CINDERELLA GIRLS×GRP TOKYO Highway XTREME RACER's M@STER 作:アマネモ
「!
この音は・・・」
あのバトルから数日後。一仕事を終えた美世のところへ1台のマシンがやって来た。
特徴的なV型6気筒ツインターボの爆音、神崎蘭子のEG1del”ARMORMAIL”の音だ。
(でも排気音が違う・・・。
運転しているのは蘭子ちゃんじゃない?もしかして・・・)
そう美世が考えている内に、デルソルは美世のガレージへと入った。
デルソルの運転席から降り立ったのは、美世の予想通りに蘭子では無かった。
「全く、一般路を走るだけでも中々にてこずらせてくれる奴だ・・・。
今更ながらに、これを平然と操る蘭子の凄さを思い知らされるよ」
「そりゃ、私だってこれは運転したくないですもの」
「まだ蘭子専用に煮詰めきっている訳では無いから、貴女ならある程度は乗りこなせると思うぞ。
私が保障しよう」
出てきたのは池袋晶葉だった。ご丁寧に、マシンをここまで自走で運んできたらしい。
「私にはミッドエンジンが合わないんです。FRメインの四駆が良いの」
「だがモータースポーツの経験があるだろう?
調べてみたが、JF1.5でシリーズランキング2位まで行ったことがあるらしいじゃないか。
当然だが、その成績ならトップカテゴリーのFWCも視野に入るだろう?」
(2015年FWC第7戦の1シーン)
「あ、いや、あれはちょっと・・・ね?
人には偶に言いたく無い事もあるんだよ」
「そうか、なら仕方ない」
美世は何とか晶葉の追及を逃れた。
「いつもここで作業しているのか?」
次に晶葉が興味を持ったのは美世のガレージだった。
「そう。
まぁ作業もだし、食事とアイドル関係、あと首都高以外ならほぼ此処に居るよ」
「睡眠は?」
「此処だけど」
「そうも自然に出るとはな・・・少しは疑問に思えよ」
「そう言う晶葉ちゃんはどうなのさ?」
「私達は似た者同士だよ。
この環境が良いんだろう?」
「そういうこと」
@
「提案がある。コイツを見てみないか?」
晶葉が指したのは、間違いなく蘭子のデルソル”ARMORMAIL”だ。
「蘭子の許可はいらない。こいつはまだ私の所有物だからな。
私の許可だけで十分だぞ」
「イイの?」
「代わりにだが、貴女の意見が聞きたいのだよ」
@
「わぁお・・・」
リフトを使い、美世はデルソルの下へ潜った。
「どうだ?参考になるだろう?」
「参考も何も・・・凄いって言葉しか出ないかな・・・」
美世の目の前に現れたのは”芸術”だった。
「アンダーパネルのフィンが可動式・・・。
配置も造形も、パッと見ただけで”良い”って理解出来る・・・」
「ウイングはレギュレーション上可動出来ないからな。
エアロダイナミクスの追求は、コッチでやらせてもらっているのさ」
「成程ね。
コーナーでもアクセルを開けられるトリック・・・グラウンドエフェクトカー・・・」
美世の口から出た単語、「グラウンドエフェクトカー」。
分かり易く表現すれば(正しくは無いのだが)”クルマを一つのウイングにする”考え方によってサーキットでのタイムを短縮するタイプのクルマである。80年代のモータースポーツ・シーンでは必ず語る事となる要素の一つであり、形を変え、21世紀の今現在でさえもレーシングカーは基本的に「グラウンドエフェクトカー」と呼べる機構を有している。
因みにグラウンドエフェクトカーの考え方に沿った一般的な空力パーツには「ディフューザー」等があり、これは美世のR33にも装着されている。
「トンネルの天井を走るだけがダウンフォースじゃないって事さ」
「私のRも空力は結構気にしているんだけどね~。
これ見ちゃうと考えるなー」
「ほう?」
一旦美世がデルソルの”腹”から脱出した。
そのまま椅子に座ると、彼女の目線は相棒であるR33に向けられた。
@
「あのRはね、実は2代目なの。
あ、勘違いしない様に言うとエンジンは初代そのままなんだけどね」
「シャシー、ボディは?」
「まだ健在、石川のウチに転がっているハズ・・・」
美世は立ち上がり、事務所机の引き出しから一枚の写真を取り出した。
晶葉が覗くと、そこに映っていたのはR33と美世のツーショットだった。
晶葉程であれば、そこに写っていたR33が今この場所にある美世の相棒と違うという事には写真越しでも気が付いた。
「17ぐらいか?」
「うん。そしてこれに写っているのが、さっき言った初代のボディ」
「なぜ今のシャシーに替えたんだ?
”健在”と言ったんだ、クラッシュした訳でもないのだろう?」
美世は無言で椅子に戻り、晶葉も座り直す。
晶葉はこの時、美世の話が長くなることを確信した。
「10歳の時、実家の近所にあった解体屋に転がっていた一台のBCNR33・・・。
色は純正色のダークグレーだけど、フロントフェンダーはブルーになっていた。
ボンネットとフロントバンパーは無くて、RB26が一発で目に飛び込んできた」
「・・・」
「おとーさんに泣き付いて、何とかそのR33をゲットした私はその日から10年掛けてレストアとチューニング、そしてカスタマイズをしていく訳だけど、途中ちょっとした出来事があったの」
「予想はついている」
「当たるかな?
私がジュニアフォーミュラに参戦する様になって、Rに関わる時間は減りつつあった。
それでも、遂にエンジンが完全に動く様になるまではレストアし続けたの。
さて次はボディだ!あのボディはヤレも無かったから綺麗に弄ろうとしていた正にその時」
「エンジンレスのR33が転がり込んだ・・・か・・・」
晶葉は”しまったと思う”という事を理解した。
場に僅かでも静寂が訪れる。
「お、み、ご、と。
いやーね、ロールケージもスポット溶接もしっかりやっていてエンジンだけ無いっっていうRを見ちゃったらね、ねぇ?それに色も赤色していたし、外装も揃っていたりして・・・」
「悪かった、さっきの事は謝ろう」
「いやいや謝られる覚えはないヨ。
まぁつまり、そのR33にエンジンを積んで、ナンバーを取っちゃったってワケ」
「それがその写真のR33か。
確かにそれなりに出来ているとは思うな。写真越しだが」
「もうその頃には大分知識もあったからね。
”いいものは使っちゃおう”って思っていたの。実際このRも速かったよ」
「仕様は?」
「ブースト1キロで400馬力位だったかな?
あの頃は首都高にも来ていなかったし、そこまでパワーは必要じゃなかった。
まだエンジン本体の完成度が判らなかったってのもあるね」
写真を持ち上げ、ひらひらと振る。
「でも違った。幾ら速く走っても、幾らバトルに勝っても違った。
このRじゃなかった。
私の波長に合うRは”あっち”だった。
あのグレーでボンネットの無い、それでいてユガミもヤレも無いあのR33が、私のRだった。
っていつの間にか気付いていたの」
「・・・」
「その頃からかな、私の中でクルマと言うモノの存在が変わったのは」
「どう、変わったんだ?」
美世は写真を置いた。
そして晶葉に視線を向けた。
その視線に、晶葉は穿たれる様な錯覚を覚えた。
「器」
「うつわ・・・」
「クルマは単なる手足の延長線上じゃ無くて、自分の魂を入れる器なんだよね」
「ほぅ・・・面白いな」
「で、私はアッチのRをレストアする為に時間を作って、ついでに補強と軽量化もしっかりやって、そしてエンジンを積み直して・・・出来たのがあのBCNR33、私のRってこと」
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「話を戻すが、私のデルソルを見て”考える”と言ったのは・・・」
「あぁ、それね」
美世は写真を事務所机の引き出しに戻し、一枚の紙を晶葉に見せた。
「あっちのボディも出来そのものは良いからさ、復活させたいのよ。
それもただ動かせる様にするんじゃない。もっと”とびっきり”のRにしたい!
・・・ってね」
「・・・案外、それは遠からずしてくるかもナ」
「?何か言った?」
晶葉の呟きは、今度は美世に聞こえていなかった様だ。
晶葉は、首を横に振った。
「いや、こっちの話だ。
今日はありがとう。お陰でイロイロといい話が聞けたよ」
「いやーこっちこそだよ。
またね晶葉ちゃん!」
晶葉は照れ臭そうにデルソルに乗り込み、そのまま美世のガレージから去って行った。
「ふー。
今日はもう依頼も無いし、ちょっと早いけど上がってみますか・・・」
美世はもう一度、しっかりと相棒のRを眺めた。
(そういえば、私がジュニアフォーミュラを辞めたワケ、気付かれていないよね・・・?)
Main EPISODE complete
「ストーリームービー」が記録されました
NEXT…
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「ストーリーモード」第1章中盤のメインエピソード
「She met a ...」
このムービーでエピソード終了となる。
以降、晶葉、光、麗奈の所属する第8部署が部署選択時に選べる様になる。
また、第9部署選択時に蘭子がキャラクターの選択肢に加わる。
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活動報告の欄では説明した事もあるが、ゲーム内の世界観(と「ドライブ ユア ゴーゴー!」や「紗南@GAMEwork」の世界観)では「F1」が消滅しており、代わりに「FWC Formula World Championship」というリーグがフォーミュラカーレースのトップカテゴリーとなっている。
マレーシアに本社を持つ総合石油系企業「クローバーフォース・ペトロリアム」のイメージキャラクターには346プロダクション第6部署に所属する「緒方智絵理」が採用されており、メインスポンサーを務めるチーム「CFP&KL AYracing」のカラーリングにも彼女が描かれている。ドライバーはベテランの小早川悟。
首都高バトルには「ローリング野郎1号」や「ローリングマスター」として長年登場している。
昨年、遂に765プロダクションのアイドルレーサー菊地 真は父、菊地真一が代表を務める「菊地真一レーシング」よりFWCに参戦。シーズン3勝を挙げる活躍で見事ルーキーオブザイヤーに輝いている。チームには「萩原建設」等日本の企業が多くスポンサーに加わっており、今後の活躍に期待が寄せられている。
これ以上の詳しい説明は「用語集」で行う。