CINDERELLA GIRLS×GRP TOKYO Highway XTREME RACER's M@STER   作:アマネモ

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Do you know venus ? 7

 

「~それから・・・~58年ですね・・・」

 

 相変わらず、講義は退屈にも進行していた。

 

 暇だったある男子は、学校内では少し、いやかなり名の知れた女子学生の様子をさり気無く見ていたが、さり気無くしていられなくなった為に隣の仲のいい男子に声を掛けた。

 

「(・・・なぁ)」

「・・・」

 

 どうやら隣の男は耳を傾けたくないらしいが、それで退いては面白くない。相手がこちらに注意を向けていない事をいいことに目一杯接近し、その鼓膜に叩きつける様に声を掛けた。

 

「なぁ?」

「(ゥワッ!?

 ンだよ驚かすんじゃねぇ!)」

「(よし、お前の耳は大丈夫だな)」

「(はァァ?)」

「(ほれ、新田ちゃん見てさ)」

 

 男子達の視線の先に居たのは、左手で頬杖をつきながらも右手に握ったペンはしっかりと長ったらしい板書を丁寧にかつより分かり易くノートに書き込んでいる女子学生。

 

 名前を新田美波と言う、学校の女神という表現に男子の全員が賛成するであろう女性だった。

 

「(また新田ちゃんかよ・・・今日も”アンニュイ”いのか?)」

「(いや、むしろ逆だな)」

「(まぁそうだろうな、前回とは違う。俺だってわかる)」

 

@

 

「おぉ・・・」

「これは・・・」

「彼女、ですか・・・」

「ええ」

 

 346プロダクション本社の少人数用会議室、そこには数人のプロデューサーがおり、いかにも高級そうな会議用テーブルを囲んでいた。彼らの視線の先で会議を仕切っていたのは第2部署の主任プロデューサー、神猫 晴であった。

 

「新田美波。

 現在大学生、個人でのメディア出演の経歴はゼロ。

 現代には珍しくSNSの類は登録しておらず、恐らく本人は普通の一女子大生を取り繕っている」

 

 神猫がモニターの画面を操作すると、会議の主役となっていた女性、新田美波の画像が切り替わる。ミスコンの時の写真だ。

 

「大学生ミス・コンテストの優勝経験あり・・・物凄い逸材が埋もれていたもんだな・・・」

「アイドル全盛時代とはよく言ったものだぜ。

 咲いた花に気を取られて、黄金の芽を見逃していやがったな」

 

 第13部署主任プロデューサーの黄間長人と、先日遂に担当アイドル共々第12部署への配属が決定した北条真理乃は彼女を見て目の色が変わった。スカウトの経験乏しい両者だが、アイドルプロデューサーとしての”眼”は確かだ。

 

 それに加え、真理乃の表現も間違っていない。昔なら大学のミスコンと言えば芸能業界への登竜門とも言えるものであったが、今では既にデビューしているアイドル達に隠れてしまいニュースにもならないのだ。

 

「彼女は・・・とてもいい笑顔をしますね・・・・・・」

「お、出た雄輔の笑顔論」

「てことは相当イイんじゃないか?」

 

 第12部署主任プロデューサーの弐内雄輔には彼独自のアイドル論があり、それを端的に表す単語は「笑顔」だった。彼が笑顔について語ったアイドルが必ず”当たる”のはプロデューサーの間では有名であり、黄間と真理乃も何時もの事と言わんばかりの反応である。

 

「では彼女の詳細なプロフィールですが、先程の説明に有った通りSNSに参加しておらず・・・」

 

@

 

<んで・・・新田ちゃんが助けた女の子はアイドルで、お礼にそのアイドルが居る事務所に訪問する事になった・・・だったなぁ?>

「はい、ほぼそうですヨ、秋原社長」

 

 大学のガレージに一人、「堅実な四代目」波島貞治は自らが率いる首都高チーム「GALAXY RACERS」の創設者と電話をしていた。ガレージ内では彼の相棒であるZ31ZRが、ドライバーを急かす様にアイドリングを続けている。オーバーレブから完全に直ったのだ。

 

「新田ちゃんはどうなのさナミシマよぉ?」

<どうなのさって社長・・・彼女はやる気でしたよ。

 今日もガレージに来たんです。

 「もしかしたらアイドルにスカウトされるかもしれない」って>

「ほぉ~ぅ」

 

 そして波島の電話の先、秋原賢二は作業を続けながら後輩の電話に耳を傾けていた。今日分の客のクルマは既に仕上げており、今は自らの愛車であるJZA80RZを弄っている。長年の経験によって、電話をしながらでも整備技術に陰が落ちる事は無い。

 

<「じゃあもしホントにスカウトされたら?」って、訊いてみたんです。

「・・・やってみたい、アイドルになってみたい」

 そう彼女は答えました>

「そこまで彼女ン中で決まっているなら俺達の出る幕はねぇだろうよ」

<彼女が助けたアイドルは346プロのアイドルなんです。

 たしか346って、黄間先輩が行ったトコでしたよね>

「あぁそうだな、先日も来たし、アイツのツレは俺が造ったクルマに乗っているんだぜ」

 

 ボンネットを閉めつつ、秋原の口調は少し自慢げだ。

 

<恐らく黄間先輩も新田ちゃんの事は耳に入っている筈ですし、話とか聞けないのか―――>

「ははぁん。

 おまえ心配しているんだナ、新田ちゃんのコトをよ。

 いや気にしているっつった方がイイんだったか・・・」

<そっそりゃ、心配ぐらいしたって良いじゃないですか・・・後輩なんですから・・・>

 

(アオいなぁ・・・堅実て言うより堅物のほうが似合っているんじゃないか?)

 

 秋原は愛車の運転席に腰を下ろしつつ、まだ自分の感情に素直になれない若者に一つ尋ねてみた。ここまでの話で、秋原には一つの確信と呼べるものが頭の中に浮かんでいたのだった。

 

<なぁナミシマよ。その新田ちゃんは今何処に居るんだ?>

「・・・はぇ?」

<んだがら新田ちゃんは何処に居るか見当はついているのか?

 ってぇ話だよ、ガレージに顔、出したんだろう?>

「あっ、たっ、多分首都高に上っていると思います。

 彼女の場合、首都高を通らないと家に帰れない筈ですし・・・」

 

 大先輩の突然の質問に波島は戸惑ったが、なんとかかんとかで答える事が出来た。

 

<じゃあ大丈夫だ。メンバー集めておまえも上がって来い。

 心配なんだろ新田ちゃんがよ。もう始まっているかも知れねぇぜ?>

 

 首都高に上がる、という昔ながらの表現を抜きにしても、先の質問へ対する答えから突然大先輩にそうまくし立てられては理解が追い付かない。

 失礼かもしれないが、波島は聞き返さざるを得なかった。

 

「もう始まっている、って、何がですか?」

<何っておめぇ、新田ちゃんとオウマが”遇っている”かもしれねぇってコトだよ。

 モチロン、首都高でな>

「はぁァッ!?」

<細かい話は今ちょっと出来ねぇケドな、首都高ってぇのはそういう場所なんだよ。

 俺も出るぜ、可愛い後輩の姿が見たくなっちまった>

 

 そのまま秋原は電話を切ってしまった。一瞬呆然としてしまった波島だったが、物は試しにとメンバーのNo2に連絡を入れる事にした。

 

「・・・もしもし、瓦田か」

<そうだがリーダー、何だ突然>

 

 繋がった。波島は簡潔に意思を伝える。

 

「今日は俺も首都高に上がる。

 合流するから・・・今何処だ」

<今高槻亭だ、他のメンツもいる。

 それに・・・>

「それに?」

 

<今俺らな、新田ちゃんと居るんだヨ>

 

@

 

「会議どうでした、プロデューサー?」

 

 黄間が会議室を出て、346プロダクション本社の1階エントランスホールまで降りると美世が待っていた。346プロ本社のエントランスホールは正しく「城の玄関」という趣であり、僅か5年前に建造されたとは思えない程の内装だがそれでもキチンと事務所の機能が成立しているのは流石だ。

 

「あぁ、やっと主人公になれそうな人が見つかったよ。

 美世達の方はどうだい?」

「私は主人公陣営の整備長役!

 楓サンと共演するシーンが多いんですよ~」

 

 二人で346の正面玄関を出ると今度は奏、周子、フレデリカ、志希がお出迎え。

 近付いて来た奏が、慣れた手つきで黄間の右腕を取った。

 

「私は主人公から見れば敵役、組織内で暗躍するの。

 こうやって・・・ね?」

「奏はソウイウの似合よね~。

 あ、シューコちゃんは奏の部下なんよ」

「フレちゃんもね!」

「志希は?」

「逃亡中の天才科学者!

 今から役作りするんにゃ~!」

(((((それもう完成しているんじゃ・・・)))))

 

 駐車場まで来ると、トライアドプリムスの3人とも遭遇する事となった。

 

「お、13部署の人達じゃないか」

「どもども~」

「私達はこれから首都高だけど、そっちはどう?」

「ほぼ同じ、ね。ランデヴーの相手が増えるのは良い事よ」

「奏のトコのプロデューサーはクルマ持っていていいよね~。

 私のマリノは止めようとばっかりでさー」

「偶には彼を心配させないのも務めよ?」

「スンスン・・・キミもついに病院の香りが無くなってきたね」

「あ、判る!?」

 

 奏達と加蓮達の会話を、美世と志希、そして黄間は一歩離れて見ている。

 

「姦しい、てこういう事を言うんですよね」

「で、どうするんだ?

 トライアドの3人は其々のクルマだとして・・・」

「えーと、プロデューサーのとダチャーンのとシューコちゃんのだね」

 

 3人の目線は駐車場に停められた3台のクルマ、黄間のMA70、美世のR33、周子のZ31ZXに移る。誰がどれに乗るか・・・。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「奏は俺のナナマルでいいよな?」

「ええ、そうね」

「ダチャーンのクルマの匂い、嗅いでみたかったんだよね~」

「変なとこ触らないでよね?」

「てことはフレちゃんはあたしのゼットだねー」

「フンフン~フレちゃんシューコちゃんの隣、任されたー!」

 

 それぞれが選んだクルマへ乗ってゆく。エンジンに灯が入り、ヘッドランプが点灯する。―――そして一列を成し駐車場を出て、一様に首都高を目指す。




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「ストーリームービー」が記録されました

NEXT…

@


「ストーリーモード」第1章最後のメインエピソード

「Do you know venus ?」

このムービーの後、美世のR33、黄間のMA70、周子のZ31ZXからマシンを選択して6台で目的地まで向かう事となる。クリア条件は「他5台から±500m以上離れない」。

因みに「ストーリーリプレイ」では「堅実な4代目」波島のZ31ZRを駆る事も出来る。この場合クリア条件は存在せず、目的地までのフリーランとなる。

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