ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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EPISODE-24:天の彼方までぶっ飛べ!!

 決勝戦当日、アテナの応急修理は済んだ。その代わり、GNソードⅢの代用としてGNインパルスランサーを貰う。これは何かと便利だと分かった。それにエイジスを小型化したバックラーシールド。取り回しが良くて頑丈、これは非常に助かる。

 私はそんなことを思いつつも、控え室でアテナの関節の様子を見ていた。ユー君曰くバトル後のアテナは「関節が緩くなり過ぎた、ユルユルだ」だそうで、それから何とか改善してみたそうだけど、多少硬めの関節になっていた。敢えて数回動かすことで慣らしておくが、女の子の力だと少々キツイ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、ゆ、ユー君めぇ……ここまで固くするとはぁ……はぁ、はぁ」

「あら、どれどれお姉さんに貸してみなさい。……って中々に固いわね、ユーったらマサキちゃんを何だと思ってるんだか」

 

 二人してユー君に愚痴を呟きつつアテナの関節を少し緩めておく。適度に緩めると、私は自分のレッグポーチにガンプラを入れた。

 

「まぁ、こっちのインパルスよりも大修復だったから、仕方ないって言っちゃあ、仕方ないんだけどね。こっちは頭部と装備を代えるだけで済んだし」

「今回はどんなストライカーパックで行くんですか?」

 私が聞くと、ツクモ先輩は待ってましたと言わんばかりに言った。

「ドラグーンストライカーMk-Ⅱよ!」

「……………」

 

 堂々とした出で立ちで答えたツクモ先輩に対して、私からの反応は薄い。……どう言ったストライカーなのか知らないから、と言うのが大半の理由だったりする。

 

「このストライカーパックはね、レジェンドのバックパックを元に作り出したの。だからレジェンドの装備が丸々使えるのよ!」

「そ、そうなんですか……」

 

 どう足掻いても私にはポカンとしかしようのない。レジェンド? 伝説って意味だよね? そんなガンダムいるんだね。

 私が勝手に納得していると、個人戦のバトルが終了し、二人戦の準備が始まっていた。

 

「――いよいよね」

「はい」

 

 心なしか、緊張して武者震いする。甘んじてそれを受け入れ、私は自分のレッグポーチに手を当てた。私なら、きっと。

 ツクモ先輩も安心できる笑顔で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ! この大会も早くも今日でラストバトル! 二人戦からも三組計六名のファイターが出場します! まずは東東京代表、灯月母&七種真幸ペア! 続いては愛媛代表、赤城歌音(アカギ カノン)神崎雲母(カンザキ キララ)ペア! そして我らが静岡代表、是枝桜(コノエダ サクラ)&是枝(カエデ)ペア! この三チームによる激闘が繰り広げられます! それではそれでは、ガンプラバトル、レディィィィ? ゴォォォォォッ!!』

 

 

 

《BATTLE START》

 

 

 

「ガンダムアテナ、七種真幸! 勝利を切り拓く!」

「鷹野月母、インパルス! 出るわよ!」

「赤城歌音、ガンダムXレイディ! 出るよ☆」

「神崎雲母、ガンダムXレイディ、出撃します」

「是枝桜、シグレ! 出撃だよ!」

「是枝楓、ユウダチ! 出撃だよ!」

 

 計六機ものガンダムが戦場に舞い降りた。戦場となるは、山と海も見える上に広大な街並みが綺麗な静岡県静岡市葵区そのもの。

 

「ま、街が再現されてる!?」

「アハハ、驚くのも無理ないかしらね。人工衛星による上空の写真を元に再現・構築したリアリティー満載のフィールドよ」

「へぇ~、現在の科学の力って凄いですね」

 マサキの感嘆の声に、ツクモは苦笑いしつつ応答する。

「まぁ、バトルシステムを作った張本人のアイデアだから、何とも言えないけどね」

 

 そう言いつつもマサキとツクモは、視界が開け過ぎている街並みに身を潜めつつ、周囲の様子を伺っていた。するとレーダーに反応は無いのに、アラートが鳴り響いた。

 

《CAUTION》

「超長距離射撃!?」

「ツクモ先輩、三時の方向にブーストを駆けて回避してください! 早く!」

「分かったわ!」

 

 マサキとツクモがそれぞれ逆の方向へ即座に回避すると、直後自分達が居た場所にはあり得ない粒子量のビームが通過し、見事周囲の建物を焼き払った。

 

「あっれれー? おっかしいなぁ~? カノンの砲撃避けられちゃった!」

「アカギさん、相手とて最後まで残った相手です。油断はいけません」

「分かってるよ~♪ カノンは狙った獲物は逃がさないんだから!」

 

 じゅるりと舌舐りをするカノンは、サテライトキャノンを背負い直した。しかし次にはキララの方からサテライトキャノンが放射されていた。

 

「逃がしませんよ、紅姫(べにひめ)。この大会を勝つには貴女は先に潰さねばなりません」

「五月蝿いわねこの歩く固定砲台! 別の相方引っ張ってきて、今度は何を考えてるのかしら?」

「歩く固定砲台とは失礼ですね。簡単ですよ、賞金目的です。それ以外に何もありません」

「相変わらず淡々と喋って! 気が狂うのよ!」

 

 二射目となるサテライトキャノンを回避し、ツクモは建物の壁を蹴ってGXへと瞬時に近付く。そのままドラグーンストライカーMk-Ⅱからデファイアント改ビームジャベリンを取り出しては、GXに突き付けるものの、軽いステップ動作で躱されてしまう。

 しかしそれでも諦めず、ツクモは更に踏み込んだ。

 

「でぇりゃぁ!」

「……これまた随分と腕が落ちましたね紅姫」

「五月蝿いって言ってんでしょ!」

「また仲間を巻き込むのは怖いんですか?」

「………ッ!?」

 

 核心を突く言葉にツクモは動揺して、思わず動きを止めてしまった。スッと目を細めたキララは、大型ビームソードを抜刀して両手で構える。

 

「図星、と言ったところでしょうか。貴女もここまで落ちぶれるとは思いませんでした。正直予想外と言っても差し支えないでしょう。そんな貴女はここで敗退してもらいます」

「……そんな訳にはっ、いかないのよ!」

 

 淡々と述べられたキララの言葉に、ツクモは再びビームジャベリンを振るった。しかし僅かに動いただけで避けられてしまう。

 今度はこちらの番だと言わんばかりにGXはビームソードで斬りつける。機体を即座に動かしたツクモは難なく避けるが、思わずふらついてしまう。

 そこへ、アテナが駆け付けてきた。

 

「させないわ!」

「……アカギさん、何をやってるんですか」

「えっとね~、白いの追っかけてたらいつの間にか居なくなってたんだ~♪」

「ちゃんとレーダーや画面は見ましょうね。さて、初心者が私とやりあおうとは無謀な人も居たものです」

「無謀かどうかは私が決める!」

 

 GNインパルスランサーがGXに向けて突かれるが、逆にヴァンプレイトを掴まれてしまう。しかしそれすら厭わず、マサキはトリガーを引いた。

 

「ふっ飛べ!」

「――な!?」

「カンザキちゃん!」

 

 GXが掴んだままGNインパルスランサーの矛先は衝撃と共に近くのビルへと突っ込んだ。それと同時にビルが倒壊し、GXを瓦礫の下へと追いやった。

 その直後に背後から狙ってきたカノンに、マサキはGNカタールを投擲する。それはカノンのGXに掠るが、その動きまで止めることは出来ず、攻撃を許してしまう。

 

「直撃コースまっしぐらなんだから!」

「反らして見せる!」

 

 GXのビームソードが振り下ろされる寸前にGNブレードを逆手に捉え、ギリギリ防ぐことが出来た。

 しかしもう片方の腕にもビームサーベルが握られており、マサキはそれに感付いて即座に後ろへと逃げる。

 

「む~、何で当たらないの~?」

「私、勘とかは良い方なの」

「それだけで避けられる筈はない!」

「当然、よ!」

 

 もう片方のGNブレードを抜いて二刀流にして構え、再びGXと斬り結んだ。カノンは目の前に集中しつつ、横からアラートが鳴り響いたのを聞いた。アラートが鳴った直後、横からビームがGXの目の前を通過した。

 

「………っ!?」

「惜しいわね。流石あの子の相方ってとこかしら」

「うわっ、カンザキちゃんそろそろ起きてって! 二対一じゃ私でも勝ち目ないよ~!」

「その前に終わらせるッ!」

 

 インパルスの構えたビームライフルから粒子の弾が再び放たれ、GXへと一直線に向かっていく。それをビームソードで切ろうとするも、その間にアテナに邪魔される。

 

 

 

「ここまで、な訳がないんだよ!」

 

 

 

 こうなったらとカノンは空いた左手を迫るビームに向ける。すると、直撃した粒子が一瞬にして消えた。

 

「消えた!?」

「いえ、吸収されただけよ!」

 

 アテナを押しきったGXは最大出力で後退し、ある程度の距離が取れた途端、再びサテライトキャノンを構えた。

 チャージが始まるも、その速度は瞬時とも言える程であり、マサキ達には回避する暇さえ与えられなかった。

 

「サテライトキャノン、はっしゃぁ!」

 

 陽気なカノンの声と共にサテライトキャノンが放たれ、一気にマサキ達へ迫る。

 ツクモはそれを避ける気配もなく、ドラグーンを放出した。

 

「マサキちゃん、そこを動かないで頂戴ね?」

「……えっ? 何でですか?」

「そんなの、決まってるじゃない」

 

 マサキは顔を真っ青にして、目の前の迫り来るサテライトキャノンを見た。すると、ドラグーンがアテナとインパルスの目の前で三角を描く様に並び、そこにまさかのビームシールドを形成した。コンマ数秒後にサテライトキャノンが直撃するも、マサキ達にはなんの衝撃も来なかった。寧ろ、構える必要もなかった。

 

「う、うそでしょ……?」

 

 ポツリと呟かれたマサキの台詞に、会場も思わず絶句する。発射後のカノンもこの現状に顔を真っ青に染めていた。

 

「あら? こんな言葉知ってるかしら? “あり得ない、なんてことはあり得ない”って」

 

 「ふふふ」と笑ったツクモはドラグーンを全基射出してカノンのGXを襲った。カノンはコンソールを操って巧みにGXを動かすも、オールレンジ攻撃の前では躱すなど相当腕に覚えのあるものでない限り避けられないものだ。

 

「うわっ! カノン、ドラグーン嫌いなんだけど~!」

「嫌いならもっと嫌いにしてあげるわ!」

 

 ツクモは更に猛攻撃をかけ、マサキはそれを見ているしかなかった。取り敢えず、放置したまんまのGNインパルスランサーを回収することにした。

 

 

 

 落ちていたGNインパルスランサーのグリップを掴み、ワイヤーを巻き取る。するとヴァンプレイトが瓦礫の中から飛び出してきて、そのままグリップに収まった。回収した後、キララのGXの様子が気になったマサキは、そーっと瓦礫の中を除く。そこには光を失ったGXが埋まっていたが、直ぐにカメラアイに光が灯った。

 

「マズッ――!」

「逃がしません」

 

 ガッと首を掴まれたアテナはその腕を外そうと藻掻くも、そのまま立ち上がったGXに持ち上げられる。

 

「所詮は初心者と言うことを忘れないでください。貴女程度の者が、私に勝てるとでも思わないでください」

「……勝てる勝てないの問題じゃない! 私は、私達は、勝つんだッ!」

 

 マサキは宙に浮いていることを良いことに、首を掴まれたまま、両足でGXの銅をキックする。その反動で何とか抜け出せたアテナは、GXをGNインパルスランサーで突き上げ――

 

 

 

(そら)の彼方までぶっ飛べ!」

 

 

 

 ――、発射した。

 打ち上げられたヴァンプレイトはGXを貫き、言葉の通りに空まで飛ばした。途中でワイヤーを巻き取り、GXが宙で爆発するのを見届けてから、即座にツクモの方へ向かった。

 キララの画面は暗くなり、戦闘不能を表す文字と共に青いホログラムが危険色の赤で染まっていた。その中でふと、柔らかく微笑みながら、キララはコンソールを握ったまま呟いた。

 

 

「………今回は私が甘かったようですね。紅姫が初心者をパートナーに選ぶとは思えませんでしたが……ふふ、全国が楽しみです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃ツクモは、ドラグーンで徐々に追い詰めているものの、カノンを一向に落とせないでいた。

 

「ちょこまかと!」

「もう! し~つ~こ~い~!」

 

 カノンは燥ぐ子供の如く、遊び半分の如くそう言いながら、後ろ向きでビームマシンガンを放っていた。余りの焦れったさにツクモは、ドラグーンを引き返させて、本来の使い方の為に、ビームジャベリンを構えた。

 

「えぇーい! さっさと落ちなさい!!」

 

 大きく振りかぶり、溜めに溜めてからジャベリンを遠くに投擲した。大きく大きく放物線を描いたジャベリンは、逃げるGXの右肩を見事に貫いた。カノンは多少の油断で思いもよらないことに驚く。唯一とは言わないものの、射撃兵装を失ったのだから。

 

投げ槍(ジャベリン)は本来、こう使うのよ」

 

 焦ったカノンはまたしてもサテライトキャノンを、しかも左腕で支えながら発射準備に入った。サテライトリフレクターがX字に開き、プラフスキー粒子を周囲から吸収する。しかし右腕が失った為に、チャージ速度ががくんと落ちており、僅かなタイムラグがあった。しかしある程度のチャージが溜まった途端に、カノンは迷いもなくトリガーを引く―――――筈だった。

 

 

 

「事はそう上手く運ばせるものじゃないのよ! ……マサキちゃん!」

「はいっ!」

 

 

 

 目の前のレジェンドのようなインパルスに気を取られていたカノンは、その後方から高速で迫る機影に気付くのが遅かった。

 真っ白な機体を深紅に染めたアテナは、GNインパルスランサーを前面に突き出してGXに向かって突っ込む。

 ガキンッと金属を叩いた様な音の後に、(ひび)割れたバキッという音が続く。

 

 

 

「貫け!」

 

 

 

 パスンッとまるでサイレンサーらしき音と共にGXの体を穿って、「インパルス(衝撃)」ランサーの名の通り機体を吹き飛ばした。

 

「か、カノンの………カノン達の………負け………?」

 

 コンソールを握ったまま、カノンは立ち尽くしていた。自分達の“油断”が“敗北”を作ったことに、カノンは思わず涙を流した。

 

 

 

 

 

 愛媛代表、赤城歌音&神崎雲母ペア――敗退。

 残るは東東京代表、灯月母&七種真幸ペアと静岡代表、是枝桜&楓姉妹。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――フフフッ、カエデ、残るはあの2人だよ」

「――ハハハッ、サクラ、大丈夫だよ私達なら」

「そうだね、私達は二人で一人、」「天下無敵の双子のファイターだもの」

「「……負ける筈はないんだから♪」」

 

 

 

 蒼穹を舞う二機の黒い機体(ガンプラ)のファイターは、クスクスと笑っていた。




一週間以上開けての投稿となります、カミツです。

ただいま漢検の勉強で中々執筆に手を付けられない中、暇を見付けて投稿しました!←それよりも勉強しろよ
今回は登場した愛媛代表である二人のガンダムXのご紹介!


ガンダムXレイディ
武装:ビームマシンガン、ビームソード、ビームサーベル×2、サテライトキャノン
特殊装備:リフレクトプレート(サテライトリフレクター)
特殊機能:サテライトシステム、アブソーブシステム
ガンダムXをベースに、なるべく細身にした改造ガンプラ。その女性的なシルエットと驚異的なアブソーブシステムが特徴。
武装はディバイダーに付属のビームマシンガンに、サテライトキャノンの砲身に取り付けられたビームソード、両前腕のガントレット裏に格納されたビームサーベルに、背中に斜め掛けされた本機の目印とも言えるサテライトキャノンを装備している。バルカン等の内蔵火器の類いは、細身にした際に不要と称して排除した。
サテライトシステムは一般的なものだが、全身各所に施されたリフレクトプレートにアブソーブシステムを仕込んでおり、周囲の粒子を吸収することによって大幅にチャージ時間を短縮できる。これによってサテライトキャノンの連射を可能としているが、連射自体、砲身に負担を掛けるため、連射することはない。
名前の「レイディ」とは、本機の女性的なシルエットが由来している。因みにカノン機はピンクとワインレッドを基調としているが、キララ機は薄水色とサファイアブルーを基調としている。


今回は以上です。
次回は何時になる事やら……ではまた、ノシ

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