ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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EPISODE-23:こっちには槍があるのよ!

 マサキはシールドを駆使してファイヤーアームズの猛攻撃を防いでいた。しかしシールドも万能ではない。耐久力にも限界があり、しかもそれが近い。

 

「なんて弾幕火力なの!?」

 

 いくらなんでもフルバーストがこれでは攻撃のしようもなかった。

 ファイヤーアームズ全身の火器が総動員して放たれており、粒子残量など気にしないと言えるほどまでに放っていた。

 

「お姉ちゃん、そろそろやられてくれないかな? ボク、疲れてきちゃった」

「私はピンピンしてるけど?」

「だからさっさとやられてよ!」

 

 遂に攻撃を止めて、そのまま跳躍してアテナの近くに飛び降りる。マサキはしめたと言わんばかりにシールドから飛び出てファイヤーアームズに突っ込む。そして攻撃させる暇もなく体当たりをかまし、そのままGNインパルスランサーで突き飛ばす。

 

「うわぁっ!?」

「まだまだぁ!」

 

 アテナを駆ってGNインパルスランサーを突き立てようとするも、胸部ガトリング砲のハッチが開いて突き立てる前に躱す。ゆっくりと起き上がったファイヤーアームズは、今度は肩のミサイルハッチを開いてホーミングミサイルを発射した。

 

「これは避けれないよ!」

「たかがその程度で、ユー君が作ってくれた鎧が破けるわけないでしょう!!」

「ならこれだ!」

 

 避けずに喰らったミサイルだが装甲には傷一つ付かず、マサキはそのまま突撃する。ホノカは苛立ちを見せながらも、背中のビーム砲をアテナに向ける。

 

「それっ!」

 

 放たれたビームはそのままアテナに当たるが、マサキは直ぐにトランザムを発動させた。トランザムで切り抜けられると信じながら。

 

「トランザム!!」

「トランザムだからって、この攻撃を避けられるかな?」

 

 今度はビーム砲だけでなく、更に全身の火器も使って再びフルバーストした。当然避けられる筈もなく、ただししっかりと突き進むアテナの鎧は、少し、また少しと剥がれていった。

 

 

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 遂にフルバーストを突破するも、ユウキの作った鎧は全て剥がれ落ちた。しかしその手にGNインパルスランサーを握って、ファイヤーアームズの胸を突く。亀裂が入り、あと少しだというところでファイヤーアームズに避けられてしまう。

 

「危ないな~、もう少しで貫かれちゃうところだったよ」

「くっ、後少しなのに……!」

 

 バトルの最初にマガノイクタチにてエネルギーを吸われ、粒子残量が減ったのもあって、アテナの粒子残量も三十パーセントとなっていた。

 そんな時、ツクモのインパルスが木々を薙ぎ倒してやって来た。

 

「マサキちゃん!」

「つ、ツクモ先輩!? ……あの黒いのは?」

「リリカちゃんなら風穴開けてあげたわ。残るはホノカちゃんだけよ」

 

 リリカがやられたと聞いて、ホノカは驚愕する。

 

「うそっ! リリカもうやられちゃったの~?」

「生憎ながら、ね。さて、貴女にもお仕置きが必要かしら?」

「……お仕置きは大嫌い。でも、負けるのはもっと嫌い!」

 

 再びファイヤーアームズが動き、両腕のビームガトリングにバックパックのエネルギーポッドが連結し、これでもかと言わんばかりに火を噴いた。しかしツクモはシールドでそれを防ぎ、ビームブーメランを投げつける。

 弧を描いて飛んできたビームブーメランを避けようとするも、片方のガトリングに命中してしまう。そのままパージして片腕だけで弾幕を張り続けていた。しかしツクモは物怖じせずに防いでいたシールドを投げつけては、そこにビームライフルの弾を当てて反射させた。

 

「反射した!? ――避けきれないっ!」

 

 反射したビームを左腕のガトリングで防御するも、砲身が貫かれて使いものにならなくなってパージした。これで両腕のガトリングは無くなった。しかしビームキャノンにエネルギーポッドが接続され、威力を増したビームが迫る。

 インパルスで横へ前転して避けるも、驚くべきことにそのまま薙いできた。それと同時に木々を焼き消した為に、視界がかなり開けてきた。

 

「かなり無茶する子ね、全く!」

「ツクモ先輩、これを!」

 

 残り少ない稼働時間でアテナがGNインパルスランサーを投げる。アテナから投げられた槍を手にして、ツクモは振り向き様にトリガーを引いた。射出されたヴァンプレイトが一直線にビームを裂きながらファイアーアームズのビームキャノンを、エネルギーポッドごと破壊した。

 

「あぁっ、ビームキャノンが!」

 

 ホノカの悲鳴に近い叫び声が響く。しかしファイヤーアームズは両腰からビームナイフを引き抜いた。それを逆手持ちにしてはインパルスに斬りかかり、ビームライフルを盾にしてツクモは難を逃れた。

 

「たかがライフル一つ、こっちには槍があるのよ!」

 

 GNインパルスランサーのライフルモードで至近距離から放った。それはファイヤーアームズの頭部を掠めるだけで、そのままビームナイフをインパルスの頭部に突き立てた。お陰で頭部を失うも、ツクモはGNインパルスランサーをファイアーアームズの胸部に突き立て、再び発射した。

 

 

 

「これでっ、決めるッ!」

 

 

 

 ガキィッという金属音を立てて、ファイヤーアームズの胸を槍の切っ先が貫いた。

 

 

 

 

 

《BATTLE END》

 

 

 

 

 

 案外にもあっさりと試合が終わってしまい、ツクモとマサキは冷や汗が止まらなかった。

 ホログラムが解け、二人が一息吐くと、対面の二人は泣いていた。負けたことと、大切なガンプラが壊れたことで。

 

「………あの子達には申し訳ないけど、仕方のないことなんですよね?」

「そうだと、良いんだけどね。後はユーが何とかするわよ」

 

 そうは言いつつも、二人共、何故かやるせない気持ちのまま会場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロビーにて、ホノカとリリカはまだ泣いたままだった。負けてしまった上に、ユウキから貰った大切なガンプラも壊れてしまった。

 そんな時に、ふと懐かしい声が、自分達を呼んだ。

 

「お~い、ホノカ! リリカ!」

 

 振り替えると、愛しの兄であるユウキが駆けてきてくれた。二人共涙を拭ってからユウキに抱きついた。

 

「ユー兄ぃだ! 本物のユー兄ぃだ!」

「ユー兄ぃが帰ってきた!」

「あまり騒ぐなって……数年ぶりだな、ホノカ、リリカ」

 

 ホノカとリリカは思いっきりユウキに抱き付く。二人共力一杯ユウキを抱き締める。ユウキもお返しにと、二人を抱き締めてやった。

 

「……でもユー兄ぃ、ガンプラ壊れちゃったよ」

「リリカ達頑張ったのに負けちゃったよぉ」

 ガンプラのことを残念そうにした二人を、ユウキは優しく撫でた。

「お前達は十分頑張ったさ。頑張っただけでも十分だ。だから負けたからって恥じるな。相手は俺の師匠だぞ?」

「でもっ! でもっ!」

「でもも何もない。FAとブリッツ、見せてみろ」

「ボロボロになっちゃったよ?」

 

 そう言って、二人のポーチからそれぞれ取り出されたファイヤーアームズとシュヴァルツェアブリッツは、見るも無惨な姿になっていた。ファイヤーアームズは胸に大穴を開け、シュヴァルツェアブリッツにも腹部に大穴が開けていた。

 

「随分前に上げたやつだったな。それでも、今も使ってくれてたんだな……」

「だって、ユー兄ぃからの唯一のプレゼントなんだよ?」

「ボク達、これしかユー兄ぃとの思い出が無いんだよ?」

 

 ユウキはそれを聞いて目を丸くする。しかし直ぐに微笑んでホノカとリリカの頭を、さっきよりも激しく撫でた。二人はキョトンとした顔でユウキを見た。

 

「俺が直してやるから心配すんな! 今度、ちゃんと家にも帰るしさ。久し振りに母さんに会わないとな」

「ユー兄ぃ帰ってくるの?」

「やった! カグ姉ぇにも言っとかなきゃ!」

 ホノカの発言にピクリと反応したユウキは、思いっきり慌てる。

「お、おい! アイツには言うな!」

「「どうして?」」

 

 二人から一斉に聞かれ、思わずたじろぐユウキは、咄嗟に適当な理由を見付けては迷わず言った。

 

「ほ、ほら……あれだ! サプライズみたいなもんだって!」

「そっか! サプライズか!」

「なら内緒だね!」

 

 ホノカとリリカがそう納得してくれて、内心ホッとしたユウキは、どうするかと悩んだ。そう言えばこの後昼食をとるからと思い出し、二人も連れてくことにした。

 

「よし、この後兄ちゃん昼食食べてくけど、お前らも来るか?」

「良いの?」

「ユー兄ぃと一緒ならボクは行くー!」

 

 二人が笑いながら同意して、ユウキはようやく胸に溜まってたモヤが取れた。

 そんな三人の様子を見ていた模型部一同は、タイミングを見計らってユウキ達と合流した。

 

 

 

 

 

 レストランに着いて、各々好きな食べ物を注文した後、ユウキはコーヒーを啜りながらアテナとインパルスの破損具合を見た。アテナはほぼ無傷に近いが、あの重量の鎧を纏っていただけあって、関節のヘタレ具合が酷い。インパルスは武器類と頭部の損失で済んでいた。

 

「やっぱりアテナの関節は作り直しだな。……って言うか、これ作った奴誰なんだろ」

「……あれ、ユーの知り合いにガンダムアテナのこと知ってた人居なかったの?」

 ツクモの質問にユウキは頷きながら答えた。

「あぁ。バンダイホビーセンターの社員も知らないらしい。寧ろそんなガンプラ見てみたい、だとよ。誰が作ったのかは誰も知らないみたいだ」

 

 それを聞いてツクモは「うーむ」と唸りながら難しい顔をする。

 そんな話をしている間にも料理が運ばれてきた。皆揃ってお腹が空いていたので、早速合掌しては食べ始めていた。

 ユウキはそんな皆の様子に、クツクツと笑いながらガンプラの修理を始めるのだった。

 

 

 

 仲良く昼食を終えた後、アリーナの外へ出る。外へ出ると、ホノカとリリカはユウキの両腕を引っ張って、帰ってきたら何をするかの話で持ちきりになっていた。

 そんな光景を見て、マサキはふと自分の姉のことを思い出す。しかし思い出すだけで嫌気が差した。それを振り払って、マサキは近くの自販機でメロンソーダを買った。

 

「ユー君楽しそうですね」

「まぁ、ユーも妹が大事だったもの。この前に会ったリョウ君を見たときにも、ユー、悲しそうな顔だったし」

「……それは気付きませんでした。でもあれを見てるとすごいシスコンにしか見えないんですけど」

「大丈夫よ、妹達はブラコンだから」

「それ悪循環ですよねぇ!?」

 

 マサキのツッコミを無視してツクモは手にした缶コーヒーの中身を飲み干した。ヤヤはと言うと、自販機の缶コーヒーを飲んで目を輝かせていた。初めて飲んだ故か。

 アイカはユウキの所に行って、リリカやホノカと遊んでいた。見てるとホントの姉妹に見えて仕方ない。

 

「儂にも兄弟姉妹はおるが、少なくとも余り良い思いはせぬな。……特に兄は、な」

「そうかしら。私は一人っ子だから解んないけど。……でも、兄弟姉妹なら必ず何かしらあるものよ。現にユーがそうなんだから」

 

 その話を聞いてて、マサキは悲痛な顔をする。兄弟姉妹なら、何かしらあるもの……それなら、元通りにすることも出来るのだろうか。

 マサキは一口、メロンソーダを含みながらそう思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホテルへ戻ってきた私達は夕食後、大浴場に居た。

 

「こう言った大浴場はホント良いわよねぇ……覗きも無いし、湯槽は気持ち良いし、文句無しね~♪」

 

 そう言ったのは、大の字になって浮かんでいるアイカちゃんだった。私は自分の容姿と皆の容姿を比べつつ、落胆しながら答えた。

 

「……そうだね、こういう所には中々来ないし」

「でも気を付けなさいよ? 有名人の身体なんてそうそう見れたもんじゃないから、盗撮魔が居るかもしれないし」

「その時は儂が成敗してくれる。不埒な男など男ではないわ!」

 

 ガタンと音を立てつつ立ち上がったヤヤちゃんは、何故かその手に小太刀を握りしめていた。一体何処から持ってきたの……?

 するといきなり何処からともなくミナツ先輩が思い出すように言った。

 

「明日は第四回戦目だけど、残る三組で再びバトルロイヤルだそうよ」

「「えっ!?」」

 

 その言葉に私達は耳を疑った。三組でバトルロイヤル……いくらなんでも無茶ぶり過ぎやしないだろうか。

 

「ってことは明日が決勝戦ってこと!?」

「そうなりますね」

 

 私が冷静にそう言うと、ツクモ先輩は項垂れる。まぁ、何とかなる……よね?

 すると今まで浴槽で浮かんでいたアイカちゃんが、ミナツ先輩に残ったチームを聞いた。

 

「ウチ以外に、何処が残ったの?」

「そうね、残ったのは私達東東京と、やっぱり地元だからか静岡も入ってるわね。後は愛媛かしら」

「愛媛って、また以外な所が出てきたわね……」

「愛媛のガンプラは、GXよ」

 その言葉に、私とヤヤちゃんが同時に疑問符を浮かべる。

「「GX?」」

「正式名はガンダムエックスね。性能は勿論、照射されて当たったら確実にどんなガンプラでも大損害を受けるサテライトキャノンも脅威的よ」

「……でも、アイツは月が出てないとサテライトキャノンを撃てないんだけど……その辺の改修は絶対してきてるわね」

「ええ、恐らくアブソーブか何かでしょう。まさに倍返しね♪」

 

 クスクスと笑ったミナツ先輩の台詞に、私達は笑えなくなる。撃つのが限定されてるのに、それすら解消して無制限に撃てるなんて……ガンプラとは自由だと改めて思い知らされた気分だ。

 

「静岡のは?」

 私が質問するとミナツ先輩は依然微笑んだまま答えた。

「流石は、世界最高峰のガンプラバトルを教えている場所、かしらね」

「そこまで……強いんですか?」

「でもマサキちゃんなら大丈夫よ。私はそう信じてるわ」

 

 ミナツ先輩がにっこりと微笑んで私を抱き締めてくる。まだガンプラバトルを始めて間もない私がここまで来れてるのは、きっとアテナと才能のお陰なんだろうけど、それを以てしても、勝てるだろうか?

 

「勝てますかね?」

「勝てるわよ、ツクモちゃんだって居るわ。それにバトルロイヤルとなれば、戦闘中の不意打ちも構わない。それを留意しておきなさい」

「……はい」

 

 

 

 

 

 私はその言葉を刻みつつ、明日のバトルに思いを馳せたのだった。




前々回同様「二話で一話」みたいな感じで仕上げてみたり。

カミツです。何かとこのパターンやり易い。

特に一波乱にならないものの、次回が終われば日常回に戻れるッ!
では今回は芳堂姉妹が使うガンプラを紹介!



ガンダムファイヤーアームズ
武装:胸部ガトリング砲×2、ホーミングミサイル×18、マイクロミサイル×36、ビームキャノン×2、ビームガトリング×2、ビームナイフ×2
オプション装備:脚部クローラーユニット、大型ミサイルコンテナ×2
ホノカが使用するガンダムヘビーアームズをベースにした改造機。山吹・黒・白の三色で塗装された機体。下手すると人型の重機にしか見えない。
通常のヘビーアームズの武装の他にエネルギーポッドを繋げる事で威力を増幅させるビームキャノン二門とビームガトリング二門を装備。他には両腰にビームナイフを装備している。
フルバーストによる多面砲撃が得意で、機体もそれに耐えうる耐久性を誇る程頑丈。しかし機動性は考慮されておらず、基本は固定砲台のような役割をするが、わざわざ苦手なアクロバティックな動きで敵を翻弄することもある。


シュヴァルツェアブリッツ
武装:マガノイクタチ、腕部ビームクロー×2、ビームライフル、ソリドゥス・フルゴール ビームシールド×2、ビームサーベル×2、ビームファング×2、イーゲルシュテルン×4
特殊機能:ミラージュコロイド、MA形態、粒子吸収機能
リリカが使用するブリッツをベースにした改造機。全身が黒く、群青色のアクセントが特徴。
MS形態時は普通に黒いネブラブリッツに見えるが、MA形態時はガイアのMA形態に見える。
非常に豊富な武装と機能を持っているが、乗ってる本人がよく突進する為、あまり使われていない。



今回は以上です。
今年も残り少なくなってきましたね。ですが「師も走る」と書いて「師走」と言う通り、残り少ないからこそ忙しくなります。だから、気合い!入れて!行きましょう!
ではまた、ノシ

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