CINDERELLA GIRLS×GRP TOKYO Highway XTREME RACER's M@STER 作:アマネモ
「来るよ~蘭子ちゃん来るよ~!」
「わぁかったから!
静かにしなさいよ集中出来ないッ!!」
”復讐者”の名前を持つそのクルマの中では、同乗者の志希と持ち主でありドライバーを務める麗奈がてんやわんやの状態になっていた。
間もなく、護国寺PAが構えられているS字コーナーに進入する。
後方の神崎蘭子と原田美世が乗るEG1del”ARMORMAIL”から発せられるオーバーテイクの意志が麗奈の背中に突き刺さる。だが、その程度では麗奈の心理は決して動かない。
「ぜっったいに抑えて!
前のヒカルを捉えるんだからァ!!」
@
「ここだ!
行くよ蘭子ちゃん!」
「我が”ARMORMAIL”の下に屈せよ!
<<いっきますよぉ――っ!>>」
S字の進入で麗奈のインを狙う。
「そんな動き見え見えよ!」
流石に動きが綺麗過ぎたか、麗奈にあっさりとラインを防がれた。
だが、今回の場合はそれで正解だ。
「返して!」
「その程度で屈すると思うか!
<<まだまだぁ!>>」
麗奈がインを締めた事で出来た、アウト側ラインへ蘭子は”飛んだ”。
そしてそのまま、自慢の加速でオーバーテイク。
「ンな甘い話があるかァァア―――――!!」
「ナイトラス・オキサイドをぽちっとぉ!」
なんと麗奈の”The Wraith”にはN₂Oシステムが搭載されていた。
しかもそれだけではない、S字の中間点で噴射したのだ。
(志希ちゃんか!これは不味いぞ・・・!)
一瞬のタイミングを非常識な大技で妨害された為に、助手席の美世はスイッチを押した犯人を当てると共に危機感を抱いた。ここで前に出なければ、麗奈を抜いても光に追い付けない。
「!!!」
普通の首都高マシンであれば、この時点でオーバーテイクのチャンスは消滅していた。
「否!
征くぞ”ARMORMAIL”ッ!
<<まだ!
まだ行ける!アーマーメイル!>>」
S字を通過して、蘭子は麗奈のマシンの前に躍り出ていた。
「なっな、何よっそれぇ―――――――ッ!!!」
@
「アレは本当に、クルマの動きなの?」
「一応、な。
麗奈が勝手にN₂Oを搭載させていたお陰で、イイモノが見れたよ」
少し後ろから一部始終の目撃者となった奏と晶葉でさえ、一連の光景に対してそのような事しか言えなかった。それ程に新鮮で、そして衝撃的なシーンだった。
事実は、蘭子が麗奈をS字で追い抜いたというだけだ。
それだけのハズだが、それだけで留めて置きたくない感情が二人を惑わす。
「3段フェイント、とでも言うべきか、なんというか・・・」
「”相手のクルマが止まっている様だ”って、こういう場面でも言うのかしら・・・?」
「我ながら凄いクルマを作っているかも知れんな・・・」
@
「<<2位と3位が入れ替わりましたよ>>」
「あぁ、見えていたよ。
ありゃ相当スゴイな・・・燃えてきた!」
蘭子との差はそれほどあるわけではない。
この先は大曲の左コーナーまで2km、途中の緩い右カーブを挟んだストレートだ。
「<<引き離しますか?>>」
「いや、追い付かれるのは間違いないからエンジンに負担を掛けたくない。
この距離なら、ブロックして見せるッ」
「<<ヒカルならそう言うと思っていました>>」
中指でトリガーを引き、ギヤを上げる。
1km弱の直線、それもS字を脱出してからという条件でも、悠々と300km/hまで加速する光の”ナイト”は確かに常識的ではない。だが後ろから迫ってきている蘭子のデルソルはそれ以上だ。
「早稲田で追い付くか!
っ、曲がれぇ!」
普段、僅かでも減速して進入するコーナーに加速しながら突入する。
マシンのスペック上可能ではあったが、光が実行した事は無かった。
(曲がってくれ・・・!)
ジワリと普段のラインからアウトへ流れる。だがアクセルは踏んだままだ。
心の中では冷や汗が止まらない。
「よしっ」
コーナーをクリアした事で光は安心したが、後ろの脅威は未だ健在。
次のコーナーまで1km、防ぎきれるか。
「サポートカーは・・・」
目の前に見えているサポートアザーカーは4台。右車線に1台、左に3台。
処理の上手さとちょっとの運があれば、充分にイレギュラーを起こせる。
「<<2位との差、0.852>>」
@
(右に1台、左には3台。
車幅が気になるから今回は路肩も使えない)
基本的にサポートアザーカーは路肩を走らない様にされており、幅のある路肩を駆け抜ける走法も無い訳では無い。湾岸辺りではそこまで珍しくない光景だ。
だが蘭子のデルソルは、幅のあるタイヤを履かせる為に大分車幅が増えている。
GRP A1projectの車両レギュレーション上、純正で2m以上の車幅を持つクルマでない限りはオーバーフェンダーによる車幅の限界は2mまでとされている。
EG1delは元からそこまで車幅のあるクルマではないからそこまで増やす必要は無いが、蘭子の”鎧”はかなり特殊なマシンである故にかなり攻めた車幅を持つ。1.8m以上は間違いない。
(ここはステイか・・・)
「蘭子ちゃん」
「何ぞ<<な、何ですか?>>」
「なるべく離されない様にFDに付いて行って」
「造作も無い<<わかりました>>」
「後ろは・・・今はまだ大丈夫か」
美世は後方の麗奈と志希が乗るマシンを見たが、まだこれと言ったアクションは無い。
(N₂Oだけじゃなくて、何かまだ隠し玉を持っているかもしれない)
特に、後ろのマシンの助手席に乗っているのが志希だという事を考えると、余計にそういう方向に考えてしまう。
@
「さて、落ち着いてきたとこだし抜かれた感想を、ドーゾ!」
「・・・抜かれた以上、やり返すだけよ。ヒカルもろともね。
それに、さっきアンタ言っていたでしょ、”今は譲った方が良い”って」
「うんうん」
志希はその首をタテに振った。
「じゃあ、どうすればここから一番最初にゴールラインを踏めるのか。
このレイナ様に教えて見せなさいよ!」
「おっけ~。
じゃまずここをね」
「待ってよアタシだってそこまで気持ちの整理は速くないわ!」
「こうして」
「人の話聞きなさいよ――――――ッ!!」
@
早稲田のコーナーは防いだ。
大曲は相手が攻めてこなかった。
飯田橋先の神田川コーナーもこなかった。
「じゃあ此処ってワケかァ!」
小石川橋を見やる右コーナーで、蘭子のデルソルが再び光のナイトに牙をむく。
この先は緩く右に曲がる1kmの直線。
コーナーの出口で並ばれたら勝ち目は無い。
「RX!」
「<<何でしょうか?>>」
「此処で引き離す」
「<<その言葉を待っていました>>」
光は本来シフトノブのある場所にあった小さめのレバーを目一杯押し込んだ。
「”パースートモード”。
今は追われる身だけどねっ」
モニターに表示されるブースト圧が「1.8」を示した。
一時的なブーストアップによって、光のナイトは更なる加速を得た。
蘭子のデルソルに並ばせる隙さえ与えずにコーナーをクリアする。
「やっぱりあったか!”パースートモード”!!」
「禁断にして燃ゆる命の灯か!?
<<もしかしてブーストアップ!?>>」
普段から目の前のマシンが登場するドラマ「レーシングナイトRX」を観ていた美世は、マシンに搭載されている機能を全て覚えていた。その中でも最もシンプルだった「パースートモード」は恐らく実車にも何らかの形で実装されているだろうと予想していた。その予想は正解である。
(何が「ブースト1.4キロから700を超えるぞ」だか・・・。
・・・1.8キロで800位かな・・・数字より性能は上がっている)
「ドラフトには付けられると思うから、FDに当てる位の気持ちで行って!」
「御意に!<<わっわ、わかりましたぁ~>>」
ここでデルソルはラインを替え、ナイトの真後ろに付いた。
(あっちも来たっ)
美世が後ろを見ると、すぐそこまで麗奈の”The Wraith”が来ていた。
「にゃ~はっはっは!
どうよレイナチャン。見事に追い付いたでしょ~」
「悔しいけどアンタのアタマは本物ねっ」
「後は任せるにゃ~」
「此処まで来れたらコッチのもんよ!」
どういうトリックを使って追い付いたのかは分からない。
言える事は、マシンの側面には無数の黄色い擦り傷の様な物があった。
そして麗奈のマシンは、既にスリップストリーム効果を十分に受けられる距離まで接近した。
3台が一本のラインで繋がり、西神田の先に在る左コーナーへ加速する。
@
「ゴールまでもう2キロと無いな。
コーナーは3つ、どれもあの3台なら並んでクリアする事も出来る」
「目が離せないってワケ?」
「そうだな。データは後からでも見られる。
離されるなよ?」
「おーけー」
@
「ラストチャンス!
ここでキメるよ蘭子ちゃん!」
「最後に微笑むのは我々ぞ!
<<絶対勝つんだからァ!>>」
コーナーの少し手前、デルソルは光のラインから外れ、アウト側を取った。
ゴールまでは緩いS字、蘭子と美世は最短距離のラインを選んだ。
「蘭子チャンはアッチを選んだね」
「アタシ達はどーすんのよ」
「コッチ!」
麗奈と志希のマシンは、蘭子達と反対に光のイン側を狙った。
最短ではないが、N₂Oを吹かせば相殺出来る差かもしれない。
「・・・”持つ”よね、RX?」
「<<私を何だと思っているんです?>>」
「へへっ、そう来なくっちゃぁ!!」
挟まれる形となった光はこのラインで行くしかない。
いかに減速させずゴールまで”ナイト”を運ぶかが勝利の条件だ。
「いっけぇ!」
「征くぞ、”ARMORMAIL”!!
<<トップは私ですっ!>>」
「いっくよぉ~」
「絶対勝つんだからァ!」
「行くぞアールエックス!」
「<<ヒカルに勝利を!>>」
@
西神田先の左コーナーで遂に蘭子がトップに立った。
「やられっぱなしのレイナ様じゃないわよっ!!」
麗奈がN₂Oを噴射し、アウトから強引にマシンを引っ張る。
「ラインの自由度が無いっ。
でも、退けない!!」
光は何とかして2台に当たらない様に、それでもアクセルは踏む。
そして3つ目のコーナー。C1との合流地点。
そこまでの僅かなストレートで3台は完全に横並びとなる。
「決まるわよ」
「勝つのは・・・」
一ツ橋の左コーナー。このバトルのゴール地点まで60m。
「踏み込めぇ!
フラットアウト――――――――ッ」
蘭子のデルソルが僅かにアウトへ流れて行く。
その僅かが、蘭子のデルソルに加速を許さなかった。
そして麗奈のマシンは、無茶なN₂Oが祟った結果なのか、水温が110℃を超えてしまった。
「<<やりましたね、ヒカル!>>」
「・・・よしっ!」
このバトルに勝ったのは光だった。
Main EPISODE:She met a ...Ⅴ
played result:SUCCESS!
「ストーリーリプレイ」が記録されました
NEXT…
@
「ストーリーモード」第1章中盤のメインエピソード
「She met a ...」
メインイベントは蘭子、光、麗奈の池袋線三つ巴RSバトル。
ゴールまでの後半戦、実は1位でゴールする必要は無い。
実質クリア条件なしのレースである。
(一応前回と同じく「奏に追い越されない」がクリア条件)
蘭子が1位でない時はほぼ必ず光が勝利する様に設定されている。
一部では麗奈をサポートして1位に押し上げる縛りプレイも有る様だ。
「ストーリーリプレイ」では光と麗奈視点でプレイが可能。
光は「1位でゴールする」
麗奈は「3位以上でゴールする」
がクリア条件となる。