すると赤紫色のクリアパーツ――アクアシェードから流水が発生し、螺旋を描くようにしてランスを包んだ。

 

「水旋刃の切れ味、とくとご覧あれ!」

 

 螺旋を渦巻くスピードが速くなり、俺は深く腰を入れ、ランスを更に後ろへと引く。更に刀身に左手を添え、俺は息を噛み殺す。

 

 張り詰めた糸がプツンと切れるかのように、()()は一瞬でズゴックの左腕を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

「神椎流抜刀術“速水・牙突(はやみ・がとつ)”!」

 

 

 

 

 

 抜き身からの、鞘無しでの抜刀術。主に刀や槍を使い、捩じ込むようにして敵を穿つ技。唯一俺が覚えられた技の一つだ。

 この技を使うのも懐かしい。覚えたとしてもガンプラバトルでは再現出来なかった為に断念していたが、この機体で出来たのは中々に嬉しい。新たな発見だな。

 

 しかし一突きしてこの威力だが、恐らく海でなければここまでの威力は出せなかっただろう。俺は手元の槍を再び構える。

 相手は怯んだのか直ぐには動かず、俺はただ槍を構えて待つ。

 するとようやくモノアイが怪しく光り、残った右腕を唸らせ大推力のバックパックで一目散にこちらへと突っ込んできた。

 俺は呆れてものが言えなくなりそうになるものの、敢えて笑った。

 

「アンタもバカだな。………まぁ俺もとんだバカだがな!」

 

 今度はランスを背中に仕舞い、アクア・ドラグーンを全基射出した。周囲の海水から流水を作り出し、アクア・ドラグーンから流水はカーテンコールの様に垂れ下がる。

 何をしたのかに気付かなかったズゴックはそのまま右腕を突き出してカーテンコールに触れる。……が、直後に「バキバキバキッ!」という嫌な音が聞こえた。

 

「アクアヴェール」

 

 俺は水中に舞うアクア・ドラグーンをラックに戻し、両腕が使用できなくなったズゴックのヒート・ラムを引っ掴み、そのまま海上へ放り出す。

 何も出来ずにただ宙を舞うズゴックはある意味シュールに見えた。

 

「さぁ仕上げっと」

 

 前腕のアクア・ドラグーンに付いたアクアシェードから、再び流水が生成される。

 それを拳に纏い、簡易式メリケンサックの完成。後は落ちてくる蟹を勢いつけて殴るだけ。

 

「そーら、よッ!」

 

 見事なアッパーカットが決まり、拳は貫いてズゴックの胴に風穴を開けた。

 

「Excellent」

 

《BATTLE END》

 

 

 

 ホログラムが解除されて、俺は一息吐く。お相手してくれた人に礼をしつつ、カグヤの下へ戻る。「どうだった?」と感想を聴く前に、もう顔に表れていたのが見て取れた。

 

「わぁぁ……ユウキさんはスゴいですね! カグヤ感激です!」

「別に、そこまで凄い訳じゃないさ。ただ幼馴染みに格好いい所を見せたかっただけだよ」

「えへへ、そのまま沢山私に格好いい所見せてください!」

「そう言われると何か見せづらいな」

 

 俺は苦笑いしながらそう返す。その言葉にカグヤが(むく)れ、俺の腕にわざとらしく抱き付いた。

 更に困り果てるが、そんな顔をした俺にカグヤは微笑みかける。態度や様子とは裏腹に結構楽しんでるんだな。

 そんなやり取りをしながら、俺等は家に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰ってくる頃には、ホノカとリリカは既に起きていた。

 

「ただいま、ホノカ、リリカ」

「あ、ユー兄ぃおかえりなさーい!」

「ユー兄ぃおかえりなさい!」

 

 妹達に駆け寄られて足が絡みそうになるも、なんとか踏ん張って(とど)まる。

 二人を居間へ戻すとタイミング良く車のエンジン音が聞こえ、母さんが帰ってきたのだと認識した。

 一応玄関の方へ向かうと、丁度戸が開いて母さんが入ってきた。

 

「ただいま、ユー君」

「お帰り、母さん」

 

 見送った時もそうだが、出迎えるのも懐かしい。そんな時、ふと父さんを出迎えたりしたのを思い出した。

 俺は懐かしんでる場合じゃないかと無理矢理押し込め、母さんの荷物を運んだ。

 

「こんだけしこたま買い込んで、一体どれくらい作るつもりだよ」

「明後日分まで?」

「流石にホノカとリリカが飽きるよ!」

 

 可愛らしく疑問系で答えた母親に俺は容赦なく突っ込む。

 ホノカとリリカはあんまりロシア料理に慣れてないのもあってボルシチを長期間食べようとは思わない。別に俺は構わないんだがな。

 俺が手をわなわなさせていると、母さんは迷わず作り始めた。相変わらずと言うか、なんと言うか。

 

「俺も何か手伝うよ」

 

 仕方なく傍らに立っては、そんなことを母さんに言った。

 

 

 

 

 

 夕飯が終わった頃、ふと携帯にメールが届いたことに気付いた。

 差出人はツクモ先輩から。内容は明日についてだ。

 

「“明日そっち行く”ねぇ……。そういうのはもう少し早く言って欲しいんだけど、まぁいっか」

「なになに~?」

「何見てるの~?」

 

 俺が携帯を手にリビングの床へ倒れ込むと、ホノカとリリカが擦り寄ってきた。

 俺は二人を退かすのが面倒になってそのまま放っておくと、ホノカは俺の上に股がって、リリカは俺の左腕を枕にするなどかなりフリーにしていた。

 

「ツクモ先輩からだよ。明日来るってさ」

「ツクモ姉ぇくるの!?」

「来るらしい」

「リリカ、ツクモ姉ぇと沢山お話ししたいな~」

「他にも有名アイドル(アイとミナツさん)やらお嬢様(ヤヤ)やらリアルチート(マサキ)も来るぞ」

 

 俺の話に目を輝かせるホノカは更に燥いだ。……やめてくれ、さっき食べたボルシチが逆流してくるから。

 取り敢えず俺の上で大人しくさせた後、ふと真横から母さんの声が聞こえた。

 

「あら~、ユー君も隅に置けない子になっちゃった? パパもイケメンだったからユー君もイケメンなのは当然だよね。ママもそのハーレム入っていい?」

「さらりと何恐ろしいこと言ってんだよ! ……って言うかハーレムじゃねぇ、ただの部員だよ! それよりいつ俺の右腕を占領した!?」

 

 突っ込みのオンパレードになりそうで俺は一旦ここまでで区切る。

 流石母さん恐ろしい。天然だからどっから湧いて出て来てもおかしくねぇな。笑えねぇ。って言うか突っ込みが追い付かないぜ。

 俺はふぅと溜め息を吐いて、余計なことに思考を割くことにした。

 

 ただいま俺は両腕と体の上を占領され、挙げ句下半身はテーブルに突っ込んでるから自由が利かない為に、動作に関しては八方塞がりだ。動こうにも動けない。と言うかこんな状態で他の誰かが来たら色々とマズイよなぁ……。

 

 と、世知辛い世の中なのだと実感しつつ、俺は両腕の痺れを感じながら眉をひそめつつも、いつの間にか眠ってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。朝起きた時のことだ。一つ、更にマズイことが思い浮かんだ。

 

 

 

 

 

 カグヤ、どうしよう……。




昔に流行った牙突とは何の関係もありません(キッパリ

よ、ようやく投稿できた……
どうも、投稿遅れてすみません、カミツです。
本来バトル要素無くすつもりが、要素無くしたらただユウキが美少女とイチャイチャしてるのしか書けずに本末転倒起こして結局こうなりました。ちくせう。

はい今回はエクストリーム/ナハトの新フェースの説明です。


エクストリームガンダム/ナハト メルクリウス・フェース
武装:ランス・ドラグーン「水旋刃」、アクア・ドラグーン×8
特殊装備:クリアコンデンサー、アクアシェード
特殊機能:アクアヴェール、アクアブレイド、アクアブラスター、覚醒
漆黒のエクストリームガンダムに別のユニットを取り付けた状態。周囲のプラフスキー粒子を取り込み、擬似的な水を作り出すアクアシェードが特徴の改造機。
主武装である水旋刃の芯にもアクアシェードを使い、螺旋状の水で敵を貫く事ができる。またアクア・ドラグーンを使った攻防一体の戦い方でトリッキーに舞う。
アクアシェードはユウキがアリス・ドラグーンから導いたプラフスキー粒子の特性の「可能性」を反映した試作機的な意味合いもあって高性能。クリアパーツを特殊な液体に浸して特殊効果を出しており、前述の通り、プラフスキー粒子を媒体に水を擬似的に作り出すことで武器や機体のコーティング、果ては攻撃・防御とかなり汎用性が高い。何故かアクアシェードは薄紫色をしている。
名前の「メルクリウス」は、英語で水星、若しくは商人や旅人の守護神を意味する「マーキュリー(Mercury)」から。


以上になります。今回はここまで。
ではまた、ノシ


P.S.
地味にUA数五千突破しました!読んでくださる皆さん、本当にありがとうございます!
これからもこの作品を宜しくお願いします!



あぁ、早く第二章終わらせてコラボ回書かなきゃ……

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