CINDERELLA GIRLS×GRP TOKYO Highway XTREME RACER's M@STER   作:アマネモ

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兵藤レナ:A ah yeah i know i know ! 1"RENA THE GAMBLER"

 この世には、賭け事(ギャンブル)に生きる者達がいる。

 

 そして、兵藤レナもまた、その道に生きる者だった。

 

「♪~」

 

 彼女は今、己の人生を賭けた大勝負をしている最中だ。

 

「うん、すごくいいよ。

 また一段レベルが上ったんじゃないか?」

「ありがと。

 そういう事言ってくれる人が傍に居れば、レベルなんて幾らでも上がっちゃうかもね?」

 

 アイドルというゲームでの”ジャックポット”を手にする為に、プロデューサーである偉戒 卓(イカイ スグル)が場(合法カジノ店の軒先)から引き寄せた(スカウトした)エースカード。346プロダクション所属アイドル、それが彼女の今の姿。

 

「それが俺の仕事だからな」

「期待しているわ、プロデューサー」

 

 彼女は、自分の人生と言うゲームで自らの手持ちを彼に賭けたのだ。

 

「今日のレッスンはこれで終わりだ、が・・・今夜もか?」

「そうね、家に帰る途中ですもの。ちょっとした寄り道よ」

「レナはヨコに乗せてくれないもんな」

「多分だけれど、特に今夜はダメじゃないかしら?」

 

 偉戒は、今までにも彼女のこういう発言を耳にした事があった。

 彼女が持つ天性の”勘”とも言うべきそれは、確かに今まで外した事は無い。だが、彼女がそれを告げる時、いつも明確な理由に欠ける。

 

「やっぱり俺もクルマ、買うかなぁ」

「たしか、ライセンスは持っているんでしょ?」

「まぁな・・・」

 

 レナがレッスンルームから退出する間際、彼は問うた。

 

「なんで”特に”今夜はダメなんだ?」

「ふふっ、それはね・・・」

 

@

 

「どうですかー私の賭け、欠けている処はありました?」

「でかした楓ちゃん!」

「やるわねー見事にレナさん狙い撃ちじゃないの。

 でもプロデューサー君はナシなのね」

「仕事多いのよ、カレも」

(その仕事は今頃終わっているでしょうけれどね・・・)

 

 立ち寄った銀座PAの走り屋バーにその人達は居た。クルマを極力目立たない所に停めて、レナが入店するのを心待ちにしていたのは川島瑞樹、片桐早苗の「V・d!・D・b・s・s.」リーダーコンビと、二人に付き合っていた高垣 楓であった。

 

「しっかしこういう所で飲んでいるんじゃ、私達が見付けられない訳ね。わかったわ」

「普段のルーチンとは全然雰囲気違うからねー。

 1時間居たけど早苗ちゃんもうギブですわ!」

「ではそろそろ、酔いもたけなわと言う所でしょうから」

「ここのはアルコール入っていないわよ。それに、私はまだ1杯もしていないわ」

「ままそう言わずに」

「周って帰って来たら付き合ってあげるから」

「それでは、レッツ・ゴー♪」

(ハイハイ・・・)

 

 早苗が手早く勘定を済ませ、瑞樹達は店の裏側へ急ぎ足で向かった。その光景を見てレナは肩をすくめながら、自らの愛車たるFD3Sへ足を向けた。PAのライトに照らされたピンク色が眩しい。

 

「今夜のゲームも頼むわよ、私の相棒サン♪」

 

 ドライカーボンのボンネットに人差し指を走らせ、キーを差し込みドアを開ける。流れる様にワンオフのバケットシートに体を滑り込ませれば、自分が良く知っているダッシュボードとフロントウインドー越しの店の入り口が目の前に映る。ついさっきも見た光景と言えばそうだが、店に入る前と店を出る前では心持ちが違う為に、全く別のモノにすら見える時もある。

 

「相変わらず派手ね!レナさんのFD!」

「アンタには言われたくない筈よ、早苗」

「遅れましたー」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 爆音を轟かせ、例の3人がそれぞれのクルマに乗って店の裏から姿を現す。一体何処に停めていたのだろうか。川島瑞樹のSN95レーシングSPL、片桐早苗のS900マッドコップ、そして高垣 楓のNA2Rは有名カスタムショップが手掛けた”フォーチュンモデル”と呼ばれるエアロを纏い、さらにモディファイが重ねられて元がNA2Rとは言われるまで分からないだろう。レナも自分のクルマは派手な方だという自覚と自信があるが、今この場に居る4台の中では地味にすら見えかねない。

 

@

 

 PAを出発し、4台が一列に並んで一定の距離を保つ。

 複数人でのバトルが行われる前にはよく見られる光景だ。こうすることでコンソールの電波が伸び、最後尾から先頭まで一気にメッセージやバトルが送信出来るのだ。

 

「レナちゃんは「Deal of ACES」か、オッシャレな通り名だこと・・・。

 楓ちゃんは「Ende of E.R.A」・・・エンデ?イー・アール・エー?」

 

 最後尾となった早苗はコンソールを操作し、メッセージを送信した。

 

<どう走る~?>

<新環状右回り一周ってトコでどうかしら、レナさん?>

<良いわね>

<大井を付けるのは多いでしょうか?>

<構わないわよ?>

 

「<じゃ新環状右回り大井経由でRSバトル送信!>ってね」

 

 早苗からのメッセージとバトルを受信した楓は冷静だった。

 

「来ましたね」

 

 コンソールを操作してバトルを受諾。カウントが表示される。

 

「ふふふっ、楽しみね♪」

 

 瑞樹は少なくなってゆくカウントに心躍らせ、それに合わせる様に3速へギヤを落とす。

 

「さぁ、ゲームの始まりよ」

 

 そしてカウントがGOを表示した瞬間、レナはアクセルペダルを踏み込んだ。

 

@

 

「・・・成る程な・・・そういうコトかよ」

 

 そう言いながら、偉戒が眺めていたのはアイドル達のスケジュールボードだ。

 丁度、今の時間帯に川島瑞樹、片桐早苗、そして高垣 楓がオフになる組み合わせになっていたのだ。10代の方でもそれらしいスケジュールデザインが施されている所もあるが、間違いなくレナはこの3人と首都高を走っている。そう確信できた。

 

「やっぱりクルマ買おうかな・・・」

 

 偉戒が携帯端末の画面を開くと、そこには「GRP A1規定クリア済み」という触れ込みの中古車が幾つかラインナップされていた。

 

「買っちまうかな~~~~~~~~~ッ」

 

@

 

 バトルは深川線区間に入り、箱崎PAを通過したところだ。

 

「なぁに!

 まだまだこっからよこっからぁ!」

 

 箱崎PA前の分岐選択をしくじり、見事に黄色いサポートアザーカーのケツを拝むハメになった早苗は最下位になっていた。3位の楓から200mは離れてしまっているが、彼女の言う通りまだバトルは序盤、逆転のチャンスはそこら中に転がっている状態だ。

 

「付いて来なさい!

 わざわざ場に引っ張り出してきたんだから、楽しませてよね!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 レナはトップを快走、2位の瑞樹を車一台分引き離してなお加速する。元ショップデモカーという経緯を持つレナのFD3Sには3ローターのロータリーエンジンが搭載されており、ツインターボによる過給が加わることで730馬力を発生させるモンスターだ。更に瑞樹のSN95'00RSMより軽い車重によって、パワーウエイトレシオ(マシンの1馬力あたりに掛かる重量)においては元レーシングカーと大差ない数値を出すスーパーマシンとなっている。

 

「ほらほら、置いて行くわよっ♪」

 

 ・・・因みにだが、余り大きな声で言う事の出来ないギャンブルに勝利した事で、レナはこのマシンを手に入れた。プロデューサーの偉戒も知らない、彼女のトップシークレットだ。

 

「やられっぱなしってのは、キャラじゃないわね、瑞樹っ!」

 

 アザーカーを巧みにすり抜け、瑞樹のSN95はFD3Sに肉薄しようとする。だがマシンの性能としてはコーナリングで劣るSN95に、深川線区間で勝負するところは無い。むしろ気にするべきは後方、楓のNA2改が路肩を縫って瑞樹に迫っていた。

 

「路肩側から来るなんてねっ、アザーカーも居るのに!」

「狭い所から迫りますよ~」

 

 路肩から脱出した楓は勢いそのままに瑞樹の後方に付き、スリップストリーム効果で追い抜きのタイミングを計る。しかしスリップに付いた地点が悪い事、そして今夜はサポートアザーカーがまだ多い事もあって追い抜きはしばらくお預けであろうと楓は確信した。であれば、彼女がすべきはこの距離感を保ったまま、湾岸線区間に入る事が最優先される。

 

 その2台を、レナはバックミラーで、そして早苗は目前に確認しながら深川線を下って行く。

 

@

 

 湾岸合流で事態は変化した。

 レナが湾岸線との合流地点である辰巳の右コーナーで姿勢を乱し、瑞樹と楓を前に出してしまった。更に千載一遇と言わんばかりに楓が瑞樹をオーバーテイク。

 一瞬で一気に順位が変貌し、4台の差は縮まる形となった。

 

「ならパワー勝負に決まっているでしょーがっ!!」

 

 早苗はここぞとばかりにアクセルペダルを踏み倒す。一見乱暴に見える操作だが実際に乱暴そのものであり、バーンナウトの如き白煙を引きながらS900は湾岸線を疾走する。1000馬力には僅かに届かない程度の馬力はホンモノであり、3位のレナとの差がみるみる消えていく。

 

「流石にスペック差は覆せないわね・・・でもやり様はあるのよっ」

 

 時速340km/hの時点で2台は並び、レナは早苗に前を譲ってスリップに付く。

 

「後ろに付かれてしまいましたね・・・もう少し持って下さいね?」

 

 楓は既に5速を17000回転近くまで回しており、メーターは時速347km/hを記録している。

 

@

 

 NA1/2に搭載されている3Lおよび3.2LのV6ノンターボエンジンは、超高回転まで回すことでハイパワーターボエンジンと勝負するチューニングが主流である。一応だが2005年に崩壊する事となった「F1」の最末期においては、3LのV型10気筒エンジンをなんと20000回転まで回し、ノンターボながら実測で1000馬力を超えていたというデータも存在する。排気量の多さ、もしくは回転数の多さがパワーに直結する自然吸気(normal aspiration)エンジンにおいて、増やせる排気量がある程度決まっている市販車のエンジンを使う以上、回転数を上げる事よりパワーアップが可能なチューニングはほぼ無いと言っていい。稀にあるとすれば”常時噴射式N₂Oシステム”だが、NA1/2のメカチューンにおいては高回転化と併用している場合の方が多い。現に楓のNA2Rにもシステムは搭載されている。

 

 当然だがその非常識なレブリミットではメリットよりデメリットの方が多いかもしれない。だがC1GPや首都高でトップに近いNA1やNA2のエンジンは、ノンターボである場合そのすべてのレブリミットが間違いなく15000rpmを超えている。そうでもしない限り、首都高(特に湾岸)でノンターボエンジンがターボエンジンに勝てる要素はほぼ無いのだ。

 

@

 

 楓が6速へギアを上げる。18000rpmから一気に14000rpmまで回転が下がる。350km/hを過ぎて”加速がもたつく”という感覚は恐怖に直結するが、それは高回転NAの宿命として楓は飲み込むと同時に手動でもN₂Oを噴射して少しでも加速の補佐をさせる。流石に後ろに付く瑞樹のSN95も簡単には追い抜ける程の速度差にならない事もあって360km/hオーバーのランデヴーだ。

 

「お二人さんばっかり仲良くしていないでよ♪」

「早苗ちゃんお仲間に加えてほしいンですけれどーっ?」

「私だって、好きで楓ちゃんの後ろに居るワケじゃないわよっ!」

 

 更には早苗とレナの方も近付いて来ていた。咄嗟に瑞樹はデジタル表示のスピードメーターを見返す。372km/h。恐らくだが向こうは380km/hオーバーかと思うと、出したくないタイプの汗が瑞樹の肌を刺激する。

 早苗とレナが瑞樹の後方に付いた。4台がトレイン状態で海底トンネルへ進入すると、大井までもう長くは無い。

 

 最初に行動を起こしたのは、やはりというか楓のNA2Rであった。

 

「原則事項に乗っ取って、減速ですね」

 

 長すぎる高回転高負荷はノンターボでなくとも一発アウト。かといって一気に減速すると冷却がマヒしてオーバーヒートは避けられないという状況で、楓はアクセル全開のまま左足でほんの一瞬ブレーキペダルを踏み、3台の後ろへ滑り込んだ。

 海底トンネルを抜ける。

 

「チャァンス到来っ、て――――――――――――ッ」

 

 そして早苗がトレインから抜けた。

 大井の分岐が目前に映し出された状態で瑞樹と早苗が並び、更にはレナが外側の車線へ飛んで並びかかる。楓はレナの後方に付いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 大井Uターン、最初に飛び込んだのはレナと楓であった。

 

「イン側締め過ぎッ!?」

「やっば加速しない!?」

 

 早苗に思いっきり”被せられる”格好となった瑞樹と、角度を付け過ぎた為にカウンターを当ててほとんどドリフト状態に陥った早苗が加速出来ないのは当然であった。

 

「お熱い事・・・」

「お先していますね♪」

 

@

 

 結局は大井がバトルのハイライトであった。

 そのままレナと楓が1-2を決め、瑞樹が3位の早苗が4位という結果に終わった。

 

「っは――――――――ッ!

 ぃんやぁひとっ走りした後に1杯ヤるってホント最高だわ~。

 そう思うわよね。思うわよね!」

 

 先程、レナが入店し損ねたバーのプライベートルームを借りて女子会が始まっていた。

 当然ノンアルコール飲料なのだが、早苗の勢いはアルコール入りの場合とあまり変わらない。

 

「私はどっちかっていうと走る前の方が多いのよ・・・。

 でも、ゲームに勝った後だと確かに変わるわね。何時もより美味しいかも♪」

 

 居酒屋の宴会モードな早苗とは対照的なレナ、カクテルを呷る様が決まっていた。

 

「酒の肴はバトルの勝利?」

「しいて言うなら隠し味でしょうか?」

「何でもいいわよ、美味しい1杯が飲めればね!」

「あっ、プロデューサーからだわなになに・・・」

 

 レナの携帯端末にはプロデューサーである偉戒からのメッセージが来ていた。

 メッセージを確認するレナを見ながら、早苗と瑞樹は愚痴り合う。

 

「・・・アタシもね、ああいう感じを想像していたのよ。

 まさかウチの第7部署、プロデューサーが配属されないなんて思っていなかったわ」

「わかるわ。

 でも会社側としては間違っていないんじゃないかしら。私達は自分で自分をプロデュース出来るだけのスキルを持ち合わせている訳だし、なによりね・・・」

「美優ちゃんとるーみん(留美)はよくやったというか・・・瞳子ちゃんもか。

 あたし達のプロデューサークンは遠くへ行ってしまって・・・グスン」

「死んでないわよ彼。

 それに言う程会っていない訳でもないでしょーに」

 

 なにやら重力が増しつつある二人を横目に、楓はレナ宛のメッセージが気になっていた。

 

「どんな手紙が来たのでしょうか?」

「私のプロデューサー、クルマ、買うってね」




Non chapter EPISODE story movie

「ストーリームービー」が記録されました

NEXT…

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「ノンチャプターエピソード」川島瑞樹(片桐早苗)編

「A ah yeah i know i know !」

瑞樹と早苗が346プロに所属する20歳以上のアイドル達をメインターゲットに”絡み車”をするエピソードシリーズとなっている。

今回のターゲットは兵藤レナ。
高垣 楓と共に銀座から大井Uターン経由の新環状右回り1周のRSバトル。
操作するアイドルは選択可能、成功条件はすべて1位でのゴールである。
レナか楓を操作する場合、大井Uターン前で瑞樹と早苗は共倒れを引き起こす。

346プロダクション所属アイドルとプロデューサー。
詳しい紹介は「キャラクター&マシン」で行う。

兵藤レナ:「V・d!・D・b・s・s.」のメンバーだが、第7部署の所属ではない。その為担当のプロデューサーもきちんといる。
愛車はFD3SRSだが、エンジンは3ローターツインターボ、外観はフルエアロでノーマルの面影はない。元デモカー。
高垣 楓:346プロダクションが誇る超大人気アイドルだが、意外とスケジュールには空きが多い。彼女も第7部署の所属ではないが、チームには名を連ねている。
愛車のNA2Rはフォーチュンモデル化され、更にリアカウルを大幅にモディファイしている。エンジンは3.4L化と高回転化が施され、更にN₂Oを常時噴射するシステムが組み込まれている。
偉戒 卓(イカイ スグル):兵藤レナのP。カジノからレナを引き抜いた強者だが、彼女には振り回されている。この度クルマを購入する決心がついたらしい。

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