CINDERELLA GIRLS×GRP TOKYO Highway XTREME RACER's M@STER   作:アマネモ

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(挿絵は後々追加します)
03/04追記、挿絵追加しました。

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Do you know venus ? 6

「あっ、ピーチャン電話来ているよ」

「こんな時間に・・・?」

「・・・イヤな予感・・・当たらないでほしいタイプの・・・」

 

 神猫が取った電話の内容は、正しくのあが感じた嫌な予感そのものだった。

 

「えっ、アナスタシアが・・・?」

<はい、この時間になっても・・・>

 

 神猫が時計を見る。時計は14:37を指していた。

 スケジュールにあるアナスタシアの撮影は「14:40~」とある。

 つまり・・・あと3分しか無いじゃないか!

 

「これはヘヴィーな事態だにゃ・・・」

「何故先方へ連絡を入れていない・・・こういう時に限って不幸は重なるもの・・・」

「アーニャチャンの端末は繋がらないにゃ・・・多分電池切れにゃぁ・・・」

 

<どうするんですか、こっちも余り待てませんよ?

 それに連絡が入っていないとなるとどうしようにも出来ない部分も・・・>

「此方からも彼女との連絡を取っています。もう少しだけ、もうすこし・・・」

 

 時間は無慈悲にも、38を指そうとその分針を動かしていた。

 

@

 

「アザーカーが少なくてっ、まだマシな方で良かった、わ、ねっ」

 

 美波は奮戦していた。

 

「ミナミ、エドバシ過ぎました、これなら行けますね!」

 

 アナスタシアは、美波のタイムアタックを助手席から応援し、そして感謝していた。美波のアタックは驚異的で、ゴールである銀座PAまではあと1kmもない。

 分針は未だ38。目的地までには30秒以上の余裕が出来る計算だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

(私、このмаршрут・・・るーとで彼女より速く走れるでしょうか・・・?)

 

 アナスタシアは、美波のドライブに魅せられていた。

 絶対の時間制限がついている首都高のタイムアタックという、圧倒的な緊張と危険がマシンとドライバーを襲う状況、普通は助手席に人を乗せる事など考えられない。

 だがその極限状態の助手席において、自分の走りとは全く違う・・・ドリフトとグリップという大きな違い等ではない、より直感的な走りの違いにアナスタシアは完全に魅了されていた。

 

 ある種の安心感にも似た、そんな感覚がアナスタシアの身体を包もうとしていたその時。

 

「さぁ銀座PAよっ、間に合ったわ!」

 

@

 

 ―――あぁ、これでこのドライブが終わるのか―――

 

@

 

「あっ、あぁっ、良かった!」

 

 一瞬、ある意味では彼女に対してとても失礼かもしれない思いがアナスタシアの身体を駆け巡った。美波は”時間が迫っていた自分の為に”あれ程の走りをしてくれたのであって、その走りをアナスタシアが彼女に求めるのは”違う”のだ。

 

(извините・・・失礼なコト、考えてしまいました・・・)

 

 そして銀座PAを降り、PAから徒歩数秒のところに構えていた撮影スタジオまでを(法定速度内で)全速で走り切った。現在の時刻は14:39:15。アナスタシアが美波のSA22Cから降りると、端末を片手に撮影スタッフが駆け寄って来た。

 タイムアタックは成功した。

 

「ミナミッ、Огромное спасибо! アッ」

「さぁアーニャちゃん!よく間に合ったねぇ!さもう入っちゃって頂戴!」

 

(ふぅ―――――っ、間に合ってくれたわね・・・よかったぁ・・・)

 

 その光景を見た美波はここで一気に緊張の糸が切れ、完全にやりきった状態だった。バケットシートに全身を預け、普段の彼女とはおよそ同一人物ではなくなろうとしていた。

 

「ちょっと宜しいでしょうか?」

「んぅっ!?」

 

 そんな状態だった為に、撮影所の玄関前を陣取っていた美波は撮影所のスタッフにウインドーをノックされた。慌てて立ち去ろうとしたが、どうやら事情が違うらしい。

 

「いえ、クルマはそちらに停めてもらって。

 アナスタシアさんのプロデューサーから電話が来ているんです」

「え、私に、ですか?」

「はい、お礼がしたいとのことで」

「・・・分かりました、その電話出ます」

 

 美波はスタッフの端末を借り、スピーカーに耳を、マイクに唇を近付けた。

 

<もしもし、こちら346プロダクション第2部署のシンビョウと言います>

 

@

 

「今回の件、本当にありがとうございました。

 おかげで彼女の仕事に支障が出なくて済みます」

 

 神猫は、撮影スタッフとの電話越しにアナスタシア到着の一件を知る事となった。その電話の中で、どうやらアナスタシアを送ってきたのが女性ではないかと言う見立てが出来ていたのだ。

 

<い、いえっ。

 私はその、ただ人助けをしただけで、アーニャちゃんの姿が放っておけなくて>

 

 端末の先に居たのはやはり女性だった。

 しかも、声だけではあるがアイドルのプロデューサーであればその声の主を想像するのは難しくなかった。間違いない、アナスタシアを救った女性は――――――!

 

「あの、今回の件は後日キチンとお礼がしたいのです。

 そこでなのですが・・・」

<はい?>

「私達の部署に来てみませんか?」

<・・・えぇっ!?>

「場所は箱崎PAの近くなのでよく分かるとは思います。日時に関してはそちらの都合で構いませんが、アナスタシアが事務所に居ない時はお断りせざるを得ないところをご了承願いいたします」

<あっ、は、はい。解りました>

「失礼ですがお名前は」

<えと、ニッタミナミと申します>

「ニッタさん。一先ず今回の件は有難うございました。

 事務所の方でお待ちしております」

<はい、後日確かに訪れさせていただきます?>

 

@

 

 電話を切り、端末を書類と地図が散乱するテーブルに置き、深呼吸を二度しっかりやって、本来は来客用のソファーに座り込み、もう一度深呼吸をしてから、神猫は己に気が付いて項垂れた。

 

「やってしまいました・・・」

 

 先程の電話を傍から見ていたみくとのあも流石に”引く”勢いで、モノ申すには必要十二分の行為であった。

 

「ピーチャン手が速過ぎるにゃ!

 いくらアーニャチャンを助けた人が女の人だったってだけで・・・」

「不審者となんら違いのない会話・・・プロデューサーであってもギリギリ・・・」

「止して下さい、私も普段は弁えているんですから・・・」

「普段じゃにゃい時に弁えていないからそうなるんにゃ」

 

@

 

 少しの時間をおいて、復活した神猫は据え置き型の端末で調べ物をしている。ソファーの方ではみくとのあもそれを手伝っていた。みくは自前の携帯端末で、そしてのあは自身がイメージキャラクターを務める最新の腕部装着式携帯端末を展開させていた。

 

「―――起動―――」

 

 新興の技術系企業、WON-TEC社が開発した腕部に装着する携帯端末は一見するとリストバンドの類に見えるが、あの音声に反応してフレームが開き、モニターが何もない空間にホログラフィック形成された。しかもモニターは指でタッチの動作をするとキチンと反応し、扱い方はみくの携帯端末と全く同じだ。

 のあが使用する事でさながらSFの世界観が目の前に現れる。彼女をイメージキャラクターに起用したのは正解であろう。

 

「のあチャンだけ世界観が違うにゃ」

「・・・何を調べるのだったかしら・・・」

「でも中身はポンコツそのものにゃぁ!?」

 

 切れ味鋭いボケとツッコミが、誰に見せるでもなく展開されている所に神猫の声が掛かる。

 

「二人とも、何か情報はありましたか?」

「確かニッタミナミって名前を探せばいいんだよねピーチャン?」

「そうですよ」

「たぶんだけど”新田美波”て名前があったにゃ」

 

 みくが神猫の端末にデータを送ると、ソレを元に神猫は更に検索を進める。

 

「最近では珍しいですね・・・ソーシャルネットワークサービスに手を出していない。

 しかし彼女、かなり情報が流通していますね・・・難関資格を次々と取得している」

「えと、ミスコン!?

 ピーチャンホントにこの人なの!?」

 

 みくが提示したのは大学ミス・コンテストの優勝者欄と詳細ページであった。

 その年の他の候補も何人か載せられているが、残念ながら彼女を相手にする事は到底敵わないと、神猫でなくとも理解出来る程の”差”がそこにあった。

 

「歴然たる差ね・・・本人が一番謙虚そうなのがトドメと言ったところかしら・・・」

「アナスタシアに訊かない限りは判りませんが・・・恐らく彼女でしょう」

「どしてにゃ?」

「ニッタミナミの同姓同名はかなり少ないみたいです。ほら、類似候補に津田が出てしまう」

 

 神猫が検索エンジンに「ニッタミナミ」と打ち込み検索に掛けると、”新田美波”の他には「ツダミナミ」等の明らかに違うワードが出てきていた。

 

「それなので恐らく彼女、新田美波がニッタミナミで間違いないかと思いますね」

 

@

 

(・・・どうしよう・・・!)

 

 流された。そう言ってしまう自分に負けた気がする為、あえてそう考えない事にする。

 美波はアナスタシアを撮影スタジオまで送り届けたお礼として、346プロダクション第2部署に訪問する事が決定した。いや、自分で「行きます」と事務所の担当者に言ったのだ。

 

 今、SA22Cを自分が借りているアパートへ走らせながら、美波は考えていた。

 

(思えば、借りたアパートが大学から遠かったのが全ての始まりだったのかもしれない。移動手段に困った私は、軽はずみで取っていたGRPのライセンスが全国で使えるのを良い事にSA22C(このクルマ)を手に入れて首都高を走り始めた・・・)

 

 回転計を見ずにシフトゾーンへ合わせ、クラッチも使わずにシフトアップ。現代の技術で作られた強化クラッチと、アフターパーツのクロスレシオ化されたミッションを搭載する美波のSA22Cではその行為自体にメリットらしいメリットは無いが、これは彼女流の自分の調子を確認する行為なのだ。

 

(決まった・・・いつもより、間違いなく良い・・・)

 

 今回は調子が良いらしい。

 

(思えば、これをやり始めた時はよく失敗していたっけ・・・。それでクラッチを壊しちゃったから今のに換えて、それに合わせてミッションも・・・その時に首都高サークルの皆さんと出会って、本格的に首都高を走り始めたのよね・・・)

 

 GRPの黄色いサポートアザーカーの合間を縫って、美波のSA22Cは帰路をひた走る―――

 




Main EPISODE:Do you know venus ? 4

played result:SUCCESS!

「ストーリーリプレイ」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章最後のメインエピソード

「Do you know venus ?」

外苑PAから銀座PAまでのタイムアタック。時間制限があり、7分以内に辿り着かなくてはならない。残り3分になると第2部署の会話が音声と共に表示される様になっており、プレイヤーを緊張させる。
本編では美波がアザーカーが少ないと言っているが十分に多く、SA22Cのコーナリング能力をもってしても捌き切るのは難しい。実は時間には意外と余裕がある為、無理せずクリアしていくのが一番の近道かもしれない。
(因みにだが10回以上壁やアザーカーにヒットするとクリアは出来るが失敗扱いとなる)

第2部署の電話の様子は「ストーリームービー」で視聴出来る。

その後ムービーを挟み、今度は銀座PA横羽線を下り、浅田PAまでのフリーラン。
走行中に美波の回想が入る。
「GALAXY RACERS」は神田橋PAを本拠地にしている為、美波はかなり遠方から大学へ通っている事となる。

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