ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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EPISODE-7:オーバーブースト!!!

 

 

 

「――切り刻んであげるわ!」

 

 

 

 

 

 アイカのそのセリフと共に、エクシアRⅡがGNソード改を構えて突貫してくる。しかしそのスピードは、

 

「速いっ!?」

「遅いわね!」

 

 圧倒的にアテナよりも速い。押されたマサキはGNソードⅢで受け流しつつ、後退する。そこへツクモが割って入り、アイカを退ける。

 

「ツクモちゃん退いて、そこの白いのを倒してからツクモちゃんを相手してあげるから」

「退かないわよ! 大切な後輩を早々先落ちさせはしないわ!」

 

 基地の滑走路に降り立ち、GNピストルⅡのサーベルモードとGNソード改のソードモードが鍔迫り合いを起こす。火花が散り、一向に離れる気配もない。

 一方、その間にもアテナを駆るマサキは、シンカのGNアームズを狙っていた。

 

「今の内に、GNアームズを……!」

「そうは行かないのよ?」

 

 GNアームズの大型GNキャノンが火を噴き、アテナの真横を通り過ぎると、今度はマサキがGNソードⅢライフルモードで反撃する。

 

「それっ!」

「その程度、通用しないわよ」

「それでも……それでもっ!」

 

 ライフルモードの威力ではシンカが言った通り通用せず、まさしく無力だった。

 マサキは効かないならと思ってソードモードに変形させ、GNアームズに取り付こうとするも、目の前を突如ビームダガーが通過する。寸前で掠めただけで問題は無かったが、マサキは思わず攻撃の主を見る。勿論そんなのは一人しか居ない。アイカだ。

 

「シンカは落とさせはしないわ!」

「待ちなさいアイカ!」

 ツクモがアイカを取り逃してしまい、直ぐ様追いかける。

「シンカ、ドッキングスタンバイ!」

「了解……人遣いが少し荒いわよ?」

 

 アイカのエクシアRⅡがマサキを通り越してGNアームズへ突っ込む。

 するとGNアームズが展開して、エクシアが背中から組み込むカタチでドッキングする。そしてGNアーマーが完成した。

 

「そっちの操縦は任せたわよ!」

「はいはい、アイカは少し突っ込み過ぎよ? もう少し落ち着いても良いと思うのだけれど?」

「シンカは落ち着き過ぎなのよ!」

 

 仲が良いのか悪いのか、二人はそんな会話を交えながらアテナを襲う。

 再び放たれた大型GNキャノンを躱して、マサキは両手のGNソードⅢを展開すると、今度は遠心力を利用した回転斬りを食らわせようとする。

 

「ふふんっ、遅いのよ、貴女はッ!」

「もっと、もっともっと速く!」

 

 回転斬りを大型GNソードに止められ、もう片方の大型GNソードのGNビームガンで牽制される。そして更にエクシアのGNソード改により斬りかかられる。マサキはそれを(すんで)の所で躱し、後ろへ下がると、エクシアの左足に対してビームが当たる。

 

「きゃあっ!? 何するのよ!」

「私を忘れてもらっちゃ困るのよ」

「ツクモ先輩、この人速いです」

 マサキのアイカに対する一言にツクモは胸を張って答える。

「そりゃ一撃離脱は速さが命だもの」

「誇らしげに言わないで下さい!」

 

 マサキは再び近付く機会を窺いつつ地面へ降りるが、近くの建物の上に立つツクモはGNスナイパーライフルを構えていた。

 マサキのアテナには射撃兵装がGNライフルしかなく、ましてや牽制用でしかないので実質、全く以て意味がない。

 

「シンカ、このまま叩き斬りたいんだけど」

「野蛮な考えは止めなさい? 女の子らしくないし、あの子にも嫌われるかもしれないわよ?」

「い、今は関係ないでしょ!?」

「あらあら、可愛いわねぇ〜」

 

 クスクスと笑うシンカは微笑ましくアイカに言う。

 その間にも大型GNキャノン、GNビームガン、エクシアRⅡのGNライフルと、腰から取り出したGNビームライフルでアテナを集中的に狙う。しかし、ツクモにも狙い撃たれないようにそちらへの牽制も怠らない。

 

「これじゃ、こちらが近付けないわね……」

「弾幕が激し過ぎて近付けません!」

 

 華麗且つ無駄なく避けるアテナだが、それを操る当のマサキの集中力あってこそである。近付けない上に避けきれなくなってくるとなれば、自然と当たり易くなってしまう。

 それは誰にでも有り得ることであり、それを知っているシンカの策略である。

 

「……スタミナ削りしようったってぇ!!」

 

 右腕に固定されたGNソードⅢを外して、左腰からGNブレードを引抜き様に投げた。

 そのままビームの嵐を掻い潜り、時にはビームをも切り裂き、そのまま一直線へエクシアRⅡに向かう。

 

「GNソードッ!」

 

 ソードモードに戻したGNソード改を振ってGNブレードを叩くが、ギリギリで弾く。

 その隙を狙ってか、マサキがツクモに叫ぶ。

 

「ツクモ先輩、今の内に!」

「了解! ……さて、狙い撃つわよ!」

 

 構えられたGNスナイパーライフルから、鋭いビームがエクシアRⅡへと襲いかかる。しかしその前にアイカは叫んだ。

 

「トランザムッ!」

 

 GNアーマーごと真紅に染まったエクシアRⅡがその一撃を躱す。それに唖然としたツクモだが、次の瞬間にはアテナも地面を蹴ってエクシア目掛けて飛んだ。

 

「負けないよ! ……トランザムッ!」

「はぁっ!!」

 

 どちらも紅く染まり、大型GNソードと左手のGNソードⅢがぶつかって火花を散らす。どちらも負けじと鍔迫り合いを続け、互いに離れ合う。

 そこへ再び第二射が放たれてまた避ける。

 

「もう、ちょこまかと! 大人しく射抜かれなさい!」

「そうは行かないのよ、私だってツクモちゃんに勝ちたいもの!!」

 

 第三射、第四射と避けるものの、第五射目にて右側の大型GNキャノンに被弾してしまう。

 

「そんな、シンカっ?!」

「……ったく、ツクモちゃんに落とされるなんて、これじゃあ普通にMSで来た方が良かったかし、らッ!」

 

 最後に残った大型GNキャノンを放って、撃墜されながらもツクモのアストレアを撃墜することに成功した。

 

「くっ……マサキちゃんごめんなさい。また先落ちしちゃった」

「いいえ、そんなことはありません! GNアームズを落としただけでも十分です! 後は私がやります。だから、任せてください」

 ツクモはその言葉を聞いてクスリと笑い、頷いた。

「初戦で負けるなんて許さないわよ! 実力を見せてやりなさい、マサキちゃん!」

 

 激励を受けたマサキは、トランザムを継続したままアイカへと迫る。アイカもまたトランザムを継続させて突っ込んでくる。

 

「もうこっからは容赦しないんだから!」

「私も、ゲームは負けられないの! 負けるつもりもないけど、ねっ!」

 

 GNソードⅢで斬り上げ、そのままエクシアRⅡを弾くと同時にGNソードⅢを捨てる。そのまま両膝のGNカタールを手に取り、トランザムのスピードを活かして斬り掛かる。アイカもそれに負けじと右腰のGNロングブレイドを抜刀し、GNソード改との二刀流でマサキに対抗した。

 

 

 

 そして、剣と剣の応酬が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅く煌めく閃光が、夕焼け空に染まるトリントン基地上空にて、何度も何度もぶつかり合っていた。

 そんな二機は互いに刃こぼれした刀剣を打ち付け合い、どちらかが倒れるまでと言わんばかりに斬り続け合っていた。そんな様子に、さっきまで歓声が聴こえていた会場も、二人の様子を固唾を呑んで見守るかの如く静寂を貫いていた。それは先に落とされたツクモとシンカも同様だった。

 

「はぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 アイカの叫びと共に、中折れしたGNソード改で斬り掛かる。最早エクシアRⅡのその姿は、かつて改修される前のエクシアリペアを彷彿とさせる姿に変わっていた。

 

「せやぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 対するマサキも負けじと叫びながら、(ひび)の入ったGNカタールを振り翳してGNソード改にぶつける。そんなアテナにはそこまでの外傷は無く、しかしマサキ自身に疲労が見えていた。ゲームに慣れているマサキと言えど、ここまでの疲労感は感じたことがない。

 

「「オーバーブースト!!!」」

 

 二人の声が重なり、二機のGNドライヴが解放され、大量の粒子を撒き散らす。そして渾身の一撃を伴った攻撃を互いにぶつける。

 

 数秒――それだけ時間が経ち、刹那、バキンッと何かが割れるような、折れるような音が鳴り響いた。

 

「……そんなっ!?」

「もらった!!」

 

 僅かに重なった彼女らの声は、観客にはどちらがどっちを言ったのか聞こえなかった。……しかし、決着は直ぐに付いたのだった。

 

 

 

 夕焼けが沈みかかるその時に、GNソード改が根本から折れ、エクシアRⅡのその胸に、GNカタールの刃が深く食い込んでいた。

 

 

 

「私の……勝ちよ」

「私の……負けね」

 

 

 

《BATTLE END》

 

 

 

 ホログラムが解け、ファイター四人が露わになる。そこで、止まっていた時間が動き出す。静寂に包まれていた観客が大歓声を上げ、拍手喝采を奏でた。

 

『……か、勝ったのは、灯月母&七種真幸ペア! 残念ながらShineeSペアは敗退となります!』

 

 実況のお姉さんの台詞が響き、アイカが力が抜けた様に崩れ落ちる。

 

「ま……負けちゃった。あんな大口叩いといて、私、負けちゃった」

「……そうね。アイカちゃんはまだまだ師匠のツクモちゃんには敵わないってことよ」

 シンカがアイカの肩に手を置き、そっと優しく声を掛けた。

「いいえ、私には十二分に勝てた筈よ」

「え?」

 

 ツクモの意外な言葉に、思わず下げていた顔を上げるアイカ。そのアイカの目を(しっか)り見て、ツクモは言葉を続けた。

 

「アイカちゃんに戦術を教えたのは私よ。それに、実力も前よりかは格段に向上してるわ。ユーからの忠告が無きゃ、今頃マサキちゃんも負けてたわ。だからマサキちゃんは勝てたの。敢えて格闘戦の応酬に持ち込む為に」

「……あ」

 

 アイカは小さく呟く。自分はしてやられたのだ、見もしない、ツクモの隣に立った気弱そうな少女に。それに気付いた途端、恥ずかしくなった。

 

「私もまんまとしてやられたのかしらね」

「そうね、シンカも少しはユーを見習ってみたら? バカには変わりないけど、バカなりにも一芝居打てるぐらいの戦術(シナリオ)を考えてくれるわよ?」

「ふふっ、そうね、久し振りに会いに行きましょうかしらね、ユー君に」

 ツクモとシンカは笑いながら握手し合う。

「えっと、お疲れ様でした。……まさか、歌手の方と握手できるなんて光栄です」

「私も、貴女のような可愛い子と会えて嬉しいわ」

「……え?」

「冗談、よ」

 

 マサキはシンカがクスクス笑いながら握手するのを見て、思わず呆然としてしまう。そこへツクモが注意がてらにシンカに言った。

 

「あまりウチの後輩を弄らないでくれる? その子人見知りしそうだし。……あー、そうそう、この前の約束覚えてるかしら」

「約束?」

 アイカが立ち上がりつつも、疑問符を浮かばせて答えた。

「そうそう、アイカちゃんから言い出した約束よ」

 

 アイカは「はて?」と記憶を巡らしながら思い出すと、「あーっ!」と大声を出す。どうやら思い出したらしい。

 

「思い出した! どっちか勝ったらどっちかの言うことを聞くってヤツでしょ?」

「ピンポンピンポーン! だいせいかーい! ……という訳で、私からの言うことはただ一つ」

 

 人差し指を突き出して、勿体ぶるようにたっぷりと時間を置いた後答える。その謎の間に、アイカとシンカは真剣な面持ちでツクモを見る。思わずそんな空気にマサキまで真剣になってしまう。

 

「私達の学園に転校してもらいます!!」

「「「えぇー!?」」」

 

 ツクモのドヤ顔しながらの発言に、二人は即座に驚いた。それに釣られてかマサキまで一緒になって驚いていた。いきなり言い出した先輩の無茶に、マサキは入り口で見守るユウキを見た。ユウキはやれやれといった様子で首を振り、「こりゃ意地でも転校させるぞ」と言いたげな視線を送っては、マサキはそれだけで即座に察する。

 

「諦めた方が良いわよ? ユーだって二人が居なくて寂しがってるし」

「……ホント?」

「当然じゃない! 私が嘘言ってどうするの?」

「そ、それもそうよね……シンカ、私は転校するわ」

 アイカはもう決断していた。そんなアイカにシンカは驚きを隠せずに聞いた。

「えっ!? ホントに? ホントに転校しちゃうの!?」

「だってユーが居るんだよ?」

 

 アイカのその一言に、シンカは全てを察してしまう。そしてマサキまで察してしまい、マサキは同情の視線をシンカに送る。まさに、師も師なら弟子も弟子である。

 

 

 そんなこんなで、第一回戦第一試合が終了した。

 

 次は、第二回戦。マサキとツクモの前に立ち塞がるのは……?




ハイ、第一回戦目が終了しました!
次回は書く事の無かった第二回戦目!
相手は――残念ながら決まってません!

もしかしたら孤高のスナイパーさんの所のキャラが出てくるかも……?

では今回はアイカとシンカの機体について! 以下どうぞ。


エクシアリペアⅡリバイ
武装:GNソード改、GNビームライフル、GNロングブレイド、GNバルカン×2
特殊機能:トランザム、オーバーブーストモード
アイカが使用するピンク色と白を基調としたガンプラ。シンカ作の為、完成度は高い。
各所GNスラスターが若干大型化、又は強化され、アイカが得意とする一撃離脱戦法を可能とさせている。
また、装備が少ない為に余り融通が利かず、場合によってはかなり不利に追い込まれてしまう。
シンカのGNアームズとの連携も考慮しており、GNアームズの火力を以て戦う事も屡々……。

GNアームズ Type-E
武装:大型GNキャノン×2、大型GNソード×2、GNビームガン×2、GNクロー(GNビームサーベル)×2
特殊機能:エクシアとのドッキング、トランザム
シンカが使用するガンプラ。言わずと知れたエクシア専用GNアームズ。青い部分が水色に変化した以外は全く変わりない。
肉抜きをパテで埋めたり、墨入れや細かい塗装、各部の補強など、本格的な改造をしてある。その為完成度は高く、シンカの製作能力の高さが伺える。
基本的に支援機らしく立ち振る舞うが、アイカのエクシアとドッキングして、前線に出てはその火力で殲滅する事も屡々……。
時々汎ミスをやらかして、撃墜される事もある。


今回は以上です。
ではまた、ノシ!

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