CINDERELLA GIRLS×GRP TOKYO Highway XTREME RACER's M@STER   作:アマネモ

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She met a ...Ⅰ

「ふぅ・・・あら?」

「やっほ」

 

 奏が神田橋PAで一息つけていると、そこに美世がやって来た。

 その手にブラックコーヒーを2本持って。

 

@

 

「同業者・・・?」

「正確には結構違うんだけどね。

 346のアイドル限定でクルマを弄っている人が居るらしいの」

「へぇ」

「走行距離お構い無し、ほぼ新車だろうとフルチューン。

 って聞いたからには、ちょっと気になるんだよね」

「美世はしっかり慣らすものね」

「まぁね」

 

 美世はその手に握ったコーヒー缶を揺らす。まだ中身は残っている様だった。

 それを見ていた奏は美世から視線を外し、少し遠くを見る。

 様になった動きだ。とても自分より年下のハイティーンとは美世でも思えないくらいに。

 

「一人」

「えっ」

「心当たりは有るわ。

 もっとも、私が知っている訳ではないのだけれど、ね」

「それって」

「志希。

 彼女なら、もしかしたら知っているんじゃないかしら」

「・・・やっぱりね。

 今夜は"来ている"みたいだし、案外バッタリ出会うって事も」

「にゃはははは、ワタシを探しているのは貴女?

 ってね!」

 

@

 

 一ノ瀬志希。

 第13部署に所属するアイドルとその候補生の中でも特に異彩を放つアイドル候補生。

 首都高では「GRP A1project」が受注生産するオリジナルのカスタムカー「EVOⅣ ASTI」を駆り、「イコライズギフト」なる通り名を持つ。

 

「んー多分アキハちゃんかな?

 ダチャーンの言っている娘ってさ」

 

 美世から一通りの説明を貰った志希はあっさりと答を出した。

 もっとも、まだ正解と決まった訳ではない。

 

「奏さん聞いたことある?」

「・・・聞いたことも無い名前よ。

 でも346は規模が大きいし、部署間の連携が薄ければ知らない名前があってもおかしくはないわ」

 

 美世は兎も角、奏も知らない名前だったが志希はこのアンサーに自信ありの様だ。

 

「アキハちゃんは私が元居た部署に居るんだけどけっこースゴいよ!」

「どうするの、美世?」

「手掛かりにはなりそうだし、まだ時間はあるから場所次第なら今からでも行けるかな・・・。

 志希ちゃん!

 その志希ちゃんが元居た部署って何処なの?」

「第7部署なら池袋線の先にあるよ。

 行くの?」

 

 少なくとも、志希は行きたがっている。

 

「・・・ちょっと遠いかな。

 まぁ、行けない距離じゃない、けど・・・」

 

 この時美世は1つ、気配を感じ取っていた。

 池袋線の道程を楽しくさせてくれる気配・・・しかも、3人を同時に相手取れるようなクルマの気配だ。

 

「行きましょう。

 ここで考えていても夜が進むだけ。

 それに、道中が面白そうに感じるわ」

 

 奏もそれらしい反応をするが、美世が感じた気配と同じかは判らない。

 

「にゃっはー!

 じゃあキマリッ!

 行こう!!!」

 

 志希も行動を決定した。

 3人は各々のクルマに乗り込み、PAを後にした。

 

@

 

 そして、それを影から見ていた少女が居た。

 昼間であればどう足掻いても目立ち過ぎるその装束も、宵闇を味方に付ける事によってその姿を現実から消し去る。

 

「・・・ククク・・・さぁ、狂乱の宴を始めようか・・・!」

 

 尤も、彼女自身が現実的であるかと言えばその答えはノーである。

 

@

 

 神田橋PAを出発し、池袋線に進入したすぐ後にそのクルマは美世達3人の後方に現れた。

【挿絵表示】

 

 

「ん、なんだあのマシン・・・」

 

 最後尾の美世が真っ先に気付く。

 

(ボディカラーが黒くて形は判別に難しいか・・・。

 でもライトの特徴から見てJZZ31か、EG1del。

 ・・・多分EG1delの方か、横に長くない・・・ん、ちょっと待ってアレはFFでNAのL4だよね)

 

「後ろのデルソル・・・リアにV6ターボが積んである・・・!?」

 

 そして美世は、後ろのクルマが異常である事も察知した。

 流石に彼女のみがなせる技ではあるが、故に美世が受けた衝撃は大きい。

 

 前の2台も気が付いた様だ。

 

(・・・たしか、聞いたことがあったな。

 デルソルをミッドシップにしたレーシングカー・・・だけどあれは焼失したって話だし、ならばレプリカ・・・?

 だけどそれを首都高の実戦レベルまで仕上げるとすれば・・・!)

 

 その時、美世のコンソールがバトルを受信した。

 余り使う事の無いRSバトルの複数台同時対戦だが、こういうシチュエーションでは都合が良い。

 距離は池袋線の終点、北池袋PAまで。

 そして彼女達はバトルの送信主に更なる驚愕を要求された。

 

「ダ、「ダイ=アモン・ド・ルキフェル」・・・。

 ドライバー・・・・・・!」

 

@

 

-さぁ、参ろうか!-

 

 GOカウントとほぼ同時にデルソルは、およそベースのクルマから想像出来ない加速であっさりと3台の間をすり抜けトップに躍り出る。

 

「にゃは!?」

「何っ今の!?」

「ぐ・・・!」

 

 事前にある程度の想像が出来ていた美世は兎も角、姿を確認出来ていなかった志希と奏には正に電撃に近い感覚がこの時身体を駆け巡る。

 間髪入れずに美世は空いている左車線に自らを"弾き"追撃の姿勢を取るが、奏と志希は追撃体勢への移行に一拍を許してしまった。

 

「すっごぉい!

 今ので体内のアドレナリン分泌量が4倍位になったかなァ!」

 

 志希は自分に起こった現象を解析した。

 普段をしておよそ常人ではない彼女は、紙一重でホンモノの「天才」の方に分類される。

 

(あの加速だと700をちょっと下回る位には馬力が出ていて、それを振り回せる足回りもあるね。

 コレじゃマトモな勝負は出来ないにゃ~)

 

 志希の中でモードが切り替わる。

 

(せめて3位、を取る為に・・・は・・・)

 

 志希の眼に映ったのは左車線から追撃を仕掛ける美世のR33だった。

 

(引っ張って貰おう!

 うん!

 それしかにゃーっ!)

 

 志希は美世R33の後部に滑り込ませ、スリップストリーム効果の恩恵を受ける事にした。

 

「そうね、それで行きましょう」

 

 奏も志希の後方にピタリと張り付き、これで、3台が数珠繋ぎの様な状態となった。

 

【挿絵表示】

 

 

「まああれだけ露骨にプッシュすれば気が付くか!

 いいでしょう!

 付いて来て下さいよぉ!!」

 

 オーバルトラック・ストックカーレースに代表される「ドラフティング」に近いが、首都高でそれをやるには少々リスクが大きい。

 だが、美世にとってもほんの僅かに効果はある。だから美世は二人が同調する様にモーションを掛けたのだ。

 

(追い付けよ・・・!)

 

@

 

-むぅ、なかなかやるな!-

 

 美世はEG1del、デルソルのリアに食い付き2、3コーナーを抜ける。

 コーナーの中間では追い付ける、だが立ち上がりで差が開くという展開に美世が気付く。

 

(前のデルソル、加速も制動もきっちりやっているけどコーナーが甘いな・・・多分、シャシーが負けているんだ)

 

 そして次のコーナーでアウトに付いた美世は、イン側でもがくデルソルを見て確信に至る。

 

(間違いない。

 エンジンとパワートレインにシャシーが追い付いていないから、コーナーでアクセルを開けられないんだ!)

 

「ってぁ!?」

「今まで後ろに付いていたのは、こういう時の為!」

 

 美世がデルソルに意識し過ぎたのか、美世より更にアウトサイドから顔を見せたのは奏のFCだった。

【挿絵表示】

 

 

「にゃはーッ!!

 そう!

 コウイウのが見たかったの!!」

 

 その光景を目の当たりにした志希はすっかりご満悦だ。

 

「だからもっとワタシにソレを見せて!」

 

@

 

-そろそろ宴も終焉の刻が近い、か・・・-

 

 バトルも終盤に差し掛かっていた。

 現在の順位は依然としてデルソルが1位、すぐ後ろには先のオーバーテイクで奏が付けた。美世はその時体制を崩して4位に下がり、志希が3位となっている。

 

「このままじゃ不味いな・・・」

 

 一転して不利な状況に陥った美世だが、実は口で言っている程ピンチだと彼女は思っていない。

 

「逆転出来るとしたら・・・次が最後のチャンス。

 いけるよね、R・・・!」

 

 相棒という関係さえ越えた、自らの一部であるR33を確認した美世の瞳から迷いが消えた。

 

「ダチャーンがヤル気マンマンだね。

 でもワタシだってもう引けにゃーい!!!」

 

 美世の気配を感じ取った志希も覚悟を決めた。

 

「"来る"わね、間違いなく。

 次がこのバトルのハイライトになる・・・!」

 

 奏は後ろの気配を気にしつつも、意識は前のデルソルに向けた。

 デルソルは変わらず、だが後方の気配は察知している様だ。

 

 次が勝負所。

 

 このバトルで最もアツくなるポイントがそこであると、4人の意識が同調した。

 

@

 

-此処からがこの勝負の天王山か!-

 

「にゃはーッ!

 ワタシについてこぉーい!!」

 

 先に仕掛けたのは志希、コーナーを限界ギリギリの減速でターンしてトップに躍り出た。

 

「そうも上手くは行かせない!」

 

 奏がそれに反応する。

 あっさりとスリップに入り、次のコーナーでインを刺そうとモーションに入った。

 

「ッッ!」

 

 だがその瞬間をデルソルに狙われた。

 奏より先にコーナリングポジションを獲ったデルソルに阻まれ、FCは行き場を失い失速する。

 アウト側に車体を振ったが既に遅く、4速で3000回転を差すタコメーターを見た奏はこの瞬間トップチェッカーを諦めた。

 

(美世はまだ仕掛けないつもり・・・?)

 

 奏は自らのFCを悠々と追い抜く美世のR33を見て思った。

 

(・・・ソレを知ることは出来ない、か・・・)

 

 ギヤを2速まで落とし、やっとタービンが仕事を再開した奏のFCは既に、3台から200mは離されていた。

 

「これ以上はムリかっ

 後は頼むよダチャーン!」

 

 デルソルに離される志希は自分のスリップについている美世に託す事にした。

 美世を前に譲り、逆に志希が美世のスリップストリームに付く。

 

「奏ちゃんが珍しくしくじったから3位は揺るがなさそうだけど、もうちょっと粘ってもソンは無いハズ・・・!」

 

 志希はこのバトル、勝利より内容の方が自分を楽しくさせてくれると感じていた。

 

「だって次が絶対オモシロイもん!」

 

 だから、彼女は最も近いところで観客になりたかったのだ。

 

「・・・ここっ!」

 

 そして、遂に美世が動いた。

 コーナーのターンインでブレーキングを遅らせ、デルソルに肉薄してイン側を奪い取る。並んだデルソルはアウト側から、アクセル全開で強引にコーナーの攻略にかかる。

 

「ハマった・・・次!」

 

 2台は並んだまま、次のコーナーに進入する。

 インとアウトが入れ替わり、美世はクラッチを蹴ってRをドリフトに持ち込む。

 本来BCNR33というクルマはドリフトをするようなクルマではないが、美世がその人生を以て"自分そのもの"として造り上げたRは彼女に応えて見せる。

 結果、セオリー通りであれば有利な筈であるイン側のデルソルは、加速する為にその車体を振るアウト側のラインを美世に明け渡してしまう格好となった。

【挿絵表示】

 

 

「見えた、フィニッシュよ!」

 

 コーナーを抜けた先、フィニッシュラインまでの短い直線をそれでも非常識な加速で迫って来るデルソルを抑え切り、このバトルを美世は勝利した。

 

-・・・我の、完敗よ・・・-

 




Main EPISODE:She met a ...Ⅰ

played result:SUCCESS!

「ストーリーリプレイ」が記録されました

NEXT…

@

「ストーリーモード」第1章中盤のメインエピソード

「She met a ...」

最初のストーリープレイでいきなり正体不明のEG1del(デルソル)とバトルを行う。
美世を操作してデルソルに勝利すればクリアとなる。
相手の方が美世のR33よりマシン性能が高い為、今までより少し難易度が高い。
志希と奏は序盤に必ず美世のスリップストリームに付く為ストレートスピードが少しだけ向上するが、油断しているとどちらかが追い越してくる。

小説内では最終コーナーまで美世は仕掛けなかったが、デルソルはコーナーでアウトインアウトを厳守する為、実はインの時にアウトから並び掛けるだけで追い越せたりする。

デルソルを運転していた人物は次で判明する。

「ストーリーリプレイ」では奏、志希、そしてデルソル視点でプレイが可能。
奏と志希の場合はクリア条件が「4位以上」となっている。

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