CINDERELLA GIRLS×GRP TOKYO Highway XTREME RACER's M@STER   作:アマネモ

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She met a ...Ⅳ

「さあ準備完了よ・・・。

 カウントスタート!!」

 

 麗奈の合図と共にコンソールのカウントが始まった。

 スタート時点では麗奈が先頭、次に光、そして蘭子が奏と並んでいる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「さて蘭子ちゃん、いよいよだよ!」

「うむ!<<はいっ!>>」

 

 蘭子のデルソルの助手席には美世が座っていた。

 因みに今更の話であるが、4台はいずれも左ハンドルのクルマであり、美世が座る助手席も当然右側に存在する。

 

「さっきも言った通りだけど、このクルマはあの2台よりスペックデータでは勝っている。

 けどまだセッティングも煮詰まっていないらしいし、何より蘭子ちゃんはこのマシンの運転は初めてだから、その、まぁ気楽に行こう、って事でいいんじゃないかな?」

「その事は解っておる。

 だが、前方に立ち塞がらんとするHeld(独:英雄)とRache(独:復讐)は、そう易々と我が”ARMORMAIL”の舞を許してくれるだろうか?

 <<解っていますよ。

 でも、それで前に居る光ちゃんとレイナ様に追い付けますかね?>>」

 

 蘭子の心配も正しかった。確かに美世の言うとおり、マシンスペックの数字だけで言えば蘭子のマシンが馬力、トルク、重量において光と麗奈のマシンより確実に良い。

 だが、ここは首都高。名前の上ではサーキットではあるが、あまりに公道的な不確定要素の多いこの場所は単純なマシンスペックで語れない魔法が掛けられてある。

 

「まぁそん時はその時で・・・。

 それよりスタートだよ!」

「いっ、いざ!狂乱の宴の始まりよ!!

 <<わわっ、もう始まっちゃうの!?>>」

 

 既にコンソールに表示されていたカウントは1。

 

<スタートッ!!>

 

「往くぞ、”ARMORMAIL”Showtime!

 <<行きますよーッ!>>」

「そんな思いっきりアクセル踏んだら!?」

 

 カウントのGOと、麗奈のメッセージに蘭子は焦った。いつもの感覚でアクセルを踏みつける。

 美世はその光景に恐怖した。とてもパワーの上がったターボ車のアクセルの踏み方では無いその足の動きに美世の脊椎は4点式シートベルトの肩帯を握らせた。

 

 だが、この蘭子のニューマシン、デルソル”ARMORMAIL”は二人の想像の上を行った。

 

「ぅっ!?<<ぅっ!?>>」

「うぉっ!?」

 

 偶然か否かは不明だが、巧くブースト圧のポイントとアクセルが同調したマシンはスムーズにも暴力的な加速を開始した。

 

「くっっ、これは、スゴィ・・・!」

 

 肩帯から手を離しつつ、美世の脳内にあるマシンが浮かんだ。

 

(この感じ・・・ッまさしく縦置きミッドシップの加速。

 私が15の時に駆った、ジュニアフォーミュラと同じ加速だッ!)

 

 美世が思い出したのは、15歳から3年間参戦していたフォーミュラカテゴリーのマシンだった。

 一応はジュニアクラスのマシンだったが、それでも純レーシングカーとしての尖鋭された動きに当時はよく翻弄された事を、彼女は今でも憶えていた。

 

 そして、今このデルソルは記憶の中のそれと同じ動きをした。

 

「蘭子ちゃん大丈夫!?」

「フッ、この動きは既に見切った!

 <<あ、危なかったぁ~>>」

 

 光と麗奈のマシンも中々に良い加速をしていたが、蘭子のデルソルはその背後に容易く追い付いて見せた。やはりスペックでは蘭子のデルソルが頭一つ抜けている。

 だが、追い付くのと追い抜くのでは意味がまるで違う。

 

@

 

「スッごぉ~い!

 ニュー蘭子ちゃんかなりヤバーだよ。どうするのレイナチャン?」

「確かに性能は良いみたいね・・・。

 でもここは首都高、やっているのはレース。

 抜かれなきゃ、アタシの勝ちよ!」

 

 麗奈はそう言いながら、ステアリングホイールに装着されたパドルシフトでギヤを上げた。

 

「抜かれなきゃって言うけどさレイナチャン。

 あっちはイイの?」

 

 志希が指したそこには左車線からオーバーテイクした光のRXがあった。

 

「ッ!!!

 良い訳、無いでしょーが!!」

 

@

 

「<<ヒカル、今夜はイケイケですね>>」

「あぁ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 光が駆るナイトRXは内装も晶葉謹製のオリジナルで、特にダッシュボードとインストルメントパネル、そしてステアリングには彼女の”執念”に近いモノさえ感じられる作り込みである。

 

「この勝負は、負けられないんだよ」

 

 光が握っているのはまさかのガングリップ型ステアリングである。晶葉のワンオフ製作だが、きちんと首都高の車両レギュレーションをクリアしているのは流石の一言だ。

 

「<<ビハインドはそれぞれ0.8秒、1.1秒。

   後ろのクルマも、中々に速いみたいですよ>>」

「そう来なくっちゃぁ!」

 

 トリガー部は麗奈のマシンと同じくパドルシフトとなっている。

 光のナイトRXは本来フルオートマチックであり、ギヤ操作は任意で行える仕様だ。

 

「<<7速>>」

 

 そして任意操作時のみ、7速目のギヤが解放されるのだ。

 

@

 

「あのセブン、中々に伸びるわね。

 もしかして7速かしら?」

「正解だ。

 SPバトルなら、最高速より加速を重視した方がFD3Sのエンジン特性にマッチしている」

 

 ようやく左ハンドルにも慣れてきた奏は、バトルには参加しない程度に前方の3台に追走する。その順応の速さに助手席でモニターを凝視しながらも、池袋晶葉は関心と興味を持っていた。

 

「やはり、あの2台相手のテストは正解だったな。

 実戦なら蘭子の”癖”もデータに入るから、それに沿った調整も可能にさせる」

「随分満足気のところだけど、蘭子ちゃん、随分苦戦している様ね。

 前のマシンは・・・志希が乗っている奴かしら」

「麗奈は褒め言葉として往生際が悪いからな。

 そう簡単には、後ろのクルマに前を譲らないタイプの首都高ランナーだ」

 

@

 

「やはり我が”ARMORMAIL”の舞は許されぬのか!!

 <<お、追い抜けないっ>>」

 

 レースは中盤、未だ蘭子は3位に甘んじていた。

 勿論、その状態を認めても受け入れる訳にはいかない。まずは麗奈の攻略にかかる。

 

「此処までのこのクルマの動きを見ての事なんだけど・・・」

 

 助手席はあまり得意ではない美世だが、コ・ドライバーになった以上は蘭子をこのバトルで勝たせる手伝い位はしておきたかった。

 

「蘭子ちゃん、護国寺のS字なら麗奈を抜けると思うんだ」

 

 美世が示したオーバーテイクポイントは護国寺PAを通過するS字コーナーだった。

 

「っ、如何なる手段が・・・それを可能とするのだ?

 <<えっ、でもどうすれば・・・?>>」

 

 美世は蘭子のドライビングとデルソルの動き、そして前方の麗奈のマシンの動きを見て”ある事”が可能だと無責任にも確信していた。

 

「フェイントモーション、それの応用だよ」

 

@

 

「多分クルね、次は護国寺のコーナーで来る」

「何が来ようとアタシの前は走らせないわ!

 ヒカル!アンタもよ!!」

 

 麗奈は既に前方の光にしか目に入っていないが、後ろの事は志希が良く言ってくれていた。

 結果、志希の嗅覚は単に鼻が良いだけで無い事を、麗奈は知る事となった。

 

「で、志希ちゃん提案があるンにゃけど」

「なに、まさか後ろのを譲ろうなんて言わないでしょーね」

「オー、スゴイ!大正解だよ!」

「だからなんでそうなるのよ!」

 

 志希の提案、後ろのデルソルを譲る。

 一見、それが提案なのか考え込まないといけない程度には良くない案だ。

 そしてこの状況。

 バトルの当事者としてどうしても冷静になれない今では、到底受け入れられるモノではない。

 

 だが、当事者ではない視点からこの状況を見る事が出来れば?

 

「・・・足掻くだけ足掻いてみるわ。

 それで抜かれたら、聞いてやってもいいケド・・・」

「おけおけ。

 大分レイナチャンも柔らか~くなってきたね!」

「アンタがドロドロに溶かそうとするから、コッチは必死に原形を留めようとしてんのよ!」

 

@

 

「<<3位のマシンが攻勢に転じるようですね。

   万が一ですが気を付けましょう>>」

「ありがとう」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 1位をひた走る光はバックモニターを流し見る。相変わらず真っ先に移るのは余りにヘッドランプ位置の低い麗奈のマシンだが、その後ろからデルソルのヘッドライトが見えるペースが上がってきていると感じた。

 

「レイナもそろそろ限界か・・・?」

 

@

 

「恐らくは、フェイントを仕掛けるつもりだな。

 ・・・蘭子の策じゃないな。

 トナリの美世が吹き込んだか・・・」

 

 後方から蘭子のデルソルの動きに注目し、更にマシンに付けた各計測器から発信される情報を読んで、晶葉は次に蘭子のマシンがどういう動きを取るのかを予測した。

 

「ドライバーの蘭子より単純なマシンへの適応力は上、か・・・」

「美世が?」

 

 奏の疑問に、モニターから目を離さずに晶葉は答える。

 

「別な言い方をすれば、素直、と言ってもいいな。

 クルマが起こす事象に対して自分の解釈を持たず、すんなりと受け入れる。

 オカルトチックなら「自分がクルマの一部になる」とでも言うのだろうな」

「それは確か、本当に美世が言っていたわ」

「成程・・・(だが・・・)」

 

 晶葉はモニターの画面を変更した。

 その画面に映されているデータは、今奏が運転しているこのデルソルのデータだった。

 

(今の時点では、奏の方がこのデルソルを速く運転出来る、か・・・)

 

 決して蘭子が運転下手な訳では無い。

 確かに今はまだ経験値で不足しているが、最終的な成長の”伸び”に目を付けたのが晶葉だった。

 その眼に疑いは持っていない、だが・・・。

 

(より純粋なのは、コッチかもしれないな・・・)

 




Main EPISODE:She met a ...Ⅳ

played result:SUCCESS!

「ストーリーリプレイ」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章中盤のメインエピソード

「She met a ...」

メインイベントは蘭子、光、麗奈の池袋線三つ巴RSバトル。
護国寺PAまでが前半戦であり、クリア条件は
「奏に追い越されない」
である為、実質クリア条件なしのレースと言ってもいい。
 
この時点では最も馬力のある(890馬力)クルマを運転する事となる。
だがハイパワー車にありがちな挙動の繊細さ(どっかんターボ)等は無く、慣れれば光と麗奈をオーバーテイクする事も可能。

「ストーリーリプレイ」では光と麗奈視点でプレイが可能。
光は「1位をキープ」
麗奈は「蘭子に抜かれない」
がクリア条件となる。

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