CINDERELLA GIRLS×GRP TOKYO Highway XTREME RACER's M@STER 作:アマネモ
<だぁーーーーーッ!!
もうちょっとだったのにぃーーーーーーーーッッ!!!>
「ふふっ、何選ぼうかなー」
3勝。
奈緒も凛も寄せ付けない走りで、見事「高槻亭」のメニューを奢ってもらう権利を獲得した加蓮は上機嫌だ。
<ん、後ろから来た・・・>
<速えーな、譲るか?>
コンソールのナビに一台、かなりのペースで3台に迫るマシンがいる事を加蓮も確認する。
(減速した・・・)
そしてそのマシンは、3台の少し後方で減速した。
大きさは奈緒のAW11とほぼ同じか、少し大きい程度。
(丸目の・・・リトラクタブル?)
バックミラーからでは確認し切れないが、数の限られるライト形状の様だ。
<付かず離れずで後ろに居るぞ・・・930か?>
<NA6Cか8Cかな・・・よく判らない>
奈緒と凛も正体を掴めないまま。
芝公園PAへの入り口は、既に通り越してしまった。
@
(3台・・・どれも速そうね・・・。
でも今夜は走りたい・・・体が疼いて、止められないの!)
「私との勝負、お願いしますね・・・!」
@
<来たッ、向こうからSPバトルが来たァ!>
<こっちにも来たね。
ネーム「レディアント・ヴィーナス」、名前は新田美波・・・>
<奈緒の知り合い?>
<いーや全然。
しかしSA22Cだったとは・・・気付かなかったな・・・!>
車種、SA22C。FC3Sのひとつ前のモデルであるロータリースポーツだ。
(確か奈緒のより古いクルマだよね・・・)
少なくとも、この場に居たマシンの中では最も古いマシン。
極単純な素人考えではバトルは挑まないハズだ。しかも3対1のSPバトルなど。
<絶対速いヤツだぜ・・・?>
<いいよ、私は受ける>
<凛・・・!>
<C1(此処)ならある程度マシンスペックの差を消せる。
だから向こうも仕掛けて来たんだろうけど・・・条件はほぼイーブンだと思う。
それに私達、どの道1週するんでしょ?>
目的地に近いPAを過ぎた以上、最短ルートはもう1週する事に他ならない。
<私も凛に賛成~。
もう一周するなら楽しまないと、ってね!>
<加蓮もかよ~っ!
ったく、あたしは注意したからなッ!!>
@
3台全てがバトルを受領したのを画面で確認し、SA22Cのステアリングを握る女性、新田美波は”滾って”いた。これから始まるバトルへの高揚と緊張、そして何より”楽しさ”に。
ギア2速へ入れた。シフトレバー捌きは確実で、かなり手慣れている。
「ミナミ、行きます・・・ッ」
カウントが、GOを示す。
@
「っだっから、言ったん、だ!
絶対、速い奴、だっ、て・・・っ!」
そう言いながら奈緒はSA22Cに”追われて”いた。
抜かず離れずのテールトゥーノーズで、SA22Cがミラーを左へ右へ。自分の限界を超えた走りを強制される恐怖が奈緒を襲っていた。
「こんのぉ!!」
霞が関トンネルに入る前の右コーナーを、奈緒は派手に車体をヨコに向けてクリアした。
(今のは決まった!)
彼女は走りのスタイルを漫画に憧れた時からドリフトと決めている。
必要最小限のブレーキングでキッカケを作り、後はアクセルとステアリングコントロールで文字通り道路を滑走する。漫画の1コマにはまだまだ遠いが、下手にラインを意識したグリップ走行よりも、スピードを乗せてコーナーを脱出出来る位には修練を重ねてきた。
(しかし後ろの・・・見事にグリップ派だな・・・)
奈緒とは対照的に、SA22Cは見事なライントレースでAW11に肉薄している。
その動きに感心していた時だった。
「しまッ!!」
流石に無理が祟ったか、霞が関トンネルの出口で奈緒のマシンが暴れた。
ミッドシップ&ショートホイールベースのAW11は、1度スピンしたら立て直す事は至難の業。
「~~~ッッッ!!!」
しかし奈緒は凌ぎ切った。AW11でカニ走りをしてきた彼女にとっては日常茶飯事の事象。だがバトル中に起こったのは運が悪かったとしか言えない。
既にSA22Cは、凛が駆るHCR32に襲いかかっていた。
@
(奈緒が撃墜(オト)された・・・)
バックミラーにSA22Cが映った事で凛は察した。
(・・・来るッ)
SA22Cがコーナーのインを取ったが、ここは凛のブロックで抑えた。
(卯月とは違う走り・・・手強い・・・!)
あの一件以来、C1外回りは卯月、凛、未央にとってのホームコースとなっていた。
特にこの場所は卯月と一緒に走っており、ランデブーは一層磨きが掛かっている。
(くっ・・・もう少し抑えられれば)
「加蓮が、勝つ・・・!」
2台でブロックして1台がチギる、3対1のSPバトルではよくある戦法だ。
図らずともそういう状況となった以上、普段は1対1のタイマンを好む凛も勝ちを狙う。
(アザーカーは2台・・・)
どちらも左車線、車間は少し開いている位だ。
凛が1台目のアザーカーをパス。SA22Cも続いた。
「嘘でしょ!?」
そのままの勢いでSA22Cは凛のHCR32に並んだ。前方のアザーカーまでは100mと無い距離、ここで仕掛けて来るとは思っていなかった。
「速いッ!」
加速には自信のあった凛のHCR32を退け、あと数センチという隙間をSA22Cは潜って見せた。
@
「今のは、ちょっと危なかったかな?」
美波も先程のオーバーテイクはやり過ぎと感じた様だ。アザーカーと衝突するのは流石に避けたいが、ああいうスリルを一度経験してしまうと身体が求めてしまうのが悲しいサガだ。
「ん・・・さぁ、あと一人・・・♪」
AW11のSPは既に0、HCR32も挽回する事は恐らく不可能。
あとは正面に見えるZZT231のみ。こちらのSPはまだ6割残っている。
@
「来た来た来た~」
後ろからのハイビームの光が加蓮の右足を刺激する。江戸橋右コーナーをクリアすると、C1ではかなりスピードが乗り、危険度が跳ね上がる宝町~京橋~銀座区間に突入する。
(付いて来れるかナ~?
後ろのお方っ)
加蓮はこの区間が好きだ。
(この感じがサイコウなんだよね・・・魂が躍る瞬間ってやつなのかな♪)
宝町のストレートを、アザーカーやバトルをしていないライバル達を躱しつつ下り、270km/hオーバーのまま京橋の分岐を過ぎると、目の前には狭い2車線を更に引き裂く”壁”が現れる。
昔からこの”壁”は走り屋達に牙をむいてきた。今でこそ車体技術の革新的向上によって320km/hで真正面から突っ込んでもマシンがバラバラになるだけで済むが、何人がココと次にもある”壁”でその命を散らしたか。
「そりゃっ!」
そこを加蓮はハイスピードで潜るのが大好きで、得意だった。
壁の後に待ち構える左コーナーをアザーカーとガードレールに掠る勢いでクリアすると、二つ目の”壁”に進入する。
「おっそっち行くんだ」
SA22Cは加蓮が入った方と逆の方を通過、そのまま前に出た。
(でもそのままフィニッシュは無いからね!)
前に出たSA22Cはアザーカーが居るアウト側へはらみ、ブレーキランプを光らせた。かなり素早いリカバリーを見せるが、加蓮にとってはブレーキランプを光らせた時点で”隙”なのだ。
(車間数ミリ、行けるッ)
@
「嘘っ危ない!!」
減速した自分のマシンに後ろから突っ込んでくるとあれば恐怖以外の何物でもない。しかもその後には2車線区間を3台で走るハメになった。
(シゲキ的な事してくれるじゃない・・・身体が覚えちゃったらどうするの・・・?)
美波は自分が感じるスリルの水準が上がる事を気にしながらも、前のZZT231を追う。
銀座区間を過ぎ、かつて「C1GP」のコースに選定されていた時にホームストレートに設定された区間を疾走する。相手のSPは7割、こっちは4割、まだ行ける。
(前のマシン・・・かなり危なっかしい動きだけど、壁には当たらないのね・・・)
京橋の時点では気が付かなかったが、ZZT231の動きはかなりトリッキーだ。走行ラインを意識しない辺りは実戦派と言っていいかもしれないが、それでもここまでの動きをする相手と戦うのは初めてだった。
(残り3割、イケるよねっミナミ!)
@
(芝公園過ぎちゃったよ・・・!)
バトルは遂に2週目に突入。既に凛と奈緒のSPは尽き、加蓮とSA22Cの一騎打ちの状態。
こっちのSPは6割弱、対して相手は3割を切った。
「このままこのまま!」
壁に擦り寄り、アザーカーを避けて前へ、前へ。
加蓮はこの瞬間を、生と死の境目で生を勝ち取るこの一瞬を感じる為に首都高を走っている。
「あと1割・・・!」
首都高を走る理由としてはとても危険な分類だ。
「行ける・・・行けぇ!」
自分を愛してくれる真理乃が心配している事もキチンと理解している。
彼が出来る事なら辞めさせたいと思っているのは雰囲気で判る。
「・・・勝ったッ」
だが、それでも走るのだ。
この場所は、自分にイノチを与えてくれる場所だから。
@
<とてもいい勝負を、有り難うございました>
バトル相手のSA22Cからメッセージが来た。
加蓮としても、ここまで充実したバトルは久々だった事から、相手も同じ様に感じていた事は嬉しかった。
<こちらこそ良いバトルでしたね!
あの、良かったら1週して芝公園の「高槻亭」に来ませんか?
他の2台も居ますよ>
顔が見たくなった。奈緒には悪いが誘ってみる。
「新田美波」と言う名前と今の声からして美人の風格が滲み出ている。
<お気持ちは有難いのですが・・・遠慮させて頂きますね・・・>
<そうですか、失礼しました>
<また、機会があれば>
<そうですね、また今度、機会があれば>
新田美波が操るSA22Cは、3号渋谷線に行ってしまった。
<加蓮~席取っておいたからな~>
<安全運転で来てよ、加蓮>
@
高槻亭に入店すると、流石に時間からか客入りは少ない。
だが少し見回すと首都高ランナーと思しき人影が幾つか加蓮の瞳に入って来た。
「よ~お加蓮、どうだった~?」
「勝ったよーブイ!」
「やったじゃん、加蓮」
奈緒と凛は既に注文をしていた様で、席には幾つか料理が並べられていた。
「おおっとメールだ・・・」
「コッチにも来たよ・・・マリノからじゃん」
「今夜は3人同時に何か来るね」
奈緒と加蓮の携帯端末には真理乃から、凛には弐内からメールが入った。
「えーと、何何・・・SFアニメの次回作ゥ!?」
「みたいだね」
「タイトルは・・・」
「「「・・・女神症候群-ヴィーナスシンドローム-・・・」」」
Main EPISODE:Do you know venus ? 2
played result:SUCCESS!
「ストーリーリプレイ」が記録されました
NEXT…
@
「ストーリーモード」第1章最後のメインエピソード
「Do you know venus ?」
3対1のSPバトル。ストーリープレイでは”謎の女性、新田美波”が駆るSA22Cを操作、トライアドプリムスに挑む。
ストーリー上は一回で全員とバトルしているが、ゲームでは3連戦と言った方が正しい。クリア条件は奈緒、凛に勝利し、加蓮とのバトルで芝公園を通過する事である。
減った分のSPが回復される事無く次のバトルになる為、SP残量への注意が必要。マシンスペックでは勝っている為さほど焦らなくてもOK。
加蓮とのバトルは勝っても負けてもほぼムービーに違いは無い。
「ストーリーリプレイ」ではトライアドプリムス側でのプレイが可能。
奈緒と凛が「一定区間で美波の前にいる事」
加蓮は美波と同じく「芝公園を通過する」事がクリア条件となる。
コチラはマシンスペックで劣る他、MR、FR、FFという駆動の違う3台を連続して操作する事になる為難易度でいえば美波の方より断然高い。